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2章 私はいったい誰なのか
9割 記録された過去
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小学校の校舎を使った避難所の側に簡素な診療所が併設されている。内科、外科、精神科等のように得意分野が違う先生が定期的に巡回して来ている。
幸いなことに、今日は精神科にも精通している先生来ている。
僕と絵名は診療所の脇の木のベンチに腰を降ろした。
(スマホの解錠)
絵名「…はい、これがゆうくんのスマホだよ」
祐司はお礼と共に、それを両手で受け取った。
絵名の助言に基づいて電源を入れると、懐かしい起動画面が静かに光を放った。
祐司「暗証番号が求められている。少し指が覚えている気がする。」
「1109」と祐司は入力をしたが、暗証番号は解除できなかった。
絵名「惜しいね。誕生日と西暦だよ。」
「11091999」と再度入力をし、ついに暗証番号が解除され、ホーム画面が鮮やかに表示された。
祐司「うっ…」
多数のアイコン、文字、色彩――
溢れ出る情報に、視界が一瞬歪む。
記憶の奥にある何かが蠢く。
絵名「ゆうくん、大丈夫!?無理しないで。」
祐司「確かに刺激が強いね。でも、記憶までは戻っていない。
…絵名、僕は最初にどれを見れば良いかな?」
絵名「ゆうくんが、過去の自分を知りたいのであれば、メールが1番良いと思う。」
絵名は、メールのアイコンを指差し祐司を誘導した。
祐司「メール…そうだね。これには僕の過去のメッセージが残っているね。」
祐司は封筒のマークのアイコンをタップし、アプリを起動した。
(メールの記録)
そこに並んでいたのは
・お父さん
・絵名
という2つの名前のメッセージだった。
祐司「これは…過去の僕は確かに父や絵名とメッセージのやり取りをしていたんだ。しかも頻繁にメールのやり取りがある。」
お父さんからのメールは日常的だ。「祐司、帰りが遅くなるから先に寝ていなさい。」
絵名からのメールは暖かい感じだ。「ゆうくん、ハンバーグを食べに行きたいな。」
祐司「僕は、本当に祐司だった。絵名とも恋人だったんだ…良かった。」
絵名「信用してもらえて良かったよ。」
絵名は穏やかに笑っていた。
次に僕は絵名の助言で「フォト」のアプリを起動した。そこには、前に絵名が見せた2ショット写真と同じ写真や、絵名だけが写った写真が記録されていた。
これらの写真は、僕と絵名が交際していることを決定づける証拠としては十分であった。
祐司「あ…これは…。」
絵名「…」
祐司がアルバムを見ていると、絵名とは違う女性との2ショット写真が複数見つかった。
祐司「ご、ごめん。」
(もしかしたら僕は浮気していたのか)そんな恐ろしい推測をし、祐司は慌ててスマホの画面を消した。
絵名「…うん、大丈夫。もうスマホは預かっても良いかな?」
祐司は頷き、絵名にスマホを手渡した。
結局、記憶は戻らなかった。
絵名ではない別の女性の顔を見ていると何か掴めそうな気がしたが、無理に思い出す必要はないと思った。
確かに祐司は絵名の恋人だった。祐司はそれを知ることが出来れば十分だったのだ。
祐司「家に戻ろうか。」
祐司がそういうと、絵名は祐司の腕にしがみつき一緒に笑顔で歩きだした。
スマホのデータの大きな違和感に、祐司が気づかなかったことに安堵していた。
(別の日の夜)
祐司「あー今日も疲れたな。」
絵名「今日は農作業のお手伝いは大変だったでしょ。お疲れ様。
ほら、背中だして!」
祐司「肩揉みお願いしま~す。」
絵名の肩揉みは習慣になっていて、祐司の大きな癒しになっていた。
絵名「じゃあ、今度は私の肩もお願いします。最近ゆうくん上手になってきたからね。」
祐司「任せてよ。力加減をマスターしたからね。」
絵名「ふふ、そうだね。…あ、でもこの前みたいに変なところは触らないでよ?」
祐司は無言で肩を揉み続けた。
絵名「ちょっと無言やめてよ~笑」
2人の笑い声は仮設住宅に響いていた。
(布団の中で)
スマホを見てから祐司は過去の記憶にこだわらなくなり、お互い楽しい日々を送っていた。
祐司「最近、すごい楽しいよ。」
絵名「私もだよ。震災の時は大変だったけど、色々落ち着いてきたよね。」
祐司「俺は今まで絵名に色々してもらってるから、何かお返しをしたいよ。何かお願いごとはないの?」
