【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ

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【第71話】 夜陰の凶刃、アークライトの反撃

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独立国家アークライト。その誕生から数ヶ月、領地は発展の槌音と人々の活気で満ちていた。だが、その平和な営みの裏側で、領主リアム・アークライトとその側近たちは、決して警戒を緩めてはいなかった。王国中央の混乱、失脚した兄アルフォンスの存在、そして外部世界からの様々な視線。アークライトは、その豊かさと異質さゆえに、常に狙われる可能性を孕んでいた。

その夜も、領内は静まり返っていた。新月の闇が辺りを包み、家々の窓からは魔石ランタンの温かな光が漏れている。しかし、その静寂は、油断によるものではない。ルナが常に張り巡らせている防御結界は、以前よりもさらに感度を高め、領地の境界線を見えない網のように覆っている。ミリア率いる国防軍の兵士たちは、改良された装備を身に着け、夜間の巡回ルートを厳格に守っていた。そして、領地の要所には、警備ゴーレム・ガルムや、リアムが新たに配置した小型の監視用ゴーレムたちが、闇の中で静かに目を光らせていた。

その、張り詰めた静寂を破るように、領地の南側、まだ防御壁の建設が完全ではない森林との境界付近で、微かな、しかし確かな異変が起こった。

「……侵入者を感知。複数。魔力反応は低いですが、隠密行動に特化している模様」
執務館で待機していたルナの静かな声が、リアムの持つ簡易通信装置(ドルガン作)から響いた。結界が、ステルス能力を持つ侵入者の気配を捉えたのだ。
「数は?」リアムが冷静に問い返す。
「五……いえ、六名です。二手に分かれて行動を開始しました。一つは工房地区へ、もう一つは……こちら、執務館を目指しているようです」

「……やはり来たか」リアムは、傍らに控えていたミリアとガルムに視線を送った。「ミリア、ガルム、迎撃するぞ。アルフレッド、領内の警戒レベルを最大に。セレスティア、後方で指示を頼む」
「はいっ!」
「御意に」
「承知いたしましたわ」
仲間たちは、即座に行動を開始した。

工房地区へ向かったのは、二名の刺客だった。彼らは、事前に得ていた情報に基づき、最短ルートでドルガンの工房――アークライトの技術力の源泉――を破壊しようとしていた。だが、彼らが工房に隣接する地下空洞への隠し通路に近づいた瞬間、闇の中から巨大な影が躍り出た。
「グルルルル……!」
青銀色の装甲を纏ったガルムだ。彼の赤いセンサーアイが、侵入者たちを正確に捉えている。
「ちっ、やはり番犬がいたか!」刺客の一人が毒づき、腰に下げた特殊な短剣――ゴーレムの装甲をも貫くという触れ込みの――を抜き放った。
だが、ガルムの動きは、彼らの想像を絶していた。強化された脚部が生み出す瞬発力で、一瞬にして距離を詰め、巨大な前足の一撃が刺客を襲う!
「ぐはっ!?」
刺客は、防御する間もなく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて気を失った。もう一人の刺客は、恐慌状態に陥り逃走しようとしたが、ガルムの尻尾のように装備された浄化ハンマーが横薙ぎに振るわれ、その足を砕いた。悲鳴と共に崩れ落ちる刺客。工房への侵入は、文字通り瞬殺によって阻止された。

一方、リアムの執務館を目指していたのは、リーダー格の男を含む四名の刺客だった。彼らは、より慎重に、気配を殺しながら執務館へと近づいていた。リーダーの男――かつてリアムたちの前から逃げ延びたゼノン(ただし、その顔は以前の戦闘で負った傷と、復讐の念で歪んでいた)――は、手練れの仲間と共に、今度こそリアムの首を取るつもりだった。
「よし、ここまで気付かれていない。一気に窓から突入し、小僧の寝首を掻くぞ!」
ゼノンが合図を送ろうとした、その時。

「――そこまでだよっ!」
闇の中から、疾風のようにミリアが飛び出してきた! 獣爪の篭手と俊足の足甲を装着し、その動きは以前にも増して鋭く、力強い。
「なっ!? 小娘!?」ゼノンは驚愕したが、すぐに部下に指示を飛ばす。「囲め! さっさと片付けろ!」
三人の刺客が、ミリアを包囲するように襲い掛かる!

