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第2章
新型ゼロ戦の誕生前夜
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武田少佐が中心となり戦闘機に乗るパイロットを集めることになったのだが、本当に実戦になることを想定されている軍隊のしかも最前線で戦う人物が必要となってくるわけなので、武田もいろいろと頭をひねることになった。
まず、彼の中では「若い子は排除しておこう」ということを決めた。
なぜかというと、いくらドローンが戦場の主流になりつつある世の中になっていたり、新しく開発されたという新型ゼロ戦はとてつもない性能を持っているということがわかっていたとしても「戦争」が起こってしまうと、人が死んだり負傷してしまうことは避けては通れないことだと分かっているからだ。
太平洋戦争の序盤の日本とアメリカの関係などは正にこの様な感じで、当初はゼロ戦の驚異的な戦闘力に圧倒された米空軍だったが、経済力の差や工業力の差、敵に対する徹底的な研究と合理的対策の立案などで、中盤以降は日本を逆に圧倒するようになった。
日海軍のもつ技術力や戦闘力も今の時点なら龍国を圧倒するかもしれないが、その戦いが何年も続いた場合はどうなるか、誰も分からない。
武田少佐はいろんなアニメや映画などを見ていて、若い子が戦場に送り込まれて活躍するようなタイプの物に対して非常に大きな違和感と嫌悪感を持ち続けていた。
確かに若い子の方が体力もあり、反射神経なども優れているのだろうが、「死んでしまったら元も子もない」わけだし、今なら体力や反射神経などを補助する機械やシステムなどを開発可能だろうし、
逆に言うとそういうシステムをちゃんと整えることが出来たら、誰でも一線級の戦闘力を持つことが出来、歳を取ったら引退しなければいけない、などということもなくなる。
そこで当初から若い子を中心としたメンバーを集めるのではなく、既に子育てが終わっていて、社会的な責任もある程度取り終えたと思われる中年以上の男性を集めることにした。
女性も集めても良いのだが、実際に血を流して戦うということを考えると、最初からいきなり女性を入れる・・・というよりは、ある程度組織が固まってから、必要に応じて女性や更に高齢者などを入れる、などという方策をしてもいいのではないかと思った。
武田少佐はよく開発の坂本少佐を連れ出し酒を飲みながらよくこの手の話をしていたのだが、「パイロットには中年以上のオッサンを使いたい」という武田の主張に坂本も了承した。
こう書くと硬い話をしていたように感じるかもしれないが、毎週 通っている飲み食いを散々しても三千円ポッキリの安い焼き鳥屋でワイワイ騒ぎながら話し合った内容の一部なのだが。
坂本は武田に、現在既に開発中の全方向自動監視装置と、戦闘支援AI の話を始めた。
新型ゼロ戦は、この時期既に飛行可能な状態にはなっていて、武田も何度も乗っていた。
というか、テストパイロットを武田や坂本自身がやっていたので、将来、戦闘スタイルがどのようになるかは彼らは想像出来たと思う。
具体的に言うと、これからの戦闘はレーダーが効かない有視界での戦闘になる。
レーダーが開発される前の戦闘機同士の戦いが正にソレだが、レーダーが既に戦闘機に実装されていたベトナム戦争の頃にも同様の事態が起きたことがある。
「これからの時代は空対空ミサイルによる視界外からの攻撃が主流になるので、接近戦用の機関銃なんて要らない」という考えが主流になり、当時のアメリカ軍の主力であったF-4ファントム戦闘機からバルカン砲を取っ払ったことがある。
(俗に言うミサイル万能論)
ところが蓋を開けてみると、レーダーに敵を捉えていても実際にソレが敵か味方かは目で見て判断するまで分からず、結局接近されたことで敵のMig-17などに機関砲でタコ殴りにされたという経緯があった。
