鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

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第25話:クールなエルフ

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スケルトンの墓所は、まるで俺たちのために用意された舞台のようだった。

俺が【万物解析】でダンジョンの構造と罠の位置を完全に把握し、ルナがその超人的な身体能力で、俺が見つけ出した弱点を正確に突く。この連携の前では、墓所を守るアンデッドたちはただの骨の塊に過ぎなかった。

「アレンさん、前方三メートル、床下から槍が飛び出します」

「了解だ。ルナ、壁を走って飛び越えろ」

「はいっ!」

ルナは軽やかに壁を蹴り、仕掛けられた罠の上を飛び越える。俺も、鑑定で見つけた安全なルートを通り、難なくそこを突破した。

道中、スケルトンアーチャーや、低級な呪いを放ってくるスケルトンメイジとも遭遇したが、結果は同じだった。弓兵は矢を番える前にルナのダガーで射手を失い、魔術師は詠唱を終える前に核を砕かれる。俺たちの攻略速度は、おそらくこのダンジョンに挑んだどのパーティーよりも速かっただろう。

「この調子なら、すぐに最深部まで行けそうだな」

「はい! アレンさんがいれば、どこへだって行けます!」

ルナは頼もしい言葉を返してくれた。彼女の顔には、この不気味なダンジョンにいるというのに、一点の曇りもない。

ダンジョンに足を踏み入れてから、およそ二時間。俺たちは地下三階層まで到達していた。この階層から、空気の流れが変わり、より濃密な死の気配が漂い始める。

その時だった。

「……音がする」

ルナがぴくりと猫耳を動かし、前方の通路の奥を指差した。彼女の鋭い聴覚が、何かを捉えたらしい。俺も耳を澄ますと、確かに微かな金属音が聞こえてきた。誰かが戦っている音だ。

「行ってみよう。だが、警戒は怠るな」

俺たちは音を殺し、慎重に通路を進んでいく。音は徐々に大きくなり、やがて開けた広大なホールへとたどり着いた。

そして、俺たちはその光景に息を呑んだ。

ホールの中心で、一人の女性が戦っていた。長く美しい緑色の髪をポニーテールにし、軽装ながらも機能的な革鎧を身にまとっている。その尖った耳は、彼女がエルフであることを示していた。

そして、彼女の戦いぶりは、壮絶の一言に尽きた。

彼女は、二十体はいるであろうスケルトンの大群に、たった一人で囲まれていた。だが、その状況をものともせず、手に持った黒い魔剣を嵐のように振るい、次々とスケルトンを粉砕していく。

その剣技は、洗練とは程遠い、荒々しく力に満ちたものだった。まるで、巨大な斧を振り回すかのように、魔剣の一撃がスケルトンの硬い骨をバターのように断ち切っていく。

「すごい……」

ルナが、感嘆の声を漏らした。俺も同感だった。彼女の実力は、俺たちがこれまで見てきたどの冒険者よりも、明らかに格上だ。

だが、俺は彼女の戦いぶりに、ある種の違和感を覚えていた。彼女の剣はあまりにも苛烈で、どこか自棄になっているように見える。そして、彼女が振るう黒い魔剣からは、禍々しい紫色のオーラが立ち上っていた。

俺は彼女に【万物解析】を使った。

【名称:シルフィ・グリーンウィンド】
【種族:エルフ】
【職業:魔剣士】
【レベル:35】
【状態:極度の消耗、生命力低下(微量)】
【スキル:魔剣術(Lv.6)、身体強化(Lv.4)】
【アレン・ウォーカーへの好感度:20/100(警戒/青色)】
【思考:『早く……早く終わらせないと、またこの剣が……仲間たちの命を吸ってしまう……!』】

レベル35。圧倒的な格上だ。だが、その状態は芳しくない。生命力が、剣を振るうたびに少しずつ削られているのが見えた。そして、彼女の思考。仲間……? 彼女は一人のはずだが。

その時、彼女の動きが一瞬鈍った。消耗が限界に近いのだ。スケルトンの一体が、その隙を見逃さなかった。錆びた剣が、シルフィの肩を浅く切り裂く。

「くっ……!」

シルフィが苦痛の声を漏らす。体勢を崩した彼女に、周囲のスケルトンが一斉に襲いかかった。まずい、このままではやられる。

俺は咄嗟に判断を下した。

「ルナ、加勢するぞ!」

「はい!」

俺たちは物陰から飛び出した。

「右翼の五体は俺が引き付ける! ルナは左翼を崩せ! 狙いは頭だ!」

突然現れた俺たちに、シルフィは驚愕の表情を浮かべた。だが、今はそれどころではない。

俺は聖水を塗り込んだ短剣で、スケルトンたちの攻撃を受け流し、注意を自分に引きつける。その間に、ルナは疾風となって敵陣に切り込んだ。

銀のダガーが閃き、スケルトンの頭蓋骨が次々と砕け散っていく。その効率的すぎる戦い方に、シルフィは目を見開いた。

「なっ……弱点を……!?」

彼女はすぐに我に返り、再び魔剣を構え直す。俺たちの出現で生まれた一瞬の隙が、彼女に体勢を立て直す時間を与えた。

そこからは、奇妙な共闘となった。

シルフィが魔剣の圧倒的な破壊力で正面の敵を薙ぎ払い、俺が鑑定で死角や敵の次の動きを読み、ルナがその指示に従って遊撃手のように立ち回る。俺たちの連携は、シルフィを巻き込むことで、さらに強力なものとなっていた。

数分後、あれだけいたスケルトンの大群は、一体残らず骨の山と化していた。

広間に、静寂が戻る。俺は息を整えながら、シルフィに向き直った。

「大丈夫か? 怪我は浅いようだが」

俺が声をかけると、彼女は俺たちを鋭い目で睨みつけた。その瞳には、感謝の色はなく、ただ強い警戒心だけが浮かんでいる。

「……余計なことを」

シルフィはそれだけ吐き捨てると、魔剣を鞘に収め、俺たちに背を向けた。

「待ってくれ。助けたつもりなんだが」

「頼んだ覚えはない。馴れ合うつもりもない」

その声は、氷のように冷たかった。彼女は一度も振り返ることなく、広間の奥へと続く通路へと歩いていく。その孤高の背中は、まるで他人を寄せ付けない、分厚い壁に覆われているようだった。

俺は、彼女が去っていく姿をただ見送ることしかできなかった。

「……なんだか、怖い人でしたね」

ルナが、少し怯えたように呟く。

「ああ。だが、ただ冷たいだけじゃない。何か、深い事情を抱えているようだ」

俺は、シルフィが握りしめていた黒い魔剣を思い出していた。鑑定で見た、彼女の消耗と、生命力の低下。そして、彼女の思考にあった『仲間たちの命を吸ってしまう』という言葉。

あの魔剣に、何か秘密がある。

俺の胸に、一つの強い興味と、そしてわずかな使命感のようなものが芽生えていた。あの孤高のエルフを、放ってはおけない。そんな気がした。
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