【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ

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【第88話】 高らかに響け、独立の鐘

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その日は、アークライトの短い、しかし濃密な歴史の中で、最も輝かしい一日として、永遠に人々の記憶に刻まれることになった。独立国家アークライトの誕生を宣言する日。空は、一点の曇りもない、祝福するかのような快晴だった。

領地の中心広場は、早朝から、アークライトの全ての国民――かつての難民、追放者、移住者、そしてこの地で生まれた新しい命――で埋め尽くされていた。誰もが、この歴史的な瞬間をその目で見届けようと、期待と興奮に胸を高鳴らせていた。広場には色とりどりの旗や花が飾られ、壇上には、リアムがデザインし、サラたちが心を込めて縫い上げた、光の箱舟を象徴するアークライトの新しい国旗が、誇らしげに風にはためいていた。

やがて、荘厳な音楽(ドルガンが開発した魔道具によるものだ)と共に、式典が始まった。壇上に、元首リアム・アークライトが、ルナ、セレスティア、ミリア、ドルガンを伴って姿を現すと、広場から割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。リアムは、その熱狂に穏やかに応えながら、ゆっくりとマイクの前に進み出た。広場は、水を打ったように静まり返り、全ての視線が、若き指導者へと注がれた。

「我が同胞、アークライト国民諸君!」
リアムの声が、拡声魔道具を通して、広場の隅々まで響き渡った。
「今日、我々はこの地に立ち、新たな歴史の扉を開く。思えば、我々の歩みは平坦ではなかった。追放され、見捨てられ、あるいは故郷を追われ、絶望の中でこの地にたどり着いた者も少なくないだろう。飢えと寒さ、魔物の脅威、そして外部からの不当な圧力……。我々は、多くの困難に直面してきた」
彼は、静かに過去を振り返った。その言葉は、集まった人々の胸に深く染み入る。

「だが、我々は屈しなかった!」リアムの声に、力がこもる。「我々は、互いを信じ、助け合い、力を合わせた。畑を耕し、家を建て、技術を生み出し、そして、我々の平和を脅かす者たちと戦い、勝利した! このアークライトは、誰かから与えられたものではない。我々自身の汗と、涙と、そして勇気によって築き上げられた、我々の国なのだ!」
「そうだ!」
「我々の国だ!」
広場から、力強い賛同の声が上がる。

「もはや、我々は、我々を不当に扱い、支配しようとする外部の力に従属する必要はない! 我々は、自らの運命を、自らの手で切り開く権利と、力を持っている!」
リアムは、集まった国民たちの顔を一人ひとり見渡し、確信を込めて言った。
「我々が目指すのは、自由で、公正で、誰もが安心して暮らせる、豊かな国だ。身分や出自に関係なく、全ての個人が尊重され、その能力を存分に発揮できる社会だ。互いを思いやり、支え合い、共に未来を創造していく、温かい共同体だ!」

彼の語る理想の国の姿に、国民たちは目を輝かせ、希望に胸を膨らませる。
「その理想を実現するために、今、ここに、高らかに宣言する!」
リアムは、天を仰ぎ、全身全霊の力を込めて、その言葉を発した。

「――本日をもって、アークライトは、王国からの完全な独立を宣言し、いかなる外部勢力にも従属しない、自由にして公正なる、独立国家『アークライト』となることを、ここに誓う!!」

宣言が放たれた瞬間、広場は、地鳴りのような、爆発的な歓声と拍手の渦に包まれた!
「うおおおおおおっ!!」
「独立だ! 俺たちの国が生まれたんだ!」
「アークライト! アークライト! アークライト!」
人々は、感極まって涙を流し、互いに抱き合い、肩を叩き合い、喜びを爆発させた。空には、祝福するかのように色とりどりの紙吹雪(リアムがこっそり《概念創造》で用意したものだ)が舞い上がった。それは、抑圧からの解放と、未来への希望を祝う、魂からの叫びだった。

壇上では、リアムの仲間たちもまた、それぞれの感慨と共に、新たな国の誕生を見守っていた。
ルナは、慈愛に満ちた微笑みでリアムを見つめ、心の中で誓った。(あなたの夢が、私たちの夢。この国の叡智となり、未来を照らし続けます)
ミリアは、興奮で目をキラキラさせながら、力強く拳を握りしめた。(絶対に守る! この国も、リアムさんも、私の全部で!)
セレスティアは、冷静さを装いながらも、その胸は熱く高鳴っていた。(見ていなさい。この国を、必ずや世界に冠たる国家へと導いてみせますわ。あなたと共に……)
ドルガンは、満足げに髭を撫でつけ、高らかに笑った。(ふぉっふぉ! 面白い時代になったわい! この国の技術力で、世界をあっと言わせてやるぞ!)

式典が最高潮に達する中、セレスティアがそっとリアムに耳打ちした。
「リアム様、王国中央、及び周辺領主への通告、完了いたしました。今のところ、大きな混乱や敵対的な動きはありません。バルトリア子爵からは、非公式ながら祝辞も届いておりますわ」
その報告は、アークライトの独立が、事実上、外部世界にも受け入れられつつあることを示していた。王国の混乱は、皮肉にも、アークライトの船出を後押しする追い風となっていたのだ。

リアムは、セレスティアの報告に静かに頷くと、再び、歓喜に沸く国民たちに向き直った。
「我が国民諸君! 我々の新たな歴史は、今、始まったばかりだ! 道は険しいかもしれない。だが、恐れることはない! 我々が心を一つにし、力を合わせれば、どんな未来も切り開くことができる!」
彼は、高らかに掲げられたアークライトの国旗を指さした。
「この旗の下に、共に歩もう! 自由と、希望と、そして愛に満ちた、光り輝く国、アークライトを、我々の手で築き上げていこうではないか!」

「「「おおおおおおーっ!!」」」
再び、広場は割れんばかりの歓声に包まれた。それは、独立国家アークライトの誕生と、その輝かしい未来への、力強い誓いの声だった。

独立宣言。それは、追放された少年が、仲間たちと共に、絶望の中から希望を掴み取り、自らの手で運命を切り開いた、壮大な物語の一つの到達点だった。だが、それは決して終わりではない。むしろ、ここからが、独立国家アークライトの、真の物語の始まりなのだ。
リアムは、国民たちの熱い視線を一身に受けながら、初代元首としての重責と、未来への無限の可能性を感じていた。光の箱舟は、今、新たな航海へと、高らかに汽笛を鳴らした。その前途に広がるのは、希望に満ちた、青く広大な海だった。

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