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第27話:制御不能な変数、そして呉越同舟の反撃
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ダンジョンの奥深くから響き渡った、形容しがたいほどの凶悪な咆哮。それは、その場にいた全ての者の動きを凍りつかせた。冒険者パーティ「鉄の拳」のゴルド、シルフィ、マルク。しがない盗賊を装っていた実力者ジン。そして、負傷しながらも必死に戦っていたゴブキチとゴブジ。誰もが、通路の奥から現れるであろう「何か」に意識を集中させていた。
やがて、闇の中から姿を現したのは…ゴブゾウだった。
だが、それは俺たちが知っている、怯えてばかりいたゴブゾウではなかった。
彼の体は、一回りも二回りも大きく膨れ上がり、緑色の肌は赤黒く変色し、血管が浮き出ている。瞳は血走り、理性のかけらも感じられない凶暴な光を宿していた。口からは涎が垂れ、手には、どこから持ってきたのか、巨大で歪な形状の石斧(簡易工房にあった試作品か?)が握られている。その全身から放たれるプレッシャーは、先ほどのCランク冒険者パーティすら霞むほどに強大だった。
「ゴ、ゴブゾウ…なのか…? おい、どうしたんだ!?」
俺はマイクで呼びかけるが、完全に無反応だ。彼はもはや、俺の声が届く存在ではなくなってしまったようだった。
『マスター! ゴブゾウの生体反応が異常亢進! 魔力レベルも急上昇しています! これは…一種の暴走状態(バーサーク)です! 極めて危険!』
コアが、切迫した警告を発する。
「バーサーク…だと!?」
変貌したゴブゾウ――もはや「バーサーカー・ゴブゾウ」と呼ぶべきか――は、その血走った目で周囲を見回すと、手始めとばかりに、近くにあったスケルトンの残骸を石斧で粉々に砕き、さらに近くの壁を殴りつけて、容易く陥没させた! そのパワーは、ゴブリンのそれとは比較にならない。
「おいおい…あのチビ、化け物じゃねえか…!」
ジンが、信じられないといった表情で呟く。
「な、なんだあいつは!? ゴブリンの亜種か!? あんなの、聞いたことがないぞ!」
ゴルドも、その異常なパワーに顔色を変えている。シルフィとマルクも、完全に警戒態勢に入った。
バーサーカー・ゴブゾウは、敵意の対象を探すように周囲を見回し…そして、最も近くにいた存在――負傷して動けないでいた神官ドルガン――にその血走った目を向けた!
「グオオオオオオ!!」
獣のような咆哮を上げ、ドルガンに向かって突進しようとする!
「ドルガン! 危ない!」
ゴルドが叫び、咄嗟にドルガンを庇うように前に出る。
(まずい! このままでは、敵も味方も関係なく、全員皆殺しにされる!)
俺は、瞬時に状況を判断した。バーサーカー・ゴブゾウは、もはや制御不能な脅威だ。彼を「鎮圧」する以外に、この場を生き残る道はない。
「コア! バーサーカー・ゴブゾウの弱点は!? 分析急げ!」
『分析中…! 異常な興奮状態により、防御力が低下している可能性があります! また、理性がないため、単純な攻撃パターンを繰り返す傾向が強いと推測! ただし、パワーとスピードは驚異的です! 正面からのぶつかり合いは危険!』
「防御力低下、単純な攻撃パターン…か。よし…賭けるしかない!」
俺は、マイクのスイッチを入れた。そして、本来ならば敵であるはずの冒険者たちに向かって、呼びかけた。
「聞こえるか、『鉄の拳』の諸君! そしてジン! このままでは、我々は全員、あの化け物に殺されるぞ!」
突然の呼びかけに、ゴルドたちは驚き、警戒しながらもこちら(声の主がいるであろう方向)を見た。
「誰だ!? どこから話している!?」
「俺は、このダンジョンの主だ。今はそんなことはどうでもいい! 見ての通り、状況は最悪だ。あのゴブリン(?)は、完全に暴走している。敵も味方も関係ない。奴を止めなければ、我々に未来はない!」
俺は、切迫した状況を強調し、彼らに現実を突きつける。
「一時休戦し、共同であの化け物を鎮圧する! これ以外に生き残る道はない! どうする!?」
俺からの、予想外の「共闘」の提案。
ゴルドは、眉間に深い皺を寄せ、逡巡した。ダンジョンマスターからの申し出など、信用できるはずがない。だが、目の前で暴威を振るうバーサーカー・ゴブゾウの存在は、彼の迷いを打ち砕くのに十分だった。
「…チッ! 分かった! 話に乗ってやる! だが、もし裏切ったら、その時は貴様から先に血祭りにあげてやるぞ!」
「それでいい。ジン! お前も異論はないな?」
「へっ、面白くなってきたじゃねえか。利用できるもんは、何でも利用させてもらうぜ。」
ジンも、不敵な笑みを浮かべながら、短剣を構え直した。
(よし…! 呉越同舟だが、これで最低限の戦力は整った!)
