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『迷宮』
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裕翔は薄汚れた服の上から心臓に手を当てる。思った通り静かだった。本来聞こえるはずの音が聞こえない。
『迷宮』のことは知っていた。いや、村に住む誰もが知っているだろう。
十数年前、一人の罪人が突如行方不明になった。それからというもの重い罪を犯した人間は次々とまるで神隠しのように姿を消していった。誰も彼らがどこに消えたかわからず、そのまま数年が過ぎていく。
そんな中、ある日最初に消えた罪人が、町外れに立ち尽くしているのが見つかった。驚いたことに、彼の姿は消えたときのままだったという。
ひげも伸びておらず老けた様子もない。不思議がる人々の前で、彼は自分の見た『迷宮』を話して聞かせた。
最初の罪人が見つかってしばらくたつと次第に他の罪人も見つかるようになった。
彼らは揃って『迷宮』の話を口にした。このあとも同じことが続いたという。罪人が消えては、ある日突如見つかる。
次第に人は、その現象を受け入れていった。
裕翔は自傷気味に笑った。まさか自分がここに来ることになるとは夢にも思わなかった。
ここに時間の概念はないらしい。腹がすくことも疲れを感じることもない。あの階段を登り、身を投げても痛みはあるが死ねないらしい。
ここから開放されるには本当に「自身」を知るしか方法はないのだろう。
村にいたときは最初の頃に消えてからまだ姿を現さない人達の話を聞いた。誰かいないかあたりを見回すが、まるで誰かがいた痕跡がみえない。
上を見上げて叫んでみたが反応はなかった。囚われた人同士は関われないようだ。
裕翔はゆっくりと階段を上がっていった。ここにいてもできることは一つしかない。
何より自分の罪と向き合う覚悟はできている。俺は本気であいつを憎み、殺したんだから。
静かで優美な世界にコツコツと自分の足音だけが響く。上に広がる階段から、ひょっこり顔を出した太陽が裕翔を照らす。
眩しさに顔をしかめながらも日の光を浴びて輝く全身鏡を目指した。
罪と向き合おうとする自分をあざけているのだろうか?それとも、辛い現実に向き合う自分への一欠片の良心か?
裏を読みたくなるほどにこの『迷宮』はきれいで、温かくて、天国だといわれても信じられる空間だった。罪人が閉じ込められる場所とは到底思えない。
「この空間が何にせよ、俺にはもう道がない」
裕翔は目の前の全身鏡に、鏡の中の自分に向き直った。
『迷宮』のことは知っていた。いや、村に住む誰もが知っているだろう。
十数年前、一人の罪人が突如行方不明になった。それからというもの重い罪を犯した人間は次々とまるで神隠しのように姿を消していった。誰も彼らがどこに消えたかわからず、そのまま数年が過ぎていく。
そんな中、ある日最初に消えた罪人が、町外れに立ち尽くしているのが見つかった。驚いたことに、彼の姿は消えたときのままだったという。
ひげも伸びておらず老けた様子もない。不思議がる人々の前で、彼は自分の見た『迷宮』を話して聞かせた。
最初の罪人が見つかってしばらくたつと次第に他の罪人も見つかるようになった。
彼らは揃って『迷宮』の話を口にした。このあとも同じことが続いたという。罪人が消えては、ある日突如見つかる。
次第に人は、その現象を受け入れていった。
裕翔は自傷気味に笑った。まさか自分がここに来ることになるとは夢にも思わなかった。
ここに時間の概念はないらしい。腹がすくことも疲れを感じることもない。あの階段を登り、身を投げても痛みはあるが死ねないらしい。
ここから開放されるには本当に「自身」を知るしか方法はないのだろう。
村にいたときは最初の頃に消えてからまだ姿を現さない人達の話を聞いた。誰かいないかあたりを見回すが、まるで誰かがいた痕跡がみえない。
上を見上げて叫んでみたが反応はなかった。囚われた人同士は関われないようだ。
裕翔はゆっくりと階段を上がっていった。ここにいてもできることは一つしかない。
何より自分の罪と向き合う覚悟はできている。俺は本気であいつを憎み、殺したんだから。
静かで優美な世界にコツコツと自分の足音だけが響く。上に広がる階段から、ひょっこり顔を出した太陽が裕翔を照らす。
眩しさに顔をしかめながらも日の光を浴びて輝く全身鏡を目指した。
罪と向き合おうとする自分をあざけているのだろうか?それとも、辛い現実に向き合う自分への一欠片の良心か?
裏を読みたくなるほどにこの『迷宮』はきれいで、温かくて、天国だといわれても信じられる空間だった。罪人が閉じ込められる場所とは到底思えない。
「この空間が何にせよ、俺にはもう道がない」
裕翔は目の前の全身鏡に、鏡の中の自分に向き直った。
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