だが、ミリアは怯まなかった。俊足の足甲で地面を蹴り、予測不能な動きで攻撃をかわしながら、獣爪の篭手を閃かせる! キィン! キン! と金属音が響き、刺客たちの短剣やクナイが弾かれる。ミリアは、防戦一方ではなく、隙を見ては鋭い爪撃を繰り出し、確実に相手にダメージを与えていく。
「くっ……速い!」
「こいつ、前より強くなってるぞ!」
刺客たちは、ミリアの予想以上の戦闘能力に戸惑いを隠せない。

そこへ、リアムが執務館から静かに姿を現した。手には、銀色に輝く剣が握られている。
「ミリア、援護する」
「リアムさん!」

リアムは、直接的な斬り合いには加わらない。だが、彼の《概念創造》が、戦場を支配し始めた。
ゼノンがミリアに強力な一撃を加えようと踏み込んだ瞬間、彼の足元の地面が突然ぬかるみ、体勢が崩れる。
「なにっ!?」
その隙を見逃さず、ミリアの爪撃がゼノンの脇腹を浅く切り裂いた!
「ぐぅっ!」

別の刺客が、リアムに向かって毒針を投げつけようとした刹那、リアムは目の前に「風の盾」を創造し、毒針を弾き返す。
さらに、連携を取ろうとする刺客たちの間に、「音を吸収する空間」を一時的に作り出し、互いの声や合図を聞こえなくさせ、混乱を誘う。

「なんなんだ、この力は!? まるで、全てを見透かされているようだ!」
ゼノンは、リアムの不可解な能力に、焦りと恐怖を感じ始めていた。リーダーである自分が翻弄される中、他の刺客たちも、ミリアと、駆けつけた警備隊員たちによって、次々と無力化されていった。

「くそっ……! 今回も、失敗か……!」
ゼノンは、状況が不利であることを悟り、再び撤退を決意した。彼は懐から煙幕弾を取り出し、地面に叩きつけた!
「退くぞ!」
煙幕が広がり、視界が奪われる。ゼノンは、その混乱に乗じて、深手を負いながらも、闇の中へと姿を消そうとした。

「逃がさない!」
ミリアが煙幕の中へ飛び込もうとしたが、リアムがそれを制した。
「待て、ミリア。深追いは危険だ」
リアムは、逃げるゼノンの背中に向かって、一つの概念を放った。「消えない目印」。それは、物理的なマーカーではなく、ルナならば追跡可能な、微弱な魔力の痕跡を残すものだった。

煙幕が晴れた時、そこにはリーダーのゼノンを除く、全ての刺客たちが捕縛され、転がっていた。アークライト側の被害は、警備隊員数名が軽傷を負ったのみで、今回もまた、侵入者を完全に撃退することに成功した。

「……また、逃げられたか」リアムは、ゼノンが消えた闇を見つめながら、小さく呟いた。だが、今回は前回とは違う。彼には追跡の手がかりがある。
「しかし、これでアルフォンス兄上も、我々の防衛力が付け焼き刃ではないことを、思い知っただろう」
リアムは、捕らえた刺客たちを見下ろした。彼らから、さらに情報を引き出し、兄の、そしてその背後にいるかもしれない真の敵の動きを探る必要がある。

最初の攻防は、アークライト領の勝利に終わった。だが、それは同時に、敵がより本格的な手段を講じてくるであろうことを示唆していた。闇夜の刃は退けられた。しかし、その刃を振るわせる悪意の根源は、まだ断たれていない。リアムは、仲間たちと共に、次なる波に備え、決意を新たにする。このアークライトを守り抜くために。夜明けの光が、戦いの終わった大地を静かに照らし始めていた。
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