俺は、コアの分析結果と、各々の能力(これまでの戦闘で把握したもの)を基に、即席の共同作戦を立案し、指示を飛ばした。
「作戦を伝える! まず、ゴルド! お前が前衛だ! あの化け物の注意を引きつけ、攻撃を受け止めろ! 無理に倒そうとするな、時間を稼ぐだけでいい!」
「…おう! 任せろ!」ゴルドが力強く頷く。隣でゴブジが何故か返事をしていたが、今は気にしない。
「シルフィ! お前は遠距離から、化け物の『目』を狙え! 視界を奪えれば、動きを鈍らせられるはずだ!」
「了解した!」
「マルク! 攻撃魔法は控えろ! 下手に刺激すると、さらに暴れるかもしれん! お前は、ゴルドへの防御魔法(プロテクションなど)と、化け物の動きを鈍らせる補助魔法(スロウ、ウェブなど)に専念しろ!」
「…分かった!」
「ジン! お前は奴の死角から奇襲をかけろ! 特に『脚』を狙え! あの巨体を支える脚を破壊できれば、動きを止められる!」
「へっ、お安い御用だ!」
「ゴブキチ! ゴブジ! お前たちは側面から攪乱しろ! 直接的なダメージは期待できんが、奴の注意を分散させろ! スラきち、スラにも同様に、粘液で足元を狙い続けろ!」
『グオオ! やってやる!』『ギッ!』
「コア! 全体の状況を監視し、リアルタイムで情報を共有! 各員の負傷状況、敵の行動パターン予測を常にアップデートしろ!」
『了解しました、マスター! リアルタイム戦況分析システム、起動!』
臨時混成チームによる、バーサーカー・ゴブゾウ鎮圧作戦が、今、開始された!
「うおおおおお!!」
ゴルドが雄叫びを上げ、巨大な戦斧を構えてバーサーカー・ゴブゾウに突進する! ゴブゾウは、単純な反応でゴルドを敵と認識し、巨大な石斧を振り下ろした!
ゴォン!!
凄まじい衝撃音と共に、ゴルドは戦斧で石斧を受け止めたが、そのパワーに数歩後退させられた。
「ぐっ…! なんてパワーだ…!」
「今よ! マルチプルアロー!」
シルフィが、ゴルドが注意を引きつけている隙に、矢を連射! 狙いはゴブゾウの目!
数本の矢が顔面に命中するが、バーサーカー化したゴブゾウの皮膚は硬化しているのか、浅く突き刺さるだけで、致命傷にはならない!
「目が潰せんか…! ならば!」
シルフィは、狙いを足元に変え、ゴブゾウの動きを牽制する。
「スロウ!」
マルクが補助魔法を放つ! ゴブゾウの動きが、わずかに鈍る!
「そこだ!」
ジンが、影の中から飛び出し、ゴブゾウの膝裏あたりに短剣を突き立てようとする!
だが、ゴブゾウは本能的な危機察知能力があるのか、振り向きざまに石斧を横薙ぎに振るう! ジンは咄嗟に後方へ飛び退き、回避!
「チッ! カンが良すぎるぜ!」
側面からは、ゴブキチとゴブジが、石を投げつけたり、棍棒で足元を攻撃したりして、懸命に注意を引こうとしている。スライムたちも、粘液弾を飛ばし続けるが、バーサーカー・ゴブゾウの巨体には、あまり効果がないように見える。
戦況は、一進一退。
ゴルドが懸命に攻撃を受け止め、シルフィとマルクが援護し、ジンが決定的瞬間を狙う。ゴブリンとスライムが攪乱する。だが、バーサーカー・ゴブゾウの圧倒的なパワーとタフネスの前に、決定打を与えられずにいた。ゴルドの体力も、徐々に削られていく。
(まずい…! このままではジリ貧だ!)
