無能と罵られ追放された落ちこぼれ魔術師、実は世界で唯一【言語魔法】を使える最強賢者だった〜古代魔法と失われた知識で成り上がり見返してやる!~

夏見ナイ

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第57話:竜顎山脈の試練、古代の守護獣

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「竜顎山脈」の麓にたどり着いたリオたち一行を待ち受けていたのは、息を呑むような絶景と、そしてそれを守るかのような圧倒的な威圧感だった。天を突くように鋭く尖った岩山が連なり、その頂上付近には、陽光を反射して微かにきらめく「星見の祭壇」が見える。しかし、そこへ至る道は、険しい断崖絶壁と、深いクレバスによって閉ざされているかのようだ。

「……ここから先は、通常の登山技術だけでは進めそうにないわね」

リリアナが、険しい岩壁を見上げながら言った。

「長老様から聞いていた通り、この山脈には古代の仕掛けや罠が数多く隠されているはずです。そして、祭壇を守る、強力な守護者の存在も……」

ライラも、緊張した面持ちで付け加えた。彼女の瞳には、この聖なる山への畏敬と、同時に警戒の色が浮かんでいる。

「ふん。どんな仕掛けだろうと、打ち破るまでだ」グレイは、既に臨戦態勢に入っていた。「問題は、どうやってあの祭壇までたどり着くか、だな」

リオは【言語魔法】で周囲の気配を探る。山脈全体から、非常に古く、そして強大な魔力の波動が発せられているのを感じた。それは、自然の力だけではない。明らかに、古代の魔法技術によって増幅され、制御されたエネルギーだ。そして、そのエネルギーの流れの中に、いくつかの「歪み」――おそらく、隠された通路や仕掛けの存在を示唆する場所――を感じ取った。

「……あちらの岩壁……。少し、魔力の流れが不自然です。何か、隠されているかもしれません」

リオが指差したのは、一見するとただの垂直な岩壁だったが、よく見ると、その一部だけが不自然なほど滑らかで、何らかの人工的な加工が施されているようにも見えた。

四人は、その岩壁へと近づいていった。リリアナが古代の知識を元に壁の模様を調べ、グレイが物理的な仕掛けがないかを探る。ライラは、砂漠の民に伝わる古い伝承を元に、何らかのヒントがないかと思いを巡らせていた。

やがて、リオが壁に刻まれた微細な古代文字の列を発見した。【言語魔法】でそれを読み解くと、それは一種の謎かけのようになっていた。

『天を衝く牙、大地を裂く爪。古の竜の怒りを鎮め、星々の道を開け』

「竜の怒りを鎮める……? どういう意味でしょう?」リオは首を捻った。
「この山脈は、古代竜の骨がそのまま山になったという伝説があるわ」リリアナが言った。「もしかしたら、その竜の魂か、あるいはそれに類する存在が、この場所を守っているのかもしれないわね」
「怒りを鎮める、か……。力ずくで倒すのではなく、何か別の方法が必要だということかもしれんな」

グレイが推測する。

その時、ライラが何かに気づいたように声を上げた。

「あっ! あの岩の形……! 私の祖母から聞いたことがあります! 竜顎山脈には、特定の時間、特定の角度から見ると、竜の頭のように見える岩があり、その『目』にあたる部分に、太陽の光が差し込む時、何かが起こる、と……!」

ライラが指差す方向には、確かに、遠目に見ると竜の頭部にも見える奇妙な形の岩山があった。そして、今の太陽の位置と角度を考えると、もう少しで、その岩山の特定の窪みに、太陽光がまっすぐに差し込みそうだった。

「……試してみましょう!」

リオたちは、ライラの言葉を信じ、太陽光が差し込むのを待った。やがて、陽が傾き、眩い光線が、まるでサーチライトのように、竜の頭の形をした岩山の「目」にあたる窪みを照らし出した。

その瞬間、ゴゴゴゴゴ……という地響きと共に、彼らが調べていた岩壁の一部が、ゆっくりと内側へとスライドし始めたのだ! 現れたのは、山脈の内部へと続く、暗い洞窟の入り口だった。

「開いた……! ライラさん、ありがとう!」
「いえ……私も、ただの言い伝えだと思っていたのですが……」

ライラは驚きながらも、少し誇らしげな表情を見せた。

四人は、用心深く洞窟の中へと進んでいった。内部は、自然の洞窟と人工的な通路が複雑に入り組んだ、まさに迷宮のような構造になっていた。壁には、やはり竜や星々をモチーフにしたレリーフや壁画が描かれており、それらは「星詠みの民」の様式とも、ドワーフの様式とも異なる、独自の文化を感じさせるものだった。

