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第二十一話:波紋の代償、盤上の探求者 - ゲームは終わらない
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ネバダの砂漠での一夜は、世界を揺るがす嵐の序章に過ぎなかった。プロジェクト・キメラの実験阻止と少女『プライム』の救出という、表向きの「成功」の裏側で、俺、神崎蓮の周りには新たな、そしてより深刻な問題が渦巻き始めていた。
キメラの暴走によってこじ開けられた不安定な次元の『扉』。
それに呼応するように活性化した、謎の『カオス』の干渉波。
そして、俺たちの知らないところで蠢く、アルカナム・ソサエティやキメラ以外の『プレイヤー』たちの存在。
(ゲーム盤は、より広く、より複雑になった。そして、俺はその中心に立たされている)
日常に戻った帝聖学園の教室で、俺は窓の外を眺めながら、思考を巡らせていた。全ステータスカンストの頭脳は、睡眠不足などものともせず、膨大な情報を処理し続けている。だが、その思考には、以前のような絶対的な自信だけでなく、未知への警戒心と、わずかな焦燥感が混じり始めていた。
「おはよう、神崎君。……顔色、あまり良くないみたいだけど、大丈夫?」
橘葵が、心配そうに声をかけてきた。彼女の真っ直ぐな瞳が、俺の内心を見透かそうとしているようで、少しだけ居心地が悪い。
「ああ、少し考え事をしていただけだ。問題ない」
俺は、意識して穏やかな笑顔を作って応じた。
「そう……? ならいいんだけど……。あ、そうだ! 今度の週末、陸上部の記録会があるんだ! もしよかったら、見に来てくれないかな? 神崎君に見てもらえたら、きっと頑張れる気がするから!」
彼女は、少し照れながらも、真っ直ぐな目で俺を見つめてきた。以前の遠慮がちな態度とは違う、積極的な誘い。彼女の中で、俺との関係を諦めるのではなく、別の形で繋がろうとする意志が芽生えているのかもしれない。
「……都合がつけばな」
俺は、曖昧に返事をした。今の俺に、そんな余裕があるかは分からない。だが、彼女のひたむきな想いを、無下にはできなかった。
***
放課後、俺は図書室ではなく、神崎家の地下にあるオペレーションルームに直行した。ここが、今の俺の真の活動拠点だ。白鳥栞も、学校が終わるとすぐにここへ来て、解析作業の続きを行っている。
「栞、その後の『扉』と『カオス』の状況は?」
俺は、オペレーターチェアに座り、壁一面のモニターに映し出されたデータを確認しながら尋ねた。
「ネバダの次元の『扉』は、依然として不安定な状態を保っています。エネルギーレベルは低いままですが、完全に閉じる気配はありません。まるで……何かが通り抜けるのを待っているかのようです」
栞は、眉間に皺を寄せながら報告する。
「そして、『カオス』の干渉波……こちらも、活性化した状態が続いています。特に、あの『扉』の周辺で、奇妙な共鳴パターンを示しているんです。まるで、『扉』を通じて、こちら側への影響力を強めようとしているかのように……」
(カオスが、扉を利用して干渉を強めている……? アルカナムの使者が言っていた、『星の深淵に眠るノイズ』……その脅威が、現実のものとなりつつあるというのか)
背筋に、冷たいものが走るのを感じた。これは、キメラやアルカナムといった人間組織の陰謀とは、次元の違う脅威かもしれない。
「他のプレイヤーの動きは?」
「今のところ、目立った動きはありません。ですが、各国の情報機関や、アルカナム・ソサエティと思われる組織が、ネバダの状況を厳重に監視しているのは間違いありません。彼らも、『カオス』の活性化を警戒しているようです」
「そうか……」
俺は、思考を巡らせた。次元の『扉』を閉じる方法、あるいは『カオス』の干渉を遮断する方法。アルカナムのデータベースを探れば、何か手がかりが見つかるかもしれない。だが、彼らが全ての情報を開示しているとは限らない。
「……栞、例の少女、『プライム』の様子は?」
俺は、話題を変えた。プライムは現在、神崎グループが保有する人里離れた研究施設(もちろん非合法なものではなく、表向きは先進医療の研究施設だ)で、厳重な保護とケアを受けている。父には、『海外の紛争地域から保護した、特殊な能力を持つ孤児』とだけ説明し、半ば強引に協力を取り付けた。
「はい。担当のメディカルチームからの報告によれば、身体的な衰弱は回復傾向にありますが、精神状態は依然として不安定です。長期間の薬物投与と精神操作の後遺症でしょう……。ただ……」
栞は、少し言い淀んだ。
「ただ?」
「……時折、彼女の精神波形から、非常に強力な、しかし制御されていないエネルギーの奔流が観測されることがあるそうです。それは、キメラが利用していた能力とは、また別の……もっと根源的で、未知の力のような……」
「未知の力……?」
「はい。まるで……彼女自身が、小さな『カオス』の発生源であるかのような……。メディカルチームも、原因を特定できずにいます」
(プライム自身が、カオスの発生源……? キメラは、彼女の何を『鍵』として使おうとしていたんだ……?)