俺は、コアの分析データを睨みつけ、打開策を探る。
弱点は、防御力の低下と、単純な攻撃パターン。そして、脚…。
(脚を、もっと集中的に狙わせるしかないか…? いや、もっと確実な方法は…)
その時、俺はある可能性に思い至った。
バーサーカー状態。それは、異常な興奮状態だ。ならば、その興奮を、さらに高めてやればどうなる? あるいは、全く別の強い刺激を与えれば…?
「コア! 『アレ』を使ってみるぞ! 準備しろ!」
俺は、少し前にジンが提案し、試作だけしてあった罠コンボ――『プレス&ニードル』を、この状況で使うことを決断した。ただし、毒針ではなく、別のものを仕込む。
『マスター、危険すぎます! あのプロトタイプは、まだ実戦テストが不十分です! しかも、対象があの巨体では、効果があるかどうか…!』
コアが、珍しく反対意見を述べる。
「やるしかない! このままでは全滅だ! コア、俺の指示通りに動け!」
俺は、コアに詳細な指示を出し、罠の発動準備を整えさせた。
そして、マイクを通じて、戦っている全員に告げた。
「全員、聞け! 俺の合図で、一斉に後退しろ! あの化け物を、特定の地点まで誘導する!」
ゴルドたちが、戸惑いながらも俺の指示に従う準備をする。
俺は、バーサーカー・ゴブゾウが、ゴルドに очередной一撃を加えようとした、まさにそのタイミングを見計らって、叫んだ!
「今だ! 後退しろ!!」
ゴルドたちが一斉に後ろへ飛び退く。バーサーカー・ゴブゾウは、獲物を取り逃したことにさらに怒り狂い、ゴルドたちを追って、俺が指定したポイント――罠コンボ『プレス&ニードル』の真上――へと踏み込んだ!
「コア! 作動させろ!!!」
俺の号令と共に、罠が発動した!
ガシャン! という轟音と共に、天井が急速に下降し、バーサーカー・ゴブゾウの巨体を押し潰そうとする!
同時に、壁から無数の針が飛び出した!
だが、針の先端に塗られていたのは、毒ではなかった。
それは、コアが俺の指示で生成した、高濃度の「魔力安定剤」と、「鎮静効果」のある特殊な薬液だったのだ!
天井の圧迫と、全身に突き刺さる針、そして注入される特殊な薬液。三重の苦痛と不可解な感覚に、バーサーカー・ゴブゾウは混乱し、動きが目に見えて鈍っていく。
果たして、この荒療治は吉と出るか、凶と出るか…!?
俺は、モニターに映る光景を、息を詰めて見守った。状況は、まだ予断を許さない。
やがて、闇の中から姿を現したのは…ゴブゾウだった。
だが、それは俺たちが知っている、怯えてばかりいたゴブゾウではなかった。
彼の体は、一回りも二回りも大きく膨れ上がり、緑色の肌は赤黒く変色し、血管が浮き出ている。瞳は血走り、理性のかけらも感じられない凶暴な光を宿していた。口からは涎が垂れ、手には、どこから持ってきたのか、巨大で歪な形状の石斧(簡易工房にあった試作品か?)が握られている。その全身から放たれるプレッシャーは、先ほどのCランク冒険者パーティすら霞むほどに強大だった。
「ゴ、ゴブゾウ…なのか…? おい、どうしたんだ!?」
俺はマイクで呼びかけるが、完全に無反応だ。彼はもはや、俺の声が届く存在ではなくなってしまったようだった。
『マスター! ゴブゾウの生体反応が異常亢進! 魔力レベルも急上昇しています! これは…一種の暴走状態(バーサーク)です! 極めて危険!』
コアが、切迫した警告を発する。
「バーサーク…だと!?」
変貌したゴブゾウ――もはや「バーサーカー・ゴブゾウ」と呼ぶべきか――は、その血走った目で周囲を見回すと、手始めとばかりに、近くにあったスケルトンの残骸を石斧で粉々に砕き、さらに近くの壁を殴りつけて、容易く陥没させた! そのパワーは、ゴブリンのそれとは比較にならない。
「おいおい…あのチビ、化け物じゃねえか…!」
ジンが、信じられないといった表情で呟く。
「な、なんだあいつは!? ゴブリンの亜種か!? あんなの、聞いたことがないぞ!」
ゴルドも、その異常なパワーに顔色を変えている。シルフィとマルクも、完全に警戒態勢に入った。
バーサーカー・ゴブゾウは、敵意の対象を探すように周囲を見回し…そして、最も近くにいた存在――負傷して動けないでいた神官ドルガン――にその血走った目を向けた!
