無能と罵られ追放された落ちこぼれ魔術師、実は世界で唯一【言語魔法】を使える最強賢者だった〜古代魔法と失われた知識で成り上がり見返してやる!~

夏見ナイ

文字の大きさ
70 / 75

第70話:エピローグ、未来への序曲

しおりを挟む
数年後のフロンティアは、すっかり大陸随一の学術都市としての顔を確立していた。「古代魔法研究ギルド」――今や多くの人々から親しみを込めて「賢者の学院」と呼ばれるその場所には、今日も様々な種族の若者たちが、知識と未来への希望を胸に集っている。

リオ・アシュトンは、学院の長として穏やかながらも多忙な日々を送っていた。彼が机に向かい、古代文献の新たな解釈について論文をまとめていると、コンコン、と控えめなノックの音がした。

「どうぞ」

入ってきたのは、リリアナだった。彼女の手には、湯気の立つ二つのティーカップがある。

「リオさん、また根を詰めているのね。少し休憩にしましょう?」
「ありがとう、リリアナ。ちょうど、キリのいいところだったんだ」

リオはペンを置き、リリアナが淹れてくれたハーブティーの香りを楽しんだ。彼女の淹れるお茶は、いつも心が落ち着く、特別な味がした。

「見て。また、新しい発見があったの」

リリアナは、一枚の羊皮紙を広げた。そこには、「賢者の迷宮」のさらに奥深くの構造を示唆する、新たな地図の断片が描かれていた。

「迷宮は、まだその全貌を見せてくれていないのね。そして、このシンボル……『忘れられた谷』の砦にあったものと、どこか似ているわ」
「……やはり、繋がっているのかもしれないな。古代の『星詠みの民』と、『影の守り手』、そして賢者の迷宮……。全ての謎は、一つの大きな真実に繋がっているのかもしれない」

リオの瞳に、再び探求者の光が宿る。世界には、まだ解き明かされるべき謎が無数に眠っている。その誘惑は、彼を再び旅へと駆り立てるのかもしれない。

「また、冒険に出たくなった?」

リリアナが、リオの心を見透かしたように、悪戯っぽく微笑んだ。

「……そうだね。君と、グレイさんと一緒なら、どんな冒険も楽しいだろう」

リオは、素直な気持ちを口にした。その言葉に、リリアナは少しだけ頬を赤らめ、嬉しそうに俯いた。二人の間の空気は、穏やかで、そして確かな愛情に満ちている。彼らの関係は、もはや単なる研究仲間や友人というだけではない。互いの魂が深く結びついた、かけがえのないパートナーとなっていた。

「……そろそろ、時間だな」

ふと、リオが窓の外を見ながら言った。

「ええ、そうね」

二人は顔を見合わせ、微笑みながら立ち上がった。

学院の裏手にある、広大な訓練場。そこには、グレイが待っていた。彼の隣には、アストライオスの姿もあった。完全に目覚めたアストライオスは、その巨体を自由に動かすことができ、リリアナの共鳴魔法を通じて、今ではフロンティアと「静寂の森」を、短時間で往復することも可能になっていた。

「準備はいいか、リオ」
「はい、グレイさん」

リオは「真・星影の剣」を構え、アストライオスの前に立った。これは、彼らが定期的に行っている、実戦形式の合同訓練だった。リオとグレイが連携して、アストライオスを相手に戦うのだ。

「リリアナ、補助を頼む!」
「任せて!」

リリアナが杖を構え、共鳴魔法でアストライオスの動きを制御しつつ、リオとグレイに補助魔法をかける。

「行くぞ!」

グレイの掛け声と共に、訓練が始まった。リオは【レビテーション・フライト】で宙を舞い、グレイは地上を疾風のように駆け抜ける。二人の連携は完璧で、アストライオスの巨体を相手に、一歩も引けを取らない。星影の剣が閃き、古代魔法が炸裂し、アストライオスの放つエネルギー波が大地を揺るがす。

