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第13話:ダンジョン拡張とシステム化、そしてゴブリン教習所の開講
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捕虜となった魔術師リナから得た情報は、乏しかった俺の世界認識を大きく広げてくれた。一番近い町「フロンティア」、注意すべきダンジョンマスター「紅蓮の魔女」、王国とギルドの関係性、そして魔法の基礎知識。これらは全て、今後のダンジョン運営戦略を練る上で貴重なインプットとなる。
情報収集フェーズを一旦終え、次に取り組むべきは、ダンジョンの物理的な強化と、露呈した課題――特にゴブリン部隊の練度向上――への対応だ。
「コア、ダンジョン拡張計画を実行する。設計図は転送済みだ。必要なDPと工期は?」
俺は、コアが実装してくれた設計ツールで描いた新しいダンジョンフロアの青写真を最終確認しながら、指示を出した。レベルアップで拡張可能になった半径20mの範囲を最大限に活用し、これまでの直線的な構造から、より複雑で防御に適したレイアウトへと改修する計画だ。
『ダンジョン拡張計画(フェーズ1.1)承認。必要DPは、空間生成、通路構築、壁面強化(ゴブリンの打撃程度には耐えられるレベル)、ダミールーム設置などを含め、合計350DP。工期は、コアの全力稼働で約3時間と推定されます。』
350DPか…現在の所持DPが836だから、実行すれば残りは486DP。かなり大きな投資だが、将来の安全と効率を考えれば必要経費だ。
「よし、実行してくれ。工事中は、ゴブリンたちとリナは待機所で待機。スラきちとスラには、資材(土や石)の運搬補助を頼む。」
『承知いたしました。ダンジョン拡張工事を開始します。』
コアの宣言と共に、ダンジョン全体が再び微かに振動し始めた。壁や床が、まるで生き物のように蠢き、新たな通路が形成され、既存の空間が拡張されていく。土や岩石が魔法的な力で圧縮・成形され、みるみるうちに設計図通りの構造物が出来上がっていく様は、何度見ても壮観だ。
俺はコア安置室から、ダッシュボードを通じて工事の進捗状況をリアルタイムで監視する。
**【ダンジョン拡張工事 進捗モニター】**
* **プロジェクト名:** ダンジョン拡張フェーズ1.1
* **進捗率:** 15%
* **消費DP:** 52.5 / 350 DP
* **残り工期:** 約2時間30分 (推定)
* **稼働ユニット:** コア (空間生成担当), スラきち・スラに (資材運搬補助)
(ふむ、順調だな。コアの並列処理能力も上がっているのか、思ったより早い。)
今回の拡張の主なポイントは以下の通りだ。
1. **通路の分岐・複雑化:** これまでの一本道から、複数の分岐路を持つ構造に変更。侵入者を惑わせ、分断しやすくする。
2. **罠ゾーンの再構築:** 潤滑床、スパイクピット、トリップワイヤーといった既存の罠を、分岐した通路の要所に再配置。連動性を高め、回避されにくくする。
3. **ダミールームの設置:** 貴重品がありそうな見せかけの小部屋を複数設置。侵入者の注意を引きつけ、時間を稼ぐ。中には、弱いモンスターや別の罠を仕掛けることも想定。
4. **ゴブリン用訓練スペースの確保:** ゴブリン待機所の隣に、戦闘訓練や連携訓練を行うための専用スペースを設ける。
5. **壁面の強化:** ダンジョン全体の壁を、以前より一段階硬い材質に強化。ゴブリン程度の攻撃では、容易には破壊できないようにする。
これらの改修により、ダンジョンの防衛力は格段に向上するはずだ。受動的な罠だけでなく、構造自体で侵入者を消耗させ、時間を稼ぎ、そしてゴブリン部隊による迎撃へと繋げる。よりシステム化された防衛網の構築を目指す。
約3時間後、コアから工事完了の報告があった。
『ダンジョン拡張工事、完了しました。総消費DPは348DP。設計図通りに施工完了しています。』
「ご苦労、コア。スラきちたちもよくやった。」
