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第49話:横柄な要求
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アレンの、あまりにも落ち着き払った態度。それは勇者パーティーの四人にとって予想外のものだった。彼らはアレンが驚き、動揺し、あるいは怯える姿をどこかで想像していたのかもしれない。だが、目の前に立つ青年は、彼らの知るあの気弱な鑑定士とはまるで別人だった。
「アレン……!」
最初に声を発したのはリリアだった。彼女は思わず一歩前に踏み出していた。懐かしさと後悔と、そして再会できた喜び。様々な感情がごちゃ混ぜになって彼女の胸を締め付ける。
だが、アレンの視線はリリアを一瞥しただけで、すぐにパーティーリーダーであるレオへと向けられた。
「それで、何の用かな。わざわざ王都からこんな辺境まで。観光に来たわけでは、ないんだろう?」
その言葉には明確な拒絶の響きがあった。
レオは、アレンのその尊大な態度にカッと頭に血が上るのを感じた。追放したはずの『役立たず』に、なぜ自分が見下されなければならないのか。
彼は自分がここに来た目的を思い出し、努めて冷静に、そして威厳のある声を作った。
「アレン・ウォーカー。単刀直入に言おう。お前をパーティーに呼び戻しに来た」
その言葉は、まるで命令のようだった。
「お前も元は我々の仲間だった男だ。我々が今、少しばかり苦境にあるのを見て見ぬふりをするのは、騎士道にもとる行いではないかな?」
レオは自分が絶対的な『正義』であると信じて疑っていなかった。だから彼の言葉には反省も謝罪の色も微塵もなかった。
「お前が戻ってくれば全てが元通りになる。我々は再び魔王を討った勇者パーティーとして王国のために尽力することができる。お前にとっても悪い話ではないはずだ。辺境でくすぶっているより、王都で勇者の一員として働く方がよほど名誉なことだろう」
それは交渉ではなかった。ただの横柄な要求だった。
アレンは、その言葉を静かな表情で聞いていた。そして、全てを聞き終えると、ふっと、まるで心底おかしいといったように息を漏らした。
「……ははっ」
乾いた笑い声が屋敷の前に響く。
「名誉、か。面白いことを言う。君たちが俺に与えてくれたのは、名誉などではなく『役立たず』という烙印と、なけなしの金だけだったと記憶しているが?」
アレンの瞳が初めて鋭い光を帯びた。
「君たちは俺を必要としなかった。だから捨てたんだろう? なのに今更どの口が、俺に戻ってこいと言うんだ?」
その言葉はレオのプライドを容赦なく抉った。
「ぐっ……! 貴様、誰に向かって口を利いている! 俺は勇者だぞ!」
「ああ、知っているさ。魔王を倒した偉大な勇者様だ。だが、それは俺に何の関係がある? 俺はもう君のパーティーの一員でも、王宮の鑑定士でもない。ただの辺境の冒険者だ」
アレンはきっぱりと言い切った。
「それに……」
彼は自分の後ろに立つルナの頭を優しく撫でた。そして、屋敷の奥から様子を窺うように顔を出したシルフィとフィオナに、穏やかな視線を送った。
「今の俺には守るべき大切な仲間たちがいる。俺の居場所はここだ。君たちの元へ戻る気など毛頭ない」
それは、揺るぎようのない決別の宣言だった。
レオは怒りで顔を真っ赤にし、わなわなと震えている。まさかアレンがここまで明確に、そして堂々と自分を拒絶するとは夢にも思っていなかったのだ。
「……ふざけるな! お前には俺たちを助ける義務がある! それが王国に生きる民としての務めだろうが!」
もはや彼の言葉は支離滅裂だった。
「義務? 俺にそんなものを語る資格が、君たちにあるのか?」
アレンの冷たい声がレオの言葉を切り捨てる。
「俺が本当に困っていた時、君たちは誰一人として俺に手を差し伸べてはくれなかった。それなのに自分たちが困ったからといって助けを求めるのは、あまりにも身勝手すぎるんじゃないか?」
正論だった。ぐうの音も出ないほどの完璧な正論。
レオは言葉を失った。
ガストンはバツが悪そうに俯き、サラはやれやれといったように小さくため息をついた。
そして、リリアは。
彼女は目の前で繰り広げられる光景をただ呆然と見つめていた。アレンが自分たちのことをもはや仲間だとは微塵も思っていないという、残酷な現実。
そして、彼が自分ではない他の少女たちを『大切な仲間』と呼び、慈しむように見つめているという事実。
その光景が彼女の心を嫉妬の炎で焼き尽くしていく。
「……アレン」
リリアが震える声で彼の名前を呼んだ。
「お願い……戻ってきて。私が……私が間違っていたわ。だから……」
彼女は初めて謝罪の言葉を口にした。だが、それはあまりにも遅すぎた。
アレンはリリアに同情的な視線を向けたが、その決意は少しも揺らがなかった。
「……すまない、リリア。もう昔のようには戻れないんだ」