それは、もはや単なる訓練ではなく、神々の戯れのようにも見える、壮絶で、そして美しい光景だった。

空が夕焼けに染まる頃、訓練は終わった。汗だくになったリオとグレイが、満足げな表情で互いの健闘を称え合う。

「……少しは、マシになったじゃないか」
「グレイさんこそ、まだ衰えていませんね」

そんな軽口を叩き合えるのも、彼らの間に揺るぎない信頼関係があるからだ。

三人と一体のゴーレムは、夕日に染まるフロンティアの街並みを、丘の上から眺めていた。

「平和ね……」リリアナが、しみじみと呟いた。
「ああ。だが、この平和は、誰かが守らなければ、あっという間に崩れ去る、脆いものだ」グレイが応じた。
「ええ。だからこそ、俺たちはここにいるんです」リオは、仲間たちの顔を見回し、力強く言った。「これからも、色々なことがあるでしょう。新たな謎、新たな脅威……。でも、俺たちは、もう一人じゃない。みんながいれば、どんな困難も乗り越えられるはずです」

彼の言葉に、リリアナとグレイは、そしてアストライオスもまた、力強く頷いた。

彼らの物語は、一つの大きな結末を迎えた。しかし、それは決して終わりではない。

世界のどこかには、まだ解き明かされていない古代の謎が眠っている。
王国の闇の奥深くには、新たな陰謀の種が芽生えているかもしれない。
そして、夜空の彼方、星々の間には、彼らがまだ知らない、未知なる脅威が潜んでいる可能性すらある。

だが、彼らは恐れない。

賢者リオ・アシュトン。
エルフの学者リリアナ・エルウッド。
影の剣士グレイ・ウォーカー。
そして、星の巨人アストライオス。

彼らの絆がある限り、未来への希望の光が消えることはない。

彼らの伝説は、これから先、吟遊詩人たちによって、様々な形で語り継がれていくだろう。

――これは、無能と罵られ追放された一人の魔術師が、世界で唯一の【言語魔法】を手に、かけがえのない仲間たちと共に、自らの運命と世界の未来を切り拓いた物語。

そして、その物語には、まだ白紙のページが、数多く残されている。

未来へと続く、新たな冒険の序曲が、今、静かに、そして力強く、奏でられようとしていた。

**(完)**
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

追放された”お荷物”の俺がいないと、聖女も賢者も剣聖も役立たずらしい

夏見ナイ
ファンタジー
「お荷物」――それが、Sランク勇者パーティーで雑用係をするリアムへの評価だった。戦闘能力ゼロの彼は、ある日ついに追放を宣告される。 しかし、パーティーの誰も知らなかった。彼らの持つ強力なスキルには、使用者を蝕む”代償”が存在したことを。そして、リアムの持つ唯一のスキル【代償転嫁】が、その全てを人知れず引き受けていたことを。 リアムを失い、スキルの副作用に蝕まれ崩壊していく元仲間たち。 一方、辺境で「呪われた聖女」を救ったリアムは自らの力の真価を知る。魔剣に苦しむエルフ、竜の血に怯える少女――彼は行く先々で訳ありの美少女たちを救い、彼女たちと安住の地を築いていく。 これは、心優しき”お荷物”が最強の仲間と居場所を見つけ、やがて伝説となる物語。

地味スキル? いいえ、『法則操作』です。 ~落ちこぼれ探索者が現代科学でダンジョンをハックする話~

夏見ナイ
ファンタジー
ダンジョンが出現して10年。元物理学徒の神崎譲(かんざきゆずる)は、『状態保存』『現象観測』という地味スキルしか持てず、落ちこぼれ探索者として燻っていた。ある日、パーティーに見捨てられ死に瀕した彼は、土壇場でスキルの真髄――物理法則への限定的干渉力――に覚醒する。「時間停止もエネルギー固定も可能…これは『法則操作』だ!」譲は忘れかけた科学知識を総動員し、地味スキルを最強の武器へと昇華させる。状態保存で敵の攻撃を無効化し、現象観測で弱点を精密分析、化学知識で即席兵器を生成!常識外れの科学的ダンジョン攻略で、世界の法則(ルール)すらハックする!落ちこぼれからの知"的"成り上がり譚、ここに開幕!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...