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第59話:核心へのアクセスとカルトの妨害
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忘れられた神殿の中枢、中央制御コア。そこから得られた断片的なログ情報は、俺に衝撃的な「世界の真実」の一端を突きつけた。この世界が作られたシステムであり、過去に大きな破綻を経験し、不完全な状態で封印されていること。そして、俺のような転生者やユニークスキルも、システムの予期せぬ「バグ」として認識されている可能性があること。
頭の中は混乱していた。自分が立っているこの世界の基盤そのものが、実は不安定で、歪んでいる。そして、俺の持つ【デバッガー】という力は、果たして「修正」のためのものなのか、それとも更なる「破壊」を招くものなのか? 答えの出ない問いが、思考を巡る。
しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。目の前には、カルト教団の陰謀を阻止するという、差し迫った現実がある。彼らが狙う「封印」と、その「鍵」となる制御装置。それに関する情報を、このコアから引き出さなければならない。
「……集中します」
俺は、仲間たちに短く告げ、再び中央制御コアに対峙した。アクセス権限レベル3の範囲内で、最大限の情報を引き出す。ターゲットは、「封印結界」の仕様、現状、そしてそれを制御する「装置」の所在地とアクセス方法だ。
『コマンド送信:封印システム関連情報照会(権限レベル3範囲内)』
『……要求受理。情報検索中……該当情報表示……』
コアから、再び情報が流れ込んでくる。
『……対象:『プロジェクト・アーク』封印結界(セクター・グランフォール地下)
状態:稼働中(安定性低下傾向)、エネルギー供給源:暴走コア(内部)、外部制御システム:スリープモード
仕様:多重次元歪曲フィールド、高密度魔力障壁、因果律干渉(限定的)、自己修復機能(劣化)
目的:暴走した古代動力炉(『歪みの源流』)及び、それによって発生した時空異常・魔力汚染の封じ込め。
警告:封印内部のエネルギー圧上昇中。結界強度の限界値予測:███年以内。結界崩壊時、大規模な時空災害及び魔力汚染拡散の可能性。』
『……対象:封印制御装置(通称『神殿の鍵』)
所在地:当神殿内、最深部『聖域』エリア。
状態:スリープモード(認証待ち)
機能:封印結界のパラメータ調整、緊急解除(特定条件下)、状態監視。
アクセス方法:高レベル認証キー(物理媒体または生体認証?)、及びマスター制御権限が必要。
備考:制御装置へのアクセスには、複数のセキュリティゲート(物理的・魔法的)の突破が必要。現在、一部ゲートにカルト教団による不正アクセスの痕跡あり。』
(……やはり、封印は限界に近いのか。そして、制御装置はこの神殿の最深部に……! カルト教団は、既にそこへ向かっている、あるいはアクセスを試みている可能性が高い!)
得られた情報は、俺たちの懸念を裏付けるものだった。封印は永遠ではなく、いずれ限界が来る。そして、カルト教団は、その前に封印を破壊し、内部の災厄(彼らにとっては『主』の力?)を解放しようとしている。そのための鍵が、この神殿の最深部にあるのだ。
俺は、解析結果を簡潔に仲間たちに伝えた。
「封印は、王都地下の暴走した動力炉を抑えるためのもので、限界が近づいています。そして、その封印を制御する装置が、この神殿の最深部『聖域』と呼ばれる場所に。カルト教団は、既にそこへ向かっている可能性が高いです!」
「聖域……! やはり、奴らの狙いはそこか!」クラウスが拳を握りしめる。
「急がないと! 手遅れになっちゃう!」リリアが焦りの声を上げる。
「聖域へのルートは分かるの?」シャロンが冷静に問う。
「はい」俺は頷く。「このコアの記録と、シャロンさんの地図を照合すれば、最短ルートを割り出せます。ただし、途中には複数のセキュリティゲートがあるようです」
「セキュリティゲート……おそらく、強力なゴーレムや、複雑な罠でしょうね」シャロンは予測する。「突破は容易ではないわ」
「ですが、行くしかありません!」俺は決意を込めて言う。「カルト教団に制御装置を奪われるわけにはいかない!」
俺たちは、コアから得られた情報を元に、聖域へのルートを特定し、すぐさま行動を開始した。中央制御コアのある広間から、さらに奥へと続く通路を進む。このエリアは、先ほどの古代図書館以上に、古代文明の技術が色濃く残っており、通路の壁にはエネルギーラインが走り、床には微弱な魔力フィールドが展開されているのが【デバッガー】スキルで感知できた。
「……注意してください。この先、セキュリティレベルが上がります」俺は警告する。「床や壁に触れるだけでも、罠が作動する可能性があります」
俺たちは、リリアが開発したマルチ・センサー・ゴーグルを頼りに、魔力の流れや構造の異常を検知しながら、慎重に進んでいく。俺の【情報読取】と【バグ発見】、シャロンの【罠感知・解除】スキルをフル活用し、いくつかの巧妙な罠(不可視の障壁、指向性エネルギー兵器、幻覚トラップなど)を回避、あるいは無力化していく。
しかし、聖域へ近づくにつれて、敵の妨害も激しくなってきた。
突如、通路の壁が変形し、鋭い刃となって襲いかかってくる!
