鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

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第62話:ギルドマスターの仕事

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『アルカディア』が門戸を開いてから数日間、俺たちのギルドハウスは好奇心と期待に満ちた新人冒険者たちで賑わいを見せた。

俺たちが掲示した最初の依頼『新人向け講習会』は、瞬く間にラトナ中の若手冒険者の間で話題となった。『辺境の超新星』が直々に指導してくれる。しかも無料で。その噂は、彼らにとって抗いがたい魅力だったようだ。

講習会には三十人近くの新人たちが集まった。その中には、以前俺がギルドで見かけた、あの三人組の姿もある。

「さて、集まってくれて感謝する。俺がこのギルドのマスター、アレンだ」

ホールに集まった若者たちを前に、俺は簡単な自己紹介から始めた。彼らの視線には、緊張と、そして強い憧れの色が浮かんでいる。

「今日から三日間、君たちには俺たちの指導のもと、ギルド周辺の森で実地訓練を行ってもらう。目的は二つ。一つは、冒険者としての基礎能力を叩き込むこと。そしてもう一つは……」

俺は、集まった一人一人の顔をゆっくりと見渡した。もちろん、その間も俺の【万物解析】は、彼らのステータスと才能を余すことなく読み取っていた。

「君たち自身が気づいていない、君たちの『才能』を俺が見つけ出すことだ」

俺の言葉に、新人たちはざわめいた。

講習会は役割分担で行われた。

シルフィは剣士や戦士を目指す者たちを集め、基礎の基礎から剣の振り方や盾の構え方を容赦なく叩き込んでいく。彼女の指導はスパルタそのものだったが、その一挙手一投足には本物の強者の説得力があり、新人たちは必死に食らいついていた。

「腰が入っていない! そんな剣で、オークの皮一枚切れるものか!」

彼女の怒声が訓練場に響き渡る。

ルナは斥候や弓兵志望の者たちを連れて、森の中での気配の消し方や罠の見つけ方を教えていた。彼女は言葉で教えるのはあまり得意ではなかったが、その神業のような身のこなしを実際に見せることで、誰よりも雄弁に斥候としての在り方を示していた。

「見ててください。こうやって風の音に、自分の音を混ぜるんです」

彼女がすっと動くと、その姿はまるで森の一部になったかのように完全に気配を消した。新人たちは、あんぐりと口を開けてその光景を見つめている。

フィオナは魔術師や僧侶を目指す者たちに、魔力制御の基礎を教えていた。かつて自分がそうであったように、間違った知識で苦しんでいる者たちに、彼女は自分の経験を交えながら丁寧に、そして優しく指導していた。

「力を込めるのではありませんわ。魔力を感じて、そして導いてあげるのです」

彼女の指導は的確で、何人もの若者がこれまで使えなかった初級魔法をその日のうちに成功させては、歓声を上げていた。

そして、俺の役割は、その全てを統括し、一人一人の才能を正確に見抜いて彼らが進むべき道を示すことだった。

「君は剣士を目指しているようだが、その恵まれた体格と動体視力は、むしろ斧や槌といった重戦士に向いている。一度、そちらを試してみてはどうか?」

「あなたは攻撃魔法にこだわっているが、あなたの魔力は『守り』と『癒し』に強い親和性を示している。支援系の僧侶になれば、きっとパーティーの要になれるだろう」

「君の隠密スキルは素晴らしい。だが、それを活かすには短剣よりも、遠距離から敵を仕留められる弓の方が遥かに有効だ」

俺は【万物解析】で得た客観的なデータに基づき、一人一人に具体的なアドバイスを送っていった。それは、彼らが自分では気づかなかった、あるいは目を背けていた自分自身の可能性だった。

最初は戸惑っていた者もいたが、俺の言葉には有無を言わせぬ説得力があった。俺が指摘した通りに役割を変えてみると、彼らの動きはまるで嘘のように見違えた。

もちろん、俺の仕事はそれだけではない。ギルドマスターとして、運営に関するあらゆる判断を下さなければならなかった。

ガルド商会との取引価格の交渉。
ギルドハウスの維持管理費の計算。
新しく舞い込んでくる依頼の危険度と報酬の妥当性を、スキルで見抜きランク分けしていく作業。

やることは山のようにあった。だが、不思議と苦ではなかった。むしろ、充実感に満ていた。自分の力が、確かにこの街を、そして人々を良い方向へ導いている。その実感があったからだ。

講習会の最終日。俺は集まった新人たちを前に、締めくくりの言葉を述べていた。

「三日間、ご苦労だった。君たちはここに来た時とは比べ物にならないほど成長したはずだ。だが、これで終わりじゃない。ここからが君たちの本当の冒EP険の始まりだ」

新人たちの顔には、確かな自信と未来への希望が満ち溢れていた。

「俺たちのギルド『アルカディア』はいつでも君たちを待っている。困ったことがあれば、いつでも相談に来い。俺たちは、この街で夢を追う全ての冒険者の味方だ」

俺の言葉に、新人たちから割れんばかりの拍手が送られた。

その中には、あの三人組の姿もあった。彼らは俺のアドバイスを受け入れ、それぞれの役割を見直した。自信過剰だった剣士は、仲間の斥候と魔術師を守る『盾役』としての才能に目覚め、彼のパーティーは以前とは比べ物にならないほど安定した連携を見せるようになっていた。

彼らは深々と俺に頭を下げると、晴れやかな顔でギルドを去っていった。

その背中を見送りながら、俺は自分がやろうとしていることの正しさを改めて確信していた。

ギルドマスターとしての仕事は始まったばかりだ。だが、この最高の仲間たちと共に、そしてこれから育っていくであろう新しい才能たちと共に。

俺たちの『アルカディア』は、必ずやこの辺境の地に根付いた、揺るぎない理想郷となるだろう。

俺は、未来への確かな手応えを感じながら、静かに、そして力強くそう誓った。
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