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第73話 空の王の捕食
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ワイバーンロード、イグニールの亡骸の前に降り立った俺は、その場にひれ伏すガロンたちを見下ろした。
もはや言葉は不要だった。
漆黒の翼を広げ、空から舞い降りた俺の姿が、この戦いの結末を何よりも雄弁に物語っていたからだ。
「……戦場を整理しろ。死者は手厚く弔い、傷ついた者たちを治療しろ」
俺の静かな命令に、ガロンがハッとして立ち上がった。
「そして、このワイバーンロードの亡骸をグラーヘイムに持ち帰る。一片たりとも無駄にするな」
「は……ハッ!」
ガロンは俺の意図を正確に理解し、すぐさま部下たちに指示を出し始めた。オークたちが巨大な解体用の鉈を手に、畏敬の念を抱きながら、かつての空の王者の亡骸へと向かっていく。
俺はリリアの元へと向かった。
彼女は衛生部隊を率いて、負傷兵たちの治療にあたっていた。ポーションを飲ませ、傷口に薬草を塗り、献身的に働く彼女の姿は、血と硝煙に満ちたこの戦場において唯一の聖域のように見えた。
「リリア」
「……ゴブ様」
俺の姿を認め、リリアが顔を上げた。その瞳には安堵と、そしてほんの少しの寂しさが混じっていた。
「あなたはまた、遥か遠くへ行ってしまわれたのですね」
「ああ。お前たちの支援のおかげでな」
「あなたはどこまで行ってしまうのでしょうか。私にはもうあなたの背中が見えなくなりそうです」
彼女の言葉は比喩ではなかった。
ゴブリンからホブゴブリンへ。そしてゴブリンロードへ。俺の進化は留まることを知らない。いずれ彼女とは全く違う次元の存在になってしまうのではないか。リリアはそれを恐れているのだ。
俺は彼女の頬にそっと触れた。
「リリア。お前は何も心配する必要はない。俺がどんな姿になろうと、お前は俺にとってかけがえのない仲間だ。お前の知識と優しさは、俺の進むべき道を照らす光だ。それはいつまでも変わらない」
俺の言葉に、リリアの瞳から涙が溢れた。
「……ありがとうございます。私はあなたの傍にいられて、本当に幸せです」
俺はリリアをそっと抱きしめた。彼女の温もりが、激しい戦いで昂っていた俺の心を静かに癒していくようだった。
数日後、グラーヘイムはかつてないほどの祝賀ムードに包まれていた。
ワイバーンロードの討伐。それは我々がこの森の真の覇者となったことを示す、決定的な勝利だったからだ。
俺は王城の最奥、俺だけが入ることを許された私室で、一つの儀式に臨んでいた。
目の前には、ワイバーンロードの心臓から取り出された巨大な『竜の魔石』が置かれている。それは凝縮された魔力の塊であり、イグニールの力の根源そのものだった。
俺はそれを静かに持ち上げ、口へと運んだ。
そして一気にかみ砕き、飲み下す。
凄まじい熱量が腹の中から全身へと広がっていく。
既に獲得したスキルたちが、根源的な力と結びつき、さらに強化されていくのが分かった。
【スキル『飛翔』の練度が上昇しました】
【スキル『竜の息吹』の練度が上昇しました】
【スキル『王者の威圧』の練度が上昇しました】
【称号『竜殺し』を獲得しました】
【称号『空の覇者』を獲得しました】
俺の身体に、完全な形で空の王の力が宿った。
俺は静かに目を閉じ、その力を全身に馴染ませていく。
もう俺を脅かすものは、この森にはいない。
だが俺の戦いは、まだ終わらない。
俺の視線は、もはやこの森の中にはなかった。
グラーヴェ大森林の外。
人間たちの国。
そして、まだ見ぬ魔王軍。
広大な世界が、俺という新たな王の誕生をまだ知らない。
俺は彼らに教えてやらなければならない。
この森に新たな秩序が生まれたことを。
そして、その秩序を脅かす者は誰であろうと、容赦なく喰らい尽くされるということを。
