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第66話 素材探しの冒険・森の章
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(※プロット85話~88話を分割して描写)
国王たちに見送られ、俺たち三人は王城の裏手にある、王家専用の転移門の前に立っていた。
最初の目的地は、『破邪の聖剣』の柄となる「世界樹の聖なる枝」が眠るという、王国の北方に広がる「迷いの大森林」だ。
「この転移門は、森林の入り口まで繋がっています。ですが、その奥は古代の魔法によって守られており、人の足では踏み入ることができません」
リリアが、少し不安げに説明する。
「大丈夫だ」
イグナが、自信満々に胸を張る。
「我が記憶が確かなら、この森の中心には、聖なる力を持つ者だけが通れる、隠された道があるはずだ。リリア、貴様の出番だぞ」
「はい!」
転移門が眩い光を放ち、次の瞬間、俺たちの体は鬱蒼とした巨大な樹々に囲まれた、静かな森の入り口へと転移していた。
空気の密度が違う。生命の気配が、あまりにも濃密だ。一本一本の木が、それ自体に意志を持っているかのように、荘厳なオーラを放っていた。
「すごい……これが、迷いの大森林……」
俺が圧倒されていると、リリアが一歩前に出た。
彼女は目を閉じ、深く息を吸い込むと、その身に宿る聖なる力に意識を集中させる。
すると、彼女の体が淡い光を放ち始め、その光に呼応するように、森の奥から、微かな風が吹いてきた。それは、まるで森がリリアを歓迎し、手招きしているかのようだった。
「……こちらです」
リリアは目を開けると、確信を持って、獣道すらない森の奥へと歩き出した。
俺とイグナは、黙ってその後に続く。
不思議なことに、俺たちが進むと、それまで行く手を阻んでいた茨や下草が、ひとりでに道を空けていく。リリアの聖なる力に、森が敬意を払っているのだ。
数時間、歩き続いただろうか。
森はますます深くなり、周囲は神秘的な静寂に包まれていた。
そんな中、俺たちは昼食のために、開けた場所で休憩を取ることにした。
「さて、と。腹ごしらえでもするか」
俺が背負っていたリュックから、王城で持たせてもらった保存食のパンと干し肉を取り出す。
「アルト、火を」
イグナが当然のように命令するので、俺は苦笑しながら、魔法で小さな焚き火をおこした。
火で炙った干し肉を、三人で分け合って食べる。
「ふむ。質素だが、外で食う飯というのも悪くないな」
「こうして、外で食事をするのは、とても久しぶりですわ」
イグナとリリアは、言い争いをすることもなく、ただ穏やかな時間を楽しんでいるようだった。
この旅は、ただ素材を探すだけではない。
こうして、三人で協力し、同じ釜の飯ならぬ、同じ焚き火の肉を食べる。その一つ一つの経験が、俺たちの絆を、より強く、確かなものにしていくのを感じていた。
食事を終え、再び歩き始めた俺たちの前に、突如として一体の魔物が姿を現した。
森の守護者と呼ばれる、巨大な熊の姿をした魔物「フォレストガーディアン」だ。その体は、硬い樹皮のようなもので覆われ、鋭い爪はミスリル銀のように輝いている。
「侵入者には、容赦しない」
地響きのような声が、俺たちの頭上に響いた。
「我が出る」
イグナが前に出ようとするのを、俺が手で制した。
「ここは、俺に任せてくれ」
俺はリュックから、道中で【アイテム錬成】を使って即席で作っておいた、小さな鉄の球体を数個取り出した。
「イグナもリリアも、下がってて」
俺はフォレストガーディアンに向き直ると、その鉄球を魔物の足元へと投げつけた。
鉄球は地面に転がると、カチリ、と小さな音を立てる。
次の瞬間、鉄球から強力な粘着質の糸が無数に射出され、フォレストガーディアンの両足を絡め取った。
「なっ……!?」
動けなくなった魔物が、驚きの声を上げる。
「これは、ただの粘着糸じゃない。俺の魔力で編み上げてるから、君の力じゃ切れないはずだ」
俺は、もう一つの球体を投げた。それは、魔物の目の前で弾け、強烈な眠りを誘う香りをあたりに撒き散らす。
フォレストガーディアンは、抵抗する間もなく、その巨体を揺らし、やがて、どしんと音を立ててその場に倒れ込み、穏やかな寝息を立て始めた。
「……すごい」
リリアが、感嘆の声を漏らす。
「アルトさん、あなた、戦っても強かったのですね」
「いや、これは戦いじゃない。ただ、少しだけ足止めさせてもらっただけだよ」
俺は眠る魔物に近づくと、その頭を優しく撫でた。
「ごめんな、驚かせて。俺たちは、この森を荒らしに来たわけじゃないんだ」
俺の言葉が届いたのか、フォレストガーディアンは、眠りながらも穏やかな表情になったように見えた。
イグナが、少しだけ感心したような、面白そうな顔で俺を見ている。
「ふん。力だけが、全てではないということか。少しは、見直してやったぞ、アルト」
俺たちは、眠る守護者の横を通り過ぎ、再び森の奥を目指す。
この先に待つ、世界樹の聖域へ。
