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第29話:戦後分析とゴブゾウの「仕様」、そして新たな取引材料
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Cランク冒険者パーティ「鉄の拳」との激戦、そしてバーサーカー・ゴブゾウという想定外の乱入者がもたらした混乱は、ようやく収束した。冒険者たちは撤退し、ダンジョン内には再び(比較的)静かな日常が戻りつつあった。だが、その爪痕は深く、そして多くの課題と新たな謎を残していた。
「コア、被害状況の報告と、修復に必要なDPの見積もりを。」
俺はコア安置室で、未だ戦闘の余韻が残るダッシュボードを睨みつけながら指示を出した。ボス部屋前の広場は、壁が砕け、床が陥没し、見るも無残な状態だ。試作罠『プレス&ニードル』も、ゴブゾウの暴走によって半壊している。
『報告します。ダンジョン構造の損傷は、ボス部屋前広場を中心に広範囲に及んでいます。壁面修復、床面再構築、半壊した罠『プレス&ニードル』の撤去・再設置を含め、完全修復に必要なDPは推定120DPです。モンスター被害は、ゴブキチ(腹部打撲、軽度火傷)、ゴブジ(肩部矢傷)、スケルトン8体中6体消滅、ゴブゾウ(バーサーカー化による極度の消耗)。治療に必要なDPは、回復泉の効果を含めて約20DPです。』
修復と治療で合計140DPか…痛い出費だが、必要経費だ。現在のDPは951なので、差し引いても811DPは残る。
「修復と治療を最優先で実行しろ。スケルトンは…また補充するか。いや、待て。補充は保留だ。まずは今回の戦闘を分析し、スケルトンの運用方針を再検討する。」
神官にあっさり無力化された現実を目の当たりにし、スケルトンへの過信は禁物だと痛感した。コスト40DPは、決して安くない。
『承知いたしました。修復及び治療を開始します。スケルトン補充は保留とします。ゴブゾウの様子は?』
「ああ、そっちも頼む。」
『ゴブゾウは現在、回復泉にて安静状態。バイタルは安定していますが、意識はまだ戻りません。精密スキャンを実施しましたが、バーサーカー化の明確な原因は特定できませんでした。ただし、彼の体内魔力循環に、通常ゴブリンとは異なる、不規則なパターンが観測されました。これが、何らかのトリガーによって暴走を引き起こす可能性があると推測されます。』
「不規則な魔力循環…ね。まるで、不安定なシステムだな。トリガーは何だったんだ?」
『戦闘による極度のストレス、あるいは仲間(ゴブキチ、ゴブジ)が傷つけられたことへの怒り…複合的な要因が考えられます。現時点では、再発の可能性も否定できません。』
「再発されたら、たまったもんじゃないな…」
ゴブゾウの存在は、強力な戦力であると同時に、いつ爆発するか分からない爆弾を抱えているようなものだ。彼の過去を探る必要がありそうだが、今は無理に刺激しない方がいいだろう。当面は、ストレスを与えない後方支援業務に戻し、コアによる常時監視を継続するしかない。彼の「仕様」を正確に把握し、制御できるまでは、戦力として計算に入れるのは危険すぎる。
次に、今回の戦闘データの分析だ。コアがまとめたレポートを読み込む。
**【戦闘ログNo.007 vs 鉄の拳 分析レポート】**
* **勝因:** ジンの予想外の参戦と実力、バーサーカー・ゴブゾウの乱入、コアの適切な戦況分析と指示、スライム部隊の効果的な援護。
* **敗因(苦戦理由):** 敵パーティの連携能力の高さ、神官によるアンデッド対策の有効性、スケルトン部隊の脆さ、ゴブリン部隊の練度不足(特に連携と指示徹底)、罠ゾーンの突破(対ゴリ押し性能不足)。
* **特筆事項:**
* ジンはDランク以上の実力者であり、「鉄の拳」とは過去に因縁がある可能性が高い。