俺は漆黒の翼を広げた。
次なる戦場は、この森の外だ。
世界の頂点を目指す本当の戦いは、これから始まる。
もはや言葉は不要だった。
漆黒の翼を広げ、空から舞い降りた俺の姿が、この戦いの結末を何よりも雄弁に物語っていたからだ。
「……戦場を整理しろ。死者は手厚く弔い、傷ついた者たちを治療しろ」
俺の静かな命令に、ガロンがハッとして立ち上がった。
「そして、このワイバーンロードの亡骸をグラーヘイムに持ち帰る。一片たりとも無駄にするな」
「は……ハッ!」
ガロンは俺の意図を正確に理解し、すぐさま部下たちに指示を出し始めた。オークたちが巨大な解体用の鉈を手に、畏敬の念を抱きながら、かつての空の王者の亡骸へと向かっていく。
俺はリリアの元へと向かった。
彼女は衛生部隊を率いて、負傷兵たちの治療にあたっていた。ポーションを飲ませ、傷口に薬草を塗り、献身的に働く彼女の姿は、血と硝煙に満ちたこの戦場において唯一の聖域のように見えた。
「リリア」
「……ゴブ様」
俺の姿を認め、リリアが顔を上げた。その瞳には安堵と、そしてほんの少しの寂しさが混じっていた。
「あなたはまた、遥か遠くへ行ってしまわれたのですね」
「ああ。お前たちの支援のおかげでな」
「あなたはどこまで行ってしまうのでしょうか。私にはもうあなたの背中が見えなくなりそうです」
彼女の言葉は比喩ではなかった。
ゴブリンからホブゴブリンへ。そしてゴブリンロードへ。俺の進化は留まることを知らない。いずれ彼女とは全く違う次元の存在になってしまうのではないか。リリアはそれを恐れているのだ。
俺は彼女の頬にそっと触れた。
「リリア。お前は何も心配する必要はない。俺がどんな姿になろうと、お前は俺にとってかけがえのない仲間だ。お前の知識と優しさは、俺の進むべき道を照らす光だ。それはいつまでも変わらない」
俺の言葉に、リリアの瞳から涙が溢れた。
「……ありがとうございます。私はあなたの傍にいられて、本当に幸せです」
俺はリリアをそっと抱きしめた。彼女の温もりが、激しい戦いで昂っていた俺の心を静かに癒していくようだった。
数日後、グラーヘイムはかつてないほどの祝賀ムードに包まれていた。
ワイバーンロードの討伐。それは我々がこの森の真の覇者となったことを示す、決定的な勝利だったからだ。
俺は王城の最奥、俺だけが入ることを許された私室で、一つの儀式に臨んでいた。
目の前には、ワイバーンロードの心臓から取り出された巨大な『竜の魔石』が置かれている。それは凝縮された魔力の塊であり、イグニールの力の根源そのものだった。
俺はそれを静かに持ち上げ、口へと運んだ。
そして一気にかみ砕き、飲み下す。
凄まじい熱量が腹の中から全身へと広がっていく。
既に獲得したスキルたちが、根源的な力と結びつき、さらに強化されていくのが分かった。
【スキル『飛翔』の練度が上昇しました】
【スキル『竜の息吹』の練度が上昇しました】
【スキル『王者の威圧』の練度が上昇しました】
【称号『竜殺し』を獲得しました】
【称号『空の覇者』を獲得しました】
俺の身体に、完全な形で空の王の力が宿った。
俺は静かに目を閉じ、その力を全身に馴染ませていく。
もう俺を脅かすものは、この森にはいない。
だが俺の戦いは、まだ終わらない。
俺の視線は、もはやこの森の中にはなかった。
グラーヴェ大森林の外。
人間たちの国。
そして、まだ見ぬ魔王軍。
広大な世界が、俺という新たな王の誕生をまだ知らない。
俺は彼らに教えてやらなければならない。
この森に新たな秩序が生まれたことを。
そして、その秩序を脅かす者は誰であろうと、容赦なく喰らい尽くされるということを。
俺は漆黒の翼を広げた。
次なる戦場は、この森の外だ。
世界の頂点を目指す本当の戦いは、これから始まる。
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