恋愛模様

華月雪兎-Yuto Hanatsuki-

文字の大きさ
12 / 21

思い出のフォトグラフ

しおりを挟む
 ———春には君と桜を観に行った。

 ひとひらの花びらを肩に乗せたまま、満開の桜を背景にした君の写真を一枚撮った。


 ———夏には君と海に行った。

 泳ぎもしないのに「二人で海に行きたいね」って話したりして。

 揺れる海を背景にして、白い浜辺で君の写真を一枚撮った。


 ———秋には君と紅く染まったあの公園へ。

 枯葉が落ちるあの場所で君は静かに本を開く。

 ベンチに座る君が綺麗で、君の写真を一枚撮った。


 ———冬には君と寄り添いながら、ポケットの中でかじかむ君の右手を握って。

 雪化粧したツリーの前で二人で写真を一枚撮った。



 君との写真を本当にたくさん撮ったんだ。

 フォトアルバムが君との写真で埋まっていく。


 ———そんなある時、君は僕にこう言った。


「本当は写真が苦手なの」


 何故?って聞くと、


「記録するより記憶したいから」


 やっぱり君が言う事は難しい。

 でも苦手と言いながら君は優しく微笑んで、それが僕の為だと気が付いた。



 季節巡って春を過ぎて、君と出逢った夏を迎えた。


 君との思い出を振り返りながらフォトアルバムのページを捲る。

 思い出がたくさん欲しかった。

 だから君との写真をたくさん撮ったんだ。

 だけど、思い出になるにはまだ早過ぎて。


 フォトアルバムの最後のページ。

 今も写真は貼られていない。

 けれど、僕の中には確かにあって。

 
「記録するより記憶したいから」


 あの時の言葉が今も僕は忘れられない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

一途な恋

凛子
恋愛
貴方だけ見つめてる……

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...