俺はダッシュボードの3Dマップ表示機能(これもコアが実装してくれた)で、完成した新たなダンジョンフロアを確認する。うん、イメージ通りだ。複雑に入り組んだ通路、要所に配置された罠ゾーン、そして新設された訓練スペース。これなら、Fランク冒険者程度なら、かなりの確率で撃退できるだろう。
さて、ハードウェア(ダンジョン構造)の次は、ソフトウェア(モンスター育成)のアップデートだ。
俺は、待機所で待たせていたゴブリン三銃士と、彼らの「教官」役を(不本意ながら)引き受けたリナを、新設された訓練スペースへと呼び出した。
訓練スペースは、10メートル四方ほどの何もない空間だ。壁は頑丈で、床には訓練による衝撃を吸収するための特殊な素材(コアが開発した)が使われている。
「さて、今日から本格的な再訓練を開始する。」
俺は、ゴブキチ、ゴブジ、ゴブゾウ、そしてリナに向かって宣言した。
「まず、ゴブキチ!」
俺は、罰として昨晩の食事が抜きだったせいか、少し不機嫌そうな顔をしているゴブキチを睨みつけた。
「お前には、リーダーとしての自覚と、俺の指示を正確に理解し、実行する能力を叩き込む。今日から特別メニューだ。コア、訓練プログラム『リーダーシップ養成 Ver.0.1』を開始しろ。」
『了解しました。ゴブキチに対し、訓練プログラムを開始します。』
コアが、訓練スペースの壁に様々な図形や記号を投影し始めた。それらは、単純な命令(「右へ進め」「止まれ」「武器を構えろ」など)を図式化したものだ。ゴブキチは、それを見て瞬時に反応し、正確に行動しなければならない。反応が遅れたり、間違えたりすれば、コアから軽い電撃(ペナルティ)が飛ぶ仕組みだ。
「ギャッ!」「グギ!?」
早速、ゴブキチの悲鳴が上がる。前途は多難そうだ。
「次に、ゴブジ!」
俺は、少し自信なさげながらも、期待の眼差しを向けてくるゴブジに言った。
「お前には、斥候としての能力をさらに伸ばしてもらう。索敵、隠密行動、そして罠の設置・解除の基礎だ。コア、訓練プログラム『斥候養成 Ver.0.1』。」
『了解しました。ゴブジに対し、訓練プログラムを開始します。』
ゴブジの訓練は、隠された目標(コアが投影する小さな光など)を発見する、音を立てずに移動する、簡単な罠(トリップワイヤーなど)を設置・解除するといった内容だ。ゴブジは、持ち前の慎重さと観察力を活かし、意外なほどスムーズに課題をこなしていく。
「最後に、ゴブゾウ!」
俺は、やや所在なさげなゴブゾウに向き直った。
「お前には、後方支援の仕事を覚えてもらう。まずは、ダンジョン内の清掃と整理整頓。それから、スラきちたちの補助だ。コア、ゴブゾウには『ダンジョン維持管理業務マニュアル Ver.0.1』を渡しておけ。」
『了解しました。ゴブゾウにマニュアル(簡易絵文字版)を転送します。』
ゴブゾウは、戦闘から解放されたことに安堵したのか、素直に頷き、早速スラきちたちの後をついて清掃作業を手伝い始めた。まあ、彼にはそれが合っているのだろう。
そして、残るはリナだ。彼女は、ゴブリンたちが訓練(という名のシゴキ)を受けている様子を、呆然と眺めていた。
「さて、リナ。お前の仕事だ。」
俺は彼女に向き直った。
「まずは、ゴブリンたちに、この世界の基本的な文字と数字を教えてやってくれ。簡単な計算もだ。教材はコアが用意する。」
「わ、私が…ゴブリンに…文字を…?」
リナは、まだ信じられないといった表情だ。無理もない。普通の魔術師が、ゴブリンの家庭教師をさせられるなど、聞いたこともないだろう。
「そうだ。彼らの知性を底上げすることは、ダンジョンの効率化に繋がる。お前の知識が役に立つ場面だ。もちろん、サボったり、余計なことを教えようとしたりすれば、どうなるか分かっているな?」
俺は、彼女の手首の魔力枷に視線を送りながら、釘を刺した。
リナは、観念したようにため息をつき、コアが用意した教材(石板と、特殊なチョークのようなもの)を受け取った。
「…わかったわよ。やればいいんでしょ、やれば。」
こうして、奇妙な「ゴブリン教習所」が、俺のダンジョン内で開講された。
