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第4話:ログ分析と仮説検証、そして初めての「まともな」侵入者
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最初の侵入者であるモリネズミを処理し、わずか1DPとはいえ、初めての「成果」を得た俺は、コアが表示する迎撃ログを眺めていた。
**【迎撃ログNo.001】**
* 日時:異世界暦 XXXX年 X月 X日 XX:XX
* 侵入者:モリネズミ x 1
* 検知手段:スラきちセンサー(通路ポイントα)
* 迎撃手段:落とし穴Lv.1(ポイントβ)
* 結果:侵入者の無力化、存在消滅コマンドにより処理
* 獲得DP:1 DP
* 所要時間:検知から処理完了まで約15分
* 備考:落とし穴からの自力脱出の試みを確認。壁面への引っ掛かりが少なく、脱出は困難と推測されるが、小型・軽量な生物ゆえ落下ダメージは軽微。
「ふむ…」
ログは簡潔だが、いくつかの重要な情報を含んでいる。
まず、スラきちセンサーは機能した。これは大きい。コスト10DPのスライムが、簡易とはいえセンサーの役割を果たせるなら、コストパフォーマンスは非常に高い。ただし、感知範囲の狭さと精度の低さは今後の課題だ。
次に、落とし穴。深さ3メートルは、モリネズミ程度の小型生物には十分な拘束力を発揮したが、ダメージは軽微だった。これがもっと大型の、あるいは頑丈な相手だったら、落下ダメージだけでは不十分だろう。壁面が滑らかで登りにくいというのは設計通りだが、これも相手の登攀能力によっては突破される可能性がある。
そして、獲得DPが1。これは渋い。モリネズミを100匹倒してやっと100DP。ゴブリン召喚(まだコスト不明だが)への道は遠そうだ。
「やはり、罠の効果を高める必要があるな…」
俺はA/Bテストの構想を具体化し始めた。
(仮説1:落とし穴の底、あるいは壁面に粘着性の物質を塗布すれば、侵入者の脱出をより困難にできるのではないか?)
問題は、どうやって粘着性の物質を用意し、塗布するかだ。
すぐに思いついたのは、スラきちの体液だ。スライムといえば、粘液。コアの説明では「溶解液(微弱)」とあったが、粘着性はないのだろうか?
「コア、スラきちの体液について、もう少し詳しく教えてくれ。粘着性は?」
『スラきちの体液は、主に消化・吸収を目的とした弱酸性の溶解液です。粘着性は高くありません。ただし、マスターの指示と適切な魔力供給により、体液の性質をある程度変化させられる可能性があります。例えば、粘性を高める、あるいは逆に潤滑性を高めるなど。』
「ほう…それは面白い。まるで設定変更だな。」
スライムの体液カスタム。これも最適化の一環だ。
「よし、試してみよう。スラきち、ちょっと協力してくれ。」
部屋の清掃を終え、再び俺の足元で待機していたスラきちに声をかける。スラきちは、ぷるんと反応した。
「コア、スラきちに指示。『粘性強化』モードで体液を分泌し、それを落とし穴の底と、壁面の下半分に塗り広げるように。必要な魔力(DP)は?」
『了解しました。スラきちに「粘液生成・塗布(粘性強化)」タスクを付与します。体液の性質変化と分泌、塗布作業に必要なDPは、推定3DPです。実行しますか?』
「3DPか。安いな。実行してくれ。」
コアの指示を受け、スラきちは再び通路の奥へと向かった。落とし穴の縁まで行くと、その体を穴の中にずるりと滑り込ませる。内部の様子は見えないが、コアの報告によれば、スラきちは自身の体から粘度の高い液体を分泌し、それを丁寧に穴の底と壁に塗り広げているらしい。
数分後、作業を終えたスラきちが穴から這い出てきた。体表が少しぬめっているように見える。
『タスク完了。落とし穴(ポイントβ)内部への粘液塗布が完了しました。現在、内部は粘着性の高い状態になっています。』
「よし、これでパターンAの準備ができた。あとは、次の侵入者を待って、効果を検証するだけだ。」
俺はスラきちを労い、再び部屋の隅で待機するよう指示した。今度はセンサー役ではなく、次の指示に備えての待機だ。
それから、どれくらいの時間が経っただろうか。
ダンジョン内の時間は、外の世界とどう連動しているのか分からないが、体感では数時間といったところか。コアによるDPの自然吸収が少しずつ進み、所持DPは871から873へと微増していた。
その時、再びコアが警告を発した。
『マスター! 新たな侵入者を感知! 地上入口付近に反応あり!』
「来たか! 今度の相手は?」
俺は即座に身を起こし、コアが表示する情報ウィンドウに意識を集中する。
『侵入者情報:種族・ゴブリン、数・1体、装備・粗末な棍棒、ぼろ布の腰巻。現在、不可視化された入口を突破し、ダンジョン内に侵入。通路を進行中です!』
ゴブリン!
