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第91話 邪神の復活
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黄金の光の柱の中で、俺はゆっくりと立ち上がった。傷ついた体はセシリアの聖なる力と仲間たちの想いを受けて急速に回復していく。砕け散った骨が繋がり、裂けた筋肉が再生する。口の中に広がっていた鉄の味は、温かい光の味へと変わっていた。
「……ありえない。ありえないぞ!」
マハトが狼狽の声を上げた。彼は目の前で起きている奇跡が理解できなかった。一度は完全に叩き伏せたはずの人間が、なぜ以前よりも強大な力を得て再び立ち上がってくるのか。
「邪神様の御力に抗うことなどできぬはずだ! なぜだ!」
「……お前には分かるまい」
俺は静かに言った。その声はもはや俺一人の声ではなかった。仲間たちの、村人たちの、そしてセシリアの無数の想いが重なり合った、力強い響きを持っていた。
「お前が信じるのは、ただ一つの絶対的な力。他者を支配し世界を無に帰すための孤独な力だ。だが、俺が信じるのは違う」
俺は鎖に縛られながらも俺を信じ、その名を叫び続けてくれる仲間たちを見回した。
「俺が信じるのは絆の力だ。互いを支え合い、想いを繋ぎ、未来を創り出すための温かい力。その力が俺に奇跡をくれるんだ!」
俺は再び拳を握りしめた。その拳に黄金の光が螺旋を描くように凝縮されていく。
「……絆、だと? 下らぬ。センチメンタルな戯言を!」
マハトは恐怖を振り払うかのように叫んだ。彼は再びその身に奈落の力を降ろし、俺に向かって突進してきた。
「神の力の前では人の想いなど塵芥に等しいことを教えてやる!」
闇のオーラをまとった異形の拳。
黄金の光をまとった人間の拳。
二つの究極の力が広間の中央で三度、激突した。
今度は拮抗しなかった。
ドゴォォォォォォンッ!!
凄まじい衝撃波が再び広間を揺るがす。だが、弾き飛ばされたのはマハトの方だった。
俺の拳は彼の闇のオーラを紙を破るように貫き、その胸部に深々とめり込んでいた。
「が……は……っ!?」
マハトの異形の体はその衝撃に耐えきれず、くの字に折れ曲がった。その目には信じられないという純粋な驚愕の色が浮かんでいる。
俺は拳を引き抜かなかった。
「この光は俺だけの光じゃない!」
俺は拳にさらに力を込めた。
「これはお前に踏みにじられた全ての人々の怒りの光だ!」
俺の拳から創生の光が奔流となってマハトの体内に注ぎ込まれていく。闇と光が彼の体の中で激しい拒絶反応を起こす。
「ぎ……あああああああああああああっ!」
マハトの体は内側から浄化され、その異形を保てなくなり始めていた。黒曜石の皮膚に無数の亀裂が走り、そこから黄金の光が漏れ出す。
「……こ、この私が……! 新たなる神となるこの私が……! こんな小僧に……!」
彼は血の涙を流しながら俺を睨みつけた。その瞳にはもはや憎悪ではなく、純粋な死への恐怖が浮かんでいた。
追い詰められたマハトは、最後の、そして最も愚かな選択をした。
「……ならば道連れだ」
彼は狂気に満ちた笑みを浮かべた。
「貴様らもこの世界も全て、奈落の底へ沈めてくれるわ!」
彼は胸に突き刺したままだった『奈落の欠片』を、力任せにさらに深く自らの心臓へと押し込んだ。
「よせ! それをすればお前は……!」
ノエルが絶叫する。
だが、もう遅かった。
「―――捧げる! 我が魂、我が肉体の全てを! 来たれ、我が主よ! 今こそその封印を解き放ち、この世に真の絶望を!」
マハトの体は光り輝く『奈落の欠片』に、まるで砂のように吸い込まれていった。彼の狂信的な最後の叫びだけが広間に虚しく響き渡る。
そして、マハトという存在が完全に消え去った後。
そこには一つの、不気味に脈動する巨大な心臓だけが残されていた。
ドクン……ドクン……。
邪神の心臓。
それは『奈落の欠片』という鍵によって、ついに大神殿の地下深くに張られていた数千年の封印から解き放たれてしまったのだ。
心臓は周囲の空間から凄まじい勢いで闇の魔力を吸い込み始める。そして、その脈動に合わせてみるみるうちにその姿を変えていった。
黒い筋肉が骨格を形成し、禍々しい鱗がその体を覆い尽くす。巨大な翼が背中から生え、鋭い牙が並ぶ巨大な顎が形作られていく。
数秒後。
俺たちの目の前に立っていたのは。