スパルタ式の戦闘訓練を受けるゴブキチ、黙々と斥候技術を磨くゴブジ、地道に清掃作業に励むゴブゾウ、そして不承不承ながらもゴブリンに文字を教えるリナ。傍らでは、スラきちとスラにが訓練の補助や清掃作業をこなし、コアが全体の進捗管理とデータ収集を行っている。
俺は、コア安置室からダッシュボードを通じて、その全てを監視・管理する。
**【簡易ダッシュボード - モンスター育成状況】**
* **ゴブキチ:** リーダーシップ養成 Ver.0.1 / 進捗率 5% / KPI: 指示理解度↓, 報連相↓ (ペナルティ多発) / 疲労度: 中
* **ゴブジ:** 斥候養成 Ver.0.1 / 進捗率 20% / KPI: 観察力↑, 隠密性↑ / 疲労度: 低
* **ゴブゾウ:** 維持管理業務 / 稼働率 80% / KPI: 清掃スキル↑ / 疲労度: 低
* **リナ:** ゴブリン教育 / 担当: 文字・数字 / 進捗: 難航中 (ゴブリンの理解度が低いため) / 精神状態: 不満
(ゴブキチの先行きが不安だが…まあ、根気強くやるしかないか。ゴブジは順調だな。ゴブゾウも、新しい役割に馴染んでいるようだ。リナは…苦労しているようだが、これも必要なプロセスだ。)
俺は、リナに近づき、声をかけた。
「どうだ、教官殿? 生徒たちの出来は?」
リナは、疲れ切った顔で俺を睨みつけた。
「最低よ! あいつら、人間の3歳児より物覚えが悪いわ! なんで私がこんな…!」
「まあ、そう言うな。これも、お前自身の勉強になるかもしれないぞ? どうすれば、知性の低い相手にも分かりやすく物事を伝えられるか、というのは、高度なコミュニケーション技術だ。」
「詭弁よ!」
リナはぷいと顔を背けたが、その言葉は少し響いたのかもしれない。彼女は再び石板に向き合い、身振り手振りを交えながら、ゴブリンたちに「あ」と「い」の違いを教え始めた。
(ふむ、意外と教師の才能があるのかもしれないな。)
そんなことを考えていると、コアが新たな情報を報告してきた。
『マスター、リナから得た情報をデータベース化し、既存の知識と照合した結果、いくつかの興味深い点が浮かび上がりました。特に、魔法体系と魔力の性質について、マスターの知識(地球の物理法則)とは異なる法則性が存在することを示唆しています。』
「ほう? 例えば?」
『例えば、この世界の魔力は、単一のエネルギーではなく、複数の属性(火、水、風、土、光、闇など)を持つとされています。そして、魔法の発動は、単なるエネルギー変換ではなく、術者の意思と魔力が、世界の法則に干渉することで現象を具現化するプロセスである、と。これは、マスターの得意とするシステム的なアプローチとは異なる、より…感覚的、あるいは哲学的な側面を持つ可能性があります。』
「属性…世界の法則への干渉…なるほどな。」
それは、俺がこれまで考えてきた「魔法=プログラム」という単純な図式では捉えきれない複雑さを示唆していた。魔法対策を考える上でも、この世界の法則性を理解することは重要になるだろう。
『また、リナが言及した「紅蓮の魔女」ロザリアですが、彼女が得意とするのは火属性魔法であり、その魔力量は規格外であると複数の情報源(ギルドの噂話など)が一致して示しています。彼女のダンジョン「紅蓮の迷宮」は、攻撃的な罠と、強力な火属性モンスターで構成されている可能性が高いです。』
「ロザリア…火属性特化、か。もし敵対することになれば、相性も考えなければならないな。俺のダンジョンは、今のところ特定の属性に偏ってはいないが…」
これも重要な情報だ。ライバルの特性を知ることは、戦略立案の基本だ。
拡張されたダンジョン、開始された再訓練、そして新たな知識。ダンジョンは、着実に進化を続けている。だが、同時に、新たな課題や脅威も見えてきた。
俺は、ダッシュボードに表示されたDP残高――486DP――を見つめた。この限られたリソースを、次にどう投資すべきか。ゴブリンの追加召喚か? 新たな罠の開発か? それとも、魔法対策の研究か?
