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第27話:彼女の過去
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俺の唐突な宣言に、シルフィは一瞬、虚を突かれたような顔をした。だが、すぐにその表情は険しいものに戻り、警戒に満ちた鋭い視線が俺を射抜いた。
「……何を、馬鹿なことを言っている」
絞り出すような声だった。その声には、長年の苦しみが滲んでいる。
「お前に何が分かる。この剣の呪いがどれほど根深く、絶望的なものか……。これまで何人もの高名な神官や賢者が匙を投げてきた。それを、どこの馬の骨とも知れないお前が解けるとでも?」
彼女の言葉は刃のように鋭い。だが、それは他人を拒絶するためだけの棘ではなく、自分自身を守るための鎧のように感じられた。これ以上、期待して裏切られることに彼女は耐えられないのだ。
「あんたの過去も事情も知らない。だが、この剣があんたを苦しめていることだけは分かる」
俺は一歩彼女に近づいた。シルフィは無意識に後ずさり、魔剣の柄を強く握りしめる。
「俺のスキルは、物事の本質を見抜く力だ。だから分かる。その剣はあんたの命を啜り、あんたが大切に思う者の命すら糧にする。違うか?」
俺が核心を突くと、シルフィの呼吸がわずかに乱れた。図星だったのだ。誰にも話したことのない、自分だけの秘密。それを、出会ったばかりの俺がなぜか知っている。その事実に、彼女は激しく動揺していた。
「……どうして……」
「言ったはずだ。俺には分かると」
俺は彼女の心の壁をこじ開けるように、真っ直ぐに彼女の瞳を見つめた。その奥に揺らめいているのは、諦めと、そしてほんのわずかな救いを求める光だった。
隣にいたルナがおずおずと口を開いた。
「あの……シルフィさん。アレンさんは、本当にすごい人なんです。私のことも……助けてくれました。だから、信じてあげてほしいです」
ルナの純粋な言葉が、シルフィの頑なな心を少しだけ揺さぶったようだった。彼女はルナと俺の顔を交互に見比べ、やがて何かを諦めたように、ふっと肩の力を抜いた。
彼女は近くの石柱にゆっくりと背を預け、ずるずるとその場に座り込んだ。極度の消耗で、もう立っているのも限界なのだろう。
「……昔、私にも仲間がいた」
ぽつりと、シルフィは語り始めた。それは誰に聞かせるでもない、独り言のような呟きだった。
「私を含め、四人のパーティーだった。皆、未熟だったけど、夢と希望に溢れていた。……家族のような、大切な仲間たちだった」
彼女の目は、遠い過去を見つめていた。その表情には懐かしさと、そして深い痛みが浮かんでいる。
「ある日、偶然この魔剣を手に入れた。その力は絶大で、私は有頂天になった。これさえあれば、どんな敵からも仲間を守れる、と。……馬鹿だった」
自嘲するような笑みが、彼女の唇に浮かぶ。
「最初は良かった。どんな強敵もこの剣の前では無力だったから。でも、戦いが続くうちに仲間たちがおかしくなっていった。原因不明の病のように、日に日に衰弱していったんだ。どんな回復魔法も、どんな薬も効かなかった」
彼女の声が微かに震え始める。
「そして、気づいた。原因がこの剣にあることに。私が剣を振るうたびに、仲間たちの生命力が奪われていたことに……。私が、仲間たちを殺しかけていたんだ」
その告白はあまりにも痛々しかった。彼女は仲間を守るために手にした力で、その仲間自身を蝕んでいたのだ。これ以上の皮肉はない。
「私は……怖くなった。このままでは皆を殺してしまう。だから、私は……逃げたんだ。何も言わずに彼らの元から姿を消した。彼らが私を憎むように。二度と、私を探さないように」
シルフィは顔を伏せ、その緑色の髪が彼女の表情を隠した。だが、彼女の肩が小刻みに震えているのが俺には見えた。
「それ以来、私はずっと一人だ。誰とも馴れ合わず、誰のことも仲間だと思わないようにしてきた。そして、いつかこの呪いを解き、彼らに謝るために……一人でその方法を探し続けてきた。……だが、何の手がかりも見つからないまま……」
彼女の言葉は、そこで途切れた。長い沈黙が広間に落ちる。
俺もルナも、かける言葉が見つからなかった。彼女が背負ってきた孤独と後悔は、俺たちの想像を絶するほどに重い。
やがて、ルナがそっとシルフィの隣に寄り添い、その冷たい手を自分の小さな両手で包み込んだ。
「……辛かったんですね」
ルナの瞳には涙が浮かんでいた。奴隷として理不尽な苦しみを味わってきた彼女だからこそ、シルフィの孤独が痛いほど分かるのかもしれない。
シルフィは、ルナの温かい手に驚いたように、びくりと肩を震わせた。だが、その手を振り払うことはしなかった。
俺は静かに二人の前に膝をついた。
「あんたの覚悟は分かった。だが、一人で抱え込むのはもう終わりにしろ」
俺は決意を込めた目で、シルフィを見据えた。
「あんたが仲間を大切に思う気持ちは本物だ。だからこそ、その呪いを解かなければならない。俺が必ずその方法を見つけ出してやる。そして、あんたがもう一度仲間たちの元へ帰れるようにしてやる」
俺の言葉に嘘はなかった。【万物解析】があれば、どんな難題にも必ず突破口はあるはずだ。
シルフィはゆっくりと顔を上げた。その美しいエルフの顔は涙で濡れていた。彼女は俺の顔をじっと見つめ、何かを確かめるように、その奥にあるものを見透かそうとしているようだった。
