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第42話 連合軍の誕生
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オーク族の全面的な降伏と協力を取り付けたことで、ガロッシュ砦は新たな活気に満ち溢れていた。つい先日まで敵同士だったゴブリンとオークが、ぎこちないながらも、一つの目的のために協力し始めている。
ゴブリンたちは、オークの屈強な肉体と、その組織的な行動に畏敬の念を抱き、オークたちは、ゴブリンたちの王である俺の知略と、その下で統率された彼らの動きに、驚きと興味を示していた。
俺は、この機会を逃さず、両種族の本格的な統合と、新たな組織の編成に乗り出した。
まず、俺はガロンを正式に、俺の軍の最高指揮官――『将軍』に任命した。
「ガロン、お前に全軍の指揮権を委ねる。ゴブリンも、オークも、お前の命令に従うことになる。俺の右腕として、この新たな軍を鍛え上げてくれ」
「ハッ! この身、命に代えましても!」
ガロンは、感激に打ち震えながら、俺の前に深く頭を垂れた。彼に軍の実権を委ねることは、オークたちの信頼を勝ち取る上で、最も効果的な方法だった。
次に、俺はオークの戦士たちの中から、特に屈強な者たちを選び出し、『オーク重装歩兵部隊』を創設した。彼らには、人間から奪った鎧の中でも、特に頑丈なものを与え、ガロンが持つ巨大な戦斧を模した武器を、オークの鍛冶場で量産させた。
彼らは、俺の軍の最前線を担う、文字通りの「壁」となる部隊だ。その圧倒的な防御力と突破力は、これまでのゴブリン部隊だけでは決して実現できなかった、新たな戦術を可能にするだろう。
そして、ゴブリンの精鋭たちは、『ゴブリン遊撃部隊』として再編成された。彼らの役割は、オークの重装歩兵が作った隙を突き、その俊敏さを活かして敵陣を攪乱し、側面や背後から奇襲をかけることだ。
重厚なオークの槌と、鋭利なゴブリンの槍。
この二つが組み合わさることで、俺の軍は、攻防一体の、バランスの取れた戦闘集団へと生まれ変わった。
リリアとルゥも、新たな役割を得ていた。リリアは、その治癒魔法と薬草の知識を活かし、非戦闘員たちで構成される『衛生部隊』を組織した。彼女の指導の下、ゴブリンやオークの女性たちが、負傷者の手当てや、ポーションの作り方を学び始めている。ルゥも、その小さな手で、一生懸命彼女を手伝っていた。
さらに、オークの長老衆は、俺の『内政顧問』として、砦の運営にその知恵を貸してくれていた。食料の備蓄管理、施設の修繕計画、そして、ゴブリンとオークの間に生じる小さな諍いの仲裁など、彼らの経験は、組織運営の様々な面で役立った。
生産技術部隊も、本格的に稼働を始めた。オークの鍛冶場からは、日夜、鉄を打つ音が響き渡り、新しい剣や斧、そして矢尻が次々と生み出されていく。これで、武器の損耗を恐れる必要はなくなった。
俺は、この新たな多種族混成軍に、名を付けることにした。
「これより、我々の軍は、『魔森連合軍』と名乗る!」
俺が、砦の中央広場で高らかに宣言すると、ゴブリンも、オークも、種族の垣根を越えて、地鳴りのような雄叫びを上げた。
ウォオオオオオ!
グルオオオオオ!
二つの異なる雄叫びが、一つに溶け合い、ガロッシュ砦の空に響き渡る。それは、新たな勢力の誕生を告げる、力強い産声だった。
俺は、将軍となったガロンを傍らに、整然と並ぶ連合軍の兵士たちを見渡した。
その数は、百五十を超える。
ホブゴブリンの王である俺を頂点に、将軍ガロンが軍を率い、リリアが後方を支え、長老衆が内政を司る。
それは、もはや単なる魔物の群れではない。
法と、秩序と、明確な役割分担を持つ、一つの『国家』の原型が、そこにはあった。
俺の視線の先で、ゴブリンの若者が、訓練中に転んだオークの兵士に、手を貸していた。オークは、少し照れくさそうに、しかし感謝の意を込めて、その手を取る。
ほんの数週間前まで、殺し合っていた者たちが、今や仲間として、互いを支え合っている。
俺が目指していた世界が、少しずつ、しかし確実に形になり始めていた。
だが、俺はまだ満足していなかった。
組織はできた。戦力も増大した。だが、俺自身の力が、まだ足りていない。
この巨大な連合軍を率い、いずれは人間や魔王といった、さらに強大な敵と渡り合っていくためには、俺自身が、さらなる高みへと進化する必要がある。
ゴブリンロード。
あるいは、それ以上の存在へ。
俺の目は、静かに、連合軍の誕生を祝うオークの長老の一人へと向けられていた。
