君は私の恋人なのか

Esente

文字の大きさ
8 / 23
2章 私はいったい誰なのか

7話 偽りの恋

しおりを挟む
 ある日、祐司は紙とペンを取り出し、自分の情報と、絵名の情報を記載してみた。

 ・<僕について>
 名前:森山祐司
 年齢:24歳
 交際歴:僕23歳、絵名21歳から1年

 ・<絵名について>
 ・僕の前に付き合っていた男性Aがいた。
 ・Aの他に気になる男性Bがいた(僕?)
 ・10代の頃から僕と深い友人関係にあった

 前提の整理

(1)交際歴と友人歴の時期が食い違う。
(2)「他に気になる人がいた」というAと別れた理由は珍しいく、感情としては本物の可能性がある。
(3)ただし、その“気になる男性B”が本当に僕なのか分からない。

 推察

 ①交際歴に嘘がある場合
 僕と絵名は友人関係だが交際はしていなかった。
 記憶喪失をきっかけに、絵名が“想い人”である僕を恋人だと刷り込んだ。

 ②友人歴に嘘がある場合
 10代の頃に僕が忘れ物を届けた、というのは作り話。だが、そんな細部で嘘をつく意味はあるのか?

 ③両方が嘘の場合
 交際も友人関係も存在しない。
 絵名は、僕とは無関係の男性Bに抱いていた想いを、記憶を失った僕に“上書き”している可能性がある。

 その瞬間、祐司の手が止まった。
 背筋に冷たいものが走る。

「……まさか、僕は“祐司”ですらないのか?」

 絵名が言う「ゆうくん」は、本当は別の誰か──。
 そう考えると、過去に見たツーショット写真でさえ疑わしく思えた。
 最近ニュースで話題のAI加工という言葉が頭をよぎる。

 祐司は深呼吸をして、ペンを置いた。
「このままでは答えが出ない。
 ──スマホを見つけるしかない。その中に過去の僕の行動のデータがあるはずだ。」

(スマホの捜索)
 祐司は真剣な表情で絵名に切り出した。

 祐司「突然で悪いけど、緑山町へ行って自分のスマホを探したい。どうしても、過去の自分を知らないと前に進めないんだ。」

 絵名「……どうしたの、ゆうくん?
 前にも言ったけど、緑山町は遠いし危ないよ。スマホだってあれから数ヶ月も経っていて、見つからないよ。なんで、そこまでこだわるの?」

 祐司「正直に言うと、絵名の話を聞いていて、いくつか違和感を感じている。
 僕は本当に絵名の恋人だったのか…僕の記憶を戻してほしくない理由があるのかって。」

 絵名「そんな……ここまで一緒に過ごしても、まだ信じられないの?」
 彼女の瞳に涙が溜まる。

 祐司「信じたいんだよ。
 絵名の愛情は本物だって分かってる。
 だからこそ、僕も本当の自分を知って、もう一度“自分の意志で”君の隣にいたい。」

 絵名はしばらく何も言わなかった。
 目を伏せ、何かを決意するように拳を握る。

 絵名「……わかった。少し、待ってて。」

 そう言って立ち上がった。
 祐司がその背を見つめる中──
 彼女は押し入れに向かって歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。

あなたの側にいられたら、それだけで

椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。 私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。 傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。 彼は一体誰? そして私は……? アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。 _____________________________ 私らしい作品になっているかと思います。 ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。 ※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります ※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

悩める子爵と無垢な花

トウリン
恋愛
貴族でありながらウィリスサイド警邏隊副長の任に就くルーカス・アシュクロフトは、任務のさ中一人の少女を救った。可憐な彼女に一目で心を奪われたルーカス。だが、少女は一切の記憶を失っていた。彼女は身元が判らぬままフィオナという名を与えられ、警邏隊詰所に身を寄せることになった。失われたフィオナの過去故に、すぐ傍にいながらも最後の一歩を縮めることができずにいたルーカスだったが、ある事件をきっかけに事態は大きく動き始める。 ※他サイトにも投稿します。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

婚約者が記憶喪失になりました。

ねーさん
恋愛
 平凡な子爵令嬢のセシリアは、「氷の彫刻」と呼ばれる無愛想で冷徹な公爵家の嫡男シルベストと恋に落ちた。  二人が婚約してしばらく経ったある日、シルベストが馬車の事故に遭ってしまう。 「キミは誰だ?」  目を覚ましたシルベストは三年分の記憶を失っていた。  それはつまりセシリアとの出会いからの全てが無かった事になったという事だった─── 注:1、2話のエピソードは時系列順ではありません

処理中です...