選択肢は多い。そして、その選択が、このダンジョンの未来を左右する。俺は、最適な一手を見つけ出すために、再び思考の海へと潜っていくのだった。システム化されたダンジョン運営は、常に最適化とアップデートの連続なのだ。
情報収集フェーズを一旦終え、次に取り組むべきは、ダンジョンの物理的な強化と、露呈した課題――特にゴブリン部隊の練度向上――への対応だ。
「コア、ダンジョン拡張計画を実行する。設計図は転送済みだ。必要なDPと工期は?」
俺は、コアが実装してくれた設計ツールで描いた新しいダンジョンフロアの青写真を最終確認しながら、指示を出した。レベルアップで拡張可能になった半径20mの範囲を最大限に活用し、これまでの直線的な構造から、より複雑で防御に適したレイアウトへと改修する計画だ。
『ダンジョン拡張計画(フェーズ1.1)承認。必要DPは、空間生成、通路構築、壁面強化(ゴブリンの打撃程度には耐えられるレベル)、ダミールーム設置などを含め、合計350DP。工期は、コアの全力稼働で約3時間と推定されます。』
350DPか…現在の所持DPが836だから、実行すれば残りは486DP。かなり大きな投資だが、将来の安全と効率を考えれば必要経費だ。
「よし、実行してくれ。工事中は、ゴブリンたちとリナは待機所で待機。スラきちとスラには、資材(土や石)の運搬補助を頼む。」
『承知いたしました。ダンジョン拡張工事を開始します。』
コアの宣言と共に、ダンジョン全体が再び微かに振動し始めた。壁や床が、まるで生き物のように蠢き、新たな通路が形成され、既存の空間が拡張されていく。土や岩石が魔法的な力で圧縮・成形され、みるみるうちに設計図通りの構造物が出来上がっていく様は、何度見ても壮観だ。
俺はコア安置室から、ダッシュボードを通じて工事の進捗状況をリアルタイムで監視する。
**【ダンジョン拡張工事 進捗モニター】**
* **プロジェクト名:** ダンジョン拡張フェーズ1.1
* **進捗率:** 15%
* **消費DP:** 52.5 / 350 DP
* **残り工期:** 約2時間30分 (推定)
* **稼働ユニット:** コア (空間生成担当), スラきち・スラに (資材運搬補助)
(ふむ、順調だな。コアの並列処理能力も上がっているのか、思ったより早い。)
今回の拡張の主なポイントは以下の通りだ。
1. **通路の分岐・複雑化:** これまでの一本道から、複数の分岐路を持つ構造に変更。侵入者を惑わせ、分断しやすくする。
2. **罠ゾーンの再構築:** 潤滑床、スパイクピット、トリップワイヤーといった既存の罠を、分岐した通路の要所に再配置。連動性を高め、回避されにくくする。
3. **ダミールームの設置:** 貴重品がありそうな見せかけの小部屋を複数設置。侵入者の注意を引きつけ、時間を稼ぐ。中には、弱いモンスターや別の罠を仕掛けることも想定。
4. **ゴブリン用訓練スペースの確保:** ゴブリン待機所の隣に、戦闘訓練や連携訓練を行うための専用スペースを設ける。
5. **壁面の強化:** ダンジョン全体の壁を、以前より一段階硬い材質に強化。ゴブリン程度の攻撃では、容易には破壊できないようにする。
これらの改修により、ダンジョンの防衛力は格段に向上するはずだ。受動的な罠だけでなく、構造自体で侵入者を消耗させ、時間を稼ぎ、そしてゴブリン部隊による迎撃へと繋げる。よりシステム化された防衛網の構築を目指す。
約3時間後、コアから工事完了の報告があった。
『ダンジョン拡張工事、完了しました。総消費DPは348DP。設計図通りに施工完了しています。』
「ご苦労、コア。スラきちたちもよくやった。」
俺はダッシュボードの3Dマップ表示機能(これもコアが実装してくれた)で、完成した新たなダンジョンフロアを確認する。うん、イメージ通りだ。複雑に入り組んだ通路、要所に配置された罠ゾーン、そして新設された訓練スペース。これなら、Fランク冒険者程度なら、かなりの確率で撃退できるだろう。
さて、ハードウェア(ダンジョン構造)の次は、ソフトウェア(モンスター育成)のアップデートだ。
俺は、待機所で待たせていたゴブリン三銃士と、彼らの「教官」役を(不本意ながら)引き受けたリナを、新設された訓練スペースへと呼び出した。
訓練スペースは、10メートル四方ほどの何もない空間だ。壁は頑丈で、床には訓練による衝撃を吸収するための特殊な素材(コアが開発した)が使われている。