新たな謎が、次々と浮かび上がってくる。プライムの存在は、単なる被害者ではなく、この世界の謎を解く上で、極めて重要な鍵となるのかもしれない。
「彼女と、直接コンタクトを取ってみる必要がありそうだな」
俺は、呟いた。精神的な負荷を考慮し、これまで直接的な接触は避けていた。だが、もはや悠長なことは言っていられない。
***
その夜、俺はオペレーションルームから、遠隔でプライムのいる保護施設へと意識を繋いだ。厳重な医療用インターフェースを通じて、彼女の精神世界へとアクセスする。
(プライム、聞こえるか? 俺だ)
前回よりも、さらに慎重に、穏やかな思念を送る。
『……あ……あなた……? あの時の……?』
か細い、しかし前回よりははっきりとした応答があった。彼女は、俺のことを覚えていた。そして、恐怖よりも、戸惑いや好奇心のような感情が伝わってくる。
(そうだ。気分はどうだ? 少しは落ち着いたか?)
『……うん……。前よりは……。でも、時々……頭の中が、ぐちゃぐちゃになるの……。怖い音が聞こえたり、変なものが見えたり……』
彼女の精神は、依然として不安定なようだ。後遺症か、それとも栞が指摘した「未知の力」の影響か。
(大丈夫だ。ゆっくりでいい。君の中にある力は、怖いものじゃない。君自身が、それを理解し、受け入れることができれば、きっと制御できるようになる)
俺は、アルカナムの叡智から得た知識――精神エネルギーの制御法や、高次元知覚に関する理論――を、彼女に分かりやすいイメージに変換して伝えた。
『……わたしが……制御……?』
(そうだ。君は、特別な力を持っている。それは、君を苦しめるためではなく、君自身と、そしてもしかしたら、他の誰かを守るためにあるのかもしれない)
俺がそう伝えた瞬間、プライムの精神から、再び強いエネルギーの波が放たれた。だが、それは以前のような暴走ではなく、何かを探るような、問いかけるような響きを持っていた。そして、その波は、俺の意識の奥深く――エルヴィンとしての記憶が眠る領域――にまで、到達したかのように感じられた。
『……あなたも……『向こう側』を……知ってるの……?』
プライムの思念が、明確な問いとなって俺に届いた。
(……!?)
