【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ

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第41話:森の牙、未知の洞窟

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アークライト共同体が確かな発展の軌道に乗り始めた一方で、その周辺を取り巻く環境は、依然として予断を許さない状況にあった。森の奥深くで何かが変化している兆候は続き、以前よりも強力な魔物の目撃情報や、縄張りを追われたかのような獣たちの異常な行動が、散発的ながらも報告されるようになっていた。

「このままでは、いつ共同体のすぐ近くに危険な魔物が現れてもおかしくありませんわ」
定例会議で、セレスティアが厳しい表情で指摘した。「交易ルートの安全確保のためにも、そして何より住民たちの安全のためにも、拠点周辺の魔物領域を、一度本格的に掃討し、安全圏を明確にする必要があります」

彼女の意見は、全員の一致するところだった。アークライトの「領地」としての輪郭を定め、その内部の安全を確保することは、今後の発展に不可欠なステップだ。
「よし、やろう」リアムは決断した。「拠点周辺の一定区域を、我々の管理領域と定め、そこに巣食う危険な魔物を排除する。同時に、地形や資源の調査も行おう」

こうして、アークライト初の本格的な「魔物領域掃討作戦」が計画された。討伐隊のメンバーは、戦闘の要となるミリアとガルム、魔法支援と索敵を担当するルナ、そして全体の指揮と《概念創造》によるサポートを行うリアム。ドルガンは工房で装備の最終調整と予備の準備を行い、セレスティアは後方支援と情報整理、アルフレッドは物資管理と連絡役を担うことになった。

作戦開始の日。リアムたちは、万全の準備を整えて拠点を出発した。ミリアは、ドルガンが微調整を重ねた「獣爪の篭手(ビースト・クロウ)」を装着し、その瞳には自信と決意がみなぎっている。ガルムは、青銀色の新たな装甲を輝かせ、低い唸り声を上げて周囲を警戒している。その姿は、以前とは比較にならないほどの威圧感と頼もしさを放っていた。ルナは、魔力を探知しやすい杖(これもリアム作)を手に、常に周囲の気配を探っている。リアムは、腰に改良型のナイフを差し、背中には緊急用の資材が入ったリュックを背負っていた。

彼らは、まず拠点の東側、比較的魔物の目撃情報が多いエリアへと向かった。森は深く、昼なお暗い場所も多い。ルナの索敵魔法とミリアの鋭い五感が、潜んでいる魔物の気配をいち早く捉える。

「――前方、三時方向! 大型、一体!」
ルナの声と同時に、茂みから巨大な蜘蛛型の魔物が飛び出してきた。八つの赤い複眼を不気味に光らせ、鋭い牙からは毒液が滴り落ちている。

「ガルム、前へ! ミリア、側面から!」
リアムが即座に指示を飛ばす。
「ガウッ!」ガルムは咆哮と共に魔物に飛びかかり、その頑丈な体で突進を受け止めた。青銀色の装甲に魔物の牙が突き立てられるが、キィンという甲高い音を立てて弾かれる。以前なら深い傷を負っていたであろう攻撃が、全く通用していない!

その隙に、ミリアが驚異的なスピードで回り込み、獣爪の篭手を閃かせた。
「せやぁっ!」
鋭い爪撃が、蜘蛛の魔物の複数の脚を同時に切断する! バランスを崩して倒れ込む魔物。
「ルナ!」
「ええ! 【氷槍(アイスランス)】!」
ルナが放った氷の槍が、無防備になった魔物の弱点である腹部を正確に貫いた。魔物は断末魔の叫び声を上げ、黒い体液を撒き散らして絶命した。

見事な連携だった。以前の戦闘と比べ、それぞれの役割分担が明確になり、動きに無駄がない。特に、ミリアの成長は著しく、獣化能力を完全に解放せずとも、篭手を駆使して的確にダメージを与えられるようになっていた。ガルムの圧倒的な防御力も、戦闘の安定感を格段に向上させていた。

