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フルルの腕前

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 土地関連で揉めそうな所はまとめてきたし、後は外壁計画はザルトに任せよう。
 次は戦略と戦術について詰めていこう。

 村長宅に戻って来た。裏庭の射撃場から銃声がする。
「フルルちゃん、すごいわね!!? 百発百中?」
「いえ、ティナさんのご指導の賜物です‥‥‥」
 ティナが興奮してフルルを褒めていた。
 
「銃の扱い方くらいしか教えてないわよ! フルルちゃん、天才よ!!」
 ティナが大絶賛している。これも珍しい光景だ。

 フルルには小銃を使うように言っておいた。拳銃を撃つには俺と同様に腕力が足りないはず。
 小銃なら両手と肩で支える事が出来るし、三脚架みたいので支えても良い。
 

「‥‥‥当然だ。むしろここからが本番だからな」
「「エドガー様!!」」

 ハモってるじゃん。お前ら頭の中一緒か?

「ティナ、お前は家事全般と射撃、格闘に関しては天才だと俺は思っている」
「!? そ、そんな‥‥‥!! 勿体無いお言葉です!」

「だが‥‥‥このフルルは『狙撃』の超天才だと思っている。午後の訓練は俺が見る、二人ともついて来い」

「「は、はいっ!!」」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ここは丘の上。
 本来なら村一番の狩人に貸す予定だった狙撃銃を一挺と専用弾を三発、エドガーはフルルに渡した。

「こ、これは? 長いし重いです‥‥‥」

(腕力ないもんな、仕方ない。でもお前の凄いところを俺はわかるし、知っているぞ)

「これを持って撃つには重いよな。大丈夫、こうして置いてお前はうつ伏せで構えてみて?」
 狙撃銃の銃身の持ち手より先に地面に置くための三脚架を置いて固定する。

「この銃の装填数は五発だ。今は三発与える。撃ったらこのボルトを引くと排莢、再装填される、いいな?」
 こくんと頷くフルル。


「フルル、お前には誰にも出来ない特別な才能がある。それに風の神に愛され、風の精霊と話せる。お前、風の精霊の力を借りれば遠く離れていても話が聞こえるんだろ?」
「!? 何故それを‥‥‥? !!」

 エドガーは少し微笑み、フルルの頭を撫でる。
「これから遠く離れて指示を出す。聞こえたら手を挙げて。それから指示通りにやってみせてくれ」
「‥‥‥はい、わかりました。やってみます」

 狙撃銃に付けていたスコープも要らないらしい。これも貴重なので別の人に使わせるようにしよう。エドガーはスコープを外してティナに手渡した。

 エドガーは歩いて離れたところでほんの小さな声で本音を呟く。
「フルル、お前には本当に期待してるからな‥‥‥」
 
 フルルは精霊の力で聞こえたので手を挙げた。が、前を向いて歩くエドガーからは見えていなかった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「さぁ、一発目はこれだ。これの中心を狙ってみろ」
 エドガーが置いたのは紙に同心円を描いた紙。距離は300メートルは離れている。
 そして二人は紙の左右1メートルのところにいた。

 先程渡されたスコープで覗いて確認しているティナ。
「右手が挙がりましたね。もぞもぞと動いています」
「来るぞ」

ターン!! バシュッ!!!!

 紙の同心円の真ん中を撃ち抜いていた。
「‥‥‥フルルちゃん、ほんとにすごいですね」
「まだまだ‥‥‥すごいのはここからさ」

 二人はさらに遠ざかる。次の目標はさらに小さい紙で同心円もさらに小さい。
 推定距離は500メートル。
 二人も目標から近く左右50センチ以内だ。

「見えるか? いけるか?」
「‥‥‥手が挙がりました、来ますよ」

 バシュッ!!!! ‥‥‥ダーン!!

 今度も小さい同心円の中心を撃ち抜いている。

「!!!! すごい!!」
「いや、まだいけるはずだ」

 さらに二人は遠ざかった。
 そして風が少し吹いて来た。
 推定距離は1000メートル、声は普通なら当然聞こえない。

「今度はこれだ、やってみろ」
 今度の的は手のひらよりも小さい紙。さらに同心円でなく極めて小さな一点。
 置けるところが無いのでエドガーが右下端を手で持っている。
 横風で目標の紙もたなびいている。

「見えないか? 見えてたら右手を挙げろ」
「‥‥‥右手が挙がってます。が、首を振っていますね。この距離、その紙のサイズではさすがに無理なのでは?」

 右手が挙がったので見えてはいる、という事。首を振ったのは無理だ、という意味だろう。

「フルル、聞こえているな。俺はお前なら間違いなく出来ると信じている。見えているのなら出来る。大丈夫だ! お前のエイミングのスキルで俺たちに奇跡を見せてくれ!」

「‥‥‥右手が挙がって構えました、来ます‥‥‥」

バシュッ!!!! ‥‥‥‥‥‥ターン

 寸分の狂いなく小さな紙の一点を撃ち抜いた。

「‥‥‥‥‥‥!!」
 あまりの出来事に絶句するティナ。

「‥‥‥聞こえるか、フルル。おめでとう、お前はこの世界で初の、そして世界一のスナイパーだ!」
「‥‥‥右手が挙がりました」
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