俺は、愕然とした。彼女は、俺が転生者であること、異世界の記憶を持っていることを、感じ取ったというのか? 彼女の持つ「広域精神共鳴」の能力は、俺の想像を遥かに超えたものなのかもしれない。
(……ああ。俺も、君と同じように、『こちら側』だけではない存在だ)
隠しても無駄だろう。俺は、正直に認めた。
その瞬間、俺たちの精神の間に、より深く、強固な繋がりが生まれたのを感じた。プライムの精神から、安堵と、そして仲間を見つけたかのような喜びの感情が伝わってくる。
『……そっか……。一人じゃ、なかったんだ……』
彼女との間に生まれた、この予期せぬ繋がり。これが、今後の展開にどう影響するのか。それはまだ分からない。だが、彼女が強力な味方となり得る可能性は、確かに出てきた。
***
プライムとのコンタクトを終えた直後、アルカナム・ソサエティから、暗号化されたメッセージが届いた。
内容は、今回のキメラ実験阻止に対する評価と、新たな情報提供だった。
『契約者よ、見事な手腕であった。キメラの脅威は一時的に退けられた。だが、油断は禁物だ。彼らの背後にいた勢力、そして他のプレイヤーたちは、君の存在を認識し、動きを活発化させるだろう』
メッセージは、俺の行動を称賛しつつも、釘を刺すことを忘れない。
『特に警戒すべきは、"プロジェクト・キメラ"を支援していた、アメリカ国内の影の勢力。そして、君も感知したであろう『カオス』の活性化だ。我々の解析によれば、『カオス』は特定の精神波長を持つ人間に干渉し、その能力を増幅させる、あるいは暴走させる性質があるらしい。ネバダの少女が不安定なのは、その影響かもしれん』
(カオスが、精神に干渉する……? プライムの不安定さの原因は、やはりそれか……)
『さらに、我々は新たなプレイヤーの存在を確認した。東アジアを拠点とする、古来からの術者集団『龍脈の一族』。彼らもまた、星のエネルギーを利用する独自の技術体系を持ち、今回の事態を注視している。彼らが敵となるか、味方となるかは、まだ不明だ』
(龍脈の一族……? また新たな勢力か。まるで、次から次へと湧いてくるな)
『契約者よ、君の探求は始まったばかりだ。我々は、君に必要な知識を提供し続ける。だが、最終的に道を選ぶのは、君自身だ。賢明な選択を期待する』
メッセージは、そこで終わっていた。
アルカナム・ソサエティ。プロジェクト・キメラの残党。龍脈の一族。そして、正体不明の『カオス』。
俺を取り巻く状況は、ますます混迷を深めている。
(だが、面白い)
俺は、オペレーションルームの椅子の上で、不敵な笑みを浮かべた。
困難であればあるほど、燃えてくる。
この複雑怪奇なゲーム盤で、全てのプレイヤーを手玉に取り、全ての謎を解き明かし、そして、俺自身の望む未来を掴み取ってやる。
まずは、プライムの精神を安定させ、彼女の能力を制御できるようにサポートすること。
次に、ネバダの次元の『扉』をどうするか、アルカナムや栞と連携して対策を練ること。
そして、新たに出現した『龍脈の一族』に関する情報を収集し、接触を試みること。
やるべきことは山積みだ。だが、俺には時間も、能力も、そして信頼できるパートナーもいる。
神崎蓮の物語は、まだ中盤に差し掛かったばかり。
クライマックスに向けて、さらにギアを上げていくとしよう。
そう決意し、俺は再び、モニターに映る世界の縮図へと意識を集中させた。
静かなる嵐は、まだ止む気配はない。
ならば、俺自身が、嵐の中心となって、全てを薙ぎ払うまでだ。
キメラの暴走によってこじ開けられた不安定な次元の『扉』。
それに呼応するように活性化した、謎の『カオス』の干渉波。
そして、俺たちの知らないところで蠢く、アルカナム・ソサエティやキメラ以外の『プレイヤー』たちの存在。
(ゲーム盤は、より広く、より複雑になった。そして、俺はその中心に立たされている)
日常に戻った帝聖学園の教室で、俺は窓の外を眺めながら、思考を巡らせていた。全ステータスカンストの頭脳は、睡眠不足などものともせず、膨大な情報を処理し続けている。だが、その思考には、以前のような絶対的な自信だけでなく、未知への警戒心と、わずかな焦燥感が混じり始めていた。
「おはよう、神崎君。……顔色、あまり良くないみたいだけど、大丈夫?」
橘葵が、心配そうに声をかけてきた。彼女の真っ直ぐな瞳が、俺の内心を見透かそうとしているようで、少しだけ居心地が悪い。
「ああ、少し考え事をしていただけだ。問題ない」
俺は、意識して穏やかな笑顔を作って応じた。