全長数十メートルにも及ぶ西洋の竜に似た、しかしそれよりも遥かにおぞましい漆黒の怪物だった。
古の時代、光の女神がその身を賭して封じ込めたとされる伝説の存在。
邪神が現代に完全に復活を遂げた瞬間だった。
「……ありえない。ありえないぞ!」
マハトが狼狽の声を上げた。彼は目の前で起きている奇跡が理解できなかった。一度は完全に叩き伏せたはずの人間が、なぜ以前よりも強大な力を得て再び立ち上がってくるのか。
「邪神様の御力に抗うことなどできぬはずだ! なぜだ!」
「……お前には分かるまい」
俺は静かに言った。その声はもはや俺一人の声ではなかった。仲間たちの、村人たちの、そしてセシリアの無数の想いが重なり合った、力強い響きを持っていた。
「お前が信じるのは、ただ一つの絶対的な力。他者を支配し世界を無に帰すための孤独な力だ。だが、俺が信じるのは違う」
俺は鎖に縛られながらも俺を信じ、その名を叫び続けてくれる仲間たちを見回した。
「俺が信じるのは絆の力だ。互いを支え合い、想いを繋ぎ、未来を創り出すための温かい力。その力が俺に奇跡をくれるんだ!」
俺は再び拳を握りしめた。その拳に黄金の光が螺旋を描くように凝縮されていく。
「……絆、だと? 下らぬ。センチメンタルな戯言を!」
マハトは恐怖を振り払うかのように叫んだ。彼は再びその身に奈落の力を降ろし、俺に向かって突進してきた。
「神の力の前では人の想いなど塵芥に等しいことを教えてやる!」
闇のオーラをまとった異形の拳。
黄金の光をまとった人間の拳。
二つの究極の力が広間の中央で三度、激突した。
今度は拮抗しなかった。
ドゴォォォォォォンッ!!
凄まじい衝撃波が再び広間を揺るがす。だが、弾き飛ばされたのはマハトの方だった。
俺の拳は彼の闇のオーラを紙を破るように貫き、その胸部に深々とめり込んでいた。
「が……は……っ!?」
マハトの異形の体はその衝撃に耐えきれず、くの字に折れ曲がった。その目には信じられないという純粋な驚愕の色が浮かんでいる。
俺は拳を引き抜かなかった。
「この光は俺だけの光じゃない!」
俺は拳にさらに力を込めた。
「これはお前に踏みにじられた全ての人々の怒りの光だ!」
俺の拳から創生の光が奔流となってマハトの体内に注ぎ込まれていく。闇と光が彼の体の中で激しい拒絶反応を起こす。
「ぎ……あああああああああああああっ!」
マハトの体は内側から浄化され、その異形を保てなくなり始めていた。黒曜石の皮膚に無数の亀裂が走り、そこから黄金の光が漏れ出す。
「……こ、この私が……! 新たなる神となるこの私が……! こんな小僧に……!」
彼は血の涙を流しながら俺を睨みつけた。その瞳にはもはや憎悪ではなく、純粋な死への恐怖が浮かんでいた。
追い詰められたマハトは、最後の、そして最も愚かな選択をした。
「……ならば道連れだ」
彼は狂気に満ちた笑みを浮かべた。
「貴様らもこの世界も全て、奈落の底へ沈めてくれるわ!」
彼は胸に突き刺したままだった『奈落の欠片』を、力任せにさらに深く自らの心臓へと押し込んだ。
「よせ! それをすればお前は……!」
ノエルが絶叫する。
だが、もう遅かった。
「―――捧げる! 我が魂、我が肉体の全てを! 来たれ、我が主よ! 今こそその封印を解き放ち、この世に真の絶望を!」
マハトの体は光り輝く『奈落の欠片』に、まるで砂のように吸い込まれていった。彼の狂信的な最後の叫びだけが広間に虚しく響き渡る。
そして、マハトという存在が完全に消え去った後。
そこには一つの、不気味に脈動する巨大な心臓だけが残されていた。
ドクン……ドクン……。
邪神の心臓。
それは『奈落の欠片』という鍵によって、ついに大神殿の地下深くに張られていた数千年の封印から解き放たれてしまったのだ。
心臓は周囲の空間から凄まじい勢いで闇の魔力を吸い込み始める。そして、その脈動に合わせてみるみるうちにその姿を変えていった。
黒い筋肉が骨格を形成し、禍々しい鱗がその体を覆い尽くす。巨大な翼が背中から生え、鋭い牙が並ぶ巨大な顎が形作られていく。
数秒後。
俺たちの目の前に立っていたのは。
全長数十メートルにも及ぶ西洋の竜に似た、しかしそれよりも遥かにおぞましい漆黒の怪物だった。
古の時代、光の女神がその身を賭して封じ込めたとされる伝説の存在。
邪神が現代に完全に復活を遂げた瞬間だった。
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