「グオオオオオオ!!」
獣のような咆哮を上げ、ドルガンに向かって突進しようとする!
「ドルガン! 危ない!」
ゴルドが叫び、咄嗟にドルガンを庇うように前に出る。
(まずい! このままでは、敵も味方も関係なく、全員皆殺しにされる!)
俺は、瞬時に状況を判断した。バーサーカー・ゴブゾウは、もはや制御不能な脅威だ。彼を「鎮圧」する以外に、この場を生き残る道はない。
「コア! バーサーカー・ゴブゾウの弱点は!? 分析急げ!」
『分析中…! 異常な興奮状態により、防御力が低下している可能性があります! また、理性がないため、単純な攻撃パターンを繰り返す傾向が強いと推測! ただし、パワーとスピードは驚異的です! 正面からのぶつかり合いは危険!』
「防御力低下、単純な攻撃パターン…か。よし…賭けるしかない!」
俺は、マイクのスイッチを入れた。そして、本来ならば敵であるはずの冒険者たちに向かって、呼びかけた。
「聞こえるか、『鉄の拳』の諸君! そしてジン! このままでは、我々は全員、あの化け物に殺されるぞ!」
突然の呼びかけに、ゴルドたちは驚き、警戒しながらもこちら(声の主がいるであろう方向)を見た。
「誰だ!? どこから話している!?」
「俺は、このダンジョンの主だ。今はそんなことはどうでもいい! 見ての通り、状況は最悪だ。あのゴブリン(?)は、完全に暴走している。敵も味方も関係ない。奴を止めなければ、我々に未来はない!」
俺は、切迫した状況を強調し、彼らに現実を突きつける。
「一時休戦し、共同であの化け物を鎮圧する! これ以外に生き残る道はない! どうする!?」
俺からの、予想外の「共闘」の提案。
ゴルドは、眉間に深い皺を寄せ、逡巡した。ダンジョンマスターからの申し出など、信用できるはずがない。だが、目の前で暴威を振るうバーサーカー・ゴブゾウの存在は、彼の迷いを打ち砕くのに十分だった。
「…チッ! 分かった! 話に乗ってやる! だが、もし裏切ったら、その時は貴様から先に血祭りにあげてやるぞ!」
「それでいい。ジン! お前も異論はないな?」
「へっ、面白くなってきたじゃねえか。利用できるもんは、何でも利用させてもらうぜ。」
ジンも、不敵な笑みを浮かべながら、短剣を構え直した。
(よし…! 呉越同舟だが、これで最低限の戦力は整った!)
俺は、コアの分析結果と、各々の能力(これまでの戦闘で把握したもの)を基に、即席の共同作戦を立案し、指示を飛ばした。
「作戦を伝える! まず、ゴルド! お前が前衛だ! あの化け物の注意を引きつけ、攻撃を受け止めろ! 無理に倒そうとするな、時間を稼ぐだけでいい!」
「…おう! 任せろ!」ゴルドが力強く頷く。隣でゴブジが何故か返事をしていたが、今は気にしない。
「シルフィ! お前は遠距離から、化け物の『目』を狙え! 視界を奪えれば、動きを鈍らせられるはずだ!」
「了解した!」
「マルク! 攻撃魔法は控えろ! 下手に刺激すると、さらに暴れるかもしれん! お前は、ゴルドへの防御魔法(プロテクションなど)と、化け物の動きを鈍らせる補助魔法(スロウ、ウェブなど)に専念しろ!」
「…分かった!」
「ジン! お前は奴の死角から奇襲をかけろ! 特に『脚』を狙え! あの巨体を支える脚を破壊できれば、動きを止められる!」
「へっ、お安い御用だ!」
「ゴブキチ! ゴブジ! お前たちは側面から攪乱しろ! 直接的なダメージは期待できんが、奴の注意を分散させろ! スラきち、スラにも同様に、粘液で足元を狙い続けろ!」
『グオオ! やってやる!』『ギッ!』
「コア! 全体の状況を監視し、リアルタイムで情報を共有! 各員の負傷状況、敵の行動パターン予測を常にアップデートしろ!」
『了解しました、マスター! リアルタイム戦況分析システム、起動!』
臨時混成チームによる、バーサーカー・ゴブゾウ鎮圧作戦が、今、開始された!
「うおおおおお!!」
ゴルドが雄叫びを上げ、巨大な戦斧を構えてバーサーカー・ゴブゾウに突進する! ゴブゾウは、単純な反応でゴルドを敵と認識し、巨大な石斧を振り下ろした!
