恋愛模様

華月雪兎-Yuto Hanatsuki-

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お喋りインコ

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「最近、小鳥を飼う事になって」

 あなたは私にそう教えてくれた。

 カラフルな色をしたセキセイインコ。

 名前は〝ちーちゃん〟なんだって。


「何でちーちゃん?」

「〝チッチッチッ〟て鳴いてるから」

 真面目な顔してあなたは答えた。


「言葉を教えたくて。今練習中」
 

 熊みたいに大きいあなたがインコと話すとこを想像したら何だか無性に可笑しくて。

「似合ってないねー」って言ったら、
「うるせー」って返って来た。


「ちーちゃんに会ってみたいかも」

「えっ、うち来んの?」

「ダメじゃなければ」

「別に良いけど・・・片付いてないよ?」

「それは期待してないから大丈夫」



 親同士が知り合いで、昔はちょくちょく遊んでた。

 あの頃のあなたは私よりも小さくて、転んだだけで泣くような弱虫だったのに。

 高校で会ったらそんな大きな身体になって、声も随分低くなってる。

 これじゃあ昔みたいに揶揄からかえないと思ったら、あなたはちっとも変わってなくて。

 優しい表情かおは当時のあなたのままだった。



 ———久々に行くあなたの家。

 あの頃と変わらない匂いに何だか妙に安心したのを覚えてる。

 唯一、以前と違うのはリビングに小鳥のケージが置かれてた事。


「あれがちーちゃん?」

 あなたは「そう」と短い返事。


 緑に黄色、青い部分もあるみたい。

 カラフルなインコがケージの中を行ったり来たり。

 ちょこまか動くその姿は愛らしくて、まん丸な瞳がとっても可愛い。

 これは・・・あなたの気持ちがちょっと分かってしまったかも。


「この子は何か話せるの?」

「〝こんにちは〟くらいなら言えるかも」

「挨拶できるなんてあんたより優秀じゃん」

「お前は俺をどんな目で見てんだよ・・・」


 そう言いながらあなたは少し苦笑い。

「そう言う目か」と勝手に納得してたけど。


 そんな事より今はちーちゃん。

 近くで見るとモフモフしてて、首を傾げる姿に癒される。


「こんにちは」と私。

「コンニチハ」とちーちゃん。


 本当に返って来た。

 思わず「おー」と拍手する。


「凄いね。めちゃくちゃお利口さん」

「だろ?先生が良いからな」


 鼻高天狗であなたはえへんとしてみせる。

 だから無言で視線を投げたら、

「ごめんなさい」と白旗宣言。


 こう言うノリも含めて、何でも言えるこの関係、悪くないと思ってる。

 あなたはどうだか知らないけれど。


「他にも何か話せるの?」

「色々教えてみたけど、まだ挨拶以外は話せないと思う」


 取り敢えず着替えて来る———あなたはそう言って部屋からそそくさと出て行った。


「ちーちゃん」

「チッチッチッ」

「お話ししようよ」

「チッチッチッ」


 色々話し掛けてみたけどダメみたい。

 覚え立てだし仕方がないか。


 あなたはまだ戻って来ない。

 待ってる間何をしようか考えてたら・・・


「ミサキスキ!ミサキスキ!」

 急にちーちゃんが喋り出すから、思わず持ってたスマホを落とす。


「ツー・・・キアッテ!ツキアッテ!」

 何それ?ってなって、私は思わずプッと吹き出しちゃった。


「鳥の前で告白の練習?ちーちゃんに覚えられてるじゃん」


 これは私が聞いたらいけないやつだけど、あまりに可笑しくて涙が出て来る。


 でも覚えられちゃうくらい、何度も練習したって事だよね。

 それだけ真剣だって事なんだ。


 そしたら向こうで足音がして。

 あなたが戻って来るのが分かった。


「待たせて悪い。美咲、お腹空いてない?」


 あなたは何も気付いてないから、

 私も知らない振りをしておくよ。


「そうだね、お腹空いたかも」


 ———今度はちゃんと、あなたの言葉で聞かせてね?
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