床から、高熱の蒸気が噴き出す!
そして、天井から、小型の自律攻撃ドローン(古代文明製!)のようなものが無数に現れ、レーザーを発射してくる!
「うわぁ!」
「くそっ、キリがない!」
クラウスが盾で攻撃を防ぎ、シャロンがドローンを撃ち落とし、リリアが防御フィールドを展開するが、敵の数は多く、攻撃も多彩だ。俺も、ダガーを振るって応戦しつつ、【コード・ライティング】で罠やドローンの制御システムに干渉し、誤作動や機能停止を誘発させるが、MPの消耗も激しい。
(まずい……このままでは、聖域にたどり着く前に消耗してしまう……!)
「シャロンさん! この攻撃、どこかでコントロールされているはずです! 制御装置か、あるいは……!」
「……おそらく、このエリア全体を統括するサブ・コントロール・ルームのような場所があるはずよ!」シャロンが、攻撃を避けながら答える。「そこを叩けば、罠やドローンを一斉に停止させられるかもしれないわ!」
「場所は!?」
「地図によれば……この先の分岐を右! 小さな管理室があるはずよ!」
「分かりました! 俺とシャロンさんで、その管理室を強襲します! クラウスさんとリリアさんは、ここで敵を引きつけてください!」俺は即座に判断を下す。
「なっ!? 我々だけで、ここを!? 無茶だ!」クラウスが反対する。
「クラウスさんなら、できます!」俺は、彼の目を見て力強く言う。「リリアさんのサポートがあれば! 信じています!」
「……むぅ」クラウスは一瞬ためらったが、俺の言葉と、リリアの「大丈夫だよ、クラウスさん! 私に任せて!」という声に、覚悟を決めたようだ。「……分かった! 行ってこい、ユズル殿! ここは、我々が死守する!」
「リリアさん、これを!」俺は、リリアに小型の通信用魔石(これもリリア作だ)を渡す。「何かあれば、すぐに連絡を!」
「うん! 気をつけてね!」
俺とシャロンは、クラウスとリリアに後を託し、サブ・コントロール・ルームがあると思われる右の分岐通路へと駆け出した! 背後からは、激しい戦闘音が聞こえてくる。
(……必ず、成功させる!)
俺たちは、通路を疾走する。途中、いくつかの罠が作動したが、俺の【デバッガー】による予測と、シャロンの驚異的な身体能力によって、それらを突破していく。
そして、ついに目的地の管理室らしき部屋の扉の前にたどり着いた。扉は頑丈な金属製で、厳重なロックがかかっている。
「シャロンさん、ロック解除をお願いします!」
「任せて!」
シャロンは、特殊な道具を取り出し、慣れた手つきでピッキングを開始する。古代のロック機構は複雑だったが、彼女の技術の前には、それも時間の問題だった。
数分後。カチャリ、という音と共に、ロックが解除された。
俺たちは、息を呑んで扉を開け、部屋の中へと突入した!
部屋の中は、それほど広くはなかったが、壁一面に設置された制御パネルと、中央に置かれた操作端末のようなものが、複雑な光を放っていた。そして、その操作端末の前に、一人の人物が立っていた。
黒いローブに、奇妙な仮面。カルト教団「深淵を覗く者たち」のメンバーだ! 彼が、このエリアの罠やドローンを操作していたのだ!
男は、俺たちの突然の侵入に驚き、慌てて応戦しようとするが、シャロンの方が速かった! 彼女は、音もなく男の背後に回り込み、その首筋に短剣の峰を叩き込む!
