外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ

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第47話 三人ではじめてのお買い物

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工房での生活は、穏やかで、そして賑やかだった。
依頼をこなし、金床に向かう日々。その傍らには、いつも二人の少女の姿があった。
そんなある日の朝、俺は工房の小さな食料庫の前で、腕を組んで唸っていた。

「うーん、すっからかんだな……」
棚の上は、見事に空っぽ。パンも、干し肉も、野菜も、ほとんど底をついている。特に、イグナのお気に入りである、お菓子作りに使う砂糖やバターは完全になくなっていた。

「アルト、菓子はまだか。我が腹の虫が、甘味を求めて鳴いておるぞ」
背後から、不満げな声が飛んでくる。椅子の上で足をぶらぶらさせているイグナだ。
「ないものはないんだよ。仕方ない、今日は一日休んで、町へ買い出しに行くか」
俺がそう言うと、イグナの目がキランと輝いた。

すると、今まで静かに本を読んでいたリリアが、ぱっと顔を上げた。
「まあ、お買い物ですか! では、ぜひわたくしもご一緒させてください! 荷物持ちくらいはお安い御用ですわ!」
彼女は、聖女の立場では決してできない「普通のお買い物」という響きに、目を輝かせている。

その様子を見たイグナも、負けじと椅子から飛び降りた。
「ふん、ならば我も行ってやらねばなるまい。この愚直な男が、悪徳商人にぼったくられぬよう、この我が鋭い眼で見張ってやらねばな」
どう考えても、後からとってつけたような理由だった。本当は、ただ一緒に出かけたいだけなのが見え見えだ。

こうして、半ば必然的に、俺とリリアとイグナ、三人での初めての共同作業(お買い物)が決まったのだった。

エルフリーデンの市場は、昼前の時間帯ということもあり、活気に満ち溢れていた。
威勢のいい商人たちの声、新鮮な野菜や果物の匂い、焼きたてのパンの香ばしい香り。そういった全てが、ごちゃ混ぜになって人の活気を生み出している。

「わあ……! すごいですわ、アルトさん!」
リリアは、見るもの全てが珍しいらしく、子供のようにはしゃいでいた。普段は護衛に囲まれて、こんな風に自由に市場を歩くことなどできないのだろう。
「見てください、このトマト! ルビーのように真っ赤ですわ!」
「この布の刺繍、とても素敵……!」

一方のイグナは、興味なさげな顔で腕を組んでいたが、その鼻はひくひくと動いていた。
「む……。あの串に刺して焼いている肉、なかなか悪くない匂いをさせておるな……」
結局、二人とも好奇心には勝てないらしかった。

俺は、そんな二人の保護者のような気分で、苦笑しながら買い物リストを片手に目的の店へと向かう。
しかし、ことはそう簡単には進まなかった。

八百屋の前では、「アルトの作るシチューには、甘みの強いこちらのカボチャが合うに決まっておる!」「いいえ、煮崩れしにくいこちらのカボチャの方が、アルトさんの手間を省けますわ!」と、二人が一つのカボチャを巡って言い争いを始める。

肉屋の前では、「我は脂身の多いバラ肉がいい! 力の源だ!」「アルトさんのお体を考えれば、ヘルシーな赤身のヒレ肉が一番ですわ!」と、またしても一歩も譲らない。

結局、俺が「どっちも買うから喧嘩するな!」と仲裁するまで、二人の論争は続いた。
おかげで、俺の買い物籠は、あっという間に予定の倍以上の食材で膨れ上がってしまった。

そんな騒がしい俺たちの姿は、当然のように町の人々の注目を集めていた。
「おお、アルトさんじゃないか。いつの間に、こんなどえらい美人さんを二人も……やるのう!」
通りかかったゴードン爺さんに、ニヤニヤしながら肩を叩かれる。俺は「ち、違いますよ!」と慌てて否定するが、リリアとイグナはどこか満足げな顔をしていた。

買い物の帰り道、俺たちの両手はたくさんの買い物袋でいっぱいだった。
「アルト、我はあの串焼きが気に入った。また連れて行け」
「アルトさん、今度はあのお洋服屋さんにも、ゆっくり立ち寄ってみたいですわ」
二人は、言い争いばかりしていたはずなのに、その表情はとても楽しそうだ。

「はいはい、また今度な」
俺は、賑やかすぎる二人のリクエストに苦笑しながらも、このどうしようもなく騒がしくて、温かい日常を、心の底から愛おしいと思っていた。

工房に戻り、たくさんの食材をテーブルの上に広げる。
さて、今夜は何を作ろうか。俺がそう考え始めた途端、隣から二つの声が同時に響いた。
「今夜は肉料理がいいぞ、アルト!」
「温かいスープも、忘れてはいけませんわ!」

俺の賑やかな日常は、どうやらまだまだ続いていくらしい。
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