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第74話 新たな翼
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ワイバーンロード、イグニールの討伐。
その知らせは竜哭山に残っていたワイバーンたちに、絶対的な衝撃と混乱をもたらした。
彼らの王が死んだ。
数百年もの間、この森の空を支配し絶対的な存在として君臨していた王が、地上から現れた名も知れぬ魔物の王に討ち取られた。
彼らは拠り所を失った。
ある者は怒りに任せて、単独でグラーヘ-イムへの復讐を試みたが、城壁にずらりと並んだバリスタの餌食となった。
またある者は恐怖に駆られ、竜哭山を捨ててどこかへと逃げ去っていった。
そして残った大半のワイバーンたちは、ただ自分たちの巣でこれからどうすべきか分からず、途方に暮れていた。
俺は、その好機を逃さなかった。
俺がこの森の新たな支配者であることを彼らに認めさせる必要がある。そして彼らの力は、今後の俺の覇道において必要不可欠な戦力だった。
俺はガロン率いるオークの重装歩兵部隊と、ゴブリンの遊撃部隊を率いて竜哭山へと向かった。
だがそれは、殲滅のための軍隊ではなかった。
竜哭山の麓に到着すると、俺は部隊を待機させ、一人で空へと舞い上がった。
漆黒の翼を広げ、ゆっくりと、しかし威厳を持って山の頂上を目指す。
俺の姿を認め、巣に残っていたワイバーンたちが一斉に警戒態勢に入った。彼らは威嚇の咆哮を上げ、俺という侵入者を睨みつけている。その数、およそ二十。いずれも歴戦の強者であることが、その鋭い眼光から窺えた。
俺はかつてイグニールがいた、玉座のような岩棚に静かに舞い降りた。
そして眼下に広がるワイバーンたちを、ただ黙って見下ろした。
言葉は不要だった。
俺はゴブリンロードとしての【魔王の覇気】と、イグニールから受け継いだ【王者の威圧】を、同時に最大限に解放した。
凄まじいプレッシャーが竜哭山全体を支配する。
それは彼らがかつて感じていたイグニールの威圧感を遥かに凌駕する、絶対的な支配のオーラだった。
「ギ……!?」
「グ……ル……!?」
ワイバーンたちの威嚇が、戸惑いの呻きへと変わっていく。
彼らの本能が理解していた。
目の前に立つこの漆黒の翼を持つ王は、自分たちの前の王を打ち破り、その力を完全に吸収した正統なる後継者であり、そしてそれを遥かに超える規格外の存在であることを。
彼らのDNAに刻み込まれた、強者への絶対服従の掟。
それが彼らの誇り高い心をねじ伏せていく。
一頭の、特に年嵩でおそらくはイグニールの側近であったであろうワイバーンが、最初にその巨大な頭を垂れた。
それは降伏の証。
それを皮切りに、また一頭、また一頭と、全てのワイバーンが俺の前にひれ伏していった。
彼らは新たな王を受け入れたのだ。
森の新たな秩序を認めたのだ。
俺は静かに頷いた。
「良い判断だ。お前たちの忠誠、確かに受け取った」
俺の声がテレパシーのように彼らの脳内に響き渡る。
「我が名はゴブ。この森の新たな覇者だ。今日よりお前たちは俺の翼となれ。俺と共にこの森の外の世界を、その目に焼き付けることになるだろう」
こうして俺は、この森で最強と言われたワイバーンという強力な航空戦力を、一滴の血も流すことなく完全に手中に収めた。
彼らはこれより『竜翼軍団(ドラグーン)』として再編成され、俺直属の最強の切り札となる。
俺はひれ伏すワイバーンたちを見下ろしながら考えていた。
この力があれば、もはや人間の城壁など何の意味もなさない。
空からの奇襲、ブレスによる絨毯爆撃。人間の軍隊では到底対応できないだろう。
だが俺はすぐに人間と事を構えるつもりはなかった。
まだ準備が足りない。
俺たちの国、グラーヘイムはまだ生まれたばかりの赤子だ。
軍事力は増大したが、内政、文化、そして何より多種族が共存するための確固たる思想がまだ確立されていない。
性急な戦争は自滅を招くだけだ。
俺の視線は再びグラーヘイムへと向けられていた。
まずは足元を固める。
この森を誰にも侵されることのない、盤石の王国へと作り上げる。