* ゴブゾウは、特定の条件下でバーサーカー化するリスクを持つが、その戦闘力はCランク冒険者パーティをも圧倒する。制御方法の確立が急務。
* Cランク以上のパーティに対しては、第一階層の罠は効果が薄い。より強力な罠、あるいは罠の複合化(コンボ)が必須。
* 魔法対策(特に範囲攻撃、補助魔法、聖属性攻撃)が急務。
「…やはり、課題は明確だな。」
スケルトンは、アンデッド対策持ちには無力に近い。今後は、壁役や単純作業要員としての運用に限定すべきだろう。主力となるのは、やはりゴブリン部隊だ。だが、連携と指示徹底能力を、さらに向上させる必要がある。罠についても、単純な物理トラップだけでなく、魔法的な要素や、より複雑なコンボを取り入れていく必要がある。
「ゴブキチのリーダーシップ訓練、ゴブジの特殊技能訓練は継続。それと、新たに『対魔法戦闘訓練』と『連携戦術訓練』を導入する。コア、訓練プログラムを作成しろ。」
『承知いたしました。新規訓練プログラムVer.0.1を作成します。仮想敵として、魔法攻撃や連携行動を行うタイプを設定します。』
戦力の再編と育成方針の見直し。これも重要なタスクだ。
そして、もう一つの重要な要素、ジンとの関係だ。彼は、明らかに「鉄の拳」と何かあったようだ。
俺は、治療を終え、コア安置室で新しい短剣の手入れをしていたジンに話しかけた。
「ジン、お前、『鉄の拳』とはどういう知り合いなんだ? あの様子だと、ただの顔見知りじゃなさそうだったが。」
ジンは、短剣を拭う手を止め、少しだけ遠い目をした。
「…まあな。少しばかり、腐れ縁があってな。昔、ある『仕事』で、奴らと組んだことがあるんだ。」
「仕事?」
「ああ、ヤバい遺跡から、ある『お宝』を回収するって仕事だった。俺は罠解除と案内役で雇われてな。だが、最後の最後で、奴らは俺を裏切った。『お宝』を独り占めするために、俺を遺跡に置き去りにしやがったんだ。あそこで死ななかったのは、運が良かっただけだ。」
ジンは、苦々しげに吐き捨てた。
「なるほどな…それで、借りを返す、と。」
合点がいった。ジンのあの異常なまでの敵意は、裏切られた復讐心から来ていたのだ。
「まあ、そういうことだ。まさか、こんなところで再会するとは思わなかったがな。おかげで、少しは気が晴れたぜ。」
ジンは、ニヤリと笑った。
(こいつの過去も、色々と複雑そうだな…だが、利用できる情報を持っているのは確かだ。)
「その『お宝』とやらは、何だったんだ?」
俺が尋ねると、ジンは肩をすくめた。
「さあな。結局、俺は見てねえからな。だが、奴らが命懸けで独り占めしようとしたんだ、よっぽどのモンだったんだろうぜ。古代文明の遺物(アーティファクト)か何かだったのかもしれねえな。」
古代文明の遺物…アーティファクト。この世界の深層に関わるキーワードかもしれない。これも、いつか何かの伏線になるかもしれない。俺は、ジンの証言をデータベースに記録しておいた。
そして、もう一人の捕虜、最初の盗賊(ゴブゾウに殴られて気絶した方)の処遇についても考えなければならない。彼は、ジンとは違い、特に目立ったスキルも情報も持っていなさそうだ。
「コア、あの盗賊、名前は聞いたか?」
『はい、名前は「ラット」と名乗っています。スキルは基本的な盗賊技能のみ。特筆すべき情報も持っていないようです。』
「そうか…」
使い道がなさそうなら、記憶を消して(コアにその機能はないが、何らかの方法で)解放するか、あるいは…
(待てよ。基本的な盗賊技能だけでも、使い道はあるかもしれない。)
例えば、ゴブジの訓練相手。あるいは、ダンジョン内の見回りや、簡単な罠の設置補助。もちろん、厳重な監視下で、だが。人材は有効活用すべきだ。
「ラットを、ジンの『助手』ということにするか。ジン、お前の監視下で、ラットに簡単な仕事を手伝わせてもいいぞ。もちろん、報酬は最低限だがな。」