「ぐ……」
男は、声もなくその場に崩れ落ちた。
「……まずは、一人」シャロンは、冷ややかに呟く。
俺は、すぐに部屋の中央にある操作端末へと駆け寄る。【デバッガー】スキルで、端末のシステムを解析し、罠とドローンの制御プログラムを探し出す。
(……あった! このコマンドだ! 【全防衛システム緊急停止】!)
俺は、【コード・ライティング】で、そのコマンドを強制的に実行させる!
瞬間、部屋の外から聞こえていた激しい戦闘音が、ピタリと止んだ。壁から飛び出していた刃が引っ込み、蒸気の噴出が止まり、ドローンの駆動音が消える。
「……成功です!」俺は、安堵の息をつく。
通信用の魔石を通じて、クラウスとリリアに状況を伝える。
『こちらユズル。罠とドローンは停止させました。そちらの状況は?』
『……ユズル殿か! 無事か!? こちらも、どうにか持ちこたえたぞ! 突然、敵の攻撃が止んで、助かった……』クラウスの、疲労と安堵が入り混じった声が返ってくる。
『ゆ、ユズルさん、すごーい! 本当に止めちゃったんだね!』リリアの元気な声も聞こえる。
どうやら、二人とも無事なようだ。本当に良かった。
俺たちがサブ・コントロール・ルームを制圧したことで、聖域への道は、大きく開かれた。
だが、気絶させた教団員は一人だけ。他のメンバーは? そして、彼らが守ろうとしていたもの、あるいは起動させようとしていたものは?
俺は、操作端末のログをさらに解析しようとした。だが、その時、端末の画面に、赤い警告メッセージが点滅し始めた。
『警告:マスター制御システムからの強制介入。当ノードへのアクセス権限を変更します。アクセスレベル:ゼロ。全システム、ロックダウン……』
「なっ!? どういうことだ!?」
突然、部屋の照明が消え、非常灯のような赤い光だけが点灯する。扉が、重々しい音を立てて自動的にロックされた!
「閉じ込められた!?」
そして、部屋の奥の壁が、ゆっくりと開き始め、その向こうの暗闇から、複数の、赤い光を放つ「目」が現れた……!
それは、俺たちが倒したはずの、警備ゴーレム・タイプγ……いや、それよりもさらに大型で、禍々しいオーラを放つ、新型の守護者だった!
カルト教団の妨害は、まだ終わっていなかったのだ!
俺とシャロンは、狭い管理室の中で、新たな、そして絶望的な戦いを強いられることになった!
頭の中は混乱していた。自分が立っているこの世界の基盤そのものが、実は不安定で、歪んでいる。そして、俺の持つ【デバッガー】という力は、果たして「修正」のためのものなのか、それとも更なる「破壊」を招くものなのか? 答えの出ない問いが、思考を巡る。
しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。目の前には、カルト教団の陰謀を阻止するという、差し迫った現実がある。彼らが狙う「封印」と、その「鍵」となる制御装置。それに関する情報を、このコアから引き出さなければならない。
「……集中します」
俺は、仲間たちに短く告げ、再び中央制御コアに対峙した。アクセス権限レベル3の範囲内で、最大限の情報を引き出す。ターゲットは、「封印結界」の仕様、現状、そしてそれを制御する「装置」の所在地とアクセス方法だ。
『コマンド送信:封印システム関連情報照会(権限レベル3範囲内)』
『……要求受理。情報検索中……該当情報表示……』
コアから、再び情報が流れ込んでくる。
『……対象:『プロジェクト・アーク』封印結界(セクター・グランフォール地下)
状態:稼働中(安定性低下傾向)、エネルギー供給源:暴走コア(内部)、外部制御システム:スリープモード
仕様:多重次元歪曲フィールド、高密度魔力障壁、因果律干渉(限定的)、自己修復機能(劣化)
目的:暴走した古代動力炉(『歪みの源流』)及び、それによって発生した時空異常・魔力汚染の封じ込め。
警告:封印内部のエネルギー圧上昇中。結界強度の限界値予測:███年以内。結界崩壊時、大規模な時空災害及び魔力汚染拡散の可能性。』
『……対象:封印制御装置(通称『神殿の鍵』)
所在地:当神殿内、最深部『聖域』エリア。
状態:スリープモード(認証待ち)
機能:封印結界のパラメータ調整、緊急解除(特定条件下)、状態監視。
アクセス方法:高レベル認証キー(物理媒体または生体認証?)、及びマスター制御権限が必要。
備考:制御装置へのアクセスには、複数のセキュリティゲート(物理的・魔法的)の突破が必要。現在、一部ゲートにカルト教団による不正アクセスの痕跡あり。』
(……やはり、封印は限界に近いのか。そして、制御装置はこの神殿の最深部に……! カルト教団は、既にそこへ向かっている、あるいはアクセスを試みている可能性が高い!)