それが世界へ打って出る前に、俺が為すべき最後の仕上げだった。
その知らせは竜哭山に残っていたワイバーンたちに、絶対的な衝撃と混乱をもたらした。
彼らの王が死んだ。
数百年もの間、この森の空を支配し絶対的な存在として君臨していた王が、地上から現れた名も知れぬ魔物の王に討ち取られた。
彼らは拠り所を失った。
ある者は怒りに任せて、単独でグラーヘ-イムへの復讐を試みたが、城壁にずらりと並んだバリスタの餌食となった。
またある者は恐怖に駆られ、竜哭山を捨ててどこかへと逃げ去っていった。
そして残った大半のワイバーンたちは、ただ自分たちの巣でこれからどうすべきか分からず、途方に暮れていた。
俺は、その好機を逃さなかった。
俺がこの森の新たな支配者であることを彼らに認めさせる必要がある。そして彼らの力は、今後の俺の覇道において必要不可欠な戦力だった。
俺はガロン率いるオークの重装歩兵部隊と、ゴブリンの遊撃部隊を率いて竜哭山へと向かった。
だがそれは、殲滅のための軍隊ではなかった。
竜哭山の麓に到着すると、俺は部隊を待機させ、一人で空へと舞い上がった。
漆黒の翼を広げ、ゆっくりと、しかし威厳を持って山の頂上を目指す。
俺の姿を認め、巣に残っていたワイバーンたちが一斉に警戒態勢に入った。彼らは威嚇の咆哮を上げ、俺という侵入者を睨みつけている。その数、およそ二十。いずれも歴戦の強者であることが、その鋭い眼光から窺えた。
俺はかつてイグニールがいた、玉座のような岩棚に静かに舞い降りた。
そして眼下に広がるワイバーンたちを、ただ黙って見下ろした。
言葉は不要だった。
俺はゴブリンロードとしての【魔王の覇気】と、イグニールから受け継いだ【王者の威圧】を、同時に最大限に解放した。
凄まじいプレッシャーが竜哭山全体を支配する。
それは彼らがかつて感じていたイグニールの威圧感を遥かに凌駕する、絶対的な支配のオーラだった。
「ギ……!?」
「グ……ル……!?」
ワイバーンたちの威嚇が、戸惑いの呻きへと変わっていく。
彼らの本能が理解していた。
目の前に立つこの漆黒の翼を持つ王は、自分たちの前の王を打ち破り、その力を完全に吸収した正統なる後継者であり、そしてそれを遥かに超える規格外の存在であることを。
彼らのDNAに刻み込まれた、強者への絶対服従の掟。
それが彼らの誇り高い心をねじ伏せていく。
一頭の、特に年嵩でおそらくはイグニールの側近であったであろうワイバーンが、最初にその巨大な頭を垂れた。
それは降伏の証。
それを皮切りに、また一頭、また一頭と、全てのワイバーンが俺の前にひれ伏していった。
彼らは新たな王を受け入れたのだ。
森の新たな秩序を認めたのだ。
俺は静かに頷いた。
「良い判断だ。お前たちの忠誠、確かに受け取った」
俺の声がテレパシーのように彼らの脳内に響き渡る。
「我が名はゴブ。この森の新たな覇者だ。今日よりお前たちは俺の翼となれ。俺と共にこの森の外の世界を、その目に焼き付けることになるだろう」
こうして俺は、この森で最強と言われたワイバーンという強力な航空戦力を、一滴の血も流すことなく完全に手中に収めた。
彼らはこれより『竜翼軍団(ドラグーン)』として再編成され、俺直属の最強の切り札となる。
俺はひれ伏すワイバーンたちを見下ろしながら考えていた。
この力があれば、もはや人間の城壁など何の意味もなさない。
空からの奇襲、ブレスによる絨毯爆撃。人間の軍隊では到底対応できないだろう。
だが俺はすぐに人間と事を構えるつもりはなかった。
まだ準備が足りない。
俺たちの国、グラーヘイムはまだ生まれたばかりの赤子だ。
軍事力は増大したが、内政、文化、そして何より多種族が共存するための確固たる思想がまだ確立されていない。
性急な戦争は自滅を招くだけだ。
俺の視線は再びグラーヘイムへと向けられていた。
まずは足元を固める。
この森を誰にも侵されることのない、盤石の王国へと作り上げる。
それが世界へ打って出る前に、俺が為すべき最後の仕上げだった。
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