鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

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第30話:月光草を求めて

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スケルトンの墓所を完全に攻略した俺たちは、街の英雄として再び盛大な歓迎を受けた。ギルドマスターは俺たちの功績を最大級に称賛し、約束の報酬に加えて異例の特別ボーナスまで支給してくれた。俺たちの懐は、もはや新人冒ENTURE者のそれとはかけ離れたものになっていた。

「すごいじゃない、アレンさんたち! もうBランクへの昇格も夢じゃないわ!」

ギルドの受付でミリーが興奮気味に言った。俺たちのパーティーランクは、この一件で一気にEランクからDランクへと昇格した。異例のスピード出世だった。

街の人々からの称賛と、ギルドからの評価。追放された頃には考えられなかった状況に、俺は少し戸惑いながらも確かな手応えを感じていた。

だが、俺たちの本当の目的はここからだった。

その日の夜、俺たちは宿屋の一室に集まっていた。シルフィも渋々といった体だったが、俺たちの部屋を訪れていた。

「さて、本題に入ろうか」

俺はテーブルの上に、解呪に必要な材料を書き出した羊皮紙を広げた。

一つ、『迷いの森』の最奥に咲く、精霊の祝福を受けた月光草。
一つ、『聖なる泉』から湧き出る浄化の水。
一つ、呪いを浄化した、術者自身の純粋な血。

「まずは、この『迷いの森』からだ。場所は分かるのか?」

俺が尋ねると、シルフィは難しい顔で頷いた。

「名前だけは聞いたことがある。ラトナからさらに東へ、馬車で三日ほど行った先にある広大な原生林だ。その名の通り、一度入れば二度と出られないと噂の魔の森……」

その表情は楽観からは程遠い。

「その森の最奥に、本当にそんな都合のいい草があるという保証はどこにもない。お前のその『力』とやらが間違っている可能性はないのか?」

シルフィの疑念はもっともだった。だが、俺は自信を持って首を振った。

「俺のスキルは真実しか示さない。必ずある」

俺の断言に、シルフィはそれ以上何も言わなかった。

「よし、決まりだな。明日、すぐに出発する。準備を整えておいてくれ」

俺がそう締めくると、シルフィは小さく頷き、無言で部屋を出ていった。その背中を見送りながら、ルナが少し心配そうに俺を見上げた。

「アレンさん、大丈夫でしょうか。あの人、まだ私たちのことを完全に信じてくれているわけでは……」

「ああ、大丈夫だ。彼女はただ、希望を持つのが怖いだけなんだ。俺たちが、その希望が本物だって証明してやればいい」

俺はルナの頭を優しく撫でた。彼女はこくりと頷き、俺に信頼の眼差しを向けてくれた。

翌日、俺たちは旅の準備を整え、街の東門から出発した。これまでの冒険とは違う、明確な『誰かを救う』という目的を持った旅だ。

乗り合い馬車を乗り継ぎ、三日後、俺たちはついに『迷いの森』の入り口にたどり着いた。そこはシルフィの言葉通り、昼間だというのに薄暗く、不気味な雰囲気を漂わせる巨大な森だった。木々が異常なほど密集して生い茂り、まるで生き物のように蠢いているようにさえ見える。

「ここが……迷いの森」

シルフィがごくりと唾を飲む。彼女ほどの冒険者でさえ、この森が放つ異様な雰囲気には気圧されているようだった。

「噂では、この森には幻惑の魔法がかけられていて方向感覚を狂わせるらしい。だから誰も奥までたどり着けないと……」

「なるほどな」

俺は頷き、森の入り口に意識を集中させた。

【万物解析】。

脳内に森全体の構造と、そこにかけられた魔法の詳細が流れ込んでくる。

【名称:迷いの森(古代エルフの結界)】
【効果:侵入者の五感を惑わし、同じ場所を永久に彷徨わせる広域幻術魔法。物理的な地図やコンパスは効果をなさない】
【結界の弱点:森の魔力は、特定の『流れ』に沿って循環している。その流れに逆らわず、身を任せることで幻術の影響を受けずに中心部へ到達することが可能】

「……なるほど、そういうことか」

俺はにやりと笑った。普通の人間には感知できない魔力の流れ。だが、俺のスキルは、その流れをまるで風の流れのようにはっきりと可視化していた。青白い光の川が、森の奥へと向かって緩やかに流れている。

「どうした? 何か分かったのか?」

シルフィが訝しげに尋ねる。

「ああ。この森の幻術を無効化する方法がな」

俺は自信満々に言った。

「いいか、二人とも。これから絶対に俺から離れるな。俺が歩いた、その一歩後ろを正確についてくるんだ。そうすれば道に迷うことはない」

俺の言葉に、シルフィは半信半疑といった表情を浮かべた。だが、今は俺に従うしか選択肢はない。

俺は先頭に立ち、スキルが見せる魔力の流れに沿って森の中へと足を踏み入れた。

森の中は想像以上に奇妙な空間だった。歩いても歩いても、景色が全く変わらないように見える。同じ形の木、同じ形の岩が何度も目の前に現れる。これが幻術か。確かに、これでは方向感覚を失うのも無理はない。

だが、俺には進むべき道がはっきりと見えていた。

「本当にこっちで合っているのか……? さっきから、同じ場所をぐるぐる回っているようにしか思えないんだが」

シルフィが不安そうな声を漏らす。

「黙ってついてこい。信じられないならここで待っていてもいいぞ」

俺が突き放すように言うと、彼女は悔しそうに唇を噛み、黙って俺の後ろをついてきた。

ルナだけは、何の疑いもなく俺のすぐ後ろをぴったりとついて歩いている。その絶対的な信頼が、俺の心を強く支えてくれていた。

どれくらい歩いただろうか。体感では半日ほど歩いた気がする。森の景色は相変わらず代わり映えしない。シルフィの表情にも焦りの色が濃くなってきた。

だが、その時だった。

不意に、周囲の空気が変わった。これまで漂っていた不気味な雰囲気が消え、代わりに清らかで神聖な気配が満ち始めたのだ。

そして、目の前の景色が、まるでカーテンが開くようにがらりと変わった。

俺たちの目の前には、小さな開けた空間が広がっていた。そこはまるで森の中の聖域のように、柔らかな光に満ち溢れている。そして、その中央に一本のひときわ美しい植物が生えていた。

それは月光草だった。だが、俺たちがこれまで見てきたどの月光草とも違う。その花びらはまるで銀でできているかのようにキラキラと輝き、周囲に淡い光の粒子を振りまいていた。

【名称:精霊の月光草(フェアリー・ムーンハーブ)】
【等級:神聖級】
【効果:あらゆる呪いを浄化し、生命力を活性化させる奇跡の薬草。精霊の祝福を受けているため、その力は絶大】

「……あったぞ」

俺が呟くと、シルフィは信じられないといった表情で、その光景を呆然と見つめていた。

「嘘だ……本当に、あったなんて……」

彼女の瞳から、ぽろりと一筋の涙がこぼれ落ちた。長年探し求めてきた希望が、今、確かに目の前にある。その事実に、彼女の感情が追いついていないようだった。

俺たちは解呪への第一歩を、確かに踏み出したのだ。幻惑の森は、俺たちの前ではもはやただの森に過ぎなかった。
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