得られた情報は、俺たちの懸念を裏付けるものだった。封印は永遠ではなく、いずれ限界が来る。そして、カルト教団は、その前に封印を破壊し、内部の災厄(彼らにとっては『主』の力?)を解放しようとしている。そのための鍵が、この神殿の最深部にあるのだ。
俺は、解析結果を簡潔に仲間たちに伝えた。
「封印は、王都地下の暴走した動力炉を抑えるためのもので、限界が近づいています。そして、その封印を制御する装置が、この神殿の最深部『聖域』と呼ばれる場所に。カルト教団は、既にそこへ向かっている可能性が高いです!」
「聖域……! やはり、奴らの狙いはそこか!」クラウスが拳を握りしめる。
「急がないと! 手遅れになっちゃう!」リリアが焦りの声を上げる。
「聖域へのルートは分かるの?」シャロンが冷静に問う。
「はい」俺は頷く。「このコアの記録と、シャロンさんの地図を照合すれば、最短ルートを割り出せます。ただし、途中には複数のセキュリティゲートがあるようです」
「セキュリティゲート……おそらく、強力なゴーレムや、複雑な罠でしょうね」シャロンは予測する。「突破は容易ではないわ」
「ですが、行くしかありません!」俺は決意を込めて言う。「カルト教団に制御装置を奪われるわけにはいかない!」
俺たちは、コアから得られた情報を元に、聖域へのルートを特定し、すぐさま行動を開始した。中央制御コアのある広間から、さらに奥へと続く通路を進む。このエリアは、先ほどの古代図書館以上に、古代文明の技術が色濃く残っており、通路の壁にはエネルギーラインが走り、床には微弱な魔力フィールドが展開されているのが【デバッガー】スキルで感知できた。
「……注意してください。この先、セキュリティレベルが上がります」俺は警告する。「床や壁に触れるだけでも、罠が作動する可能性があります」
俺たちは、リリアが開発したマルチ・センサー・ゴーグルを頼りに、魔力の流れや構造の異常を検知しながら、慎重に進んでいく。俺の【情報読取】と【バグ発見】、シャロンの【罠感知・解除】スキルをフル活用し、いくつかの巧妙な罠(不可視の障壁、指向性エネルギー兵器、幻覚トラップなど)を回避、あるいは無力化していく。
しかし、聖域へ近づくにつれて、敵の妨害も激しくなってきた。
突如、通路の壁が変形し、鋭い刃となって襲いかかってくる!
床から、高熱の蒸気が噴き出す!
そして、天井から、小型の自律攻撃ドローン(古代文明製!)のようなものが無数に現れ、レーザーを発射してくる!
「うわぁ!」
「くそっ、キリがない!」
クラウスが盾で攻撃を防ぎ、シャロンがドローンを撃ち落とし、リリアが防御フィールドを展開するが、敵の数は多く、攻撃も多彩だ。俺も、ダガーを振るって応戦しつつ、【コード・ライティング】で罠やドローンの制御システムに干渉し、誤作動や機能停止を誘発させるが、MPの消耗も激しい。
(まずい……このままでは、聖域にたどり着く前に消耗してしまう……!)
「シャロンさん! この攻撃、どこかでコントロールされているはずです! 制御装置か、あるいは……!」
「……おそらく、このエリア全体を統括するサブ・コントロール・ルームのような場所があるはずよ!」シャロンが、攻撃を避けながら答える。「そこを叩けば、罠やドローンを一斉に停止させられるかもしれないわ!」
「場所は!?」
「地図によれば……この先の分岐を右! 小さな管理室があるはずよ!」
「分かりました! 俺とシャロンさんで、その管理室を強襲します! クラウスさんとリリアさんは、ここで敵を引きつけてください!」俺は即座に判断を下す。
「なっ!? 我々だけで、ここを!? 無茶だ!」クラウスが反対する。
「クラウスさんなら、できます!」俺は、彼の目を見て力強く言う。「リリアさんのサポートがあれば! 信じています!」
「……むぅ」クラウスは一瞬ためらったが、俺の言葉と、リリアの「大丈夫だよ、クラウスさん! 私に任せて!」という声に、覚悟を決めたようだ。「……分かった! 行ってこい、ユズル殿! ここは、我々が死守する!」
「リリアさん、これを!」俺は、リリアに小型の通信用魔石(これもリリア作だ)を渡す。「何かあれば、すぐに連絡を!」
「うん! 気をつけてね!」
俺とシャロンは、クラウスとリリアに後を託し、サブ・コントロール・ルームがあると思われる右の分岐通路へと駆け出した! 背後からは、激しい戦闘音が聞こえてくる。
(……必ず、成功させる!)