彼の持つ、長い年月をかけて培われた『知恵』と『歴史』。
それを食らうことで、俺は一体、何を得られるのだろうか。
俺の飽くなき食欲は、次なる獲物を、静かに見定めていた。
ゴブリンたちは、オークの屈強な肉体と、その組織的な行動に畏敬の念を抱き、オークたちは、ゴブリンたちの王である俺の知略と、その下で統率された彼らの動きに、驚きと興味を示していた。
俺は、この機会を逃さず、両種族の本格的な統合と、新たな組織の編成に乗り出した。
まず、俺はガロンを正式に、俺の軍の最高指揮官――『将軍』に任命した。
「ガロン、お前に全軍の指揮権を委ねる。ゴブリンも、オークも、お前の命令に従うことになる。俺の右腕として、この新たな軍を鍛え上げてくれ」
「ハッ! この身、命に代えましても!」
ガロンは、感激に打ち震えながら、俺の前に深く頭を垂れた。彼に軍の実権を委ねることは、オークたちの信頼を勝ち取る上で、最も効果的な方法だった。
次に、俺はオークの戦士たちの中から、特に屈強な者たちを選び出し、『オーク重装歩兵部隊』を創設した。彼らには、人間から奪った鎧の中でも、特に頑丈なものを与え、ガロンが持つ巨大な戦斧を模した武器を、オークの鍛冶場で量産させた。
彼らは、俺の軍の最前線を担う、文字通りの「壁」となる部隊だ。その圧倒的な防御力と突破力は、これまでのゴブリン部隊だけでは決して実現できなかった、新たな戦術を可能にするだろう。
そして、ゴブリンの精鋭たちは、『ゴブリン遊撃部隊』として再編成された。彼らの役割は、オークの重装歩兵が作った隙を突き、その俊敏さを活かして敵陣を攪乱し、側面や背後から奇襲をかけることだ。
重厚なオークの槌と、鋭利なゴブリンの槍。
この二つが組み合わさることで、俺の軍は、攻防一体の、バランスの取れた戦闘集団へと生まれ変わった。
リリアとルゥも、新たな役割を得ていた。リリアは、その治癒魔法と薬草の知識を活かし、非戦闘員たちで構成される『衛生部隊』を組織した。彼女の指導の下、ゴブリンやオークの女性たちが、負傷者の手当てや、ポーションの作り方を学び始めている。ルゥも、その小さな手で、一生懸命彼女を手伝っていた。
さらに、オークの長老衆は、俺の『内政顧問』として、砦の運営にその知恵を貸してくれていた。食料の備蓄管理、施設の修繕計画、そして、ゴブリンとオークの間に生じる小さな諍いの仲裁など、彼らの経験は、組織運営の様々な面で役立った。
生産技術部隊も、本格的に稼働を始めた。オークの鍛冶場からは、日夜、鉄を打つ音が響き渡り、新しい剣や斧、そして矢尻が次々と生み出されていく。これで、武器の損耗を恐れる必要はなくなった。
俺は、この新たな多種族混成軍に、名を付けることにした。
「これより、我々の軍は、『魔森連合軍』と名乗る!」
俺が、砦の中央広場で高らかに宣言すると、ゴブリンも、オークも、種族の垣根を越えて、地鳴りのような雄叫びを上げた。
ウォオオオオオ!
グルオオオオオ!
二つの異なる雄叫びが、一つに溶け合い、ガロッシュ砦の空に響き渡る。それは、新たな勢力の誕生を告げる、力強い産声だった。
俺は、将軍となったガロンを傍らに、整然と並ぶ連合軍の兵士たちを見渡した。
その数は、百五十を超える。
ホブゴブリンの王である俺を頂点に、将軍ガロンが軍を率い、リリアが後方を支え、長老衆が内政を司る。
それは、もはや単なる魔物の群れではない。
法と、秩序と、明確な役割分担を持つ、一つの『国家』の原型が、そこにはあった。
俺の視線の先で、ゴブリンの若者が、訓練中に転んだオークの兵士に、手を貸していた。オークは、少し照れくさそうに、しかし感謝の意を込めて、その手を取る。
ほんの数週間前まで、殺し合っていた者たちが、今や仲間として、互いを支え合っている。
俺が目指していた世界が、少しずつ、しかし確実に形になり始めていた。
だが、俺はまだ満足していなかった。
組織はできた。戦力も増大した。だが、俺自身の力が、まだ足りていない。
この巨大な連合軍を率い、いずれは人間や魔王といった、さらに強大な敵と渡り合っていくためには、俺自身が、さらなる高みへと進化する必要がある。
ゴブリンロード。
あるいは、それ以上の存在へ。
俺の目は、静かに、連合軍の誕生を祝うオークの長老の一人へと向けられていた。
彼の持つ、長い年月をかけて培われた『知恵』と『歴史』。
それを食らうことで、俺は一体、何を得られるのだろうか。
俺の飽くなき食欲は、次なる獲物を、静かに見定めていた。
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