「へっ、あのマヌケを俺がか? まあ、パシリくらいには使えるかもしれねえな。」
ジンは、面倒くさそうにしながらも、断りはしなかった。
これで、捕虜二人(リナ、ジン)と、半捕虜(ラット)の役割分担も決まった。
リナ:ミリアの世話、ゴブリン教育、魔法関連の情報提供。
ジン:罠開発コンサル、ゴブジへの指導、ラットの監視。
ラット:ジンの助手、雑用。
人材(?)も、それなりに揃ってきた。あとは、彼らをいかに効率的に活用し、ダンジョン運営に貢献させるかだ。
そんな中、ミスリル工房では、ゴブジが目覚ましい進歩を見せていた。
「できた…! マスター、見てくれ!」
ゴブジが、興奮した様子で、完成したばかりのミスリルインゴットを俺のところに持ってきた。以前の試作品とは比べ物にならない、均一な輝きと形状を持つ、見事なインゴットだった。
『鑑定結果:ミスリル銀インゴット(中品質)。純度約30%。市場価格で推定5000DP以上の価値があります。ゴブジのスキル「金属精錬」がLv.1に上昇しました。』
「素晴らしいぞ、ゴブジ! これなら、ガルバス商会との交渉で、強力な武器になる!」
俺はゴブジを褒め称え、彼に特別報酬(上質な工具セット)を与えた。ゴブジは、ますますやる気を出したようだ。
これで、ガルバス商会に提示する「取引材料」も手に入った。あとは、ジンからの続報を待つだけだ。
DPは、ダンジョン修復などで減少したものの、着実に回復し、現在は811DP。
ミスリルインゴットという新たな収入源の目処も立った。
モンスターたちの育成方針も固まり、内部リソース循環も機能し始めた。
課題はまだ多いが、ダンジョンは確実に前進している。
俺は、完成したばかりのミスリルインゴットを手に取り、そのずっしりとした重みと、ひんやりとした感触を確かめた。この輝きが、俺のホワイトダンジョン計画を、次のステージへと導いてくれることを期待しながら。
そして、その期待に応えるかのように、数日後、フロンティアにいるジン(分身)から、待ちに待った連絡が入ることになるのだった。ガルバス会長の返答は、果たして…?
「コア、被害状況の報告と、修復に必要なDPの見積もりを。」
俺はコア安置室で、未だ戦闘の余韻が残るダッシュボードを睨みつけながら指示を出した。ボス部屋前の広場は、壁が砕け、床が陥没し、見るも無残な状態だ。試作罠『プレス&ニードル』も、ゴブゾウの暴走によって半壊している。
『報告します。ダンジョン構造の損傷は、ボス部屋前広場を中心に広範囲に及んでいます。壁面修復、床面再構築、半壊した罠『プレス&ニードル』の撤去・再設置を含め、完全修復に必要なDPは推定120DPです。モンスター被害は、ゴブキチ(腹部打撲、軽度火傷)、ゴブジ(肩部矢傷)、スケルトン8体中6体消滅、ゴブゾウ(バーサーカー化による極度の消耗)。治療に必要なDPは、回復泉の効果を含めて約20DPです。』
修復と治療で合計140DPか…痛い出費だが、必要経費だ。現在のDPは951なので、差し引いても811DPは残る。
「修復と治療を最優先で実行しろ。スケルトンは…また補充するか。いや、待て。補充は保留だ。まずは今回の戦闘を分析し、スケルトンの運用方針を再検討する。」
神官にあっさり無力化された現実を目の当たりにし、スケルトンへの過信は禁物だと痛感した。コスト40DPは、決して安くない。
『承知いたしました。修復及び治療を開始します。スケルトン補充は保留とします。ゴブゾウの様子は?』
「ああ、そっちも頼む。」
『ゴブゾウは現在、回復泉にて安静状態。バイタルは安定していますが、意識はまだ戻りません。精密スキャンを実施しましたが、バーサーカー化の明確な原因は特定できませんでした。ただし、彼の体内魔力循環に、通常ゴブリンとは異なる、不規則なパターンが観測されました。これが、何らかのトリガーによって暴走を引き起こす可能性があると推測されます。』