当時は敵味方識別装置(IFF)というものが未発達であったことも理由であったが、現代の戦闘もレーダーが使用不能となることが前提となるので、現在、米軍や空自などが採用しているモード5のIFFは使用不能になると見て良い。
そこで「どうやって効率よく敵と味方を識別させるのか?」ということが問題となり、その対応としてカメラによる画像認識により、敵と味方の判別を行うという方式が必要となってくるという結論となった。
大東亜戦争時、日本のエースパイロットであった坂井三郎氏などは「昼間に星を見て視力を鍛えた」と言うほど視力が当時の空戦で大事であったと彼の著書には記されている。
また彼は「空中戦の鉄則はまず見張りであり、敵を発見したら自分は撃てるが相手は撃てない位置に潜り込め、空中戦は牧羊犬の動きと考えよ。格闘戦に入ったら自分の得意技に引き込むごとく操縦せよ。相手の尾部が目に入ったらわれ勝てりだという。格闘戦とは自分が不利に立たされた最後の手だと思え、相手を動かさない据え物斬りこそ空戦の極意だ」などという記述を残しているし、
また「目を鍛えたことで2万メートルから2万5千メートル先の敵が見えるようになったことが割と格闘戦をやらないで撃墜できた理由だ」と主張していたのだという。
(彼に関してはいろいろ思う処があるのだが、彼の戦果や実績に対しては敬意を表したいと思います)
坂本や武田も当時の日本のエースパイロットや他国のエースパイロットの戦訓や手記を多く手に入れ、また現在はエアバトルシミュレーションで実際に高い戦果を挙げている者などの意見も聞きながら、新型ゼロ戦の強化法を模索していたわけだ。
人間の能力だけに頼らず、AIなどを活用して遠方の敵を素早く捉え認識する技術は必要不可欠ということは確定したので、早速、日本のカメラメーカー、画像認識技術を持つメーカーなどの技術者たちと意見交換を行い、実際、どのような状況で使われていて、敵機はどのようなものであるのかを知りたいという話になった。
そこで、空自で当時退役が進んでいた(というか無理やり退役を遅らせてもらっていた)F-4EJファントム戦闘機を敵機に見立て、実際に飛行してもらいながら画像を多く取り込み、すでに実機を元にして作っていた3Dモデルと実際の映像とがマッチするかどうかをテストした。
案の定、これらのテストは難航を極め、望遠率の高いレンズとカメラの性能だけでは満足のいく結果を得られることが出来ず、捉えた画像を一旦、画像解析用のコンピューターにかけて解析する能力が決定的に不足しているという結果が得られた。
これにより日海軍の開発部は日米の研究開発者が合同で運営している開発チーム「ライジングサンダー」に画像解析及び分析プログラムの作成を依頼した。
そちらも結構、あれやこれやと忙しくしていたこともあり交渉は難航したが、それでも数名の優秀なスタッフを開発に当ててもらう段取りが出来たので、坂本少佐は次の手を打つことにした。
人間の目で捉えにくい、遥か遠方の物体を識別するには分析コンピューターやプログラムだけでなく、高性能かつ小型軽量のカメラが必要となってくる。
当初は一つのカメラで全てをこなそうと考えていたのだが、どうしてもそれでは広範囲を一度に監視することと、超遠方の物体を識別すること、夜間や雲の中など光源が乏しい状態での使用などは賄えないということが判明したので、3つのカメラを使う方式として新たに設計することになった。
その形はヘルメットの前面に三つのカメラが取り付けられているような形状をしているため、「まるでボ◯ムスだな」とか、「アイ◯ォン11のカメラみたいだ」などと悪口を言われることがある。
前部カメラはキャノピーの右前方にやや中心線からズラした位置に設置され、後部カメラはキャノピー内に設置された。
カメラの能力としては後方カメラの方が一回り大きいこともあり、性能は高い。
後部カメラはパイロットの後頭部の直後にあるので、ス◯ーウォー◯で出てくるX◯ァイターのC◯P◯のような感じに搭載された。
