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第60話:その名は『アルカディア』
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白亜の壁がラトナの青い空に映え、いくつもの尖塔が天を突くようにそびえ立つ。それはもはやギルドハウスというより、小規模な城砦と呼ぶにふさわしい威容を誇っていた。
「……すごい」
俺たちの新しい拠点を前に、ルナが感嘆の声を漏らした。その瞳は、完成したばかりの我が家を夢見るような表情で見上げている。
「本当に建ててしまいましたのね、先生……。私たちだけの、お城を」
フィオナもまた、感極まった様子で胸に手を当てていた。
「フン。まあ、悪くない出来だな」
シルフィは腕を組み、そっぽを向きながらもその口元には隠しきれない満足の色が浮かんでいた。
俺たちはドワーフの棟梁に案内され、完成したばかりのギルドハウスの内部を見て回った。
一階は、多くの冒険者が集えるよう設計された広大なホールと、本格的な厨房を備えた酒場だ。壁には依頼を貼るための巨大な掲示板が設置され、奥にはミリーが見たら羨ましがるであろう機能的な受付カウンターが鎮座している。
地下には俺が最もこだわった錬金術工房と、シルフィが望んだ本格的な鍛錬場。防音と防爆の魔法が付与されており、フィオナがどんな大魔法を暴発させてもびくともしない設計だ。
そして二階と三階は、俺たちのプライベートな居住空間と、将来ギルドメンバーが増えた時のための清潔で快適な個室がずらりと並んでいる。俺の部屋のバルコニーからは、ラトナの街並みを一望できた。
「ここが……今日から、私たちの家……」
ルナが嬉しそうに呟く。その言葉に、俺の胸も熱くなった。追放され、全てを失った俺が、こんなにも立派な『帰る場所』を手に入れることができるなんて、あの頃は想像もできなかった。
一通り内部を見て回り、俺たちが再び正面玄関の前に立った時、ドワーフの棟梁が彼の弟子たちと共に一枚の立派な木製の看板を運んできた。
素材は、森の主とも呼ばれる千年樹の樫だという。その表面は鏡のように滑らかに磨き上げられ、まだ何も刻まれていない。
「旦那。あんたたちのギルドの名前は、なんてえんだ? 俺たちの最後の仕事として、この看板に魂を刻み込んでやる」
棟梁の言葉に、俺は集まってくれた仲間たちと、そして遠巻きに見守ってくれている街の人々に向き直った。
俺は一度深く息を吸い込み、そして、ずっと胸に秘めていた名前を高らかに告げた。
「このギルドの名前は……『アルカディア』だ」
その聞き慣れない言葉に、人々は少しざわめいた。シルフィとフィオナは、その言葉の持つ意味に気づいたのか、はっとした表情で俺を見る。
俺は続けた。
「アルカディアは、古い言葉で『理想郷』を意味する」
俺は、そこにいる全員に語りかけるように、その名に込めた想いを語り始めた。
「俺は、かつて居場所を失った。誰からも必要とされず、ただ一人で絶望していた。ここにいる俺の仲間たちも、それぞれが孤独や理不尽な苦しみを抱えていたはずだ」
俺の言葉に、ルナ、シルフィ、フィオナは静かに頷いた。
「だから、作りたかったんだ。そんな、かつての俺たちのような奴らが安心して帰ってこられる場所を。才能がありながら燻っている者が、その翼を広げられる場所を。誰もが互いを認め合い、自分らしく輝ける……そんな理想郷を、このラトナの地に、この手で作りたいんだ」
俺の言葉は、決して流暢ではなかったかもしれない。だが、そこには俺の魂が込められていた。
俺が語り終えると、一瞬の沈黙の後、割れんばかりの拍手が沸き起こった。それは見守っていた街の人々からだった。
「いい名前じゃねえか!」
「理想郷! 俺たちの街に、そんな場所ができるのか!」
そして、俺の仲間たちは。
「私たちの……理想郷……。アレン様、素敵です……!」
ルナは、その大きな瞳を涙で潤ませ、心からの感動を伝えてくれた。
「先生の掲げる理想、あまりにも高潔で……このフィオナ、この身命を賭して先生の理想郷の礎となりますわ!」
フィオナは、騎士のように恭しく胸に手を当てて誓った。
「……フン。大層な名前を付けたものだな」
シルフィは照れくさそうに顔を逸らしながら、しかし確かな意志を込めて言った。
「だが……悪くない響きだ。私も、その理想郷の一員として力を貸してやろう」
最高の仲間たちの、最高の言葉だった。
棟梁は満足げに頷くと、鑿と槌を手に取った。そして、熟練の技でカン、カン、と心地よい音を響かせながら看板にその名を刻み込んでいく。
『ARCADIA』
力強く、そして美しい文字が千年樹の樫に刻まれた。
「よし、掲げるぞ!」
棟梁の号令一下、完成した看板がギルドハウスの正面玄関の一番高い場所へと、ゆっくりと掲げられていった。
太陽の光を浴びて、その名が誇らしげに輝く。
その瞬間、見守っていた全ての人々から今日一番の歓声と拍手が沸き起こった。
俺は、隣に立つ最高の仲間たちを見渡した。黄金色の信頼、薄紫色の絆、桜色の献身。その全てに支えられながら、俺は胸を張った。
ここから、全てが始まる。
追放された鑑定士の物語は、ここで終わりだ。
