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第67話 世界樹の聖域
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森の守護者を眠らせた後、俺たちはさらに奥へと進んだ。
周囲の空気は、ますます清浄になり、木々の間から漏れる光は、まるで教会のステンドグラスを通したかのように、神々しい色を帯びていた。
やがて、リリアが立ち止まり、目の前を指さした。
「……見えてきました。あれが、世界樹の聖域です」
彼女が指さす先、森が円形に開けたその中心に、一本の巨大な樹が天を突くようにそびえ立っていた。
世界樹。
その姿は、言葉を失うほどに、壮大で、そして美しかった。
幹は、磨き上げられた象牙のように白く、空高く広がる枝葉は、一枚一枚がエメラルドのように透き通った輝きを放っている。その葉から、生命の根源とも言うべき、温かく優しい光の粒子が、絶えず降り注いでいた。
「これが……世界樹……」
俺は、その圧倒的な存在感を前に、ただ立ち尽くす。
イグナでさえ、「ふむ。我が見た数百年前と、変わらぬ姿だな」と呟きながらも、その瞳には畏敬の念が浮かんでいた。
俺たちが聖域に足を踏み入れると、世界樹は、まるで俺たちを歓迎するかのように、その枝葉をざわめかせ、ひときわ強い光を放った。
「アルトさん、イグナ様。こちらです」
リリアは、迷うことなく、巨大な幹の根元へと歩み寄っていく。
そこには、まるで祭壇のように、一本だけ、ひときわ神聖な輝きを放つ枝が、静かに横たえられていた。
「『世界樹の聖なる枝』……」
それは、世界樹が、来るべき時に備え、自らの意志で切り離した、力の結晶そのものだった。
枝からは、強大な聖なる力が溢れ出ており、並の人間が触れれば、その魂が浄化されすぎて消滅してしまうほどだった。
「リリア、頼む」
俺の言葉に、リリアは頷くと、その枝の前にひざまずき、祈りを捧げ始めた。
彼女の聖女としての力が、枝の聖なる力と共鳴し、荒々しい力の奔流を、穏やかな流れへと変えていく。
「……今です、アルトさん」
俺は、リリアが力を制御してくれている間に、そっとその枝に手を伸ばした。
ひんやりとしているのに、温かい。不思議な感触が、手のひらから伝わってくる。
俺は、感謝の気持ちを込めて、その枝を丁重に持ち上げた。
目的の素材は、手に入った。
俺たちは、世界樹に深く一礼すると、聖域を後にした。
帰り道、俺は手に入れた聖なる枝を、特殊な布で包み、大切に背負う。ずしりとした重みが、プロジェクトの第一段階が完了したことを教えてくれた。
森の入り口にある転移門まで戻ってきた頃には、日はすっかり西に傾いていた。
「ふう、思ったより順調だったな」
俺が安堵の息をつくと、イグナが腕を組んで、少し不満げに言った。
「ふん。我の出番が、ほとんどなかったではないか。これでは、用心棒の名が廃る」
「そんなことないですよ。イグナ様がいてくださるだけで、わたくしたち、とても心強かったですもの」
リリアが、すかさずフォローを入れる。
最近、この二人の間には、いがみ合いだけでなく、奇妙な友情のようなものも芽生え始めているようだった。
俺は、そんな二人を見て、微笑ましく思う。
「さて、次は二つ目の素材だな」
俺の言葉に、二人の表情が引き締まる。
次の目的地は、「竜神の盾」の核となる「竜の心臓石」が眠るという、最果ての火山。
そこは、世界樹の聖域とは正反対の、灼熱と破壊の力が渦巻く、危険な場所だ。
「アルト、覚悟はよいか?」
イグナの赤い瞳が、真剣な光を帯びて俺を見る。
「ああ、もちろんだ」
「わたくしも、参ります」
俺たちは、互いの顔を見合わせ、力強く頷いた。