その言葉はリリアの心に、とどめの一撃として深く、深く突き刺さった。
勇者パーティーの、傲慢で虫の良い要求は、アレンの揺るぎない決意の前に木っ端微塵に砕け散ったのだった。
「アレン……!」
最初に声を発したのはリリアだった。彼女は思わず一歩前に踏み出していた。懐かしさと後悔と、そして再会できた喜び。様々な感情がごちゃ混ぜになって彼女の胸を締め付ける。
だが、アレンの視線はリリアを一瞥しただけで、すぐにパーティーリーダーであるレオへと向けられた。
「それで、何の用かな。わざわざ王都からこんな辺境まで。観光に来たわけでは、ないんだろう?」
その言葉には明確な拒絶の響きがあった。
レオは、アレンのその尊大な態度にカッと頭に血が上るのを感じた。追放したはずの『役立たず』に、なぜ自分が見下されなければならないのか。
彼は自分がここに来た目的を思い出し、努めて冷静に、そして威厳のある声を作った。
「アレン・ウォーカー。単刀直入に言おう。お前をパーティーに呼び戻しに来た」
その言葉は、まるで命令のようだった。
「お前も元は我々の仲間だった男だ。我々が今、少しばかり苦境にあるのを見て見ぬふりをするのは、騎士道にもとる行いではないかな?」
レオは自分が絶対的な『正義』であると信じて疑っていなかった。だから彼の言葉には反省も謝罪の色も微塵もなかった。
「お前が戻ってくれば全てが元通りになる。我々は再び魔王を討った勇者パーティーとして王国のために尽力することができる。お前にとっても悪い話ではないはずだ。辺境でくすぶっているより、王都で勇者の一員として働く方がよほど名誉なことだろう」
それは交渉ではなかった。ただの横柄な要求だった。
アレンは、その言葉を静かな表情で聞いていた。そして、全てを聞き終えると、ふっと、まるで心底おかしいといったように息を漏らした。
「……ははっ」
乾いた笑い声が屋敷の前に響く。
「名誉、か。面白いことを言う。君たちが俺に与えてくれたのは、名誉などではなく『役立たず』という烙印と、なけなしの金だけだったと記憶しているが?」
アレンの瞳が初めて鋭い光を帯びた。
「君たちは俺を必要としなかった。だから捨てたんだろう? なのに今更どの口が、俺に戻ってこいと言うんだ?」
その言葉はレオのプライドを容赦なく抉った。
「ぐっ……! 貴様、誰に向かって口を利いている! 俺は勇者だぞ!」
「ああ、知っているさ。魔王を倒した偉大な勇者様だ。だが、それは俺に何の関係がある? 俺はもう君のパーティーの一員でも、王宮の鑑定士でもない。ただの辺境の冒険者だ」
アレンはきっぱりと言い切った。
「それに……」
彼は自分の後ろに立つルナの頭を優しく撫でた。そして、屋敷の奥から様子を窺うように顔を出したシルフィとフィオナに、穏やかな視線を送った。
「今の俺には守るべき大切な仲間たちがいる。俺の居場所はここだ。君たちの元へ戻る気など毛頭ない」
それは、揺るぎようのない決別の宣言だった。
レオは怒りで顔を真っ赤にし、わなわなと震えている。まさかアレンがここまで明確に、そして堂々と自分を拒絶するとは夢にも思っていなかったのだ。
「……ふざけるな! お前には俺たちを助ける義務がある! それが王国に生きる民としての務めだろうが!」
もはや彼の言葉は支離滅裂だった。
「義務? 俺にそんなものを語る資格が、君たちにあるのか?」
アレンの冷たい声がレオの言葉を切り捨てる。
「俺が本当に困っていた時、君たちは誰一人として俺に手を差し伸べてはくれなかった。それなのに自分たちが困ったからといって助けを求めるのは、あまりにも身勝手すぎるんじゃないか?」
正論だった。ぐうの音も出ないほどの完璧な正論。
レオは言葉を失った。
ガストンはバツが悪そうに俯き、サラはやれやれといったように小さくため息をついた。
そして、リリアは。
彼女は目の前で繰り広げられる光景をただ呆然と見つめていた。アレンが自分たちのことをもはや仲間だとは微塵も思っていないという、残酷な現実。
そして、彼が自分ではない他の少女たちを『大切な仲間』と呼び、慈しむように見つめているという事実。
その光景が彼女の心を嫉妬の炎で焼き尽くしていく。
「……アレン」
リリアが震える声で彼の名前を呼んだ。
「お願い……戻ってきて。私が……私が間違っていたわ。だから……」
彼女は初めて謝罪の言葉を口にした。だが、それはあまりにも遅すぎた。
アレンはリリアに同情的な視線を向けたが、その決意は少しも揺らがなかった。
「……すまない、リリア。もう昔のようには戻れないんだ」
その言葉はリリアの心に、とどめの一撃として深く、深く突き刺さった。
勇者パーティーの、傲慢で虫の良い要求は、アレンの揺るぎない決意の前に木っ端微塵に砕け散ったのだった。
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