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第83話:決意
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俺たちが医務室へ向かうと、そこには二人の来訪者がいた。
一人はベッドの上で上半身を起こした、あの王国騎士。フィオナの治療のおかげで傷はほとんど塞がっていたが、その顔には深い疲労の色が刻まれている。
そしてもう一人。その傍らに静かに佇んでいたのは、白髪に深い皺が刻まれた小柄な老人だった。質素だが品の良いローブを身にまとっている。俺が王宮にいた頃、書庫官として働いていた文官のウォレス殿だった。
彼は俺の顔を見るなり、その老いた瞳をわずかに潤ませた。
「……アレン・ウォーカー殿。いや、今はギルドマスター殿とお呼びすべきかな。見違えたな。実に立派になられた」
ウォレス殿は俺が王宮にいた頃、数少ない俺の鑑定スキルを正当に評価してくれていた人物だった。彼は派手な武功を立てる騎士たちよりも、地道に知識を探求する俺のような文官タイプを好ましく思ってくれていたのだ。追放される日、俺に同情的な言葉をかけてくれたのも彼だけだった。
「ウォレス殿……。ご無沙汰しております。あなた様がなぜここに?」
「王からの勅命を確実にお届けするための後詰としてな。そして何より、わし自身の目で君の活躍を確かめたかった」
彼は俺の後ろに立つルナ、シルフィ、フィオナを一瞥し、そして満足げに頷いた。
「……素晴らしい仲間を得られたようだのう。君の『眼』は、やはり本物じゃった」
その言葉は俺の胸にじんわりと温かく響いた。
ベッドの上の騎士が俺たちの会話を聞きながら、必死に身を起こそうとした。
「……アレン殿。どうか、我らを……王都を……!」
「落ち着いてください。話は全て聞きました」
俺は彼の肩にそっと手を置き、制した。
俺はウォレス殿と騎士に向き直り、静かに、しかしはっきりと自分の決意を告げた。
「王家からの救援要請、しかとお受けいたします。我々ギルド『アルカディア』は、このラトナの地より王都の救援へと向かいます」
その言葉に、騎士とウォレス殿の顔がぱっと輝いた。
「おお……! 本当か! 本当に来てくれるのか!」
「感謝する……! これで王都は……民は救われる……!」
二人は心からの安堵と感謝を口にした。
だが俺は、彼らの楽観的な空気に釘を刺すことを忘れなかった。
「ただし誤解しないでいただきたい。俺たちが戦うのは王家のためでも、ましてや俺を追放した勇者パーティーのためでもない」
俺はきっぱりと言い切った。
「俺たちが戦う理由はただ一つ。この世界に災厄を振りまく邪教団『虚無の蛇』を完全に根絶やしにするため。そして俺たちが愛するこのラトナの平和を未来永劫守るためだ。その目的のために今回は王都と『協力』してやる、というだけのことです」
俺の言葉は冷たく響いたかもしれない。だがこれが俺の本心だった。俺は誰かの駒として動くつもりはない。俺は俺自身の意志でこの戦いに臨むのだ。
ウォレス殿は俺の言葉に一瞬驚いたような顔をしたが、やがて深く、深く頷いた。
「……それで結構。それで十分じゃ。君が君自身の意志でこの国のために立ち上がってくれるというのなら、それ以上のことは何も望まん」
彼は全てを理解してくれていた。
俺の決意は固まった。もはや迷いはない。
俺は仲間たちと共に執務室へと戻った。そして壁に貼られた王国の巨大な地図の前に立つ。
「これより王都奪還作戦を開始する」
俺の宣言に、三人の仲間たちの顔が引き締まる。
「だが俺たち四人だけで王都に乗り込んでも、数の上では不利だ。勝つためには兵力が必要になる」
「ではどうしますの、先生?」
フィオナの問いに、俺は不敵な笑みを浮かべて答えた。
「『辺境の英雄』『ラトナの賢王』。俺たちがこれまで築き上げてきたその名を最大限に利用させてもらうのさ」
