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2章 私はいったい誰なのか
8話 記憶への鍵
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彼女は押入れの奥にしまった鞄から1台のスマホを取り出した。
祐司「これは…僕はこれを知っているぞ。これは僕のスマホだ。絵名が持っていたのか。」
背面に、販売メーカーのイニシャルであるGのロゴが刻まれたスマホ。それは、祐司が愛用していたスマホだった。
祐司は手を伸ばしたが、絵名は一歩下がり渡すことを拒んだ。
絵名「待って。まだこれを本当に渡してもよいか気持ちが決まっていないの。」
絵名の手は微かに震えていた。
祐司「絵名、信じてくれ。仮に過去の僕が君の恋人じゃなかったとしても、今の僕が君を好きな気持ちは本物だ。だから――
絵名「違うの!違う。
私が1番気にしているのはそこじゃない。ゆうくんが私のことを疑っているなら、その疑いを晴らしたい。スマホだって渡したいよ。」
祐司「じゃあ、何を気にしているんだ?」
絵名「スマホを隠していたこと本当にごめんね。でも、見せたくない理由があったの。」
祐司「それは…いったい何?」
絵名「ゆうくん、人の記憶ってちょっとやそっとじゃ簡単に無くならないの。ましてや、過去の自分の記憶をごっそり忘れるって相当珍しいんだよ。車の事故の被害者だって、忘れるのはだいたい事故の直前の数時間くらいなんだよ。」
絵名の真剣な目と声に、僕は思わず唾を飲んだ。
祐司「絵名は僕がなぜ記憶を失ったのか知っているの?ただ地震のときに頭を強くぶつけただけかと思っていた。」
絵名「地震の日、ゆうくんには頭部への強打だけではなく、
とても強烈な心の衝撃も起きていたの。その2つの波が重なって記憶が壊れたんだと思う。」
祐司「それは何?いったい、僕に何があったの!?」
絵名「ごめん。やっぱりそれは今は言えない。それを伝えてゆうくんが記憶を取り戻してしまったら、ゆうくんの心が無事でいられる保証がない。
わたしはゆうくんに嫌われるよりも、ゆうくんの心が壊れることのほうが怖いの。」
祐司は、息をのんだ。彼女からの真剣な愛情と自分を守りたいという決意を感じた。
祐司「…絵名、色々考えてくれてありがとう。ずっと重荷を背負わせていたんだね。
地震の日に何があったかは話さなくて良いよ。でも、スマホは見せてくれないかな。自分が何者か疑って生きていくのは辛いし、過去を知って絵名の横にちゃんと立ちたいんだ。」
絵名「でも、もし過去を思い出してしまったら…」
祐司は穏やかに笑った。彼女のこれまでの愛情が僕に勇気をくれたのだろう。
祐司「不思議だけど、もし思い出して心に衝撃が来ても大丈夫な気がする。今の僕には絵名がいてくれるから、そんな傷には負けないと思う。」
絵名「ゆうくん、…ずるいよ。そんな言い方されたら…断れないじゃん。」
絵名の心のダムは決壊し、大粒の涙が頬を濡らした。
祐司は彼女を抱きしめ、彼女の背中をさすった。彼女の背負うものを少しずつ軽くしてあげるように。
(スマホが語る事実)
絵名「ごめんね。みっともなく大泣きしちゃって。昔はここまで酷くなかったのにな。」落ち着きを取り戻し、彼女は酷く反省しているようだった。
絵名「スマホを見せるよ。でも2つ約束を守って欲しいの。
1つ目は、見るのは1回だけにして。ゆうくんが自分の過去に納得出来たら、スマホから離れてほしいの。やっぱり、地震の日の記憶が戻っちゃうことが怖いから。」
祐司「分かった。約束する。」
絵名「2つ目は、見せる場所は、お家の中じゃなくて診療所の近くにして。もしものときにすぐにお医者さんのところに行けるようにしたい。」
祐司「分かった。そうしよう。」
