鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

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第64話:街への貢献

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『アルカディア』が設立されてから三ヶ月が過ぎた。俺たちのギルドは、ラトナの冒険者社会にすっかりなくてはならない存在として根付いていた。

俺の指導を受けた新人たちの多くはめきめきと頭角を現し、ギルド全体の依頼達成率も以前とは比べ物にならないほど向上した。街の治安は目に見えて良くなり、商業も活気づいている。

その日、俺はラトナの領主であるバルトラン伯爵の館に一人で招かれていた。銀の食器が並ぶ豪華な食卓で、白髪の温厚そうな老領主と二人きりで向き合っている。

「いやはや、アレン殿。君がこの街に来てくれて本当に良かった」

バルトラン伯爵は、心底嬉しそうに目を細めた。

「君のギルド『アルカディア』のおかげで、このラトナは私が領主になって以来、最も活気に満ち溢れている。街の民も皆、君たちのことを英雄だと褒め称えておるよ」

「恐縮です。俺たちは、ただ自分たちにできることをしているだけですから」

俺が謙遜すると、伯爵は「その『できること』が、誰にも真似できんことなのだ」と豪快に笑った。

彼は俺たちの活動を高く評価し、ギルドの運営に必要な便宜を色々と図ってくれていた。俺もまた、彼の誠実な人柄と、この街を心から愛している為政者としての姿勢を尊敬していた。

一通りの食事と世間話が終わった後、バルトラン伯爵は少し真剣な面持ちで俺に一つの相談を持ち掛けてきた。

「……実は、アレン殿に一つ頼みたいことがある」

「なんでしょうか」

「うむ。知っての通り、このラトナは鉱山で栄えてきた街だ。だが、その主要な鉱脈もここ数年で産出量がめっきり減ってきておってな。このままでは、街の経済も先細りになる一方じゃ。……そこで、だ」

彼は、俺の目をじっと見つめた。

「君の、その不思議な『眼』で新たな鉱脈を見つけ出してはもらえんだろうか。もちろん、これは正式な依頼として破格の報酬を約束しよう」

新しい鉱脈の発見。それは一国の運命さえ左右しかねない重大な案件だった。普通の鑑定士では到底不可能な依頼だ。

だが、俺の【万物解析】ならあるいは。

「……分かりました。お引き受けしましょう。ただし、一つ条件があります」

「ほう、条件とは?」

「発見した鉱脈から得られる利益の一割を、我々のギルドに還元していただきたい。その資金は全て、この街のさらなる発展と新人冒険者たちの育成のために使わせていただきます」

俺の提案に、バルトラン伯爵は一瞬きょとんとした顔をしたが、やがて腹を抱えて笑い出した。

「はっはっは! 面白い! 実に面白い男よ、君は! 自分の利益ではなく、街の未来のために投資しろと言うか! よかろう! その条件、飲んだ!」

こうして、俺は領主直々の極秘依頼を受けることになった。

翌日から、俺は一人でラトナ周辺の山々を調査して回った。ルナたちにはギルドの運営を任せ、俺は地質学者にでもなったかのようにひたすら大地と向き合う。

馬に乗り山道を駆けながら、俺は【万物解析】の能力をこれまでとは全く違う使い方で発揮させていた。

俺の意識は地面を透過し、地下深くの地層構造を立体的なイメージとして描き出していく。岩盤の種類、断層の走り方、地下水脈の流れ。地球の内部が、俺の脳内に手に取るように映し出される。

脳への負荷は凄まじく、数時間も続ければ立っていられないほどの頭痛と疲労に襲われた。だが、俺は諦めなかった。

そして、調査開始から五日目のことだった。

俺は、ラトナの東に連なる、これまで誰も足を踏み入れたことのない険しい山脈のさらに奥深くで、ついに『それ』を発見した。

俺の脳内に、これまで見たこともないほど強烈な魔力と鉱物資源の反応が、輝く光となって映し出されたのだ。

【地下三百メートル地点:超高純度のミスリル鉱脈を確認】
【推定埋蔵量:王国全体の年間産出量を上回る規模】
【付随鉱物:魔力親和性の高い『オリハルコン』の鉱脈も微量に存在する可能性あり】

「……あった」

俺は、馬の上で震える声で呟いた。

ミスリル。それは並の鉄とは比較にならないほどの強度と魔力伝導率を誇る、伝説級の金属だ。武具や装飾品として、金と同じかそれ以上の価値で取引される。

しかも、オリハルコンまで? それは、もはや神話の中にしか存在しないとされていた幻の金属だ。

これはただの鉱脈ではない。このラトナという辺境都市を、王国一……いや、大陸一の豊かな都市へと変貌させるほどの、とてつもない宝の山だった。

俺はすぐに山を下り、バルトラン伯爵に報告した。俺が描いた精密な地下地図と鉱脈の位置を見た伯爵は、最初はその内容を信じられずにいたが、俺の揺るぎない瞳を見て、やがてその体が興奮に打ち震え始めた。

「……おお……おおお! 神よ! 我がラトナは神に愛されたというのか!」

彼は老齢を忘れ、子供のようにはしゃいだ。

この発見は、ラトナの歴史を、そして俺自身の運命を再び大きく動かすことになる。

鉱山の開発は伯爵家の全面的な支援の下、極秘裏に、しかし迅速に進められた。俺はアドバイザーとして、最も効率的で安全な採掘ルートをスキルで割り出していった。

数週間後、最初のミスリルの鉱石が地上に運び出された時の人々の歓声は、今でも忘れられない。

ラトナは沸き立った。新たな富の発見は、街に空前の好景気をもたらした。多くの労働者が集まり、街はさらに拡大し、活気に満ち溢れていく。

そして、俺たちのギルド『アルカディア』もまた、その恩恵を最大限に受けることになった。約束通り、鉱脈から得られる利益の一割が俺たちのギルドに流れ込んでくる。その額は、もはや俺たち四人だけでは使い道に困るほどの天文学的な数字だった。

俺は、その潤沢な資金を使ってギルドの設備をさらに充実させ、新人たちへの支援を手厚くした。才能のある者には学費を全額免除で王都の専門学校へ留学させる制度まで作った。

『アルカディア』は、もはやただの冒険者ギルドではなかった。それは、この街の未来を創り出す巨大な教育機関であり、福祉施設でもあったのだ。

そして、ギルドマスターである俺、アレン・ウォーカーは、ラトナの民からいつしかこう呼ばれるようになっていた。

『ラトナの賢王』と。

俺はそんな大げさな呼び名に苦笑しながらも、自分の成し遂げたことへの確かな誇りを感じていた。

追放された鑑定士が、今や一つの街の運命を左右するほどの重要人物になっている。

だが、光が強くなれば、その影もまた濃くなるものだ。

この辺境の地で巻き起こったあまりにも急激な変化。その噂は、ガルド商会の翼に乗り、再びあの王都にいる者たちの耳へと届くことになるのだった。
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