「そう……? ならいいんだけど……。あ、そうだ! 今度の週末、陸上部の記録会があるんだ! もしよかったら、見に来てくれないかな? 神崎君に見てもらえたら、きっと頑張れる気がするから!」
彼女は、少し照れながらも、真っ直ぐな目で俺を見つめてきた。以前の遠慮がちな態度とは違う、積極的な誘い。彼女の中で、俺との関係を諦めるのではなく、別の形で繋がろうとする意志が芽生えているのかもしれない。
「……都合がつけばな」
俺は、曖昧に返事をした。今の俺に、そんな余裕があるかは分からない。だが、彼女のひたむきな想いを、無下にはできなかった。
***
放課後、俺は図書室ではなく、神崎家の地下にあるオペレーションルームに直行した。ここが、今の俺の真の活動拠点だ。白鳥栞も、学校が終わるとすぐにここへ来て、解析作業の続きを行っている。
「栞、その後の『扉』と『カオス』の状況は?」
俺は、オペレーターチェアに座り、壁一面のモニターに映し出されたデータを確認しながら尋ねた。
「ネバダの次元の『扉』は、依然として不安定な状態を保っています。エネルギーレベルは低いままですが、完全に閉じる気配はありません。まるで……何かが通り抜けるのを待っているかのようです」
栞は、眉間に皺を寄せながら報告する。
「そして、『カオス』の干渉波……こちらも、活性化した状態が続いています。特に、あの『扉』の周辺で、奇妙な共鳴パターンを示しているんです。まるで、『扉』を通じて、こちら側への影響力を強めようとしているかのように……」
(カオスが、扉を利用して干渉を強めている……? アルカナムの使者が言っていた、『星の深淵に眠るノイズ』……その脅威が、現実のものとなりつつあるというのか)
背筋に、冷たいものが走るのを感じた。これは、キメラやアルカナムといった人間組織の陰謀とは、次元の違う脅威かもしれない。
「他のプレイヤーの動きは?」
「今のところ、目立った動きはありません。ですが、各国の情報機関や、アルカナム・ソサエティと思われる組織が、ネバダの状況を厳重に監視しているのは間違いありません。彼らも、『カオス』の活性化を警戒しているようです」
「そうか……」
俺は、思考を巡らせた。次元の『扉』を閉じる方法、あるいは『カオス』の干渉を遮断する方法。アルカナムのデータベースを探れば、何か手がかりが見つかるかもしれない。だが、彼らが全ての情報を開示しているとは限らない。
「……栞、例の少女、『プライム』の様子は?」
俺は、話題を変えた。プライムは現在、神崎グループが保有する人里離れた研究施設(もちろん非合法なものではなく、表向きは先進医療の研究施設だ)で、厳重な保護とケアを受けている。父には、『海外の紛争地域から保護した、特殊な能力を持つ孤児』とだけ説明し、半ば強引に協力を取り付けた。
「はい。担当のメディカルチームからの報告によれば、身体的な衰弱は回復傾向にありますが、精神状態は依然として不安定です。長期間の薬物投与と精神操作の後遺症でしょう……。ただ……」
栞は、少し言い淀んだ。
「ただ?」
「……時折、彼女の精神波形から、非常に強力な、しかし制御されていないエネルギーの奔流が観測されることがあるそうです。それは、キメラが利用していた能力とは、また別の……もっと根源的で、未知の力のような……」
「未知の力……?」
「はい。まるで……彼女自身が、小さな『カオス』の発生源であるかのような……。メディカルチームも、原因を特定できずにいます」
(プライム自身が、カオスの発生源……? キメラは、彼女の何を『鍵』として使おうとしていたんだ……?)
新たな謎が、次々と浮かび上がってくる。プライムの存在は、単なる被害者ではなく、この世界の謎を解く上で、極めて重要な鍵となるのかもしれない。
「彼女と、直接コンタクトを取ってみる必要がありそうだな」
俺は、呟いた。精神的な負荷を考慮し、これまで直接的な接触は避けていた。だが、もはや悠長なことは言っていられない。
***
その夜、俺はオペレーションルームから、遠隔でプライムのいる保護施設へと意識を繋いだ。厳重な医療用インターフェースを通じて、彼女の精神世界へとアクセスする。
(プライム、聞こえるか? 俺だ)
前回よりも、さらに慎重に、穏やかな思念を送る。
『……あ……あなた……? あの時の……?』
か細い、しかし前回よりははっきりとした応答があった。彼女は、俺のことを覚えていた。そして、恐怖よりも、戸惑いや好奇心のような感情が伝わってくる。
(そうだ。気分はどうだ? 少しは落ち着いたか?)
