鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

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第67話:奇妙な魔物

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俺はリビングに三人を集め、連続失踪事件の概要と俺が掴んだ情報を共有した。未知の邪悪な魔力の存在を告げると、三人の顔にも緊張の色が走った。

「つまり、ただの野盗や魔物の仕業ではない、と。何か得体の知れない奴らが裏で糸を引いている可能性があるわけか」

シルフィが腕を組んで鋭い分析を口にする。

「争った形跡がない、というのが気になりますわね。相手に抵抗する暇すら与えないほどの強力な魔法か、あるいは……」

フィオナが魔術師としての見地から考察を始めた。

「……怖いです。でも、放ってはおけません」

ルナは少し不安そうにしながらも、その瞳には強い意志の光が宿っていた。

「ああ。これは俺たちアルカディアが解決すべき事件だ」

俺はきっぱりと宣言した。

「明日から俺たち自身で、失踪現場の本格的な調査を開始する。何か必ず手がかりが残っているはずだ」

こうして、俺たち『アルカディア』は、この不可解な連続失踪事件の調査に正式に乗り出すことになった。

翌日の早朝、俺たちは四人で最後に冒険者パーティーが消息を絶ったというラトナ西の森へと向かった。そこは俺たちが以前オークの群れを討伐した農村地帯の、さらに奥に広がる深い森だった。

「ここが、彼らが最後に目撃された場所だ」

森の入り口には衛兵が立てた簡易的な立て札が残されているだけだった。俺たちは馬を降り、そこから徒歩で森の奥へと足を踏み入れていく。

「アレンさん、何か分かりますか?」

ルナが周囲の気配を探りながら尋ねる。

「……いや、まだだ。だが、この森は何かがおかしい」

俺は【万物解析】を発動させながら慎重に進んでいた。スキルが示す情報は、この森の生態系が微妙に歪んでいることを教えてくれていた。

本来ならいるはずの小動物の気配が全くない。鳥のさえずりさえ聞こえず、不気味なほどの静寂が森全体を支配している。まるで何か巨大な捕食者の存在に怯え、森の生き物たちが息を潜めているかのようだった。

そして、俺はついに『それ』を見つけた。

「……待て。これは……」

俺は地面に残された奇妙な足跡の前で膝をついた。それはどんな獣のものとも違う、三本指のカギ爪を持つ鳥のような足跡だった。だが、その大きさは人間の頭ほどもある。

俺は、その足跡に残されたごく微量な魔力の残滓を鑑定した。

間違いない。昨日俺が感じ取った、あの異質で邪悪な魔力だ。

「この先に犯人がいる。あるいは、それに繋がる何かが」

俺の言葉に、三人の緊張が高まる。俺たちは武器を抜き放ち、足跡を追ってさらに森の深部へと進んでいった。

しばらく進むと、前方の茂みがガサリと大きく揺れた。

「来たか……!」

俺たちが身構える。そして、茂みを突き破って姿を現した『それ』を見て、俺たちは一瞬言葉を失った。

それは狼だった。だが、普通の狼ではない。体長は三メートルを超え、その毛皮は所々が剥げ落ち病的なまでに痩せこけている。そして何より異様なのは、その全身から禍々しい紫色のオーラが陽炎のように立ち上っていたことだ。

その瞳には知性も生命の輝きもない。ただ、飢えと破壊衝動だけを映す虚ろな光が宿っていた。

「グルルルル……」

獣が低い唸り声を上げる。その口からは黒い涎が滴り落ちていた。

俺は即座にそいつを鑑定した。

【名称:コラプテッド・ウルフ(汚染された狼)】
【レベル:25】
【状態:邪悪な魔力に精神と肉体を蝕まれ、暴走状態にある】
【特性:通常の生物としての痛覚や恐怖心が麻痺している。生命力が尽きるまで破壊活動を続ける】
【弱点:聖属性。力の源となっている心臓部の『核』を破壊されると消滅する】

「……なんだ、こいつは」

シルフィが嫌悪感を露わに呟いた。

「魔物……ではない。ただの狼が何かによって、無理やり変質させられた姿だ」

俺の分析に、フィオナが息を呑んだ。

「なんておぞましいことを……。生命そのものへの冒涜ですわ」

コラプテッド・ウルフは、俺たちの会話などお構いなしに咆哮と共に襲いかかってきた。その動きは巨体に見合わず、直線的で鋭い。

「シルフィ、正面を頼む!」

「言われるまでもない!」

シルフィが前に出て、魔剣ソウルセイバーで狼の突進を受け止める。ガキンと激しい金属音が響き、火花が散った。狼の爪は鋼のように硬いらしい。

「ルナ、回り込め! 狙いは心臓だ!」

「はい!」

ルナが影となって狼の側面へと回り込む。だが、狼は驚くべき反応速度でそれに気づき、巨体を捻ってルナを薙ぎ払おうとした。

「させませんわ! 【アース・ウォール】!」

フィオナの詠唱が響き、地面から分厚い土の壁が出現。狼の攻撃を寸でのところで防いだ。

完璧な連携。俺たちはもはや言葉を交わさずとも、互いの役割を理解し動くことができた。

土の壁に阻まれ、一瞬だけ動きが止まった狼。その隙を俺は見逃さない。

「今だ、ルナ!」

ルナは土の壁を蹴って高く跳躍。空中で体を反転させ、狼の無防備な胸元――心臓のある位置へ銀のダガーを突き立てた。

「ギャウウウウン!」

獣が甲高い悲鳴を上げる。ダガーは確かにその心臓部の核を捉えたようだった。

コラプテッド・ウルフの体から紫色のオーラが急速に失われていく。その巨体は、まるで砂の城が崩れるように黒い塵となって霧散し、後には何も残らなかった。

俺たちは荒い息をつきながら、互いの無事を確認した。

「……なんて嫌な敵だったな」

シルフィが忌々しげに呟く。

「ええ。命の輝きが全く感じられませんでしたわ」

フィオナも顔を顰めている。

俺は狼が消え去った地面を注意深く調べていた。そこには、何か小さな黒い珠のようなものが一つだけ残されている。

俺はそれを慎重に拾い上げ、鑑定した。その結果に、俺は眉をひそめざるを得なかった。

この事件の闇は、俺が想像していたよりも遥かに深く、そして邪悪なものなのかもしれない。
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