【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ

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第70話:王都の悪意、辺境の覚悟

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行商人マルコがもたらした「王国調査団派遣」の噂は、アークライト領に新たな緊張をもたらした。それは、もはや単なる辺境の噂話ではなく、王国中央からの明確な干渉の可能性を示す、具体的な脅威だった。領主リアムは、側近たちと共に、この事態への対応を協議した。

「調査団の責任者に、アルフォンス様が就くという憶測まで流れている……これが事実なら、調査団の目的は明白ですわ」
執務室で、セレスティアは最新の情報を分析しながら、厳しい表情で結論付けた。「調査という名目で我々の領地に介入し、些細な問題を針小棒大に報告するか、あるいは証拠を捏造してでも、『反逆』の罪を着せ、アークライト領の解体、あるいは領主であるあなたの排除を狙ってくるでしょう」

「……兄上が、そこまで」リアムは唇を噛んだ。信じたくない気持ちと、兄の性格を知るゆえの諦観が入り混じる。
「彼の最近の王都での評判や、焦りようを考えれば、十分にあり得ることですわ。彼は、自分の失地回復と、あなたへの憎悪のために、手段を選ばなくなっている」セレスティアは冷静に続けた。「我々は、この調査団を『敵意を持った侵略者』と見なし、迎え撃つ準備をしなければなりません」

「迎え撃つ……か」リアムは、その言葉の重みを噛み締めた。王国からの公式な使節団(たとえその実態が敵意に満ちたものであっても)を武力で排除すれば、それこそが王国への反逆と見なされかねない。だが、相手の言いなりになって領地を蹂躙されるわけにもいかない。

「外交的な解決の道はないのか?」ルナが尋ねた。
「現時点では難しいでしょう」セレスティアは首を振った。「アルフォンス様が裏で糸を引いている以上、調査団は最初から結論ありきでやってくるはず。話し合いで解決できる相手ではありませんわ。むしろ、下手に恭順な態度を見せれば、弱みと捉えられ、さらに強硬な要求を突きつけられる可能性が高いです」

「ならば、やるべきことは一つだな」リアムは、迷いを振り切るように、決然とした表情で言った。「彼らが『調査』という名目で不当な要求をしてきたり、あるいは武力に訴えてきたりした場合、我々は断固として、これを排除する。アークライト領の主権と、領民たちの生活を守るために」
彼の瞳には、領主としての揺るぎない覚悟が宿っていた。

「ただし、我々から先に手を出すわけにはいかない。あくまで、彼らの不当な行為に対する『自衛』という形を取る必要がある。セレスティア、そのための準備と、万が一戦闘になった場合の『正当性』を主張するための記録を頼む」
「承知いたしましたわ。全てのやり取りを記録し、彼らの横暴ぶりを白日の下に晒せるように準備いたします」セレスティアは頷いた。

「ドルガン殿」リアムは、工房から呼び出されたドワーフに視線を向けた。「開発中の防衛兵器――魔力カタパルトと自動連弩――の完成を急いでほしい。壁の上に設置し、遠距離からの『警告射撃』あるいは『迎撃』を可能にしたい」
「ふぉっふぉ、任せておけ!」ドルガンは、目を輝かせた。「ちょうど良い試作品ができたところじゃ! リアム君の魔石コアのおかげで、威力も精度も、なかなかのモンじゃぞ!」
彼の工房では、リアムの《概念創造》とドワーフ技術が融合し、アークライト領独自の防衛システムが形になりつつあった。

「ミリア」リアムは、警備隊長に向き直った。「警備隊は、調査団が領内に入ってきた際の、彼らの『護衛』という名目での監視任務と、万が一の事態に備えた即応体制を強化してくれ。挑発には乗るな。だが、領民に危害が及びそうになった場合は、躊躇なく排除しろ」
「はいっ! 必ず、領地と皆さんを守ります!」ミリアは、力強く敬礼した。その瞳には、隊長としての責任感と、仲間を守るという強い意志が燃えていた。

「ルナ、君には引き続き、領地全体の防御結界の維持と強化を頼む。そして、調査団が連れてくるかもしれない魔法使いへの対策もお願いしたい」
「ええ、任せて。古代魔法の中には、相手の魔法を妨害したり、無効化したりするものもあるわ。準備しておくわね」ルナも、静かに、しかし力強く頷いた。

リアムの指示の下、アークライト領は、来るべき「調査団」を迎え撃つための準備を、水面下で加速させていった。それは、単なる防衛強化ではなく、明確な敵意に対する「迎撃」を想定した、より積極的な備えだった。

一方、王都では、アルフォンス・アークライトが、焦りと苛立ちを募らせながら、調査団派遣の実現に向けて強引な根回しを進めていた。彼は、対立派閥の貴族や、騎士団の一部幹部に接触し、アークライト領の「脅威」を煽り立て、自身の調査団派遣への支持を取り付けようとしていた。
「辺境の反逆者を放置すれば、王国の威信に関わる!」
「アークライト領の持つ未知の技術は、国家管理下に置くべきだ!」
彼は、様々な理屈を並べ立てたが、その言葉には説得力がなく、彼の個人的な野心と焦りばかりが透けて見えた。

父であるアークライト伯爵は、アルフォンスの暴走を苦々しく思いつつも、表立っては静観するしかなかった。だが、彼は密かに、信頼できる側近に命じ、アークライト領の実態と、アルフォンスの真意について、独自に調査を進めさせていた。
「……アルフォンスめ、一体どこまで愚かなのだ……。もし、リアムが本当に……いや、今はまだ……」伯爵の苦悩は深まるばかりだった。

長兄ダリウスもまた、病床から弟の動きを憂慮していた。彼は、アルフォンスとは違う形で、辺境の末弟リアムの存在に、複雑な関心を寄せていたのかもしれない。
「……リアム。お前は、本当に父上やアルフォンスが言うような『出来損ない』なのだろうか……。それとも……」彼の胸中には、弟へのわずかな期待と、アークライト家の未来への深い不安が交錯していた。

王都の宮廷内でも、アルフォンスの強引な動きは、冷ややかな目で見られていた。多くの貴族は、辺境の小さな問題に、アークライト家の次男がなぜこれほど執着するのか訝しみ、彼の失脚を願う者さえいた。アルフォンスは、自ら墓穴を掘るように、王都での孤立を深めていたのだ。それは、彼自身の破滅へと続く、確かな道のりだった。

アークライト領では、領民たちの間にも、王国からの調査団が来るという噂が広まり、不安の声も上がっていた。だが、領主リアムが毅然とした態度で「心配はいらない。我々には、この領地を守る力がある」と語り、具体的な防衛準備が進められているのを見て、彼らは次第に落ち着きを取り戻し、むしろ領主への信頼を深め、一致団結してこの難局を乗り越えようという気運が高まっていた。
「リアム様を信じよう!」
「俺たちの手で、このアークライトを守るんだ!」
領民たちの結束は、かつてないほど強固なものとなっていた。

王都で渦巻く悪意と、辺境で固まる覚悟。二つの流れは、やがて一つの場所で交差することになるだろう。アークライト領は、その運命の時を、静かに、しかし確かな備えと共に待っていた。
リアムは、建設中の壁の上から、遥か王都の方角を見据えた。彼の瞳には、領主としての揺るぎない決意と、どんな困難にも立ち向かう覚悟の光が、強く輝いていた。嵐は、すぐそこまで迫っている。だが、光の箱舟アークライトは、決して沈まない。その確信が、彼の心を支えていた。
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