また、新型ゼロ戦には戦術AIも搭載されていたのでちょうどこのC3P◯と対話しているような感じになるため、のちに「C3」という愛称でパイロットの間で呼ばれるようになった。
全方向自動監視装置の開発を始めて3年ほど経った時点で、新型ゼロ戦の装備や仕様はほぼ固まりつつあった。
まず、機体そのものの形状は、零式艦上戦闘機五二型をほぼ踏襲している。
重量が増えていたり、エンジンのパワーアップ、パワーセルユニットを胴体後部に搭載することなどの重心の変化などにともない、多少機体形状が変わっているが、遠目に見たくらいで違いはほぼ分からない程度の違いだ。
プロペラは従来の3枚バネから4枚に増え、従来の可変ピッチは踏襲された。
プロペラ形状は羽根の端が緩やかに反っていて、高速回転時の空力抵抗を考慮されている。
また羽根自体が透明で羽根の端は地上作業員の巻き込み防止で色が付けられている。
キャノピーは継ぎ目の少ない一体型のものではなく、防弾性能を高めるため、従来型のような多くの格子状の枠があり、更に防弾ガラスを必要に応じて内部に設置する方式としたり、コクピットの側面の外板に装甲板を追加することを可能にしたことで防御力を格段にアップさせた。
パイロットからの視野は多少狭くなるが、枠が多いことでパイロットの空中姿勢を見失うことでの操作ミスは逆に抑えれると考えられている。
次に動力は核融合発電と電動モーターによる駆動方式。
核融合発電ユニット(パワーセルユニット)は、機体後部に設置され、電動モーターは従来エンジンが搭載されていた機首に設置される。
カウルカバーも開閉可能となっていて、モーターの温度が上がるとカウルカバーを開き、内部の風通しをさらによくすることメインモーターの冷却効率を上げることが出来る。(その分空気抵抗が増える)
電動モーターはレシプロエンジン換算で1万馬力相当もの大出力を発生させることが可能だが、長時間の駆動はモーター内部の急激な温度上昇を招き、アーマチュア(回転子)やステーター(固定子)内部のコイルを溶かしてしまったり、ベアリングの焼き付きまで招く恐れがあるので短時間での使用に限定された。
だが、この専用モーターの開発にもハイブリッド車や大型トラックに搭載される電動モーターなどの開発ノウハウが活かされていた。
車用のモーターと大きく違う点は複数の直径の細いモーターを並列配置するのではなく、直径の太いモーターを縦に複数繋ぐ方式にすることで、被弾による性能の低下を抑え、モーターそのものの構造を単純化させている。
回転数は落ちるが大トルクを得ることが可能となり、モーターの回転数を抑えることで内部温度の上昇も抑えることになる。
出力はおよそ7500kW、7.5mWにもなり、馬力換算すると1万馬力もの出力となる。
モーターのアーマチュアの周囲を取り巻くステーターコイルは丸い断面の銅線ではなく、断面が方形の銅線を使い、丸断面の銅線が作る隙間をなくし、銅線の密度を上げる。
これによりモーター本体に対するコイルの占積率は格段に向上している。
またアーマチュア(回転子)に内蔵する永久磁石の配置を最適化し、より多くのトルクを生み出すよう工夫されている。
これらにより永久磁石という重量物を削減し、モーター単品の重量軽減も実現させている。
さらに冷却についてだが、モーター内部のアーマチュアやシャフト内部を空洞化し、冷却オイルが内部を強制潤滑出来るようにした。
またモーター内を油室化(オイルバス式)とすることで、モーターシャフトのグリスシールも廃止することでフリクションロスを軽減した。
グリスシールの代わりに採用されたのは車メーカーで見られるオイルシールの技術で、より過酷な環境で使われることを想定し、新開発のものが採用されていた。
これによりモーター内部が全てオイル潤滑され、軸受のベアリングも抵抗の大きいグリスから超高性能なオイルへ変えられた。
回転するアーマチュアがオイルを拡散し、アーマチュア内部のオイルが遠心力で外側の磁石を冷やすことで磁力の低下を抑えている。
冷却オイルはモーター前方に取り付けられた円筒形のラジエターを通され、冷やされた冷却オイルはモーターのシャフトからまたモーター内に供給されるという仕組みだ。