今日から始まるのは、ギルド『アルカディア』のマスター、アレン・ウォーカーと、その仲間たちが紡ぐ、理想郷を創るための新しい物語。
俺は希望に満ちた未来を見据え、心の中で力強くそう宣言した。
「……すごい」
俺たちの新しい拠点を前に、ルナが感嘆の声を漏らした。その瞳は、完成したばかりの我が家を夢見るような表情で見上げている。
「本当に建ててしまいましたのね、先生……。私たちだけの、お城を」
フィオナもまた、感極まった様子で胸に手を当てていた。
「フン。まあ、悪くない出来だな」
シルフィは腕を組み、そっぽを向きながらもその口元には隠しきれない満足の色が浮かんでいた。
俺たちはドワーフの棟梁に案内され、完成したばかりのギルドハウスの内部を見て回った。
一階は、多くの冒険者が集えるよう設計された広大なホールと、本格的な厨房を備えた酒場だ。壁には依頼を貼るための巨大な掲示板が設置され、奥にはミリーが見たら羨ましがるであろう機能的な受付カウンターが鎮座している。
地下には俺が最もこだわった錬金術工房と、シルフィが望んだ本格的な鍛錬場。防音と防爆の魔法が付与されており、フィオナがどんな大魔法を暴発させてもびくともしない設計だ。
そして二階と三階は、俺たちのプライベートな居住空間と、将来ギルドメンバーが増えた時のための清潔で快適な個室がずらりと並んでいる。俺の部屋のバルコニーからは、ラトナの街並みを一望できた。
「ここが……今日から、私たちの家……」
ルナが嬉しそうに呟く。その言葉に、俺の胸も熱くなった。追放され、全てを失った俺が、こんなにも立派な『帰る場所』を手に入れることができるなんて、あの頃は想像もできなかった。
一通り内部を見て回り、俺たちが再び正面玄関の前に立った時、ドワーフの棟梁が彼の弟子たちと共に一枚の立派な木製の看板を運んできた。
素材は、森の主とも呼ばれる千年樹の樫だという。その表面は鏡のように滑らかに磨き上げられ、まだ何も刻まれていない。
「旦那。あんたたちのギルドの名前は、なんてえんだ? 俺たちの最後の仕事として、この看板に魂を刻み込んでやる」
棟梁の言葉に、俺は集まってくれた仲間たちと、そして遠巻きに見守ってくれている街の人々に向き直った。
俺は一度深く息を吸い込み、そして、ずっと胸に秘めていた名前を高らかに告げた。
「このギルドの名前は……『アルカディア』だ」
その聞き慣れない言葉に、人々は少しざわめいた。シルフィとフィオナは、その言葉の持つ意味に気づいたのか、はっとした表情で俺を見る。
俺は続けた。
「アルカディアは、古い言葉で『理想郷』を意味する」
俺は、そこにいる全員に語りかけるように、その名に込めた想いを語り始めた。
「俺は、かつて居場所を失った。誰からも必要とされず、ただ一人で絶望していた。ここにいる俺の仲間たちも、それぞれが孤独や理不尽な苦しみを抱えていたはずだ」
俺の言葉に、ルナ、シルフィ、フィオナは静かに頷いた。
「だから、作りたかったんだ。そんな、かつての俺たちのような奴らが安心して帰ってこられる場所を。才能がありながら燻っている者が、その翼を広げられる場所を。誰もが互いを認め合い、自分らしく輝ける……そんな理想郷を、このラトナの地に、この手で作りたいんだ」
俺の言葉は、決して流暢ではなかったかもしれない。だが、そこには俺の魂が込められていた。
俺が語り終えると、一瞬の沈黙の後、割れんばかりの拍手が沸き起こった。それは見守っていた街の人々からだった。
「いい名前じゃねえか!」
「理想郷! 俺たちの街に、そんな場所ができるのか!」
そして、俺の仲間たちは。
「私たちの……理想郷……。アレン様、素敵です……!」
ルナは、その大きな瞳を涙で潤ませ、心からの感動を伝えてくれた。
「先生の掲げる理想、あまりにも高潔で……このフィオナ、この身命を賭して先生の理想郷の礎となりますわ!」
フィオナは、騎士のように恭しく胸に手を当てて誓った。
「……フン。大層な名前を付けたものだな」
シルフィは照れくさそうに顔を逸らしながら、しかし確かな意志を込めて言った。
「だが……悪くない響きだ。私も、その理想郷の一員として力を貸してやろう」
最高の仲間たちの、最高の言葉だった。
棟梁は満足げに頷くと、鑿と槌を手に取った。そして、熟練の技でカン、カン、と心地よい音を響かせながら看板にその名を刻み込んでいく。
『ARCADIA』
力強く、そして美しい文字が千年樹の樫に刻まれた。
「よし、掲げるぞ!」
棟梁の号令一下、完成した看板がギルドハウスの正面玄関の一番高い場所へと、ゆっくりと掲げられていった。
太陽の光を浴びて、その名が誇らしげに輝く。
その瞬間、見守っていた全ての人々から今日一番の歓声と拍手が沸き起こった。
俺は、隣に立つ最高の仲間たちを見渡した。黄金色の信頼、薄紫色の絆、桜色の献身。その全てに支えられながら、俺は胸を張った。
ここから、全てが始まる。
追放された鑑定士の物語は、ここで終わりだ。
今日から始まるのは、ギルド『アルカディア』のマスター、アレン・ウォーカーと、その仲間たちが紡ぐ、理想郷を創るための新しい物語。
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