『……うん……。前よりは……。でも、時々……頭の中が、ぐちゃぐちゃになるの……。怖い音が聞こえたり、変なものが見えたり……』
彼女の精神は、依然として不安定なようだ。後遺症か、それとも栞が指摘した「未知の力」の影響か。
(大丈夫だ。ゆっくりでいい。君の中にある力は、怖いものじゃない。君自身が、それを理解し、受け入れることができれば、きっと制御できるようになる)
俺は、アルカナムの叡智から得た知識――精神エネルギーの制御法や、高次元知覚に関する理論――を、彼女に分かりやすいイメージに変換して伝えた。
『……わたしが……制御……?』
(そうだ。君は、特別な力を持っている。それは、君を苦しめるためではなく、君自身と、そしてもしかしたら、他の誰かを守るためにあるのかもしれない)
俺がそう伝えた瞬間、プライムの精神から、再び強いエネルギーの波が放たれた。だが、それは以前のような暴走ではなく、何かを探るような、問いかけるような響きを持っていた。そして、その波は、俺の意識の奥深く――エルヴィンとしての記憶が眠る領域――にまで、到達したかのように感じられた。
『……あなたも……『向こう側』を……知ってるの……?』
プライムの思念が、明確な問いとなって俺に届いた。
(……!?)
俺は、愕然とした。彼女は、俺が転生者であること、異世界の記憶を持っていることを、感じ取ったというのか? 彼女の持つ「広域精神共鳴」の能力は、俺の想像を遥かに超えたものなのかもしれない。
(……ああ。俺も、君と同じように、『こちら側』だけではない存在だ)
隠しても無駄だろう。俺は、正直に認めた。
その瞬間、俺たちの精神の間に、より深く、強固な繋がりが生まれたのを感じた。プライムの精神から、安堵と、そして仲間を見つけたかのような喜びの感情が伝わってくる。
『……そっか……。一人じゃ、なかったんだ……』
彼女との間に生まれた、この予期せぬ繋がり。これが、今後の展開にどう影響するのか。それはまだ分からない。だが、彼女が強力な味方となり得る可能性は、確かに出てきた。
***
プライムとのコンタクトを終えた直後、アルカナム・ソサエティから、暗号化されたメッセージが届いた。
内容は、今回のキメラ実験阻止に対する評価と、新たな情報提供だった。
『契約者よ、見事な手腕であった。キメラの脅威は一時的に退けられた。だが、油断は禁物だ。彼らの背後にいた勢力、そして他のプレイヤーたちは、君の存在を認識し、動きを活発化させるだろう』
メッセージは、俺の行動を称賛しつつも、釘を刺すことを忘れない。
『特に警戒すべきは、"プロジェクト・キメラ"を支援していた、アメリカ国内の影の勢力。そして、君も感知したであろう『カオス』の活性化だ。我々の解析によれば、『カオス』は特定の精神波長を持つ人間に干渉し、その能力を増幅させる、あるいは暴走させる性質があるらしい。ネバダの少女が不安定なのは、その影響かもしれん』
(カオスが、精神に干渉する……? プライムの不安定さの原因は、やはりそれか……)
『さらに、我々は新たなプレイヤーの存在を確認した。東アジアを拠点とする、古来からの術者集団『龍脈の一族』。彼らもまた、星のエネルギーを利用する独自の技術体系を持ち、今回の事態を注視している。彼らが敵となるか、味方となるかは、まだ不明だ』
(龍脈の一族……? また新たな勢力か。まるで、次から次へと湧いてくるな)
『契約者よ、君の探求は始まったばかりだ。我々は、君に必要な知識を提供し続ける。だが、最終的に道を選ぶのは、君自身だ。賢明な選択を期待する』
メッセージは、そこで終わっていた。
アルカナム・ソサエティ。プロジェクト・キメラの残党。龍脈の一族。そして、正体不明の『カオス』。
俺を取り巻く状況は、ますます混迷を深めている。
(だが、面白い)
俺は、オペレーションルームの椅子の上で、不敵な笑みを浮かべた。
困難であればあるほど、燃えてくる。
この複雑怪奇なゲーム盤で、全てのプレイヤーを手玉に取り、全ての謎を解き明かし、そして、俺自身の望む未来を掴み取ってやる。
まずは、プライムの精神を安定させ、彼女の能力を制御できるようにサポートすること。
次に、ネバダの次元の『扉』をどうするか、アルカナムや栞と連携して対策を練ること。
そして、新たに出現した『龍脈の一族』に関する情報を収集し、接触を試みること。
やるべきことは山積みだ。だが、俺には時間も、能力も、そして信頼できるパートナーもいる。
神崎蓮の物語は、まだ中盤に差し掛かったばかり。
クライマックスに向けて、さらにギアを上げていくとしよう。
そう決意し、俺は再び、モニターに映る世界の縮図へと意識を集中させた。
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