道中、彼らはいくつかの罠や仕掛けに遭遇した。床から槍が飛び出す罠、幻覚を見せる霧、特定の順番で床のパネルを踏まなければ進めない通路……。しかし、リオの【言語魔法】による危険察知、リリアナの古代知識による謎解き、グレイの卓越した戦闘能力と罠解除技術、そしてライラの砂漠の民ならではの鋭い勘が、それらの困難を一つ一つ乗り越えていくことを可能にした。

「……この迷宮、まるで私たちを試しているようだわ」

リリアナが、息を切らしながら言った。

「ああ。知恵、力、そして……おそらくは運もな」

グレイも同意する。

やがて、四人は広大な地下空洞へとたどり着いた。その空洞の中央には、溶岩が煮えたぎる巨大な池があり、その周囲には、いくつかの浮島が鎖で繋がれて点在している。そして、その最も奥にある巨大な浮島の上に、一体の巨大な生物が、まるで玉座に鎮座するかのように、翼を広げて横たわっていた。

それは、体長20メートルはあろうかという、全身が黒曜石のような鱗で覆われた、巨大な竜だった。その瞳は溶岩のように赤く輝き、口からは白い息が漏れている。その姿は、まさに伝説の古代竜そのものだった。

「……まさか……本当に、生きていたとは……!」

ライラが、畏怖と驚愕に声を震わせた。

古代竜は、ゆっくりと頭をもたげ、侵入者であるリオたちを、その赤い瞳で見据えた。圧倒的な威圧感。それは、アストライオスとはまた異なる、野性的で、荒々しい力の波動だった。

『……何奴だ……。我が眠りを妨げるのは……』

竜の声が、直接、四人の頭の中に響いてきた。それは、地鳴りのように重く、威厳に満ちた声だった。

「我々は、星見の祭壇を目指す者……。古代の賢者の石を求める者です」

リオが、代表して答えた。

『賢者の石……。ふん、またその名を口にする者が現れたか……。多くの者がそれを求め、そして、この地で命を落としていった……。お前たちも、同じ運命を辿りたいか?』

竜の言葉には、明らかな警告と、そしてどこか嘲りのような響きが含まれていた。

「我々は、戦うために来たのではありません。あなたの怒りを鎮め、道を開いていただくために参りました」
『我が怒りを鎮める、だと……? 面白いことを言う、小童め。我が怒りは、数千年もの間、この大地に刻み込まれてきたものだ。そう簡単に鎮まるものではないぞ』

竜はそう言うと、巨大な翼を広げ、威嚇するように咆哮した。その風圧だけで、リオたちは吹き飛ばされそうになる。

「どうすれば……あなたの怒りを鎮めることができるのですか?」リリアナが、震える声で尋ねた。
『……我が怒りの源……それは、かつてこの地を侵し、我が同胞を殺め、そして我が魂の一部を奪い去った、人間どもの愚行にある……。奴らが遺した『穢れ』が、今もこの山を蝕み続けているのだ……』

竜の言葉から、彼が人間に対して深い憎しみを抱いていることが分かった。そして、その憎しみの原因となった「穢れ」が、この山脈のどこかに存在するという。

『もし、お前たちがその『穢れ』を浄化し、我が魂の安らぎを取り戻すことができるならば……あるいは、道を開いてやらんでもない。だが、それは容易なことではないぞ。その『穢れ』は、強力な負のエネルギーの塊であり、それを守る者たちもいる……』
「穢れを浄化する……。それが、試練ということですか?」
『そうだ。お前たちの力と覚悟を、見せてもらおうか』

竜はそう言うと、一つの浮島を指し示した。その浮島の上には、黒く淀んだ瘴気のようなものが立ち込めており、そこから邪悪な気配が放たれている。

「あの瘴気の先に、『穢れの源』があるはずだ。それを見つけ出し、浄化してみせよ。ただし、失敗すれば、お前たちの魂もまた、その穢れに飲み込まれることになるだろう……」

古代竜が与えた試練。それは、リオの持つ浄化の力――【ソウル・パージ】――が、真に試される時だった。そして、その先には、「星見の祭壇」と「賢者の石」が待っているのかもしれない。

四人は、互いの顔を見合わせた。危険な試練であることは間違いない。しかし、彼らには、もはや引き返すという選択肢はなかった。世界の運命を左右するかもしれない「賢者の石」を求め、そして、この古代竜の魂を救うために。

「……行きましょう」

リオが、決意を込めて言った。彼の瞳には、困難な試練に立ち向かう、賢者の光が宿っていた。
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