ファンタジー世界の定番雑魚モンスター。だが、モリネズミとは格が違うはずだ。知恵も多少はあるだろうし、棍棒を持っているということは、戦闘能力もある。
(これは、いいテストケースになりそうだ。)
俺は簡易マップに表示されるゴブリン(緑色の光点)の動きを追う。ゴブリンは、キョロキョロと周囲を見回すような、やや不規則な動きで通路を進んでいる。モリネズミよりは明らかに警戒心が高い。
やがて、ゴブリンはスラきちが最初にセンサーとして待機していたポイントαに差し掛かった。
(センサー役のスラきちは今、ここにいない。となると、検知はコアの基本機能頼みか。だが、ゴブリンは罠を警戒しているかもしれない。)
ゴブリンは、ゆっくりとカーブを曲がり、落とし穴が設置されたポイントβに近づく。その足取りは慎重だ。
(気づくか…? いや、気づかせないための隠蔽だ。)
ゴブリンは、数歩手前で一瞬立ち止まった。何かを感じ取ったのか?
だが、数秒後、再び歩き出した。そして…
ザンッ!
床が抜ける音と共に、ゴブリンの短い悲鳴が響いた。
『落とし穴、作動! 侵入者(ゴブリン)、落下を確認!』
「よし!」
思わずガッツポーズが出た。今回も罠は機能した。隠蔽は成功したようだ。
「状況は!?」
『ゴブリン、生存を確認。落下ダメージは中程度。穴の底に塗布した粘液により、身動きが取りづらい状態です! 現在、壁を登ろうとしていますが、粘液と壁面の滑らかさにより、非常に困難な状況!』
やった! 粘液作戦、成功だ!
A/BテストのパターンAが、早速効果を発揮した形になる。
(やはり、仮説検証は重要だな。わずか3DPの投資で、これだけ効果が変わるとは。)
落とし穴の中から、ゴブリンの怒りを含んだようなうめき声と、壁を掻きむしる音が聞こえてくる。だが、登ってこられる気配はない。
「このまま放置すれば、衰弱するか、あるいは粘液に体力を奪われて動けなくなるか…」
だが、少し気になる点があった。ゴブリンは棍棒を持っていたはずだ。
「コア、ゴブリンは武器(棍棒)を使って壁を破壊しようとしたり、足場を作ろうとしたりしていないか?」
『…現在のところ、そのような行動は確認されていません。粘液による不快感と混乱が大きいようです。ただし、時間が経てば冷静さを取り戻し、試みる可能性はあります。』
「そうか…やはり、放置は最善手ではないかもしれんな。」
ゴブリン一体を無力化するのに、どれだけの時間がかかるか分からない。その間、他の侵入者が来ないとも限らない。それに、いつまでも穴の中から騒音が聞こえてくるのも、精神衛生上よろしくない。
(やはり、「存在消滅」か…?)
少し躊躇したが、これも効率のためだ。感傷に浸っている場合ではない。
「コア、ゴブリンに対して「存在消滅」コマンドを実行してくれ。」
『了解しました。実行します。』
再び、落とし穴の中から聞こえていた音が、完全に途絶えた。
そして、インターフェースに表示されるDPが増加する。
**【DP獲得:15DP】**
**【現在の所持DP:888DP】**
15DP!