また、被弾して冷却オイルが漏れることも想定し、オイル経路は各部で遮断することが可能になり、複数あるモーターのうちいくつかが機能を失ってもある程度は出力を維持出来るよう設計されていた。
武装は機首に12.7mm機銃のM2ブローニング機関銃を二丁装備。
発射速度は毎分1200発にも及ぶAN/M3というタイプだが、これはアメリカから大量に輸入している。
左右の翼内にも同様の機銃を合計4丁搭載、合計6丁搭載されていることになる。
場合によっては翼内の機銃を全て取り払いレールガンを2丁装備することも可能。
こちらはそれぞれ左右10発ずつの高速誘導弾を発射することが出来る。
燃料タンクが不要になったことにより、装弾数が増え、機体構造も大幅に強化されていた。
また、機体の90%程度には新型RAMと呼ばれるレーダー波をほぼ100%吸収するレーダー波吸収シールで覆われている。
これにより敵のレーダーを無効化し、レーダーによる索敵や誘導兵器をほぼ無効化することに成功している。
そして動力源は水素核融合を使ったジェネレーター(パワーセルユニット)で、大電流を必要とする電動モーターや、レールガンの電気を賄っている。
これにより航続距離はほぼ無限である。
機動性を上げる目的で、主翼には自動空戦フラップが装備され、さらに胴体後方側面にエアブレーキ(ダイブブレーキ)を装備。
エアブレーキにより急激な減速、自動空戦フラップと元々低速域での高い旋回性能を駆使しての急激なターン、大出力モーターによる急加速という、これまでのゼロ戦にはなかった機動戦能力を獲得している。
また、巴戦(ドックファイト)に対応するため、AIと高性能周囲監視装置により、死角からの攻撃や遠方の敵をいち早く索敵することなどが可能に。
一撃離脱戦法をとろうとする敵に対しては高速誘導弾により脚の速さを活かして逃げる敵を確実に撃破する。
大雑把にいうとこういう感じで試作機が実際に完成してきたわけなのだが、これから数々のテストを繰り返し、問題が出たら対処しつつ、MP(マスプロ:量産型)に持ち込むというのが現時点での最大の目標なのであった。
まず、彼の中では「若い子は排除しておこう」ということを決めた。
なぜかというと、いくらドローンが戦場の主流になりつつある世の中になっていたり、新しく開発されたという新型ゼロ戦はとてつもない性能を持っているということがわかっていたとしても「戦争」が起こってしまうと、人が死んだり負傷してしまうことは避けては通れないことだと分かっているからだ。
太平洋戦争の序盤の日本とアメリカの関係などは正にこの様な感じで、当初はゼロ戦の驚異的な戦闘力に圧倒された米空軍だったが、経済力の差や工業力の差、敵に対する徹底的な研究と合理的対策の立案などで、中盤以降は日本を逆に圧倒するようになった。
日海軍のもつ技術力や戦闘力も今の時点なら龍国を圧倒するかもしれないが、その戦いが何年も続いた場合はどうなるか、誰も分からない。
武田少佐はいろんなアニメや映画などを見ていて、若い子が戦場に送り込まれて活躍するようなタイプの物に対して非常に大きな違和感と嫌悪感を持ち続けていた。
確かに若い子の方が体力もあり、反射神経なども優れているのだろうが、「死んでしまったら元も子もない」わけだし、今なら体力や反射神経などを補助する機械やシステムなどを開発可能だろうし、
逆に言うとそういうシステムをちゃんと整えることが出来たら、誰でも一線級の戦闘力を持つことが出来、歳を取ったら引退しなければいけない、などということもなくなる。
そこで当初から若い子を中心としたメンバーを集めるのではなく、既に子育てが終わっていて、社会的な責任もある程度取り終えたと思われる中年以上の男性を集めることにした。
女性も集めても良いのだが、実際に血を流して戦うということを考えると、最初からいきなり女性を入れる・・・というよりは、ある程度組織が固まってから、必要に応じて女性や更に高齢者などを入れる、などという方策をしてもいいのではないかと思った。