ゴォン!!
凄まじい衝撃音と共に、ゴルドは戦斧で石斧を受け止めたが、そのパワーに数歩後退させられた。
「ぐっ…! なんてパワーだ…!」
「今よ! マルチプルアロー!」
シルフィが、ゴルドが注意を引きつけている隙に、矢を連射! 狙いはゴブゾウの目!
数本の矢が顔面に命中するが、バーサーカー化したゴブゾウの皮膚は硬化しているのか、浅く突き刺さるだけで、致命傷にはならない!
「目が潰せんか…! ならば!」
シルフィは、狙いを足元に変え、ゴブゾウの動きを牽制する。
「スロウ!」
マルクが補助魔法を放つ! ゴブゾウの動きが、わずかに鈍る!
「そこだ!」
ジンが、影の中から飛び出し、ゴブゾウの膝裏あたりに短剣を突き立てようとする!
だが、ゴブゾウは本能的な危機察知能力があるのか、振り向きざまに石斧を横薙ぎに振るう! ジンは咄嗟に後方へ飛び退き、回避!
「チッ! カンが良すぎるぜ!」
側面からは、ゴブキチとゴブジが、石を投げつけたり、棍棒で足元を攻撃したりして、懸命に注意を引こうとしている。スライムたちも、粘液弾を飛ばし続けるが、バーサーカー・ゴブゾウの巨体には、あまり効果がないように見える。
戦況は、一進一退。
ゴルドが懸命に攻撃を受け止め、シルフィとマルクが援護し、ジンが決定的瞬間を狙う。ゴブリンとスライムが攪乱する。だが、バーサーカー・ゴブゾウの圧倒的なパワーとタフネスの前に、決定打を与えられずにいた。ゴルドの体力も、徐々に削られていく。
(まずい…! このままではジリ貧だ!)
俺は、コアの分析データを睨みつけ、打開策を探る。
弱点は、防御力の低下と、単純な攻撃パターン。そして、脚…。
(脚を、もっと集中的に狙わせるしかないか…? いや、もっと確実な方法は…)
その時、俺はある可能性に思い至った。
バーサーカー状態。それは、異常な興奮状態だ。ならば、その興奮を、さらに高めてやればどうなる? あるいは、全く別の強い刺激を与えれば…?
「コア! 『アレ』を使ってみるぞ! 準備しろ!」
俺は、少し前にジンが提案し、試作だけしてあった罠コンボ――『プレス&ニードル』を、この状況で使うことを決断した。ただし、毒針ではなく、別のものを仕込む。
『マスター、危険すぎます! あのプロトタイプは、まだ実戦テストが不十分です! しかも、対象があの巨体では、効果があるかどうか…!』
コアが、珍しく反対意見を述べる。
「やるしかない! このままでは全滅だ! コア、俺の指示通りに動け!」
俺は、コアに詳細な指示を出し、罠の発動準備を整えさせた。
そして、マイクを通じて、戦っている全員に告げた。
「全員、聞け! 俺の合図で、一斉に後退しろ! あの化け物を、特定の地点まで誘導する!」
ゴルドたちが、戸惑いながらも俺の指示に従う準備をする。
俺は、バーサーカー・ゴブゾウが、ゴルドに очередной一撃を加えようとした、まさにそのタイミングを見計らって、叫んだ!
「今だ! 後退しろ!!」
ゴルドたちが一斉に後ろへ飛び退く。バーサーカー・ゴブゾウは、獲物を取り逃したことにさらに怒り狂い、ゴルドたちを追って、俺が指定したポイント――罠コンボ『プレス&ニードル』の真上――へと踏み込んだ!
「コア! 作動させろ!!!」
俺の号令と共に、罠が発動した!
ガシャン! という轟音と共に、天井が急速に下降し、バーサーカー・ゴブゾウの巨体を押し潰そうとする!
同時に、壁から無数の針が飛び出した!
だが、針の先端に塗られていたのは、毒ではなかった。
それは、コアが俺の指示で生成した、高濃度の「魔力安定剤」と、「鎮静効果」のある特殊な薬液だったのだ!
天井の圧迫と、全身に突き刺さる針、そして注入される特殊な薬液。三重の苦痛と不可解な感覚に、バーサーカー・ゴブゾウは混乱し、動きが目に見えて鈍っていく。
果たして、この荒療治は吉と出るか、凶と出るか…!?
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「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」
さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。
そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)
かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!
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