鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

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第48話:辺境への来訪者

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リリアの強い意志と、ガストン、サラの賛同。そして何より、パーティーの機能不全という切実な問題。それらの要因が重なり、ついに勇者レオもアレンを連れ戻すという案を、渋々ながら承諾せざるを得なくなった。
彼のプライドはズタズタだったが、このまま無様に落ちぶれていくよりはマシだと、そう判断したのだ。
「いいだろう。辺境へ行く」
パーティーの会議の席で、レオは苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「だが、勘違いするな。俺はあいつに頭を下げに行くわけじゃない。勇者として、道を踏み外した元仲間を正しい道へ連れ戻しに行く。ただ、それだけだ」
相変わらずの傲慢な言い草だった。だが、もはや誰もその言葉を咎めない。目的は一つ。アレンをパーティーに復帰させること。そのために、彼らは再び一つになった――ように見えた。

彼らは旅の準備を整え、王都を立った。目的地は辺境都市ラトナ。馬を乗り継ぎ、最短ルートで向かっても十日はかかる長旅だ。
道中、パーティー内の雰囲気は奇妙なものだった。アレンを連れ戻すという共通の目的があるにもかかわらず、そこには以前のような仲間としての連帯感はない。
レオは、終始不機嫌な顔で馬を駆り、必要最低限のことしか口にしない。
ガストンは、アレンにどう謝罪すべきか一人でぶつぶつと呟いている。
サラは、どこか面白そうにこの状況を傍観しているようだった。
そしてリリアは、静かな表情の下でアレンとの再会を、期待と不安の入り混じった感情で待ち焦がれていた。

彼らがラトナに到着したのは、出発してから十一日目の昼過ぎだった。
初めて見る辺境の街並みに、彼らは少なからず驚きを隠せなかった。
「……ここがラトナか。思ったより活気があるな」
レオが、意外そうな声を漏らす。彼が想像していたのは、もっと寂れた荒涼とした場所だったのだ。だが、目の前に広がるのは多くの人々が行き交い、力強い活気に満ちた街だった。
「ガルド商会の支店まであるとはな。どうやら噂は本当らしい」
ガストンが、街の立派な建物を指差しながら言った。
彼らは、自分たちがアレンを見捨てた場所がこれほどまでに発展しているという事実に、どこか居心地の悪さを感じていた。

彼らはまず、冒険者ギルドへと向かった。アレンの情報を得るには、それが一番手っ取り早いと考えたからだ。
ギルドの扉を開けると、中の冒険者たちが一斉に彼らに注目した。その視線には、驚きと、そして強い警戒の色が浮かんでいる。
無理もなかった。彼らの出で立ちは辺境の冒険者とは明らかに違う。ミスリル銀で輝く勇者の鎧、純白の聖女のローブ。彼らがただ者ではないことは、誰の目にも明らかだった。
カウンターにいたミリーが、緊張した面持ちで彼らを出迎えた。
「よ、ようこそ、ラトナの冒険者ギルドへ。皆様、どのようなご用件で……?」
「『アルカディア』というパーティーを探している」
レオが尊大な態度で言った。
「そのリーダーである、アレン・ウォーカーという男に用がある」
その名前が出た瞬間、ギルド内の空気がピリッと張り詰めたのが分かった。ミリーの表情もわずかに硬くなる。
アレンは、もはやこの街ではただの冒険者ではない。街を救った英雄であり、多くの冒険者仲間から慕われる中心的な存在なのだ。
ミリーはプロフェッショナルな笑顔を崩さずに答えた。
「アルカディアの皆さんでしたら、おそらくご自宅にいらっしゃるかと。街の西地区に最近、立派なお屋敷を建てられましたので」
「……屋敷、だと?」
レオの眉がぴくりと動いた。追放した時にはなけなしの金しか持っていなかったはずの男が、屋敷を建てた? その事実は、レオのプライドをさらに刺激した。

ミリーから屋敷の場所を聞き出すと、彼らはギルドを後にした。背後で、冒険者たちがひそひそと噂話をしているのが聞こえる。
「おい、今のって王都の勇者様一行じゃねえか?」
「なんで、あんな大物たちがアレンさんを訪ねて……?」
「何か、面倒なことにならなきゃいいがな……」
勇者パーティーはそんな囁き声には構わず、アレンの屋敷へと向かった。
やがて彼らの目の前に、一軒の立派な石造りの屋敷が現れた。安宿暮らしの彼らの拠点とは比べ物にならないほど、大きく堂々とした建物だ。
屋敷の門の前で、彼らは足を止めた。ここに来るまでは勢いがあった。だが、いざアレンと顔を合わせるとなると、それぞれの胸に複雑な感情が渦巻く。
リリアは心臓が早鐘のように鳴っているのを感じていた。
会いたい。でも、会うのが怖い。
どんな顔をして、彼に会えばいいのだろう。
彼女が逡巡していると、レオが痺れを切らしたように屋敷の重厚な扉を乱暴に叩いた。
ドンドン、と無遠慮な音が響き渡る。
やがて扉がゆっくりと開き、中から一人の少女が顔を出した。
銀色の髪に、猫の耳。天真爛漫な笑顔を浮かべた、可憐な獣人の少女。
ルナだった。
「はい、どなたですかー?」
彼女は屈託のない声で尋ねた。そして、目の前に立つ物々しい雰囲気の一行を見て、少しだけ首を傾げた。
その時、屋敷の奥から、聞き慣れた、しかし以前よりもずっと落ち着いた芯のある声が聞こえてきた。
「どうしたんだ、ルナ? 誰か来たのか?」
声と共に、一人の青年が姿を現した。
簡素だが仕立ての良い服を身にまとい、その表情にはかつてのような卑屈さや怯えの色は微塵もなかった。そこにあるのは自信と、そして穏やかな優しさだけだ。
それは紛れもなく、彼らが探し求めていた男――アレン・ウォーカーの姿だった。
アレンは扉の前に立つ元仲間たちの姿を認めると、ほんの少しだけ目を見開いた。
だが、その表情はすぐに、何もかもを見透かしたような静かな微笑へと変わった。
「……やあ。久しぶりだね、勇者様御一行。こんな辺境まで、一体、何の用かな?」
その声には皮肉も怒りもなかった。ただ、絶対的な強者の持つ揺るぎない余裕だけが、そこにはあった。
再会の瞬間。それは、彼らが想像していたよりもずっと静かに、そして残酷に訪れた。
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