三人の心を一つにして、俺たちの冒険は、まだ始まったばかりだった。
国王たちに見送られ、俺たち三人は王城の裏手にある、王家専用の転移門の前に立っていた。
最初の目的地は、『破邪の聖剣』の柄となる「世界樹の聖なる枝」が眠るという、王国の北方に広がる「迷いの大森林」だ。
「この転移門は、森林の入り口まで繋がっています。ですが、その奥は古代の魔法によって守られており、人の足では踏み入ることができません」
リリアが、少し不安げに説明する。
「大丈夫だ」
イグナが、自信満々に胸を張る。
「我が記憶が確かなら、この森の中心には、聖なる力を持つ者だけが通れる、隠された道があるはずだ。リリア、貴様の出番だぞ」
「はい!」
転移門が眩い光を放ち、次の瞬間、俺たちの体は鬱蒼とした巨大な樹々に囲まれた、静かな森の入り口へと転移していた。
空気の密度が違う。生命の気配が、あまりにも濃密だ。一本一本の木が、それ自体に意志を持っているかのように、荘厳なオーラを放っていた。
「すごい……これが、迷いの大森林……」
俺が圧倒されていると、リリアが一歩前に出た。
彼女は目を閉じ、深く息を吸い込むと、その身に宿る聖なる力に意識を集中させる。
すると、彼女の体が淡い光を放ち始め、その光に呼応するように、森の奥から、微かな風が吹いてきた。それは、まるで森がリリアを歓迎し、手招きしているかのようだった。
「……こちらです」
リリアは目を開けると、確信を持って、獣道すらない森の奥へと歩き出した。
俺とイグナは、黙ってその後に続く。
不思議なことに、俺たちが進むと、それまで行く手を阻んでいた茨や下草が、ひとりでに道を空けていく。リリアの聖なる力に、森が敬意を払っているのだ。
数時間、歩き続いただろうか。
森はますます深くなり、周囲は神秘的な静寂に包まれていた。
そんな中、俺たちは昼食のために、開けた場所で休憩を取ることにした。
「さて、と。腹ごしらえでもするか」
俺が背負っていたリュックから、王城で持たせてもらった保存食のパンと干し肉を取り出す。
「アルト、火を」
イグナが当然のように命令するので、俺は苦笑しながら、魔法で小さな焚き火をおこした。
火で炙った干し肉を、三人で分け合って食べる。
「ふむ。質素だが、外で食う飯というのも悪くないな」
「こうして、外で食事をするのは、とても久しぶりですわ」
イグナとリリアは、言い争いをすることもなく、ただ穏やかな時間を楽しんでいるようだった。
この旅は、ただ素材を探すだけではない。
こうして、三人で協力し、同じ釜の飯ならぬ、同じ焚き火の肉を食べる。その一つ一つの経験が、俺たちの絆を、より強く、確かなものにしていくのを感じていた。
食事を終え、再び歩き始めた俺たちの前に、突如として一体の魔物が姿を現した。
森の守護者と呼ばれる、巨大な熊の姿をした魔物「フォレストガーディアン」だ。その体は、硬い樹皮のようなもので覆われ、鋭い爪はミスリル銀のように輝いている。
「侵入者には、容赦しない」
地響きのような声が、俺たちの頭上に響いた。
「我が出る」
イグナが前に出ようとするのを、俺が手で制した。
「ここは、俺に任せてくれ」
俺はリュックから、道中で【アイテム錬成】を使って即席で作っておいた、小さな鉄の球体を数個取り出した。
「イグナもリリアも、下がってて」
俺はフォレストガーディアンに向き直ると、その鉄球を魔物の足元へと投げつけた。
鉄球は地面に転がると、カチリ、と小さな音を立てる。
次の瞬間、鉄球から強力な粘着質の糸が無数に射出され、フォレストガーディアンの両足を絡め取った。
「なっ……!?」
動けなくなった魔物が、驚きの声を上げる。
「これは、ただの粘着糸じゃない。俺の魔力で編み上げてるから、君の力じゃ切れないはずだ」
俺は、もう一つの球体を投げた。それは、魔物の目の前で弾け、強烈な眠りを誘う香りをあたりに撒き散らす。
フォレストガーディアンは、抵抗する間もなく、その巨体を揺らし、やがて、どしんと音を立ててその場に倒れ込み、穏やかな寝息を立て始めた。
「……すごい」
リリアが、感嘆の声を漏らす。
「アルトさん、あなた、戦っても強かったのですね」
「いや、これは戦いじゃない。ただ、少しだけ足止めさせてもらっただけだよ」
俺は眠る魔物に近づくと、その頭を優しく撫でた。
「ごめんな、驚かせて。俺たちは、この森を荒らしに来たわけじゃないんだ」
俺の言葉が届いたのか、フォレストガーディアンは、眠りながらも穏やかな表情になったように見えた。
イグナが、少しだけ感心したような、面白そうな顔で俺を見ている。
「ふん。力だけが、全てではないということか。少しは、見直してやったぞ、アルト」
俺たちは、眠る守護者の横を通り過ぎ、再び森の奥を目指す。
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三人の心を一つにして、俺たちの冒険は、まだ始まったばかりだった。
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