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3章 記憶の秘密と私の選択
16話 半年の恋人
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兄が美咲さんを探しに家を出た。私は、ソファーに座りこれまでのことを思い出し、自分の考えを整理した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
母と父が小学校の時に、離婚して家庭環境は大きく変わった。
父は仕事の量を増やし、今まで遊んでばかりだった兄が料理や洗濯等の家事をやり始めた。私も色々教わって共同で頑張っていた。
兄は私が寂しくさせないようにか、家ではゲームに誘ってくれたり、自身の友達と遊びに行く際にも誘ってくれたりした。
小学校の頃、父が来れないことを理由に、授業参観が嫌だと2人で泣いた。その時は、先生方と相談して、親への手紙を読む場面をビデオに撮って送る計画を考えた。お陰で、授業参観にも前向きに出席できた。
中学校の頃、私はキモイ、ウザイと反抗期で兄を邪険に扱うことを言ってしまっても、帰りが遅くなった日は駅まで迎えに来てくれた。
高校の頃、遅くまで勉強しているとき、夜食を作ってくれたり、分からないところを教えてくれた。学校生活の悩みも相談してくれと言ってくれて、とても話しやすかった。
私は父から兄に負担かけないように気を使ってくれと言われていた。きっと、兄も父に色々お願いされていたのだろう。
母がいなくてもそこまで悲しくならなかったのは、兄の優しさのお陰だった。
大学生になり、恋人ができた。高校時代は、恋バナは大好きだったが、実際に恋人を作るまではしなかった。
始めての恋人は、ちょっと子供っぽいところがあったけど、真摯に好きだと伝えてくれた優しい人だった。信頼できる人で、きっとその人のことを心から好きになれる、そう思い付き合うことにした。
一緒にいるのは楽しかったが、デートの最中に無意識に兄と比べてしまう瞬間があった。そんな自分に心底、自己嫌悪した。
相手を本気で好きになりたいから、始めて勇気を持って恋人と外泊をした。しかし得られたのは幸福というよりは後悔であった。
兄を男性として本当に好きなのかは分からなかったが、私の心の中に兄がいたことは事実であり、結局その人の愛情に応えられないことに気づき別れを告げた。
一方、兄は大学生になり、同じサークルの美咲さんにぞっこんであった。美咲さんは、賢くてリーダーシップがあり、愛嬌もある、大人の女性だった。
妹の面倒ばかり見ていたから、兄は大人な女性が好きなんだろうと感じた。
心から好きな人が見つかって幸せそうな兄の姿を見て、ちょっと複雑だったけれど、色々女性目線でアドバイスをして兄を応援した。
兄が美咲さんとお付き合いをすれば、自然と兄妹の関わりは減る。そして、私も色々な男性と関わっていけば、そのうち兄離れができて、自然に新しい恋愛できる。そう思っていた。
そう思っていたが、あの震災によってすべてが変わった。眼の前で父が死に、血を流して倒れ込む兄を見て、天涯孤独になる恐ろしさを感じた。
そして、いかに自分にとって兄の存在が大きいのか感じた。
兄は一命を取り留めたが、記憶がなくなっていた。
あの時の私は、難しいことを考えられなかった。兄と一緒にずっといられれば、それ以外の幸せなんていらないと思ってしまった。
その思いが、私を一つの嘘に導いた。
祐司「……君は、誰?」
絵名「……あなたの名前は、森山祐司。私は、あなたと付き合っている恋人だよ」
美咲さんには申し訳ない。でも、私はこの半年間、本当に幸せだった。
今度こそ二人を応援し、私は兄離れをするべきなんだ。
私はそう何度も自分に言い聞かせている。
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母と父が小学校の時に、離婚して家庭環境は大きく変わった。
父は仕事の量を増やし、今まで遊んでばかりだった兄が料理や洗濯等の家事をやり始めた。私も色々教わって共同で頑張っていた。
兄は私が寂しくさせないようにか、家ではゲームに誘ってくれたり、自身の友達と遊びに行く際にも誘ってくれたりした。
小学校の頃、父が来れないことを理由に、授業参観が嫌だと2人で泣いた。その時は、先生方と相談して、親への手紙を読む場面をビデオに撮って送る計画を考えた。お陰で、授業参観にも前向きに出席できた。
中学校の頃、私はキモイ、ウザイと反抗期で兄を邪険に扱うことを言ってしまっても、帰りが遅くなった日は駅まで迎えに来てくれた。
高校の頃、遅くまで勉強しているとき、夜食を作ってくれたり、分からないところを教えてくれた。学校生活の悩みも相談してくれと言ってくれて、とても話しやすかった。
私は父から兄に負担かけないように気を使ってくれと言われていた。きっと、兄も父に色々お願いされていたのだろう。
母がいなくてもそこまで悲しくならなかったのは、兄の優しさのお陰だった。
大学生になり、恋人ができた。高校時代は、恋バナは大好きだったが、実際に恋人を作るまではしなかった。
始めての恋人は、ちょっと子供っぽいところがあったけど、真摯に好きだと伝えてくれた優しい人だった。信頼できる人で、きっとその人のことを心から好きになれる、そう思い付き合うことにした。
一緒にいるのは楽しかったが、デートの最中に無意識に兄と比べてしまう瞬間があった。そんな自分に心底、自己嫌悪した。
相手を本気で好きになりたいから、始めて勇気を持って恋人と外泊をした。しかし得られたのは幸福というよりは後悔であった。
兄を男性として本当に好きなのかは分からなかったが、私の心の中に兄がいたことは事実であり、結局その人の愛情に応えられないことに気づき別れを告げた。
一方、兄は大学生になり、同じサークルの美咲さんにぞっこんであった。美咲さんは、賢くてリーダーシップがあり、愛嬌もある、大人の女性だった。
妹の面倒ばかり見ていたから、兄は大人な女性が好きなんだろうと感じた。
心から好きな人が見つかって幸せそうな兄の姿を見て、ちょっと複雑だったけれど、色々女性目線でアドバイスをして兄を応援した。
兄が美咲さんとお付き合いをすれば、自然と兄妹の関わりは減る。そして、私も色々な男性と関わっていけば、そのうち兄離れができて、自然に新しい恋愛できる。そう思っていた。
そう思っていたが、あの震災によってすべてが変わった。眼の前で父が死に、血を流して倒れ込む兄を見て、天涯孤独になる恐ろしさを感じた。
そして、いかに自分にとって兄の存在が大きいのか感じた。
兄は一命を取り留めたが、記憶がなくなっていた。
あの時の私は、難しいことを考えられなかった。兄と一緒にずっといられれば、それ以外の幸せなんていらないと思ってしまった。
その思いが、私を一つの嘘に導いた。
祐司「……君は、誰?」
絵名「……あなたの名前は、森山祐司。私は、あなたと付き合っている恋人だよ」
美咲さんには申し訳ない。でも、私はこの半年間、本当に幸せだった。
今度こそ二人を応援し、私は兄離れをするべきなんだ。
私はそう何度も自分に言い聞かせている。
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