モリネズミの15倍だ。これは大きい。
「ゴブリン一体で15DPか…これなら、少しは希望が見えてきたな。」
ゴブリンを10体倒せば150DP。100体なら1500DP。ダンジョンレベルアップや、より強力なモンスター召喚も現実味を帯びてくる。
「コア、迎撃ログNo.002を記録。今回の粘液作戦の効果についても、特記事項として追記しておいてくれ。」
『承知いたしました。記録します。』
俺は、安堵の息をつくと同時に、新たな決意を固めていた。
(今回のゴブリンは一体だったから、落とし穴と粘液で対処できた。だが、もし複数で来られたら? 棍棒で粘液を掻き落とされたら? あるいは、魔法を使うような相手だったら?)
現状の防衛設備では、まだまだ心許ない。
やはり、攻撃能力を持つモンスターが必要だ。
(ゴブリン…あの緑色の小鬼。一体15DPの価値がある存在。もし、あれを召喚できれば、戦力は大幅に向上するはずだ。)
「コア、ゴブリンを召喚するために必要な条件は何だ? ダンジョンレベルか? それとも特定のアイテムか?」
『現時点では断定できませんが、一般的に、より強力なモンスターの召喚には、ダンジョンレベルの向上が必要条件となるケースが多いです。レベルアップにより、マスターがアクセス可能なモンスターリストが拡張されると考えられます。』
「やはりレベルアップか…そのレベルアップ条件がまだ不明なんだよな。」
『DPの蓄積が最も可能性の高い条件の一つと考えられます。一定量のDPを保有、あるいは消費することがトリガーとなる可能性があります。』
「なるほどな…」
目標が明確になった。
まずは、DPを貯める。侵入者を効率的に撃退し、DPを蓄積する。そして、ダンジョンレベルを上げ、ゴブリンを召喚可能な状態にする。
(そのためには、もっと侵入者を呼び込む必要があるか? いや、それはリスクを高めるだけだ。今は、来る者を確実に仕留める体制を強化する方が先決だろう。)
落とし穴は有効だったが、数が増えれば対処しきれなくなる。他の罠も欲しいところだ。
それに、スラきちの活用法も、もっと掘り下げられるはずだ。
「よし、コア。次のステップに進むぞ。まずは、周辺の更なる情報収集と、罠のバリエーション追加を検討する。」
俺は、DP残高888という数字を睨みつけながら、次なるダンジョン改善計画――プロジェクトフェーズ1.1の策定に取り掛かった。ホワイトダンジョンへの道は、まだ始まったばかりだ。
**【迎撃ログNo.001】**
* 日時:異世界暦 XXXX年 X月 X日 XX:XX
* 侵入者:モリネズミ x 1
* 検知手段:スラきちセンサー(通路ポイントα)
* 迎撃手段:落とし穴Lv.1(ポイントβ)
* 結果:侵入者の無力化、存在消滅コマンドにより処理
* 獲得DP:1 DP
* 所要時間:検知から処理完了まで約15分
* 備考:落とし穴からの自力脱出の試みを確認。壁面への引っ掛かりが少なく、脱出は困難と推測されるが、小型・軽量な生物ゆえ落下ダメージは軽微。
「ふむ…」
ログは簡潔だが、いくつかの重要な情報を含んでいる。
まず、スラきちセンサーは機能した。これは大きい。コスト10DPのスライムが、簡易とはいえセンサーの役割を果たせるなら、コストパフォーマンスは非常に高い。ただし、感知範囲の狭さと精度の低さは今後の課題だ。
次に、落とし穴。深さ3メートルは、モリネズミ程度の小型生物には十分な拘束力を発揮したが、ダメージは軽微だった。これがもっと大型の、あるいは頑丈な相手だったら、落下ダメージだけでは不十分だろう。壁面が滑らかで登りにくいというのは設計通りだが、これも相手の登攀能力によっては突破される可能性がある。
そして、獲得DPが1。これは渋い。モリネズミを100匹倒してやっと100DP。ゴブリン召喚(まだコスト不明だが)への道は遠そうだ。
「やはり、罠の効果を高める必要があるな…」
俺はA/Bテストの構想を具体化し始めた。
(仮説1:落とし穴の底、あるいは壁面に粘着性の物質を塗布すれば、侵入者の脱出をより困難にできるのではないか?)
問題は、どうやって粘着性の物質を用意し、塗布するかだ。
すぐに思いついたのは、スラきちの体液だ。スライムといえば、粘液。コアの説明では「溶解液(微弱)」とあったが、粘着性はないのだろうか?