武田少佐はよく開発の坂本少佐を連れ出し酒を飲みながらよくこの手の話をしていたのだが、「パイロットには中年以上のオッサンを使いたい」という武田の主張に坂本も了承した。
こう書くと硬い話をしていたように感じるかもしれないが、毎週 通っている飲み食いを散々しても三千円ポッキリの安い焼き鳥屋でワイワイ騒ぎながら話し合った内容の一部なのだが。
坂本は武田に、現在既に開発中の全方向自動監視装置と、戦闘支援AI の話を始めた。
新型ゼロ戦は、この時期既に飛行可能な状態にはなっていて、武田も何度も乗っていた。
というか、テストパイロットを武田や坂本自身がやっていたので、将来、戦闘スタイルがどのようになるかは彼らは想像出来たと思う。
具体的に言うと、これからの戦闘はレーダーが効かない有視界での戦闘になる。
レーダーが開発される前の戦闘機同士の戦いが正にソレだが、レーダーが既に戦闘機に実装されていたベトナム戦争の頃にも同様の事態が起きたことがある。
「これからの時代は空対空ミサイルによる視界外からの攻撃が主流になるので、接近戦用の機関銃なんて要らない」という考えが主流になり、当時のアメリカ軍の主力であったF-4ファントム戦闘機からバルカン砲を取っ払ったことがある。
(俗に言うミサイル万能論)
ところが蓋を開けてみると、レーダーに敵を捉えていても実際にソレが敵か味方かは目で見て判断するまで分からず、結局接近されたことで敵のMig-17などに機関砲でタコ殴りにされたという経緯があった。
当時は敵味方識別装置(IFF)というものが未発達であったことも理由であったが、現代の戦闘もレーダーが使用不能となることが前提となるので、現在、米軍や空自などが採用しているモード5のIFFは使用不能になると見て良い。
そこで「どうやって効率よく敵と味方を識別させるのか?」ということが問題となり、その対応としてカメラによる画像認識により、敵と味方の判別を行うという方式が必要となってくるという結論となった。
大東亜戦争時、日本のエースパイロットであった坂井三郎氏などは「昼間に星を見て視力を鍛えた」と言うほど視力が当時の空戦で大事であったと彼の著書には記されている。
また彼は「空中戦の鉄則はまず見張りであり、敵を発見したら自分は撃てるが相手は撃てない位置に潜り込め、空中戦は牧羊犬の動きと考えよ。格闘戦に入ったら自分の得意技に引き込むごとく操縦せよ。相手の尾部が目に入ったらわれ勝てりだという。格闘戦とは自分が不利に立たされた最後の手だと思え、相手を動かさない据え物斬りこそ空戦の極意だ」などという記述を残しているし、
また「目を鍛えたことで2万メートルから2万5千メートル先の敵が見えるようになったことが割と格闘戦をやらないで撃墜できた理由だ」と主張していたのだという。
(彼に関してはいろいろ思う処があるのだが、彼の戦果や実績に対しては敬意を表したいと思います)
坂本や武田も当時の日本のエースパイロットや他国のエースパイロットの戦訓や手記を多く手に入れ、また現在はエアバトルシミュレーションで実際に高い戦果を挙げている者などの意見も聞きながら、新型ゼロ戦の強化法を模索していたわけだ。
人間の能力だけに頼らず、AIなどを活用して遠方の敵を素早く捉え認識する技術は必要不可欠ということは確定したので、早速、日本のカメラメーカー、画像認識技術を持つメーカーなどの技術者たちと意見交換を行い、実際、どのような状況で使われていて、敵機はどのようなものであるのかを知りたいという話になった。
そこで、空自で当時退役が進んでいた(というか無理やり退役を遅らせてもらっていた)F-4EJファントム戦闘機を敵機に見立て、実際に飛行してもらいながら画像を多く取り込み、すでに実機を元にして作っていた3Dモデルと実際の映像とがマッチするかどうかをテストした。