リアムは、直接戦闘には加わらないものの、常に戦況全体を把握し、的確な指示を送る。時には《概念創造》で足場を作ってミリアの跳躍を助けたり、あるいは魔物が放つ特殊な攻撃(毒霧や糸など)を中和する障壁を瞬間的に生み出したりと、臨機応変なサポートで戦闘を有利に進めた。

討伐隊は、その後も順調に魔物を掃討していった。遭遇する魔物は、以前よりも強力な個体が増えていたが、今の彼らの連携と装備の前には敵ではなかった。ゴブリンの小規模な集落を壊滅させ、森を荒らす凶暴なグリフォン(のような魔鳥)を撃退し、着実に安全圏を広げていく。

数日間の掃討作戦の末、拠点の東側エリアはほぼ安全になったと判断された。リアムたちは、次なる目標として、北側の岩場が多いエリアへと足を進めた。このエリアは、ドルガンの工房がある地下空洞にも繋がっている可能性があるため、特に念入りな調査が必要だった。

岩場エリアは、東側とはまた違った種類の魔物が生息していた。硬い外殻を持つ蠍型の魔物や、岩に擬態するゴーレムのような魔物など、厄介な相手が多かったが、ここでもガルムの防御力とミリアの突破力が有効に機能した。ドルガンが工房で開発した、対硬質装甲用の特殊な矢じり(リアムが創造した素材を使用)をルナが魔法の矢として放つなど、新たな戦術も試された。

そして、岩場エリアの奥深く、苔むした巨大な岩壁が連なる場所に差し掛かった時、ルナが不意に足を止めた。
「……待って。この先に、何か……強い魔力を感じるわ」彼女は眉をひそめ、杖をかざして気配を探る。「魔物の気配とは違う……もっと古くて、静かで……でも、底知れないような力……」

ミリアも、鼻をひくつかせ、虎耳を澄ませていた。
「うん……なんだか、変な匂いがする。湿った土と、古い石と……あと、鉄みたいな匂いも……」

リアムも、その場所に漂う異様な雰囲気を感じ取っていた。ガルムも、低い唸り声を上げ、特定の岩壁の前で警戒態勢をとっている。
彼らが注目する岩壁には、不自然な亀裂が入っていた。それは自然にできたものではなく、まるで巨大な扉が隠されているかのように、人工的な直線で構成されているように見えた。

「これは……」リアムは、亀裂に手を触れてみた。ひんやりとした感触。そして、その奥から、ルナが言ったように、静かだが強大な魔力の気配が漏れ出してきているのを感じた。
「洞窟……? いや、それだけじゃないな。何か、特別な場所への入り口のような気がする」

彼は《概念創造》で、その亀裂の奥を透視するようなイメージを試みた。完全には見通せないが、そこには広大な空間が広がっており、複雑な構造物が存在していること、そして多数の魔物の気配と、それらとは比較にならないほど強大な「何か」の気配が潜んでいることが感じ取れた。

「……ダンジョン、か?」
リアムは、思わず呟いた。冒険者たちが挑むという、古代の遺跡や魔物の巣窟。富と危険が眠る、未知の迷宮。こんな辺境の森に、そんなものが存在していたとは。

森の異変の原因は、これかもしれない。このダンジョンが活性化し、内部の魔物が溢れ出したり、あるいはダンジョンの魔力が周囲の生態系に影響を与えたりしているのではないか?

リアムたちは、発見されたダンジョンの入り口らしき亀裂の前で、言葉を失っていた。それは、彼らがこれまで築き上げてきた日常とは全く異質な、新たな冒険と、そして未知の脅威の始まりを告げるものだった。
内部から漏れ出してくる、古く、強大な魔力の気配。それは、彼らの好奇心を刺激すると同時に、本能的な警戒心を呼び覚ます。

この未知の洞窟に、彼らは足を踏み入れるのか? それとも、危険を察知し、今は距離を置くべきなのか?
新たな選択を迫られ、リアムは目の前の亀裂を見つめた。その暗い深淵の向こうに何が待っているのか、今はまだ知る由もない。ただ、この発見が、アークライトの未来に大きな影響を与えるであろうことだけは、確かなように思えた。森の静寂の中に、ダンジョンから漏れ出す微かな魔力の波動だけが、不気味に響いていた。
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