君は私の恋人なのか

Esente

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4章 私の幸せ、あなたの幸せ

17話 私が愛した人(美咲編3)

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 ブランコが軋むたびに、私の胸の奥が小さく揺れた。
 美咲は、これまでの日々を静かに思い返していた。

 ーーーーーーーーーーーーーー

 私の実家は山梨のぶどう農家で、のびのびと育てられた。
 兄がいたため、家業を継ぐのは当然のように兄の役目だと、誰も口にしない空気が家にあった。

 高校生になって将来を考え始めた頃、ふと疑問が生まれた。
「兄には、本当は別にやりたいことがあるんじゃないか」と。

 兄に聞くと
「俺は農業、嫌いじゃない。美咲は気にしないでやりたいことをやれ」
 と、優しく笑った。

 その一言に背中を押されて、私は勉強に熱を入れ、国立大学に入り、夢である出版に関わる道を目指した。
 恋人ができた時期もあったけれど、相手の過干渉に耐えきれず別れた。
 大学では将来のために勉強を優先しようと決め、気晴らしは運動にしようとバスケットサークルへ入った。

 そこで出会ったのが一つ年下の祐司君だった。
 彼は明るく、でも人に甘えすぎない自立した雰囲気を持ち、いつも気遣いを忘れない。

 片親という環境でも、妹さんと助け合い、父親からの愛情を受けてきたのだろう。
 その強さと優しさは、優しい家族の絆が育てたのだと感じた。

 二度断っても、三度目の告白をしてきた彼に心を動かされ、大学卒業後に恋人同士になった。

 一緒にいると、毎日が楽しかった。
 今思えば、付き合うのは大学時代ではなく卒業してからで良かった。
 当時付き合っていたら、私はきっと彼に夢中になり恋愛に夢中になっていただろうから。

 しかし震災がすべてを変えた。
 街は崩壊し、彼との連絡が途絶え、会社は休業。
 不安と焦りの中で心が擦り切れていった。

 実家に戻ると、兄が立派に育てたぶどうの木々が風に揺れていた。
 その眩しいほどの生命力に、こらえきれず涙が溢れた。

 家族の支えが、私を立ち上がらせた。
 半年かけて探し続け、やっと祐司君を見つけた。

「もう離さない。
 一緒に新しい人生を歩むんだ。」

 その一心で、八丘町へ向かった。

 ーーーーーーーーーーーーーー

 ブランコの鎖がきしむ。
 今の状況は、どちらにとっても残酷だ。

 彼を連れていくことは、
 彼の唯一の家族を置き去りにするということ。

 妹さんへの負の感情が無いと言えば、嘘になる。
 でも――
 震災で父親を失った彼女の痛みが大きいこと、唯一の肉親と離れたくないという気持は私にも分かる。

「私を選んで一緒に生きて欲しい」
 という願いと、

「私が愛したゆうくんは家族を大切にする優しい人だ」
 と考えてしまう本能と、が

 頭の中でせめぎ合っている。
 何度考えても答えは出なかった。
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