俺たちは、通路を疾走する。途中、いくつかの罠が作動したが、俺の【デバッガー】による予測と、シャロンの驚異的な身体能力によって、それらを突破していく。
そして、ついに目的地の管理室らしき部屋の扉の前にたどり着いた。扉は頑丈な金属製で、厳重なロックがかかっている。
「シャロンさん、ロック解除をお願いします!」
「任せて!」
シャロンは、特殊な道具を取り出し、慣れた手つきでピッキングを開始する。古代のロック機構は複雑だったが、彼女の技術の前には、それも時間の問題だった。
数分後。カチャリ、という音と共に、ロックが解除された。
俺たちは、息を呑んで扉を開け、部屋の中へと突入した!
部屋の中は、それほど広くはなかったが、壁一面に設置された制御パネルと、中央に置かれた操作端末のようなものが、複雑な光を放っていた。そして、その操作端末の前に、一人の人物が立っていた。
黒いローブに、奇妙な仮面。カルト教団「深淵を覗く者たち」のメンバーだ! 彼が、このエリアの罠やドローンを操作していたのだ!
男は、俺たちの突然の侵入に驚き、慌てて応戦しようとするが、シャロンの方が速かった! 彼女は、音もなく男の背後に回り込み、その首筋に短剣の峰を叩き込む!
「ぐ……」
男は、声もなくその場に崩れ落ちた。
「……まずは、一人」シャロンは、冷ややかに呟く。
俺は、すぐに部屋の中央にある操作端末へと駆け寄る。【デバッガー】スキルで、端末のシステムを解析し、罠とドローンの制御プログラムを探し出す。
(……あった! このコマンドだ! 【全防衛システム緊急停止】!)
俺は、【コード・ライティング】で、そのコマンドを強制的に実行させる!
瞬間、部屋の外から聞こえていた激しい戦闘音が、ピタリと止んだ。壁から飛び出していた刃が引っ込み、蒸気の噴出が止まり、ドローンの駆動音が消える。
「……成功です!」俺は、安堵の息をつく。
通信用の魔石を通じて、クラウスとリリアに状況を伝える。
『こちらユズル。罠とドローンは停止させました。そちらの状況は?』
『……ユズル殿か! 無事か!? こちらも、どうにか持ちこたえたぞ! 突然、敵の攻撃が止んで、助かった……』クラウスの、疲労と安堵が入り混じった声が返ってくる。
『ゆ、ユズルさん、すごーい! 本当に止めちゃったんだね!』リリアの元気な声も聞こえる。
どうやら、二人とも無事なようだ。本当に良かった。
俺たちがサブ・コントロール・ルームを制圧したことで、聖域への道は、大きく開かれた。
だが、気絶させた教団員は一人だけ。他のメンバーは? そして、彼らが守ろうとしていたもの、あるいは起動させようとしていたものは?
俺は、操作端末のログをさらに解析しようとした。だが、その時、端末の画面に、赤い警告メッセージが点滅し始めた。
『警告:マスター制御システムからの強制介入。当ノードへのアクセス権限を変更します。アクセスレベル:ゼロ。全システム、ロックダウン……』
「なっ!? どういうことだ!?」
突然、部屋の照明が消え、非常灯のような赤い光だけが点灯する。扉が、重々しい音を立てて自動的にロックされた!
「閉じ込められた!?」
そして、部屋の奥の壁が、ゆっくりと開き始め、その向こうの暗闇から、複数の、赤い光を放つ「目」が現れた……!
それは、俺たちが倒したはずの、警備ゴーレム・タイプγ……いや、それよりもさらに大型で、禍々しいオーラを放つ、新型の守護者だった!
カルト教団の妨害は、まだ終わっていなかったのだ!
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