鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

文字の大きさ
2 / 100

第2話:聖女の冷たい言葉

しおりを挟む
長い見張りの時間が終わり、空が白み始める頃。俺はこわばった体をゆっくりと伸ばした。結局、一睡もしていない。疲労感だけが全身に重くのしかかっていた。

他のメンバーがまだ寝息を立てている中、一人だけ静かに身を起こす影があった。純白のローブをまとった聖女リリアだ。彼女は俺の幼馴染。このパーティーにいる唯一の、昔からの知り合いだった。

彼女は水筒を手にすると、俺の方へ歩いてくる。その足音はほとんど無音で、まるで幽鬼のようだった。一瞬、何か言葉をかけてくれるのかもしれないと淡い期待を抱いた俺が馬鹿だった。

「まだいたのですね」

凛とした、しかし氷のように冷たい声だった。俺のすぐ側で立ち止まった彼女は、その美しい顔をわずかに顰めて俺を見下ろしていた。昔、太陽のように笑っていた面影はどこにもない。

「……おはよう、リリア」

「馴れ馴れしく名前を呼ばないでください。あなたは勇者様のパーティーに仕えるただの鑑定士。私は聖女。立場をわきまえるべきです」

突き放すような言葉が、容赦なく胸に突き刺さる。俺と彼女の間には、見えない壁がそびえ立っていた。いや、彼女が一方的に築き上げた壁だ。

俺は唇を噛み、何も言えずに俯いた。

昔は違った。王都の片隅で、俺たちはいつも一緒だった。俺が鑑定士の才能の芽を見せ始めた頃、彼女は自分のことのように喜んでくれた。「アレンはすごいね!」「いつかきっと、立派な鑑定士になって私を助けてね」。そう言って無邪気に笑っていた。

彼女が聖女としての類稀なる才能を見出され、神殿に引き取られてから、俺たちの道は分かれた。それでも、俺は王宮鑑定士になるために必死で勉強した。いつか彼女の隣に立てるように。彼女との約束を、果たすために。

だが、再会した彼女は別人だった。勇者パーティーの一員として王宮で顔を合わせた時、彼女は俺を一瞥しただけで、知らない人間のように通り過ぎた。その瞳には、かつての温かさなど欠片も残っていなかった。

「あなたがいると、パーティー全体の士気が下がります。魔物と戦うこともできず、ただ後ろで怯えているだけ。そんな姿を見せられて、誰が気持ちよく戦えるというのですか」

「俺は、罠の解除やアイテムの鑑定で……」

「そんなものは、魔術師のサラでも代用できます。あなたでなければならない理由など、どこにもないのですよ」

リリアの言葉は、俺の存在意義そのものを否定していた。俺が必死に磨いてきたスキルを、ガラクタだと言っているのと同じだった。

俺は顔を上げ、彼女の瞳をまっすぐに見つめた。そこにあるのは、純粋な軽蔑だけではない。もっと深く、暗い何か。まるで、俺という存在そのものを憎んでいるかのような、粘りつくような感情が渦巻いているように見えた。

なぜだ。俺が、彼女に何をしたというんだ。

「分かったら、自ら身を引くべきです。勇者様は情け深いお方ですから、ご自分からは言い出せないだけ。あなたがこれ以上、勇者様や私たちの足を引っ張るのは、見過ごせません」

彼女はそれだけ言うと、踵を返して仲間たちの元へ戻っていく。そして、ちょうど目を覚ました勇者レオに気づくと、先程までの冷徹な表情を消し去り、慈愛に満ちた聖女の微笑みを浮かべた。

「おはようございます、勇者様。昨夜はよくお休みになれましたか?」

「ああ、リリアか。おはよう。君の祈りのおかげで、疲れもすっかり取れたよ」

レオがリリアに向ける声は、俺に対するものとは比べ物にならないほど優しい。パーティーの仲間たちも次々と起き出し、リリアの周りには自然と人の輪ができる。彼女はその中心で、誰からも愛される聖女として振る舞っていた。

俺は、その光景を遠くからただ眺めることしかできない。

彼女の言う通りなのかもしれない。俺は、このパーティーに必要ない存在なのだ。俺がいることで、皆を不快にさせている。足を引っ張っている。

じわりと、胸の奥が冷たくなっていく。幼馴染だった彼女にここまで拒絶されて、俺がここに居続ける理由など、もうどこにも残っていないのかもしれない。

俺は再び俯き、冷たい石の床を見つめた。今日一日の探索が終われば、勇者に自分からパーティーを抜けると伝えよう。そう、心に決めた。

もう、疲れたのだ。誰からも必要とされない場所に、しがみついているのは。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

貴族に無茶苦茶なことを言われたのでやけくそな行動をしたら、戦争賠償として引き抜かれました。

詰んだ
ファンタジー
エルクス王国の魔法剣士で重鎮のキースは、うんざりしていた。 王国とは名ばかりで、元老院の貴族が好き勝手なこと言っている。 そしてついに国力、戦力、人材全てにおいて圧倒的な戦力を持つヴォルクス皇国に、戦争を仕掛けるという暴挙に出た。 勝てるわけのない戦争に、「何とか勝て!」と言われたが、何もできるはずもなく、あっという間に劣勢になった。 日を追うごとに悪くなる戦況に、キースへのあたりがひどくなった。 むしゃくしゃしたキースは、一つの案を思いついた。 その案を実行したことによって、あんなことになるなんて、誰も想像しなかった。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...