外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ

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第8話 神の素材【神の涙】

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森から町に戻った俺は、町の小さな食堂で安いスープとパンを頼み、遅い昼食をとっていた。
手に入れた薬草は薬屋に買い取ってもらい、数枚の銅貨を得ることができた。これで数日は食いつなげるだろう。しかし、俺の心はそんなことよりも、シャツの内ポケットにしまい込んだあの鉱石のことでいっぱいだった。

あれは一体何なのだろうか。
ただの綺麗な石にしては、放つ光があまりにも神秘的すぎる。もしかしたら、高く売れる魔法の石かもしれない。そうなれば、当面の生活の心配はなくなる。
だが同時に、得体の知れない不安もあった。あんなものを軽々しく人に見せていいものだろうか。厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだった。

「この石の正体さえわかれば……」

俺には鑑定スキルがない。自分一人ではどうしようもなかった。
誰か、信頼できる鑑定スキル持ちはいないだろうか。

そう考えて、俺は冒険者ギルドの出張所へと向かった。エルフリーデンのギルドは、王都の本部とは比べ物にならないほど小さく、カウンターと数個のテーブルがあるだけだった。
依頼掲示板を眺めるふりをしながら、中にいる人間を観察する。すると、隅のテーブルで一人、エールを飲んでいる老人が目に入った。
皺の深い顔に、片目は眼帯で覆われている。しかし、その佇まいには、そこらのチンピラとは違う、歴戦の強者の雰囲気が残っていた。昔は高ランクの冒険者だったのかもしれない。

俺は意を決して、その老人のテーブルに近づいた。
「あ、あの……すみません。少し、お伺いしたいのですが」
老人はゆっくりと顔を上げ、残った片目で俺をじろりと見た。
「なんだ、小僧。俺に何の用だ」
「鑑定スキルをお持ちではないかと思いまして。もしよろしければ、見ていただきたいものが……」

俺がそう言うと、老人は少し意外そうな顔をした。
「ほう、鑑定か。確かに持ってはいるが……今は引退した身だ。大したものは見れんぞ」
「いえ、大したものではないんです。森で拾った、ただの綺麗な石ころなんですが、少し気になって」

俺は周囲に人がいないことを確認し、懐から布に包んだ鉱石を取り出した。そして、テーブルの下で、こっそりと老人の前に差し出す。
老人は怪訝な顔で布をめくり、中の鉱石を覗き込んだ。

次の瞬間、老人の顔色が変わった。
その目は驚愕に見開かれ、エールを飲んでいた唇がわななく。
「こ、これは……馬鹿な……こんなものが、辺境の森に……?」

老人は慌てて周囲を見回すと、声を潜めて俺に問い詰めた。
「小僧、これをどこで手に入れた!」
「え、あ、町の外れの森の中です……」
「他に誰か知っている者はいるか!?」
「い、いえ、誰も……」

老人はゴクリと唾を飲み込むと、俺の耳元に顔を寄せて、震える声で囁いた。
「小僧、よく聞け。これはただの石ころなんかじゃねえ。神話に謳われる幻の素材……【神の涙】だ」

【神の涙】。
初めて聞く名だった。
「神が、人の世のあまりの愚かさに嘆き、流した涙の欠片が結晶化したもの、と言われている。あらゆる魔力を浄化し、同時に神聖な力を宿す、究極の触媒だ」

究極の触媒。その言葉に、俺の心臓がどくんと高鳴った。
これを錬成すれば、とてつもないアイテムが作れるかもしれない!
だが、老人の次の言葉が、その期待を打ち砕いた。

「だがな、小僧。こいつは同時に『加工不可能な鉱石』としても有名だ。オリハルコンよりも硬く、アダマンタイトよりも緻密で、どんな魔法の炎も、どんな伝説の槌も、こいつに傷一つ付けることはできん。これまで、数多の腕利き職人が挑戦し、誰一人として加工できた者はいない」

加工、不可能。
その言葉が、頭の中で重く響いた。
結局、ただの綺麗で頑丈なだけの石ころだということか。

「いいか、このことは誰にも言うな。もしこれが【神の涙】だと知れ渡れば、お前は国中の権力者や欲深い連中から命を狙われることになる。幸運を呼ぶとも、災厄を呼ぶとも言われる所以だ」
そう言って、老人は鉱石を俺の手に押し戻した。
「……忠告、感謝します」

俺は礼を言い、ギルドを後にした。
手の中にある【神の涙】が、急にひどく重たいものに感じられた。
希望の光かと思ったそれは、下手をすれば我が身を滅ぼす呪いのアイテムなのかもしれない。
俺はやり場のない感情を抱えたまま、宿屋への道を、ただとぼとぼと歩くしかなかった。
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