絵名「先に行っていて、身支度してから行くから。」
祐司は頷き、仮設住宅を出た。過去の自分と向き合うために。
祐司「これは…僕はこれを知っているぞ。これは僕のスマホだ。絵名が持っていたのか。」
背面に、販売メーカーのイニシャルであるGのロゴが刻まれたスマホ。それは、祐司が愛用していたスマホだった。
祐司は手を伸ばしたが、絵名は一歩下がり渡すことを拒んだ。
絵名「待って。まだこれを本当に渡してもよいか気持ちが決まっていないの。」
絵名の手は微かに震えていた。
祐司「絵名、信じてくれ。仮に過去の僕が君の恋人じゃなかったとしても、今の僕が君を好きな気持ちは本物だ。だから――
絵名「違うの!違う。
私が1番気にしているのはそこじゃない。ゆうくんが私のことを疑っているなら、その疑いを晴らしたい。スマホだって渡したいよ。」
祐司「じゃあ、何を気にしているんだ?」
絵名「スマホを隠していたこと本当にごめんね。でも、見せたくない理由があったの。」
祐司「それは…いったい何?」
絵名「ゆうくん、人の記憶ってちょっとやそっとじゃ簡単に無くならないの。ましてや、過去の自分の記憶をごっそり忘れるって相当珍しいんだよ。車の事故の被害者だって、忘れるのはだいたい事故の直前の数時間くらいなんだよ。」
絵名の真剣な目と声に、僕は思わず唾を飲んだ。
祐司「絵名は僕がなぜ記憶を失ったのか知っているの?ただ地震のときに頭を強くぶつけただけかと思っていた。」
絵名「地震の日、ゆうくんには頭部への強打だけではなく、
とても強烈な心の衝撃も起きていたの。その2つの波が重なって記憶が壊れたんだと思う。」
祐司「それは何?いったい、僕に何があったの!?」
絵名「ごめん。やっぱりそれは今は言えない。それを伝えてゆうくんが記憶を取り戻してしまったら、ゆうくんの心が無事でいられる保証がない。
わたしはゆうくんに嫌われるよりも、ゆうくんの心が壊れることのほうが怖いの。」
祐司は、息をのんだ。彼女からの真剣な愛情と自分を守りたいという決意を感じた。
祐司「…絵名、色々考えてくれてありがとう。ずっと重荷を背負わせていたんだね。
地震の日に何があったかは話さなくて良いよ。でも、スマホは見せてくれないかな。自分が何者か疑って生きていくのは辛いし、過去を知って絵名の横にちゃんと立ちたいんだ。」
絵名「でも、もし過去を思い出してしまったら…」
祐司は穏やかに笑った。彼女のこれまでの愛情が僕に勇気をくれたのだろう。
祐司「不思議だけど、もし思い出して心に衝撃が来ても大丈夫な気がする。今の僕には絵名がいてくれるから、そんな傷には負けないと思う。」
絵名「ゆうくん、…ずるいよ。そんな言い方されたら…断れないじゃん。」
絵名の心のダムは決壊し、大粒の涙が頬を濡らした。
祐司は彼女を抱きしめ、彼女の背中をさすった。彼女の背負うものを少しずつ軽くしてあげるように。
(スマホが語る事実)
絵名「ごめんね。みっともなく大泣きしちゃって。昔はここまで酷くなかったのにな。」落ち着きを取り戻し、彼女は酷く反省しているようだった。
絵名「スマホを見せるよ。でも2つ約束を守って欲しいの。
1つ目は、見るのは1回だけにして。ゆうくんが自分の過去に納得出来たら、スマホから離れてほしいの。やっぱり、地震の日の記憶が戻っちゃうことが怖いから。」
祐司「分かった。約束する。」
絵名「2つ目は、見せる場所は、お家の中じゃなくて診療所の近くにして。もしものときにすぐにお医者さんのところに行けるようにしたい。」
祐司「分かった。そうしよう。」
絵名「先に行っていて、身支度してから行くから。」
祐司は頷き、仮設住宅を出た。過去の自分と向き合うために。
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