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第36話 解呪アイテムの設計
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工房に、リリアの静かな嗚咽だけが響いていた。
眠るイグナのベッドの傍らで、彼女は自分の無力さと軽率さを責め続けている。俺はそんな彼女の肩にそっと手を置き、静かに言った。
「リリア。泣いているだけでは、何も解決しない」
俺の言葉に、彼女ははっと顔を上げた。その目は涙で真っ赤に腫れている。
「ですが、わたくしは……!」
「俺が、彼女を救う」
俺は、リリアの目をまっすぐに見つめ、きっぱりと宣言した。
「イグナを、あの呪いから解放する。そのための方法を、これから考える」
その言葉には、一片の迷いもなかった。
お人好しだからじゃない。成り行きでもない。俺自身の、明確な意志だった。
俺の決意を感じ取ったのか、リリアは涙をぐいと袖で拭うと、震える声で、しかし強い意志を込めて言った。
「……わたくしも、手伝わせてください。いいえ、手伝います。これは、わたくしが招いた事態でもあるのですから。あなたのお力になれることなら、何でもします」
その瞳に宿った強い光を見て、俺はこくりと頷いた。
俺たちは工房のテーブルに向かい合い、一枚の羊皮紙を広げた。ここからが、本当の戦いの始まりだ。
「まず、問題点を整理しよう」
俺は木炭の先で、羊皮紙に書き出していく。
「一つ、呪いがイグナの魂そのものに根付いていること。半端な浄化では、魂ごと傷つけてしまう」
「二つ、彼女は竜王だ。その膨大な魔力と魂の器に耐えうる、規格外のアイテムでなければ、そもそも効果がないどころか、破壊されてしまう」
リリアは真剣な表情で頷き、自分の考えを述べた。
「魂の消耗を止めるには、わたくしの聖なる治癒の力が必要です。ですが、わたくしが常に彼女のそばにいるわけにはいきません。わたくしの力を蓄え、安定して供給し続けられる『器』のようなものがあれば……」
「その器を、俺が作る」
俺は懐から【神の涙】を取り出し、テーブルの上に置いた。それは、工房の薄暗い灯りの中でも、希望のように静かな光を放っている。
「この【神の涙】を核にして、竜王の魂格にも耐えうる、最高の解呪アイテムを作るんだ」
俺たちは、そこから夜を徹して議論を重ねた。
どんな形がいいか。腕輪か、ティアラか、それともペンダントか。
どんな機能を付与すべきか。呪いを抑制する力、魂を癒す力、そして外部の邪気から彼女を守る結界の力。
俺が職人としての知識と、【アイテム錬成・神級】で得た直感をぶつければ、リリアは聖女として培ってきた、魔術や呪いに関する膨大な知識で応える。
最初はぎこちなかった二人の意見は、共通の「イグナを救う」という目的に向かって、次第に熱を帯び、一つの完璧な形へと収束していく。
「常に身に着けてもらうには、首飾りが一番自然ですわ」
「ああ。そして、核となる【神の涙】は、心臓の真上にくるように配置する。魂に直接、力を届けられるように」
「鎖の部分には、わたくしの聖印を刻み込みましょう。わたくしの魔力と、アルトさんの作るアイテムとの親和性を高めることができます」
「それなら、鎖の素材には、聖なる力と馴染みのいいミスリル銀を使おう」
木炭が、羊皮紙の上を滑るように走る。
無数の線が引かれ、消され、また引かれていく。
俺たちの頭の中にある、それぞれの最高のイメージが、一枚の設計図の上で融合し、形になっていく。
工房の外が白み始め、朝を告げる鳥の声が聞こえてきた頃。
俺たちは、疲れ果てながらも、満足のいく表情で顔を見合わせた。
テーブルの上には、一枚の完璧な設計図が完成していた。
それは、繊細かつ力強いデザインの、一羽の竜が宝珠を抱く姿を模した首飾りの設計図だった。
「これなら、いける……」
「ええ、必ず……!」
それは、追放された職人と、聖女が紡いだ、奇跡への設計図。