案の定、これらのテストは難航を極め、望遠率の高いレンズとカメラの性能だけでは満足のいく結果を得られることが出来ず、捉えた画像を一旦、画像解析用のコンピューターにかけて解析する能力が決定的に不足しているという結果が得られた。
これにより日海軍の開発部は日米の研究開発者が合同で運営している開発チーム「ライジングサンダー」に画像解析及び分析プログラムの作成を依頼した。
そちらも結構、あれやこれやと忙しくしていたこともあり交渉は難航したが、それでも数名の優秀なスタッフを開発に当ててもらう段取りが出来たので、坂本少佐は次の手を打つことにした。
人間の目で捉えにくい、遥か遠方の物体を識別するには分析コンピューターやプログラムだけでなく、高性能かつ小型軽量のカメラが必要となってくる。
当初は一つのカメラで全てをこなそうと考えていたのだが、どうしてもそれでは広範囲を一度に監視することと、超遠方の物体を識別すること、夜間や雲の中など光源が乏しい状態での使用などは賄えないということが判明したので、3つのカメラを使う方式として新たに設計することになった。
その形はヘルメットの前面に三つのカメラが取り付けられているような形状をしているため、「まるでボ◯ムスだな」とか、「アイ◯ォン11のカメラみたいだ」などと悪口を言われることがある。
前部カメラはキャノピーの右前方にやや中心線からズラした位置に設置され、後部カメラはキャノピー内に設置された。
カメラの能力としては後方カメラの方が一回り大きいこともあり、性能は高い。
後部カメラはパイロットの後頭部の直後にあるので、ス◯ーウォー◯で出てくるX◯ァイターのC◯P◯のような感じに搭載された。
また、新型ゼロ戦には戦術AIも搭載されていたのでちょうどこのC3P◯と対話しているような感じになるため、のちに「C3」という愛称でパイロットの間で呼ばれるようになった。
全方向自動監視装置の開発を始めて3年ほど経った時点で、新型ゼロ戦の装備や仕様はほぼ固まりつつあった。
まず、機体そのものの形状は、零式艦上戦闘機五二型をほぼ踏襲している。
重量が増えていたり、エンジンのパワーアップ、パワーセルユニットを胴体後部に搭載することなどの重心の変化などにともない、多少機体形状が変わっているが、遠目に見たくらいで違いはほぼ分からない程度の違いだ。
プロペラは従来の3枚バネから4枚に増え、従来の可変ピッチは踏襲された。
プロペラ形状は羽根の端が緩やかに反っていて、高速回転時の空力抵抗を考慮されている。
また羽根自体が透明で羽根の端は地上作業員の巻き込み防止で色が付けられている。
キャノピーは継ぎ目の少ない一体型のものではなく、防弾性能を高めるため、従来型のような多くの格子状の枠があり、更に防弾ガラスを必要に応じて内部に設置する方式としたり、コクピットの側面の外板に装甲板を追加することを可能にしたことで防御力を格段にアップさせた。
パイロットからの視野は多少狭くなるが、枠が多いことでパイロットの空中姿勢を見失うことでの操作ミスは逆に抑えれると考えられている。
次に動力は核融合発電と電動モーターによる駆動方式。
核融合発電ユニット(パワーセルユニット)は、機体後部に設置され、電動モーターは従来エンジンが搭載されていた機首に設置される。
カウルカバーも開閉可能となっていて、モーターの温度が上がるとカウルカバーを開き、内部の風通しをさらによくすることメインモーターの冷却効率を上げることが出来る。(その分空気抵抗が増える)
電動モーターはレシプロエンジン換算で1万馬力相当もの大出力を発生させることが可能だが、長時間の駆動はモーター内部の急激な温度上昇を招き、アーマチュア(回転子)やステーター(固定子)内部のコイルを溶かしてしまったり、ベアリングの焼き付きまで招く恐れがあるので短時間での使用に限定された。
だが、この専用モーターの開発にもハイブリッド車や大型トラックに搭載される電動モーターなどの開発ノウハウが活かされていた。
車用のモーターと大きく違う点は複数の直径の細いモーターを並列配置するのではなく、直径の太いモーターを縦に複数繋ぐ方式にすることで、被弾による性能の低下を抑え、モーターそのものの構造を単純化させている。