俺はすぐにラトナの領主であるバルトラン伯爵の元へ向かった。そして王都の危機と俺たちの決意を伝える。
話を聞いた伯爵は、一瞬の逡巡も見せず即座に決断を下した。
「……分かった。このラトナの衛兵隊、その半数を君に預けよう。彼らは君の指揮の下で見違えるように強くなった。君の元で戦えるのなら、彼らも本望だろう」
「ありがとうございます、伯爵」
「礼を言うのはこちらの方だ。君はこの街の恩人だ。その君が国を救うための戦いに赴くというのなら、我々がそれを支援するのは当然のこと」
次に、俺はラトナのもう一つの冒険者ギルドへと向かった。ギルドマスターに事情を話すと、彼もまた二つ返事で協力を約束してくれた。
「俺たちにできることがあるのなら何でも言ってくれ! この街の冒険者は皆、君たち『アルカディア』に大きな借りがある。今こそその借りを返す時だ!」
ギルドの酒場に俺は立った。そして、そこにいる全ての冒険者たちに向かって呼びかけた。
「俺は王都へ行く! この国を蝕む本当の悪を叩き潰すためにな! だがこの戦いは俺たちだけでは勝てない! だから頼む! 俺に力を貸してくれ!」
俺の魂の叫びに、冒険者たちは一瞬の静寂の後、地鳴りのような雄叫びで応えた。
「「「オオオオオオ!!!」」」
「マスターについていくぜ!」
「俺たちの英雄に続け!」
俺の元にラトナの力が集結していく。衛兵、冒険者。彼らは王の命令だからではない。勇者のためでもない。
ただ、俺、アレン・ウォーカーという男を信じ、この街を守ってくれた英雄と共に戦いたいという純粋な想いだけで立ち上がってくれたのだ。
俺はかつて、誰からも必要とされずたった一人で王都を追われた。
だが今、俺は、この辺境の地で集めた最高の仲間たちと、そして俺を信じてくれる多くの兵士たちを率いて、再びあの王都へと帰還する。
それは復讐のためではない。
世界を救うための凱旋だ。
俺は集まってくれた頼もしい仲間たちの顔を見渡し、固く拳を握りしめた。
『虚無の蛇』よ、待っていろ。
お前たちの野望は、この俺が完全に打ち砕いてやる。
一人はベッドの上で上半身を起こした、あの王国騎士。フィオナの治療のおかげで傷はほとんど塞がっていたが、その顔には深い疲労の色が刻まれている。
そしてもう一人。その傍らに静かに佇んでいたのは、白髪に深い皺が刻まれた小柄な老人だった。質素だが品の良いローブを身にまとっている。俺が王宮にいた頃、書庫官として働いていた文官のウォレス殿だった。
彼は俺の顔を見るなり、その老いた瞳をわずかに潤ませた。
「……アレン・ウォーカー殿。いや、今はギルドマスター殿とお呼びすべきかな。見違えたな。実に立派になられた」
ウォレス殿は俺が王宮にいた頃、数少ない俺の鑑定スキルを正当に評価してくれていた人物だった。彼は派手な武功を立てる騎士たちよりも、地道に知識を探求する俺のような文官タイプを好ましく思ってくれていたのだ。追放される日、俺に同情的な言葉をかけてくれたのも彼だけだった。
「ウォレス殿……。ご無沙汰しております。あなた様がなぜここに?」
「王からの勅命を確実にお届けするための後詰としてな。そして何より、わし自身の目で君の活躍を確かめたかった」
彼は俺の後ろに立つルナ、シルフィ、フィオナを一瞥し、そして満足げに頷いた。
「……素晴らしい仲間を得られたようだのう。君の『眼』は、やはり本物じゃった」
その言葉は俺の胸にじんわりと温かく響いた。
ベッドの上の騎士が俺たちの会話を聞きながら、必死に身を起こそうとした。
「……アレン殿。どうか、我らを……王都を……!」
「落ち着いてください。話は全て聞きました」
俺は彼の肩にそっと手を置き、制した。
俺はウォレス殿と騎士に向き直り、静かに、しかしはっきりと自分の決意を告げた。
「王家からの救援要請、しかとお受けいたします。我々ギルド『アルカディア』は、このラトナの地より王都の救援へと向かいます」
その言葉に、騎士とウォレス殿の顔がぱっと輝いた。
「おお……! 本当か! 本当に来てくれるのか!」