「不規則な魔力循環…ね。まるで、不安定なシステムだな。トリガーは何だったんだ?」
『戦闘による極度のストレス、あるいは仲間(ゴブキチ、ゴブジ)が傷つけられたことへの怒り…複合的な要因が考えられます。現時点では、再発の可能性も否定できません。』
「再発されたら、たまったもんじゃないな…」
ゴブゾウの存在は、強力な戦力であると同時に、いつ爆発するか分からない爆弾を抱えているようなものだ。彼の過去を探る必要がありそうだが、今は無理に刺激しない方がいいだろう。当面は、ストレスを与えない後方支援業務に戻し、コアによる常時監視を継続するしかない。彼の「仕様」を正確に把握し、制御できるまでは、戦力として計算に入れるのは危険すぎる。
次に、今回の戦闘データの分析だ。コアがまとめたレポートを読み込む。
**【戦闘ログNo.007 vs 鉄の拳 分析レポート】**
* **勝因:** ジンの予想外の参戦と実力、バーサーカー・ゴブゾウの乱入、コアの適切な戦況分析と指示、スライム部隊の効果的な援護。
* **敗因(苦戦理由):** 敵パーティの連携能力の高さ、神官によるアンデッド対策の有効性、スケルトン部隊の脆さ、ゴブリン部隊の練度不足(特に連携と指示徹底)、罠ゾーンの突破(対ゴリ押し性能不足)。
* **特筆事項:**
* ジンはDランク以上の実力者であり、「鉄の拳」とは過去に因縁がある可能性が高い。
* ゴブゾウは、特定の条件下でバーサーカー化するリスクを持つが、その戦闘力はCランク冒険者パーティをも圧倒する。制御方法の確立が急務。
* Cランク以上のパーティに対しては、第一階層の罠は効果が薄い。より強力な罠、あるいは罠の複合化(コンボ)が必須。
* 魔法対策(特に範囲攻撃、補助魔法、聖属性攻撃)が急務。
「…やはり、課題は明確だな。」
スケルトンは、アンデッド対策持ちには無力に近い。今後は、壁役や単純作業要員としての運用に限定すべきだろう。主力となるのは、やはりゴブリン部隊だ。だが、連携と指示徹底能力を、さらに向上させる必要がある。罠についても、単純な物理トラップだけでなく、魔法的な要素や、より複雑なコンボを取り入れていく必要がある。
「ゴブキチのリーダーシップ訓練、ゴブジの特殊技能訓練は継続。それと、新たに『対魔法戦闘訓練』と『連携戦術訓練』を導入する。コア、訓練プログラムを作成しろ。」
『承知いたしました。新規訓練プログラムVer.0.1を作成します。仮想敵として、魔法攻撃や連携行動を行うタイプを設定します。』
戦力の再編と育成方針の見直し。これも重要なタスクだ。
そして、もう一つの重要な要素、ジンとの関係だ。彼は、明らかに「鉄の拳」と何かあったようだ。
俺は、治療を終え、コア安置室で新しい短剣の手入れをしていたジンに話しかけた。
「ジン、お前、『鉄の拳』とはどういう知り合いなんだ? あの様子だと、ただの顔見知りじゃなさそうだったが。」
ジンは、短剣を拭う手を止め、少しだけ遠い目をした。
「…まあな。少しばかり、腐れ縁があってな。昔、ある『仕事』で、奴らと組んだことがあるんだ。」
「仕事?」
「ああ、ヤバい遺跡から、ある『お宝』を回収するって仕事だった。俺は罠解除と案内役で雇われてな。だが、最後の最後で、奴らは俺を裏切った。『お宝』を独り占めするために、俺を遺跡に置き去りにしやがったんだ。あそこで死ななかったのは、運が良かっただけだ。」
ジンは、苦々しげに吐き捨てた。
「なるほどな…それで、借りを返す、と。」
合点がいった。ジンのあの異常なまでの敵意は、裏切られた復讐心から来ていたのだ。
「まあ、そういうことだ。まさか、こんなところで再会するとは思わなかったがな。おかげで、少しは気が晴れたぜ。」