「さて、今日から本格的な再訓練を開始する。」
俺は、ゴブキチ、ゴブジ、ゴブゾウ、そしてリナに向かって宣言した。
「まず、ゴブキチ!」
俺は、罰として昨晩の食事が抜きだったせいか、少し不機嫌そうな顔をしているゴブキチを睨みつけた。
「お前には、リーダーとしての自覚と、俺の指示を正確に理解し、実行する能力を叩き込む。今日から特別メニューだ。コア、訓練プログラム『リーダーシップ養成 Ver.0.1』を開始しろ。」
『了解しました。ゴブキチに対し、訓練プログラムを開始します。』
コアが、訓練スペースの壁に様々な図形や記号を投影し始めた。それらは、単純な命令(「右へ進め」「止まれ」「武器を構えろ」など)を図式化したものだ。ゴブキチは、それを見て瞬時に反応し、正確に行動しなければならない。反応が遅れたり、間違えたりすれば、コアから軽い電撃(ペナルティ)が飛ぶ仕組みだ。
「ギャッ!」「グギ!?」
早速、ゴブキチの悲鳴が上がる。前途は多難そうだ。
「次に、ゴブジ!」
俺は、少し自信なさげながらも、期待の眼差しを向けてくるゴブジに言った。
「お前には、斥候としての能力をさらに伸ばしてもらう。索敵、隠密行動、そして罠の設置・解除の基礎だ。コア、訓練プログラム『斥候養成 Ver.0.1』。」
『了解しました。ゴブジに対し、訓練プログラムを開始します。』
ゴブジの訓練は、隠された目標(コアが投影する小さな光など)を発見する、音を立てずに移動する、簡単な罠(トリップワイヤーなど)を設置・解除するといった内容だ。ゴブジは、持ち前の慎重さと観察力を活かし、意外なほどスムーズに課題をこなしていく。
「最後に、ゴブゾウ!」
俺は、やや所在なさげなゴブゾウに向き直った。
「お前には、後方支援の仕事を覚えてもらう。まずは、ダンジョン内の清掃と整理整頓。それから、スラきちたちの補助だ。コア、ゴブゾウには『ダンジョン維持管理業務マニュアル Ver.0.1』を渡しておけ。」
『了解しました。ゴブゾウにマニュアル(簡易絵文字版)を転送します。』
ゴブゾウは、戦闘から解放されたことに安堵したのか、素直に頷き、早速スラきちたちの後をついて清掃作業を手伝い始めた。まあ、彼にはそれが合っているのだろう。
そして、残るはリナだ。彼女は、ゴブリンたちが訓練(という名のシゴキ)を受けている様子を、呆然と眺めていた。
「さて、リナ。お前の仕事だ。」
俺は彼女に向き直った。
「まずは、ゴブリンたちに、この世界の基本的な文字と数字を教えてやってくれ。簡単な計算もだ。教材はコアが用意する。」
「わ、私が…ゴブリンに…文字を…?」
リナは、まだ信じられないといった表情だ。無理もない。普通の魔術師が、ゴブリンの家庭教師をさせられるなど、聞いたこともないだろう。
「そうだ。彼らの知性を底上げすることは、ダンジョンの効率化に繋がる。お前の知識が役に立つ場面だ。もちろん、サボったり、余計なことを教えようとしたりすれば、どうなるか分かっているな?」
俺は、彼女の手首の魔力枷に視線を送りながら、釘を刺した。
リナは、観念したようにため息をつき、コアが用意した教材(石板と、特殊なチョークのようなもの)を受け取った。
「…わかったわよ。やればいいんでしょ、やれば。」
こうして、奇妙な「ゴブリン教習所」が、俺のダンジョン内で開講された。
スパルタ式の戦闘訓練を受けるゴブキチ、黙々と斥候技術を磨くゴブジ、地道に清掃作業に励むゴブゾウ、そして不承不承ながらもゴブリンに文字を教えるリナ。傍らでは、スラきちとスラにが訓練の補助や清掃作業をこなし、コアが全体の進捗管理とデータ収集を行っている。
俺は、コア安置室からダッシュボードを通じて、その全てを監視・管理する。
**【簡易ダッシュボード - モンスター育成状況】**
* **ゴブキチ:** リーダーシップ養成 Ver.0.1 / 進捗率 5% / KPI: 指示理解度↓, 報連相↓ (ペナルティ多発) / 疲労度: 中
* **ゴブジ:** 斥候養成 Ver.0.1 / 進捗率 20% / KPI: 観察力↑, 隠密性↑ / 疲労度: 低
* **ゴブゾウ:** 維持管理業務 / 稼働率 80% / KPI: 清掃スキル↑ / 疲労度: 低
* **リナ:** ゴブリン教育 / 担当: 文字・数字 / 進捗: 難航中 (ゴブリンの理解度が低いため) / 精神状態: 不満
