御伽の国

翔(しょう)の国編

第11話

「着いたよ」
「着きましたか！？」
扉を開き、すぐ外は砂浜で目の前は海だった。
「あ、ね。黒羽…」
「何でしょう？」
「さっき、扉のなかで黒い影が見えたんだけど…」
「！？」
「く、黒い影…。本当に見えたの」
「一瞬なんだけど、ボヤァって」
「急がないといけませんね。」
「そうだね、ユズハ。急ぐけど、大丈夫かな」
「うん！大丈夫！」
と言いつつ、ユズハの意識は曖昧である。あの黒い影を見てから意識が途切れていたのだ。

「ここが、僕の国だよ。」
水の中に入っても息が出来るように、飴をくれた。
「海の中って綺麗だね…」
「姫様の病気を治すために、どうすればよろしいのですか？」
「お祖母様に会ってみないと、何も言えないんだ」
「では、早く会いましょう」
「こっちだよ」
翔は周りを見てから、中に入った。
「どうなされたのです？」
「お祖母様が何処に居るかの確認してた。分かったから付いて来て」
「勿論、元からそのつもりです」

翔の案内で着いたのは、座敷の部屋だった。
座敷の奥は見えないように、カーテンが付いており人が居るのかさえ分からなかった。
「お祖母様、僕です。翔です」
座敷に入る前に、自分の名を教えた。
「おぉ。翔か。近くにいる者は何者じゃ？」
「執事をしております、黒羽と申します」
「あ、ユズハです…」
「ふむ…、ユズハとやら近う寄れ。病を治してやる」
「な、何で分かるんですか？」
「お主から、邪悪な気を感じるのじゃ。今すぐ取り払ってやろうぞ」
「お願いしますっ」
「黒羽とやら、ワシの近くにユズハを置いてくれぬか？翔、お主も手伝え」
「分かりました。」
「はい、お祖母様。」
黒羽は、ユズハを座敷の奥近くにソッと下ろした。
「じゃ、黒羽は外に出てて。病気移ると困るからさ」
「分かりました。」
パタンと座敷を閉められ、黒羽は辺りを見回した。
この屋敷は広いのに、人通りも少なく静かだ。