ゴブリンだって進化したい!~最弱モンスターに転生したけど、スキル【弱肉強食】で食って食って食いまくったら、気づけば魔王さえ喰らう神になってた

夏見ナイ

文字の大きさ
67 / 96

第73話 空の王の捕食

しおりを挟む
ワイバーンロード、イグニールの亡骸の前に降り立った俺は、その場にひれ伏すガロンたちを見下ろした。
もはや言葉は不要だった。
彼らは俺が空の王者をも打ち倒し、その力を手に入れたことを、その魂で理解していた。

今回の戦いで多くの仲間が命を落とした。
鉄槌軍団のオークたち、疾風軍団のゴブリンたち。そして、陽動の影に隠れて密かに俺を援護してくれた斥候の仲間たち。

彼らの犠牲の上に今の俺がある。
その事実を俺は決して忘れない。

「……戦場を整理しろ。死者は手厚く弔い、傷ついた者たちを治療しろ。そして、このワイバーンロードの亡骸を……解体する」

俺の指示に、ガロンがハッとして顔を上げた。
「解体、ですか? まさか……」
「ああ。この力は無駄にはしない。俺はこの力を糧に、さらに高みへと昇る」

俺の言葉に、ガロンは複雑な表情を浮かべた。彼は俺の力を信じている。だが、同胞とも言えるワイバーンロードの亡骸を喰らうという行為は、彼にとっていまだに受け入れがたいものだったのだろう。

だが、ガロンは何も言わなかった。
彼は俺の決意を尊重し、ただ黙って部下たちに指示を出し始めた。

オークたちは手慣れた手つきで解体作業を開始した。
巨大な戦斧が振るわれ、硬い鱗が剥がされ、筋肉が切り分けられていく。かつての敵だったワイバーンの身体は、今は貴重な資源と化し、無駄にされることなく丁寧に回収されていく。

俺はリリアの元へと向かった。
彼女は衛生部隊を率いて、負傷兵たちの治療にあたっていた。ポーションを飲ませ、傷口に薬草を塗り、献身的に働く彼女の姿はまるで女神のようだった。

「リリア、ありがとう」
「……ゴブ様」

俺の言葉にリリアが顔を上げた。その瞳には安堵と、そしてほんの少しの寂しさが混じっていた。

「あなたはまた強くなってしまったのですね」
「ああ。おかげでな」
「あなたはどこまで行ってしまうのでしょうか。私にはもうあなたの背中が見えなくなりそうです」

彼女の言葉は比喩ではなかった。
ゴブリンからホブゴブリンへ。そしてゴブリンロードへ。俺の進化は留まることを知らない。いずれ彼女とは全く違う次元の存在になってしまうのではないか。リリアはそれを恐れているのだ。

俺は彼女の頬にそっと触れた。
「リリア。お前は何も心配する必要はない。俺がどんな姿になろうと、お前は俺にとってかけがえのない仲間だ。お前の知識と優しさは、俺の進むべき道を照らす光だ。それはいつまでも変わらない」

俺の言葉に、リリアの瞳から涙が溢れた。
「……ありがとうございます。私はあなたの傍にいられて、本当に幸せです」

俺はリリアを抱きしめた。彼女の温もりが、
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

M.M.O. - Monster Maker Online

夏見ナイ
SF
現実世界に居場所を見出せない大学生、神代悠。彼が救いを求めたのは、モンスターを自由に創造できる新作VRMMO『M.M.O.』だった。 彼が選んだのは、戦闘能力ゼロの不遇職【モンスターメイカー】。周囲に笑われながらも、悠はゴミ同然の素材と無限の発想力を武器に、誰も見たことのないユニークなモンスターを次々と生み出していく。 その常識外れの力は、孤高の美少女聖騎士や抜け目のない商人少女といった仲間を引き寄せ、やがて彼の名はサーバーに轟く。しかし、それは同時にゲームの支配を目論む悪徳ギルドとの全面対決の始まりを意味していた。 これは、最弱の職から唯一無二の相棒を創り出し、仲間と世界を守るために戦う、創造と成り上がりの物語。

雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった

ぐうのすけ
ファンタジー
無才・貧乏・底辺高校生の稲生アキラ(イナセアキラ)にゲームの悪役貴族が憑依した。 悪役貴族がアキラに話しかける。 「そうか、お前、魂の片割れだな? はははははは!喜べ!魂が1つになれば強さも、女も、名声も思うがままだ!」 アキラは悪役貴族を警戒するがあらゆる事件を通してお互いの境遇を知り、魂が融合し力を手に入れていく。 ある時はモンスターを無双し、ある時は配信で人気を得て、ヒロインとパーティーを組み、アキラの人生は好転し、自分の人生を切り開いていく。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

小国の若き王、ラスボスを拾う~何気なしに助けたラスボスたるダウナー系のヤンデレ魔女から愛され過ぎて辛い!~

リヒト
ファンタジー
 人類を恐怖のどん底に陥れていた魔女が勇者の手によって倒され、世界は平和になった。そんなめでたしめでたしで終わったハッピーエンドから───それが、たった十年後のこと。  権力闘争に巻き込まれた勇者が処刑され、魔女が作った空白地帯を巡って世界各国が争い合う平和とは程遠い血みどろの世界。  そんな世界で吹けば飛ぶような小国の王子に転生し、父が若くして死んでしまった為に王となってしまった僕はある日、ゲームのラスボスであった封印され苦しむ魔女を拾った。  ゲーム知識から悪い人ではないことを知っていた僕はその魔女を助けるのだが───その魔女がヤンデレ化していた上に僕を世界の覇王にしようとしていて!?

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...