「コア、スラきちの体液について、もう少し詳しく教えてくれ。粘着性は?」
『スラきちの体液は、主に消化・吸収を目的とした弱酸性の溶解液です。粘着性は高くありません。ただし、マスターの指示と適切な魔力供給により、体液の性質をある程度変化させられる可能性があります。例えば、粘性を高める、あるいは逆に潤滑性を高めるなど。』
「ほう…それは面白い。まるで設定変更だな。」
スライムの体液カスタム。これも最適化の一環だ。
「よし、試してみよう。スラきち、ちょっと協力してくれ。」
部屋の清掃を終え、再び俺の足元で待機していたスラきちに声をかける。スラきちは、ぷるんと反応した。
「コア、スラきちに指示。『粘性強化』モードで体液を分泌し、それを落とし穴の底と、壁面の下半分に塗り広げるように。必要な魔力(DP)は?」
『了解しました。スラきちに「粘液生成・塗布(粘性強化)」タスクを付与します。体液の性質変化と分泌、塗布作業に必要なDPは、推定3DPです。実行しますか?』
「3DPか。安いな。実行してくれ。」
コアの指示を受け、スラきちは再び通路の奥へと向かった。落とし穴の縁まで行くと、その体を穴の中にずるりと滑り込ませる。内部の様子は見えないが、コアの報告によれば、スラきちは自身の体から粘度の高い液体を分泌し、それを丁寧に穴の底と壁に塗り広げているらしい。
数分後、作業を終えたスラきちが穴から這い出てきた。体表が少しぬめっているように見える。
『タスク完了。落とし穴(ポイントβ)内部への粘液塗布が完了しました。現在、内部は粘着性の高い状態になっています。』
「よし、これでパターンAの準備ができた。あとは、次の侵入者を待って、効果を検証するだけだ。」
俺はスラきちを労い、再び部屋の隅で待機するよう指示した。今度はセンサー役ではなく、次の指示に備えての待機だ。
それから、どれくらいの時間が経っただろうか。
ダンジョン内の時間は、外の世界とどう連動しているのか分からないが、体感では数時間といったところか。コアによるDPの自然吸収が少しずつ進み、所持DPは871から873へと微増していた。
その時、再びコアが警告を発した。
『マスター! 新たな侵入者を感知! 地上入口付近に反応あり!』
「来たか! 今度の相手は?」
俺は即座に身を起こし、コアが表示する情報ウィンドウに意識を集中する。
『侵入者情報:種族・ゴブリン、数・1体、装備・粗末な棍棒、ぼろ布の腰巻。現在、不可視化された入口を突破し、ダンジョン内に侵入。通路を進行中です!』
ゴブリン!
ファンタジー世界の定番雑魚モンスター。だが、モリネズミとは格が違うはずだ。知恵も多少はあるだろうし、棍棒を持っているということは、戦闘能力もある。
(これは、いいテストケースになりそうだ。)
俺は簡易マップに表示されるゴブリン(緑色の光点)の動きを追う。ゴブリンは、キョロキョロと周囲を見回すような、やや不規則な動きで通路を進んでいる。モリネズミよりは明らかに警戒心が高い。
やがて、ゴブリンはスラきちが最初にセンサーとして待機していたポイントαに差し掛かった。
(センサー役のスラきちは今、ここにいない。となると、検知はコアの基本機能頼みか。だが、ゴブリンは罠を警戒しているかもしれない。)
ゴブリンは、ゆっくりとカーブを曲がり、落とし穴が設置されたポイントβに近づく。その足取りは慎重だ。
(気づくか…? いや、気づかせないための隠蔽だ。)
ゴブリンは、数歩手前で一瞬立ち止まった。何かを感じ取ったのか?
だが、数秒後、再び歩き出した。そして…
ザンッ!
床が抜ける音と共に、ゴブリンの短い悲鳴が響いた。
『落とし穴、作動! 侵入者(ゴブリン)、落下を確認!』
「よし!」
思わずガッツポーズが出た。今回も罠は機能した。隠蔽は成功したようだ。
「状況は!?」
『ゴブリン、生存を確認。落下ダメージは中程度。穴の底に塗布した粘液により、身動きが取りづらい状態です! 現在、壁を登ろうとしていますが、粘液と壁面の滑らかさにより、非常に困難な状況!』
やった! 粘液作戦、成功だ!