(ゴブキチの先行きが不安だが…まあ、根気強くやるしかないか。ゴブジは順調だな。ゴブゾウも、新しい役割に馴染んでいるようだ。リナは…苦労しているようだが、これも必要なプロセスだ。)
俺は、リナに近づき、声をかけた。
「どうだ、教官殿? 生徒たちの出来は?」
リナは、疲れ切った顔で俺を睨みつけた。
「最低よ! あいつら、人間の3歳児より物覚えが悪いわ! なんで私がこんな…!」
「まあ、そう言うな。これも、お前自身の勉強になるかもしれないぞ? どうすれば、知性の低い相手にも分かりやすく物事を伝えられるか、というのは、高度なコミュニケーション技術だ。」
「詭弁よ!」
リナはぷいと顔を背けたが、その言葉は少し響いたのかもしれない。彼女は再び石板に向き合い、身振り手振りを交えながら、ゴブリンたちに「あ」と「い」の違いを教え始めた。
(ふむ、意外と教師の才能があるのかもしれないな。)
そんなことを考えていると、コアが新たな情報を報告してきた。
『マスター、リナから得た情報をデータベース化し、既存の知識と照合した結果、いくつかの興味深い点が浮かび上がりました。特に、魔法体系と魔力の性質について、マスターの知識(地球の物理法則)とは異なる法則性が存在することを示唆しています。』
「ほう? 例えば?」
『例えば、この世界の魔力は、単一のエネルギーではなく、複数の属性(火、水、風、土、光、闇など)を持つとされています。そして、魔法の発動は、単なるエネルギー変換ではなく、術者の意思と魔力が、世界の法則に干渉することで現象を具現化するプロセスである、と。これは、マスターの得意とするシステム的なアプローチとは異なる、より…感覚的、あるいは哲学的な側面を持つ可能性があります。』
「属性…世界の法則への干渉…なるほどな。」
それは、俺がこれまで考えてきた「魔法=プログラム」という単純な図式では捉えきれない複雑さを示唆していた。魔法対策を考える上でも、この世界の法則性を理解することは重要になるだろう。
『また、リナが言及した「紅蓮の魔女」ロザリアですが、彼女が得意とするのは火属性魔法であり、その魔力量は規格外であると複数の情報源(ギルドの噂話など)が一致して示しています。彼女のダンジョン「紅蓮の迷宮」は、攻撃的な罠と、強力な火属性モンスターで構成されている可能性が高いです。』
「ロザリア…火属性特化、か。もし敵対することになれば、相性も考えなければならないな。俺のダンジョンは、今のところ特定の属性に偏ってはいないが…」
これも重要な情報だ。ライバルの特性を知ることは、戦略立案の基本だ。
拡張されたダンジョン、開始された再訓練、そして新たな知識。ダンジョンは、着実に進化を続けている。だが、同時に、新たな課題や脅威も見えてきた。
俺は、ダッシュボードに表示されたDP残高――486DP――を見つめた。この限られたリソースを、次にどう投資すべきか。ゴブリンの追加召喚か? 新たな罠の開発か? それとも、魔法対策の研究か?
選択肢は多い。そして、その選択が、このダンジョンの未来を左右する。俺は、最適な一手を見つけ出すために、再び思考の海へと潜っていくのだった。システム化されたダンジョン運営は、常に最適化とアップデートの連続なのだ。
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自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!
こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」
主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。
しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。
「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」
さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。
そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)
かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!
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