「感謝する……! これで王都は……民は救われる……!」
二人は心からの安堵と感謝を口にした。
だが俺は、彼らの楽観的な空気に釘を刺すことを忘れなかった。
「ただし誤解しないでいただきたい。俺たちが戦うのは王家のためでも、ましてや俺を追放した勇者パーティーのためでもない」
俺はきっぱりと言い切った。
「俺たちが戦う理由はただ一つ。この世界に災厄を振りまく邪教団『虚無の蛇』を完全に根絶やしにするため。そして俺たちが愛するこのラトナの平和を未来永劫守るためだ。その目的のために今回は王都と『協力』してやる、というだけのことです」
俺の言葉は冷たく響いたかもしれない。だがこれが俺の本心だった。俺は誰かの駒として動くつもりはない。俺は俺自身の意志でこの戦いに臨むのだ。
ウォレス殿は俺の言葉に一瞬驚いたような顔をしたが、やがて深く、深く頷いた。
「……それで結構。それで十分じゃ。君が君自身の意志でこの国のために立ち上がってくれるというのなら、それ以上のことは何も望まん」
彼は全てを理解してくれていた。
俺の決意は固まった。もはや迷いはない。
俺は仲間たちと共に執務室へと戻った。そして壁に貼られた王国の巨大な地図の前に立つ。
「これより王都奪還作戦を開始する」
俺の宣言に、三人の仲間たちの顔が引き締まる。
「だが俺たち四人だけで王都に乗り込んでも、数の上では不利だ。勝つためには兵力が必要になる」
「ではどうしますの、先生?」
フィオナの問いに、俺は不敵な笑みを浮かべて答えた。
「『辺境の英雄』『ラトナの賢王』。俺たちがこれまで築き上げてきたその名を最大限に利用させてもらうのさ」
俺はすぐにラトナの領主であるバルトラン伯爵の元へ向かった。そして王都の危機と俺たちの決意を伝える。
話を聞いた伯爵は、一瞬の逡巡も見せず即座に決断を下した。
「……分かった。このラトナの衛兵隊、その半数を君に預けよう。彼らは君の指揮の下で見違えるように強くなった。君の元で戦えるのなら、彼らも本望だろう」
「ありがとうございます、伯爵」
「礼を言うのはこちらの方だ。君はこの街の恩人だ。その君が国を救うための戦いに赴くというのなら、我々がそれを支援するのは当然のこと」
次に、俺はラトナのもう一つの冒険者ギルドへと向かった。ギルドマスターに事情を話すと、彼もまた二つ返事で協力を約束してくれた。
「俺たちにできることがあるのなら何でも言ってくれ! この街の冒険者は皆、君たち『アルカディア』に大きな借りがある。今こそその借りを返す時だ!」
ギルドの酒場に俺は立った。そして、そこにいる全ての冒険者たちに向かって呼びかけた。
「俺は王都へ行く! この国を蝕む本当の悪を叩き潰すためにな! だがこの戦いは俺たちだけでは勝てない! だから頼む! 俺に力を貸してくれ!」
俺の魂の叫びに、冒険者たちは一瞬の静寂の後、地鳴りのような雄叫びで応えた。
「「「オオオオオオ!!!」」」
「マスターについていくぜ!」
「俺たちの英雄に続け!」
俺の元にラトナの力が集結していく。衛兵、冒険者。彼らは王の命令だからではない。勇者のためでもない。
ただ、俺、アレン・ウォーカーという男を信じ、この街を守ってくれた英雄と共に戦いたいという純粋な想いだけで立ち上がってくれたのだ。
俺はかつて、誰からも必要とされずたった一人で王都を追われた。
だが今、俺は、この辺境の地で集めた最高の仲間たちと、そして俺を信じてくれる多くの兵士たちを率いて、再びあの王都へと帰還する。
それは復讐のためではない。
世界を救うための凱旋だ。
俺は集まってくれた頼もしい仲間たちの顔を見渡し、固く拳を握りしめた。
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お前たちの野望は、この俺が完全に打ち砕いてやる。
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