やがて彼女は諦めたように、しかしどこか安堵したように小さく息を吐いた。
「…………好きにすればいい」
それは彼女なりの最大限の肯定の言葉だった。
俺たちと孤高のエルフの間に、一つの奇妙で、そして確かな繋がりが生まれた瞬間だった。
「……何を、馬鹿なことを言っている」
絞り出すような声だった。その声には、長年の苦しみが滲んでいる。
「お前に何が分かる。この剣の呪いがどれほど根深く、絶望的なものか……。これまで何人もの高名な神官や賢者が匙を投げてきた。それを、どこの馬の骨とも知れないお前が解けるとでも?」
彼女の言葉は刃のように鋭い。だが、それは他人を拒絶するためだけの棘ではなく、自分自身を守るための鎧のように感じられた。これ以上、期待して裏切られることに彼女は耐えられないのだ。
「あんたの過去も事情も知らない。だが、この剣があんたを苦しめていることだけは分かる」
俺は一歩彼女に近づいた。シルフィは無意識に後ずさり、魔剣の柄を強く握りしめる。
「俺のスキルは、物事の本質を見抜く力だ。だから分かる。その剣はあんたの命を啜り、あんたが大切に思う者の命すら糧にする。違うか?」
俺が核心を突くと、シルフィの呼吸がわずかに乱れた。図星だったのだ。誰にも話したことのない、自分だけの秘密。それを、出会ったばかりの俺がなぜか知っている。その事実に、彼女は激しく動揺していた。
「……どうして……」
「言ったはずだ。俺には分かると」
俺は彼女の心の壁をこじ開けるように、真っ直ぐに彼女の瞳を見つめた。その奥に揺らめいているのは、諦めと、そしてほんのわずかな救いを求める光だった。
隣にいたルナがおずおずと口を開いた。
「あの……シルフィさん。アレンさんは、本当にすごい人なんです。私のことも……助けてくれました。だから、信じてあげてほしいです」
ルナの純粋な言葉が、シルフィの頑なな心を少しだけ揺さぶったようだった。彼女はルナと俺の顔を交互に見比べ、やがて何かを諦めたように、ふっと肩の力を抜いた。
彼女は近くの石柱にゆっくりと背を預け、ずるずるとその場に座り込んだ。極度の消耗で、もう立っているのも限界なのだろう。
「……昔、私にも仲間がいた」
ぽつりと、シルフィは語り始めた。それは誰に聞かせるでもない、独り言のような呟きだった。
「私を含め、四人のパーティーだった。皆、未熟だったけど、夢と希望に溢れていた。……家族のような、大切な仲間たちだった」
彼女の目は、遠い過去を見つめていた。その表情には懐かしさと、そして深い痛みが浮かんでいる。
「ある日、偶然この魔剣を手に入れた。その力は絶大で、私は有頂天になった。これさえあれば、どんな敵からも仲間を守れる、と。……馬鹿だった」
自嘲するような笑みが、彼女の唇に浮かぶ。
「最初は良かった。どんな強敵もこの剣の前では無力だったから。でも、戦いが続くうちに仲間たちがおかしくなっていった。原因不明の病のように、日に日に衰弱していったんだ。どんな回復魔法も、どんな薬も効かなかった」
彼女の声が微かに震え始める。
「そして、気づいた。原因がこの剣にあることに。私が剣を振るうたびに、仲間たちの生命力が奪われていたことに……。私が、仲間たちを殺しかけていたんだ」
その告白はあまりにも痛々しかった。彼女は仲間を守るために手にした力で、その仲間自身を蝕んでいたのだ。これ以上の皮肉はない。
「私は……怖くなった。このままでは皆を殺してしまう。だから、私は……逃げたんだ。何も言わずに彼らの元から姿を消した。彼らが私を憎むように。二度と、私を探さないように」
シルフィは顔を伏せ、その緑色の髪が彼女の表情を隠した。だが、彼女の肩が小刻みに震えているのが俺には見えた。
「それ以来、私はずっと一人だ。誰とも馴れ合わず、誰のことも仲間だと思わないようにしてきた。そして、いつかこの呪いを解き、彼らに謝るために……一人でその方法を探し続けてきた。……だが、何の手がかりも見つからないまま……」
彼女の言葉は、そこで途切れた。長い沈黙が広間に落ちる。
俺もルナも、かける言葉が見つからなかった。彼女が背負ってきた孤独と後悔は、俺たちの想像を絶するほどに重い。
やがて、ルナがそっとシルフィの隣に寄り添い、その冷たい手を自分の小さな両手で包み込んだ。
「……辛かったんですね」
ルナの瞳には涙が浮かんでいた。奴隷として理不尽な苦しみを味わってきた彼女だからこそ、シルフィの孤独が痛いほど分かるのかもしれない。
シルフィは、ルナの温かい手に驚いたように、びくりと肩を震わせた。だが、その手を振り払うことはしなかった。
俺は静かに二人の前に膝をついた。
「あんたの覚悟は分かった。だが、一人で抱え込むのはもう終わりにしろ」
俺は決意を込めた目で、シルフィを見据えた。
「あんたが仲間を大切に思う気持ちは本物だ。だからこそ、その呪いを解かなければならない。俺が必ずその方法を見つけ出してやる。そして、あんたがもう一度仲間たちの元へ帰れるようにしてやる」
俺の言葉に嘘はなかった。【万物解析】があれば、どんな難題にも必ず突破口はあるはずだ。
シルフィはゆっくりと顔を上げた。その美しいエルフの顔は涙で濡れていた。彼女は俺の顔をじっと見つめ、何かを確かめるように、その奥にあるものを見透かそうとしているようだった。
やがて彼女は諦めたように、しかしどこか安堵したように小さく息を吐いた。
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