回転数は落ちるが大トルクを得ることが可能となり、モーターの回転数を抑えることで内部温度の上昇も抑えることになる。
出力はおよそ7500kW、7.5mWにもなり、馬力換算すると1万馬力もの出力となる。
モーターのアーマチュアの周囲を取り巻くステーターコイルは丸い断面の銅線ではなく、断面が方形の銅線を使い、丸断面の銅線が作る隙間をなくし、銅線の密度を上げる。
これによりモーター本体に対するコイルの占積率は格段に向上している。
またアーマチュア(回転子)に内蔵する永久磁石の配置を最適化し、より多くのトルクを生み出すよう工夫されている。
これらにより永久磁石という重量物を削減し、モーター単品の重量軽減も実現させている。
さらに冷却についてだが、モーター内部のアーマチュアやシャフト内部を空洞化し、冷却オイルが内部を強制潤滑出来るようにした。
またモーター内を油室化(オイルバス式)とすることで、モーターシャフトのグリスシールも廃止することでフリクションロスを軽減した。
グリスシールの代わりに採用されたのは車メーカーで見られるオイルシールの技術で、より過酷な環境で使われることを想定し、新開発のものが採用されていた。
これによりモーター内部が全てオイル潤滑され、軸受のベアリングも抵抗の大きいグリスから超高性能なオイルへ変えられた。
回転するアーマチュアがオイルを拡散し、アーマチュア内部のオイルが遠心力で外側の磁石を冷やすことで磁力の低下を抑えている。
冷却オイルはモーター前方に取り付けられた円筒形のラジエターを通され、冷やされた冷却オイルはモーターのシャフトからまたモーター内に供給されるという仕組みだ。
また、被弾して冷却オイルが漏れることも想定し、オイル経路は各部で遮断することが可能になり、複数あるモーターのうちいくつかが機能を失ってもある程度は出力を維持出来るよう設計されていた。
武装は機首に12.7mm機銃のM2ブローニング機関銃を二丁装備。
発射速度は毎分1200発にも及ぶAN/M3というタイプだが、これはアメリカから大量に輸入している。
左右の翼内にも同様の機銃を合計4丁搭載、合計6丁搭載されていることになる。
場合によっては翼内の機銃を全て取り払いレールガンを2丁装備することも可能。
こちらはそれぞれ左右10発ずつの高速誘導弾を発射することが出来る。
燃料タンクが不要になったことにより、装弾数が増え、機体構造も大幅に強化されていた。
また、機体の90%程度には新型RAMと呼ばれるレーダー波をほぼ100%吸収するレーダー波吸収シールで覆われている。
これにより敵のレーダーを無効化し、レーダーによる索敵や誘導兵器をほぼ無効化することに成功している。
そして動力源は水素核融合を使ったジェネレーター(パワーセルユニット)で、大電流を必要とする電動モーターや、レールガンの電気を賄っている。
これにより航続距離はほぼ無限である。
機動性を上げる目的で、主翼には自動空戦フラップが装備され、さらに胴体後方側面にエアブレーキ(ダイブブレーキ)を装備。
エアブレーキにより急激な減速、自動空戦フラップと元々低速域での高い旋回性能を駆使しての急激なターン、大出力モーターによる急加速という、これまでのゼロ戦にはなかった機動戦能力を獲得している。
また、巴戦(ドックファイト)に対応するため、AIと高性能周囲監視装置により、死角からの攻撃や遠方の敵をいち早く索敵することなどが可能に。
一撃離脱戦法をとろうとする敵に対しては高速誘導弾により脚の速さを活かして逃げる敵を確実に撃破する。
大雑把にいうとこういう感じで試作機が実際に完成してきたわけなのだが、これから数々のテストを繰り返し、問題が出たら対処しつつ、MP(マスプロ:量産型)に持ち込むというのが現時点での最大の目標なのであった。
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