A/BテストのパターンAが、早速効果を発揮した形になる。
(やはり、仮説検証は重要だな。わずか3DPの投資で、これだけ効果が変わるとは。)
落とし穴の中から、ゴブリンの怒りを含んだようなうめき声と、壁を掻きむしる音が聞こえてくる。だが、登ってこられる気配はない。
「このまま放置すれば、衰弱するか、あるいは粘液に体力を奪われて動けなくなるか…」
だが、少し気になる点があった。ゴブリンは棍棒を持っていたはずだ。
「コア、ゴブリンは武器(棍棒)を使って壁を破壊しようとしたり、足場を作ろうとしたりしていないか?」
『…現在のところ、そのような行動は確認されていません。粘液による不快感と混乱が大きいようです。ただし、時間が経てば冷静さを取り戻し、試みる可能性はあります。』
「そうか…やはり、放置は最善手ではないかもしれんな。」
ゴブリン一体を無力化するのに、どれだけの時間がかかるか分からない。その間、他の侵入者が来ないとも限らない。それに、いつまでも穴の中から騒音が聞こえてくるのも、精神衛生上よろしくない。
(やはり、「存在消滅」か…?)
少し躊躇したが、これも効率のためだ。感傷に浸っている場合ではない。
「コア、ゴブリンに対して「存在消滅」コマンドを実行してくれ。」
『了解しました。実行します。』
再び、落とし穴の中から聞こえていた音が、完全に途絶えた。
そして、インターフェースに表示されるDPが増加する。
**【DP獲得:15DP】**
**【現在の所持DP:888DP】**
15DP!
モリネズミの15倍だ。これは大きい。
「ゴブリン一体で15DPか…これなら、少しは希望が見えてきたな。」
ゴブリンを10体倒せば150DP。100体なら1500DP。ダンジョンレベルアップや、より強力なモンスター召喚も現実味を帯びてくる。
「コア、迎撃ログNo.002を記録。今回の粘液作戦の効果についても、特記事項として追記しておいてくれ。」
『承知いたしました。記録します。』
俺は、安堵の息をつくと同時に、新たな決意を固めていた。
(今回のゴブリンは一体だったから、落とし穴と粘液で対処できた。だが、もし複数で来られたら? 棍棒で粘液を掻き落とされたら? あるいは、魔法を使うような相手だったら?)
現状の防衛設備では、まだまだ心許ない。
やはり、攻撃能力を持つモンスターが必要だ。
(ゴブリン…あの緑色の小鬼。一体15DPの価値がある存在。もし、あれを召喚できれば、戦力は大幅に向上するはずだ。)
「コア、ゴブリンを召喚するために必要な条件は何だ? ダンジョンレベルか? それとも特定のアイテムか?」
『現時点では断定できませんが、一般的に、より強力なモンスターの召喚には、ダンジョンレベルの向上が必要条件となるケースが多いです。レベルアップにより、マスターがアクセス可能なモンスターリストが拡張されると考えられます。』
「やはりレベルアップか…そのレベルアップ条件がまだ不明なんだよな。」
『DPの蓄積が最も可能性の高い条件の一つと考えられます。一定量のDPを保有、あるいは消費することがトリガーとなる可能性があります。』
「なるほどな…」
目標が明確になった。
まずは、DPを貯める。侵入者を効率的に撃退し、DPを蓄積する。そして、ダンジョンレベルを上げ、ゴブリンを召喚可能な状態にする。
(そのためには、もっと侵入者を呼び込む必要があるか? いや、それはリスクを高めるだけだ。今は、来る者を確実に仕留める体制を強化する方が先決だろう。)
落とし穴は有効だったが、数が増えれば対処しきれなくなる。他の罠も欲しいところだ。
それに、スラきちの活用法も、もっと掘り下げられるはずだ。
「よし、コア。次のステップに進むぞ。まずは、周辺の更なる情報収集と、罠のバリエーション追加を検討する。」
俺は、DP残高888という数字を睨みつけながら、次なるダンジョン改善計画――プロジェクトフェーズ1.1の策定に取り掛かった。ホワイトダンジョンへの道は、まだ始まったばかりだ。
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