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ただ一緒にいたいだけ
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あえぎ声から始まります。ご注意ください。
「んっ…草矢さん。好き…なんです」
「そうなんだね」
「ん、あぁぁ、草矢さん…!」
「うん」
「キス、してください、草矢さん」
「うん。いいよ」
「…」
「…」
「草矢さん…」
「…」
ーーーー
「…」
草矢さんは無言で身支度を整えた。用のある場所以外は乱れていない制服だ。すぐに終わる。そして鞄を手にした後、振り返りもせず扉へ進んだ。
「じゃあ帰るね」
ゴミ箱に落ちる丸めたティッシュの音だけが空しく響く。
草矢さんはそのまま生徒会室を出ていった。
草矢さんは、この学校の生徒会長である。そして、大変な人気者で……曜日ごとに恋人がいる。
僕は金曜日担当だ。くじ引きで決まった曜日だが、僕は偶然にも金曜日を引き当てた。週末を取れたのは我ながらなかなかラッキーだったと思う。明日は休みだ。このまま余韻に浸っていられる。
そして…
僕はミシミシと悲鳴を上げる関節をなだめながら、ソファから上体をずらし、床に散らかった制服を集めた。そして、下半身にぐっと力を入れ素早く身につけた。
「草矢さん…草矢さん草矢さん草矢さん草矢さん」
僕は優しく温めるように、両手を腹に添えた。
ここに、草矢さんがいる…
半年前の入学式で、僕は草矢さんに一目惚れした。
しかし、草矢さんの回りにはいつも人がいておいそれと近づくことはできない。その上学年が違うこともあり滅多に会うこもない。最初は、偶然すれ違うだけでも、針の先ほどの大きさでしか見えなかったとしても、三週間は浸っていられた。しかし季節が進む頃、それだけでは満足できなくなっていった。
そんなことを思っていたのは、どうやら僕だけではなかったらしい。
草矢さんが生徒会長に就任したとき。彼の幼馴染みがこの事態を鑑み、草矢さんの恋人募集を始めたのだ。
僕は震える手で応募用紙に記入した。
後日、集められた5人がそれぞれ曜日ごとに割り当てられた。
草矢さんは自分の周りで起きることに興味が無いらしく、どこか張り付けたような笑顔を僕にも向けてくる。その笑っていない笑顔が、僕は堪らなく好きだ。
僕が望んだことは、草矢さんは何でもしてくれる。しかし、ただそれだけだ。全て事務的にこなされる。そして時間が来るとすぐに帰ってしまう。
今日も、僕は草矢さんにお願いをした。しかし、このお願いは初めてする。
草矢さんを、僕の中にください、と。
普通だったら何かを期待するんだろう。けれど僕の心は、いつもの金曜日と変わらない。
草矢さんは顔色一つ変えず、いつもの笑顔で「うん。いいよ。」と言った。
わかってる。
何を言っても草矢さんの表情が変わることはないこと。
さっさと帰る草矢さんを足止めできることは無いこと。
草矢さんと一緒にいられる…
僕は鞄を肩に掛け、生徒会室を後にした。
途中、何度も何度も腹に手を当てる。甘い気持ちが広がり、その度に落ち着き無い頬がますます緩んでいく。
草矢さん…
5人いる恋人の誰よりも一番になりたい、そんなことは思ってない。ただ、草矢さんの近くにいたい、それだけだ。
身体のなかでじんわり広がる草矢さんがいる。
このままずっと、僕の中で一緒にいられたらいいのに。
「んっ…草矢さん。好き…なんです」
「そうなんだね」
「ん、あぁぁ、草矢さん…!」
「うん」
「キス、してください、草矢さん」
「うん。いいよ」
「…」
「…」
「草矢さん…」
「…」
ーーーー
「…」
草矢さんは無言で身支度を整えた。用のある場所以外は乱れていない制服だ。すぐに終わる。そして鞄を手にした後、振り返りもせず扉へ進んだ。
「じゃあ帰るね」
ゴミ箱に落ちる丸めたティッシュの音だけが空しく響く。
草矢さんはそのまま生徒会室を出ていった。
草矢さんは、この学校の生徒会長である。そして、大変な人気者で……曜日ごとに恋人がいる。
僕は金曜日担当だ。くじ引きで決まった曜日だが、僕は偶然にも金曜日を引き当てた。週末を取れたのは我ながらなかなかラッキーだったと思う。明日は休みだ。このまま余韻に浸っていられる。
そして…
僕はミシミシと悲鳴を上げる関節をなだめながら、ソファから上体をずらし、床に散らかった制服を集めた。そして、下半身にぐっと力を入れ素早く身につけた。
「草矢さん…草矢さん草矢さん草矢さん草矢さん」
僕は優しく温めるように、両手を腹に添えた。
ここに、草矢さんがいる…
半年前の入学式で、僕は草矢さんに一目惚れした。
しかし、草矢さんの回りにはいつも人がいておいそれと近づくことはできない。その上学年が違うこともあり滅多に会うこもない。最初は、偶然すれ違うだけでも、針の先ほどの大きさでしか見えなかったとしても、三週間は浸っていられた。しかし季節が進む頃、それだけでは満足できなくなっていった。
そんなことを思っていたのは、どうやら僕だけではなかったらしい。
草矢さんが生徒会長に就任したとき。彼の幼馴染みがこの事態を鑑み、草矢さんの恋人募集を始めたのだ。
僕は震える手で応募用紙に記入した。
後日、集められた5人がそれぞれ曜日ごとに割り当てられた。
草矢さんは自分の周りで起きることに興味が無いらしく、どこか張り付けたような笑顔を僕にも向けてくる。その笑っていない笑顔が、僕は堪らなく好きだ。
僕が望んだことは、草矢さんは何でもしてくれる。しかし、ただそれだけだ。全て事務的にこなされる。そして時間が来るとすぐに帰ってしまう。
今日も、僕は草矢さんにお願いをした。しかし、このお願いは初めてする。
草矢さんを、僕の中にください、と。
普通だったら何かを期待するんだろう。けれど僕の心は、いつもの金曜日と変わらない。
草矢さんは顔色一つ変えず、いつもの笑顔で「うん。いいよ。」と言った。
わかってる。
何を言っても草矢さんの表情が変わることはないこと。
さっさと帰る草矢さんを足止めできることは無いこと。
草矢さんと一緒にいられる…
僕は鞄を肩に掛け、生徒会室を後にした。
途中、何度も何度も腹に手を当てる。甘い気持ちが広がり、その度に落ち着き無い頬がますます緩んでいく。
草矢さん…
5人いる恋人の誰よりも一番になりたい、そんなことは思ってない。ただ、草矢さんの近くにいたい、それだけだ。
身体のなかでじんわり広がる草矢さんがいる。
このままずっと、僕の中で一緒にいられたらいいのに。
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