転移門の光が、再び俺たちを包み込む。
次なる試練の地へ。
三人の心を一つにした、伝説への道は、まだ続く。
周囲の空気は、ますます清浄になり、木々の間から漏れる光は、まるで教会のステンドグラスを通したかのように、神々しい色を帯びていた。
やがて、リリアが立ち止まり、目の前を指さした。
「……見えてきました。あれが、世界樹の聖域です」
彼女が指さす先、森が円形に開けたその中心に、一本の巨大な樹が天を突くようにそびえ立っていた。
世界樹。
その姿は、言葉を失うほどに、壮大で、そして美しかった。
幹は、磨き上げられた象牙のように白く、空高く広がる枝葉は、一枚一枚がエメラルドのように透き通った輝きを放っている。その葉から、生命の根源とも言うべき、温かく優しい光の粒子が、絶えず降り注いでいた。
「これが……世界樹……」
俺は、その圧倒的な存在感を前に、ただ立ち尽くす。
イグナでさえ、「ふむ。我が見た数百年前と、変わらぬ姿だな」と呟きながらも、その瞳には畏敬の念が浮かんでいた。
俺たちが聖域に足を踏み入れると、世界樹は、まるで俺たちを歓迎するかのように、その枝葉をざわめかせ、ひときわ強い光を放った。
「アルトさん、イグナ様。こちらです」
リリアは、迷うことなく、巨大な幹の根元へと歩み寄っていく。
そこには、まるで祭壇のように、一本だけ、ひときわ神聖な輝きを放つ枝が、静かに横たえられていた。
「『世界樹の聖なる枝』……」
それは、世界樹が、来るべき時に備え、自らの意志で切り離した、力の結晶そのものだった。
枝からは、強大な聖なる力が溢れ出ており、並の人間が触れれば、その魂が浄化されすぎて消滅してしまうほどだった。
「リリア、頼む」
俺の言葉に、リリアは頷くと、その枝の前にひざまずき、祈りを捧げ始めた。
彼女の聖女としての力が、枝の聖なる力と共鳴し、荒々しい力の奔流を、穏やかな流れへと変えていく。
「……今です、アルトさん」
俺は、リリアが力を制御してくれている間に、そっとその枝に手を伸ばした。
ひんやりとしているのに、温かい。不思議な感触が、手のひらから伝わってくる。
俺は、感謝の気持ちを込めて、その枝を丁重に持ち上げた。
目的の素材は、手に入った。
俺たちは、世界樹に深く一礼すると、聖域を後にした。
帰り道、俺は手に入れた聖なる枝を、特殊な布で包み、大切に背負う。ずしりとした重みが、プロジェクトの第一段階が完了したことを教えてくれた。
森の入り口にある転移門まで戻ってきた頃には、日はすっかり西に傾いていた。
「ふう、思ったより順調だったな」
俺が安堵の息をつくと、イグナが腕を組んで、少し不満げに言った。
「ふん。我の出番が、ほとんどなかったではないか。これでは、用心棒の名が廃る」
「そんなことないですよ。イグナ様がいてくださるだけで、わたくしたち、とても心強かったですもの」
リリアが、すかさずフォローを入れる。
最近、この二人の間には、いがみ合いだけでなく、奇妙な友情のようなものも芽生え始めているようだった。
俺は、そんな二人を見て、微笑ましく思う。
「さて、次は二つ目の素材だな」
俺の言葉に、二人の表情が引き締まる。
次の目的地は、「竜神の盾」の核となる「竜の心臓石」が眠るという、最果ての火山。
そこは、世界樹の聖域とは正反対の、灼熱と破壊の力が渦巻く、危険な場所だ。
「アルト、覚悟はよいか?」
イグナの赤い瞳が、真剣な光を帯びて俺を見る。
「ああ、もちろんだ」
「わたくしも、参ります」
俺たちは、互いの顔を見合わせ、力強く頷いた。
転移門の光が、再び俺たちを包み込む。
次なる試練の地へ。
三人の心を一つにした、伝説への道は、まだ続く。
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