絵名「えー、私はゆうくんが幸せなら、それで幸せだから、あんまり無いかな。」
目を閉じ穏やかに笑っていた。
祐司「いやいや、そんなんじゃなくて絵名が自分の幸せを探さないと。」
「うーん、考えておくね。」
絵名は軽い返事で返し、祐司の胸に頭を預けた。
幸いなことに、今日は精神科にも精通している先生来ている。
僕と絵名は診療所の脇の木のベンチに腰を降ろした。
(スマホの解錠)
絵名「…はい、これがゆうくんのスマホだよ」
祐司はお礼と共に、それを両手で受け取った。
絵名の助言に基づいて電源を入れると、懐かしい起動画面が静かに光を放った。
祐司「暗証番号が求められている。少し指が覚えている気がする。」
「1109」と祐司は入力をしたが、暗証番号は解除できなかった。
絵名「惜しいね。誕生日と西暦だよ。」
「11091999」と再度入力をし、ついに暗証番号が解除され、ホーム画面が鮮やかに表示された。
祐司「うっ…」
多数のアイコン、文字、色彩――
溢れ出る情報に、視界が一瞬歪む。
記憶の奥にある何かが蠢く。
絵名「ゆうくん、大丈夫!?無理しないで。」
祐司「確かに刺激が強いね。でも、記憶までは戻っていない。
…絵名、僕は最初にどれを見れば良いかな?」
絵名「ゆうくんが、過去の自分を知りたいのであれば、メールが1番良いと思う。」
絵名は、メールのアイコンを指差し祐司を誘導した。
祐司「メール…そうだね。これには僕の過去のメッセージが残っているね。」
祐司は封筒のマークのアイコンをタップし、アプリを起動した。
(メールの記録)
そこに並んでいたのは
・お父さん
・絵名
という2つの名前のメッセージだった。
祐司「これは…過去の僕は確かに父や絵名とメッセージのやり取りをしていたんだ。しかも頻繁にメールのやり取りがある。」
お父さんからのメールは日常的だ。「祐司、帰りが遅くなるから先に寝ていなさい。」
絵名からのメールは暖かい感じだ。「ゆうくん、ハンバーグを食べに行きたいな。」
祐司「僕は、本当に祐司だった。絵名とも恋人だったんだ…良かった。」
絵名「信用してもらえて良かったよ。」
絵名は穏やかに笑っていた。
次に僕は絵名の助言で「フォト」のアプリを起動した。そこには、前に絵名が見せた2ショット写真と同じ写真や、絵名だけが写った写真が記録されていた。
これらの写真は、僕と絵名が交際していることを決定づける証拠としては十分であった。
祐司「あ…これは…。」
絵名「…」
祐司がアルバムを見ていると、絵名とは違う女性との2ショット写真が複数見つかった。
祐司「ご、ごめん。」
(もしかしたら僕は浮気していたのか)そんな恐ろしい推測をし、祐司は慌ててスマホの画面を消した。
絵名「…うん、大丈夫。もうスマホは預かっても良いかな?」
祐司は頷き、絵名にスマホを手渡した。
結局、記憶は戻らなかった。
絵名ではない別の女性の顔を見ていると何か掴めそうな気がしたが、無理に思い出す必要はないと思った。
確かに祐司は絵名の恋人だった。祐司はそれを知ることが出来れば十分だったのだ。
祐司「家に戻ろうか。」
祐司がそういうと、絵名は祐司の腕にしがみつき一緒に笑顔で歩きだした。
スマホのデータの大きな違和感に、祐司が気づかなかったことに安堵していた。
(別の日の夜)
祐司「あー今日も疲れたな。」
絵名「今日は農作業のお手伝いは大変だったでしょ。お疲れ様。
ほら、背中だして!」
祐司「肩揉みお願いしま~す。」
絵名の肩揉みは習慣になっていて、祐司の大きな癒しになっていた。
絵名「じゃあ、今度は私の肩もお願いします。最近ゆうくん上手になってきたからね。」
祐司「任せてよ。力加減をマスターしたからね。」
絵名「ふふ、そうだね。…あ、でもこの前みたいに変なところは触らないでよ?」
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絵名「ちょっと無言やめてよ~笑」
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祐司「俺は今まで絵名に色々してもらってるから、何かお返しをしたいよ。何かお願いごとはないの?」
絵名「えー、私はゆうくんが幸せなら、それで幸せだから、あんまり無いかな。」
目を閉じ穏やかに笑っていた。
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