眠る竜王を救うための、希望の光そのものだった。
俺たちの長い夜は、終わりを告げようとしていた。
眠るイグナのベッドの傍らで、彼女は自分の無力さと軽率さを責め続けている。俺はそんな彼女の肩にそっと手を置き、静かに言った。
「リリア。泣いているだけでは、何も解決しない」
俺の言葉に、彼女ははっと顔を上げた。その目は涙で真っ赤に腫れている。
「ですが、わたくしは……!」
「俺が、彼女を救う」
俺は、リリアの目をまっすぐに見つめ、きっぱりと宣言した。
「イグナを、あの呪いから解放する。そのための方法を、これから考える」
その言葉には、一片の迷いもなかった。
お人好しだからじゃない。成り行きでもない。俺自身の、明確な意志だった。
俺の決意を感じ取ったのか、リリアは涙をぐいと袖で拭うと、震える声で、しかし強い意志を込めて言った。
「……わたくしも、手伝わせてください。いいえ、手伝います。これは、わたくしが招いた事態でもあるのですから。あなたのお力になれることなら、何でもします」
その瞳に宿った強い光を見て、俺はこくりと頷いた。
俺たちは工房のテーブルに向かい合い、一枚の羊皮紙を広げた。ここからが、本当の戦いの始まりだ。
「まず、問題点を整理しよう」
俺は木炭の先で、羊皮紙に書き出していく。
「一つ、呪いがイグナの魂そのものに根付いていること。半端な浄化では、魂ごと傷つけてしまう」
「二つ、彼女は竜王だ。その膨大な魔力と魂の器に耐えうる、規格外のアイテムでなければ、そもそも効果がないどころか、破壊されてしまう」
リリアは真剣な表情で頷き、自分の考えを述べた。
「魂の消耗を止めるには、わたくしの聖なる治癒の力が必要です。ですが、わたくしが常に彼女のそばにいるわけにはいきません。わたくしの力を蓄え、安定して供給し続けられる『器』のようなものがあれば……」
「その器を、俺が作る」
俺は懐から【神の涙】を取り出し、テーブルの上に置いた。それは、工房の薄暗い灯りの中でも、希望のように静かな光を放っている。
「この【神の涙】を核にして、竜王の魂格にも耐えうる、最高の解呪アイテムを作るんだ」
俺たちは、そこから夜を徹して議論を重ねた。
どんな形がいいか。腕輪か、ティアラか、それともペンダントか。
どんな機能を付与すべきか。呪いを抑制する力、魂を癒す力、そして外部の邪気から彼女を守る結界の力。
俺が職人としての知識と、【アイテム錬成・神級】で得た直感をぶつければ、リリアは聖女として培ってきた、魔術や呪いに関する膨大な知識で応える。
最初はぎこちなかった二人の意見は、共通の「イグナを救う」という目的に向かって、次第に熱を帯び、一つの完璧な形へと収束していく。
「常に身に着けてもらうには、首飾りが一番自然ですわ」
「ああ。そして、核となる【神の涙】は、心臓の真上にくるように配置する。魂に直接、力を届けられるように」
「鎖の部分には、わたくしの聖印を刻み込みましょう。わたくしの魔力と、アルトさんの作るアイテムとの親和性を高めることができます」
「それなら、鎖の素材には、聖なる力と馴染みのいいミスリル銀を使おう」
木炭が、羊皮紙の上を滑るように走る。
無数の線が引かれ、消され、また引かれていく。
俺たちの頭の中にある、それぞれの最高のイメージが、一枚の設計図の上で融合し、形になっていく。
工房の外が白み始め、朝を告げる鳥の声が聞こえてきた頃。
俺たちは、疲れ果てながらも、満足のいく表情で顔を見合わせた。
テーブルの上には、一枚の完璧な設計図が完成していた。
それは、繊細かつ力強いデザインの、一羽の竜が宝珠を抱く姿を模した首飾りの設計図だった。
「これなら、いける……」
「ええ、必ず……!」
それは、追放された職人と、聖女が紡いだ、奇跡への設計図。
眠る竜王を救うための、希望の光そのものだった。
俺たちの長い夜は、終わりを告げようとしていた。
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