ジンは、ニヤリと笑った。
(こいつの過去も、色々と複雑そうだな…だが、利用できる情報を持っているのは確かだ。)
「その『お宝』とやらは、何だったんだ?」
俺が尋ねると、ジンは肩をすくめた。
「さあな。結局、俺は見てねえからな。だが、奴らが命懸けで独り占めしようとしたんだ、よっぽどのモンだったんだろうぜ。古代文明の遺物(アーティファクト)か何かだったのかもしれねえな。」
古代文明の遺物…アーティファクト。この世界の深層に関わるキーワードかもしれない。これも、いつか何かの伏線になるかもしれない。俺は、ジンの証言をデータベースに記録しておいた。
そして、もう一人の捕虜、最初の盗賊(ゴブゾウに殴られて気絶した方)の処遇についても考えなければならない。彼は、ジンとは違い、特に目立ったスキルも情報も持っていなさそうだ。
「コア、あの盗賊、名前は聞いたか?」
『はい、名前は「ラット」と名乗っています。スキルは基本的な盗賊技能のみ。特筆すべき情報も持っていないようです。』
「そうか…」
使い道がなさそうなら、記憶を消して(コアにその機能はないが、何らかの方法で)解放するか、あるいは…
(待てよ。基本的な盗賊技能だけでも、使い道はあるかもしれない。)
例えば、ゴブジの訓練相手。あるいは、ダンジョン内の見回りや、簡単な罠の設置補助。もちろん、厳重な監視下で、だが。人材は有効活用すべきだ。
「ラットを、ジンの『助手』ということにするか。ジン、お前の監視下で、ラットに簡単な仕事を手伝わせてもいいぞ。もちろん、報酬は最低限だがな。」
「へっ、あのマヌケを俺がか? まあ、パシリくらいには使えるかもしれねえな。」
ジンは、面倒くさそうにしながらも、断りはしなかった。
これで、捕虜二人(リナ、ジン)と、半捕虜(ラット)の役割分担も決まった。
リナ:ミリアの世話、ゴブリン教育、魔法関連の情報提供。
ジン:罠開発コンサル、ゴブジへの指導、ラットの監視。
ラット:ジンの助手、雑用。
人材(?)も、それなりに揃ってきた。あとは、彼らをいかに効率的に活用し、ダンジョン運営に貢献させるかだ。
そんな中、ミスリル工房では、ゴブジが目覚ましい進歩を見せていた。
「できた…! マスター、見てくれ!」
ゴブジが、興奮した様子で、完成したばかりのミスリルインゴットを俺のところに持ってきた。以前の試作品とは比べ物にならない、均一な輝きと形状を持つ、見事なインゴットだった。
『鑑定結果:ミスリル銀インゴット(中品質)。純度約30%。市場価格で推定5000DP以上の価値があります。ゴブジのスキル「金属精錬」がLv.1に上昇しました。』
「素晴らしいぞ、ゴブジ! これなら、ガルバス商会との交渉で、強力な武器になる!」
俺はゴブジを褒め称え、彼に特別報酬(上質な工具セット)を与えた。ゴブジは、ますますやる気を出したようだ。
これで、ガルバス商会に提示する「取引材料」も手に入った。あとは、ジンからの続報を待つだけだ。
DPは、ダンジョン修復などで減少したものの、着実に回復し、現在は811DP。
ミスリルインゴットという新たな収入源の目処も立った。
モンスターたちの育成方針も固まり、内部リソース循環も機能し始めた。
課題はまだ多いが、ダンジョンは確実に前進している。
俺は、完成したばかりのミスリルインゴットを手に取り、そのずっしりとした重みと、ひんやりとした感触を確かめた。この輝きが、俺のホワイトダンジョン計画を、次のステージへと導いてくれることを期待しながら。
そして、その期待に応えるかのように、数日後、フロンティアにいるジン(分身)から、待ちに待った連絡が入ることになるのだった。ガルバス会長の返答は、果たして…?
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