鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

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第80話:辺境の勝利

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ゼノンが召喚した魔界の魔物たちは、これまで俺たちが戦ってきたどの敵よりも厄介で、そして強力だった。

「キシャアア!」

複数の腕を持つ悪魔がシルフィに襲いかかる。その腕の一本一本が異なる武器を握りしめ、予測不能な連続攻撃を繰り出してきた。

「しつこい!」

シルフィは魔剣ソウルセイバーを巧みに操り、その猛攻を凌ぎ切る。だが、相手の数と手数の多さにじりじりと押され始めていた。

「シルフィさん!」

フィオナが援護の光魔法を放つ。だがその光は、ゼノンが作り出した空間の歪みに吸収され届かない。

「無駄ですよ。この空間は私の支配下にある」

ゼノンは祭壇の上で優雅に腕を組み、まるで観劇でもするかのように俺たちの苦戦を眺めている。

一方、ルナは影の猟犬たちと高速の追撃戦を繰り広げていた。猟犬たちは影から影へと自在に移動し、ルナの神速の動きに食らいついてくる。

「くっ……!」

ルナの頬を影の牙が浅く掠めた。初めて、彼女が明確な手傷を負った瞬間だった。

俺は酸を吐き出す巨大な蟲の攻撃を回避しながら、戦況全体を分析していた。
このままではジリ貧だ。個々の魔物も強いが、何より厄介なのは術者であるゼノン自身。奴がいる限り魔物は無限に召喚され、奴の空間歪曲能力が俺たちの連携を分断する。

狙うべきはゼノンただ一人。

だが奴の周囲には常に空間の盾が張られており、直接攻撃を通すのは至難の業だ。

どうする。何か方法はないのか。

俺は【万物解析】を限界まで酷使し、ゼノンの能力のわずかな綻びを探す。

【スキル:空間歪曲】
【詳細:空間を捻じ曲げ、盾として、あるいは攻撃として利用する高等魔法。常に膨大な魔力を消費し続けるため、術者は魔力の供給源として周囲の生命力を吸収し続けている】

生命力を吸収している?

俺は周囲の木々が急速に枯れていっているのに気づいた。ゼノンは、この森全体の生命力を糧にその絶大な力を維持しているのだ。

そして、もう一つ。

【ゼノンの状態:平静を装っているが、内心では魔力の消耗に焦りを感じ始めている。特に、シルフィが持つ聖別された魔剣の存在が、彼の空間支配に微弱な『ノイズ』を生じさせている】

これだ!

シルフィの魔剣。聖なる属性を持つソウルセイバーが、奴の邪悪な空間魔法に対してわずかながら干渉しているのだ。

「シルフィ! 聞こえるか!」

俺は悪魔と激戦を繰り広げるシルフィに向かって叫んだ。

「お前の剣で空間そのものを斬り裂け! 奴の魔法に亀裂を入れるんだ!」

「……空間を斬るだと? 無茶を言うな!」

「できる! お前の剣は奴の魔法に対する唯一のカウンターだ! 俺を信じろ!」

俺の必死の言葉に、シルフィは一瞬ためらったが、やがて何かを決意したように大きく息を吸い込んだ。

「……分かった! お前の言う通りにしてやる! だが隙を作れ!」

「任せろ!」

俺はフィオナとルナに新たな指示を飛ばした。

「フィオナ、最大の魔法を! ルナは俺の合図で一点に突っ込め!」

三人の間に言葉にならない連携が生まれる。

「私の全てをこの一撃に! 【サンダー・ジャッジメント】!」

フィオナが詠唱を完了させる。彼女の頭上にこれまでで最大級の雷の魔力が収束し、天を衝くほどの巨大な雷の槍を形成した。

その凄まじい魔力の奔流に、ゼノンも初めてその表情をわずかに歪ませた。

「ほう……面白い!」

彼はその雷撃を、自らが作り出した最大の空間の盾で受け止めようとする。

その一瞬。彼の意識が完全にフィオナの魔法へと集中した。

「―――今だ、ルナ!」

俺の絶叫と同時にルナが動いた。彼女は影の猟犬たちを振り切り、スキル『縮地』を発動させる。

彼女の姿が一瞬だけその場から掻き消えた。

次の瞬間、彼女はゼノンの目の前に音もなく出現していた。

「なっ……!?」

ゼノンが驚愕に目を見開く。

ルナは何も言わなかった。ただ、その翡翠色の瞳に冷たい光を宿し、銀のダガーをゼノンの心臓めがけて突き出した。

だが、その切っ先はゼノンの寸前で見えない壁に阻まれて止まった。

「……危ないところでしたな。ですが私の結界は、物理攻撃では……」

ゼノンが安堵の息を漏らした、その時だった。

「―――遅いッ!!」

シルフィの咆哮が響き渡った。

彼女は悪魔を振り切り、俺が作った一瞬の隙を見逃さなかった。彼女の魔剣ソウルセイバーが聖なる光を極限まで高め、空間そのものを断ち切るかのように振り下ろされていた。

ザンッ、と空気が裂けるような音。

ゼノンの空間の盾に一筋の輝く亀裂が走った。

そして、その亀裂を通して、ルナのダガーが今度こそゼノンの胸を深々と貫いていた。

「……が……はっ……?」

ゼノンは信じられないといった表情で、自らの胸に突き刺さる銀の刃を見下ろした。

そして天から降り注ぐフィオナの雷の槍が、彼を完全に飲み込んだ。

凄まじい閃光と轟音が森全体を揺るがす。

やがて光が収まった時。

祭壇の上に、もはやゼノンの姿はなかった。召喚されていた魔物たちもまた主を失い、塵となって消え去っていく。

後に残されたのは静寂と、そして荒い息をつきながら互いを支え合う四人の仲間たちの姿だけだった。

俺たちは勝ったのだ。

邪教団の上級幹部という最強の敵に。
この街を襲った最大の脅威に。
俺たち四人の完璧な連携で。

夜明けの光が森の木々の間から差し込み始めていた。それはラトナの街に訪れた勝利の光だった。

俺は仲間たちの顔を見渡し、疲労に満ちた、しかし心からの笑顔を浮かべた。

「……帰ろう。俺たちの街へ」

辺境の勝利。それは、この街の住民全てが、そして俺たち『アルカディア』が、一丸となって掴み取った何よりも尊い勝利だった。

この日、ラトナの街は真の意味で邪悪な影から解放された。そして、俺たち四人の名は単なる『超新星』ではなく、この街を守った『守護神』として永遠に語り継がれることになるのだった。
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