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第一章 エルフの少女

50話 「ピアツェンツェア王都」その4

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「我々の最終的な目的は中央大陸に統一国家を作る事だ」
それを聞き変わり者の集団だと思ったが案外野心的だな?と思ったイリス。

「時にイリス殿は「魔族」についてどう思っているかね?」

「魔族・・・」イリスは困った、魔族に会った事が無いからだ。
聞いた限りだと他種族を支配下に置こうとしていて良い印象は無い・・・

「良い印象は持って無いです。
彼らはエルフを無理矢理にエルフを支配下に置こうとしてますから」

「なるほど・・・ではゴルド王国はどう思っているかね?」

「質問の趣旨が分かりませんが大嫌いです。論外です」
イリスは嫌いな物は嫌いとハッキリと言える幼児なのだ。

「なるほど論外と来たか、ハハハハ、そうだな私と同じ意見で嬉しいよ。
そうだなゴルド王国は論外なのだよ」
嬉しそうに笑うクレマン・・・何、笑ってんねん。

「では、我々の事はどう思っているかね?」

「・・・ウザいと思ってます」

「イリスーーーーー?!」これには仰天のシルフィーナ。

「私は回りくどいのは嫌いです。
論外のゴルド王国を倒すのにエルフの力を利用したいと思っているんですよね?
そして恐らくゴルド王国の後ろに魔族が居ると言う訳ですね?」

「ハハハハ、大正解だイリス殿!
我々の作る国家に協力してくれるなら同胞として迎え入れたいと思っている」
現実的に東方のエルフ達はヴィアール領に従う姿勢を見せている。

遠くのラーデンブルク公国より近くのヴィアール領なのだ

「ぬう」これは悔しいイリス、何が悔しいかと言うと力が足りない自分にだ。
もし今、東方のエルフがゴルド王国や魔族に襲われても何も出来ない、ヴィアールに全てを任せるしか無い。

「我々の祖先が居た世界の詩にこんなのがある、
『国破れて山河あり、城春にして草青あり』
国が破れて滅び嘆いても山や河は変わらずそこにあると言う意味だな。
結局のところ国はその土地に住む者の物だと言う事だ」

「うう?」意味は分かるが理解はしたくはないイリス。
だが何の反論も出来ない、クレマンの言う事が真理だからだ。

「南の大陸にエルフの国ラーデンブルク公国があり
中央大陸にピアツェンツェア王国があり、西の大陸にヴィグル帝国があり。
それが現時点で我々が目指す道だ。ゴルドなどはいらん」

「それはそれで排他的なのでは?」
精霊のシルフィーナは世界は一つとの世界観を持っている、クレマンの思想は排他的で独善に思えるのだ。

「その通りです、排他的です。
ですが現状でゴルド王国を排除しなければこの地域の安定は無いのでは?」

「そうですわね」ゴルド王国が話しを聞こうとしないのでどうにもならないのだ。

「もしエルフが野心を起こして国を乗っ取ろうとしたら?」
可能性は限りなく0に近いが、やられっぱなしだと癪にさわるので少し反撃して見ると。

「その時の1番優れた者が王になれば良いのです」
一辺の淀みも無く答えるクレマン、おそらく彼はイリス達に指摘されるまでも無く何度も自問自答を繰り返したのであろう。

どう見ても自らが王に!と言うタイプでは無い、絶対にイヤイヤ王を演じているが丸解りだ。
「国王代理」などと悪足掻きをしているのも「他に誰かやってくんねぇかなぁ~」と思っているのがバレバレだ。

こう言う人物こそが王に相応しいのが皮肉な物だ。
すると何かを思い付いたのかクレマンが真剣な目でイリスを見た。

「あっ!ヤバい!」イリスの顔が引き攣る。

「もしよろしければイリス殿が国王に・・・」
「お断り致しまーーーーーーす!!!」イリスは0,1秒で断った!

「そんなのガストンさんがやれば良いじゃないですか!」

するとクレマンはますます真剣な顔で、
「コイツにやらせたら速攻で国が滅ぶと思いません?」
と盛大にガストンをディスった。

「うん、僕も2日で滅ぼす自信があるよ」とガストンも同意する。

「もうヤダ!この人達!」何なの?!一体!的なイリス。
真面目なのか不真面目なのか良く分からない人間共に完全に飲まれたイリス。
汚い大人ってこう言う者なのだよ幼児エルフよ。

しかし「イリスを国王に」と言うのは本気で考えはじめたクレマン。
なぜなら彼女が「ハイエルフ」だからだ。
「ねぇ、ハイエルフ余ってるならこっちにもくれね?」的な発想だ。

助兵衛ェとは違うクレマンの熱視線に少し引くイリス。
「そんなに国王やりたくねぇのかよ?!」とイリスは思った。

《・・・・・国を作る夢が叶うのでは?イリス》

《余計な事言わないでシルフェリア!絶対この人達は思念波読んでるから!》

《ハハハハ、良く判ったねイリス殿》

《思念波に割り込んでくんなぁーーーーー!!》

クレマンには勝てそうも無いイリスだった・・・
あまりにも非常識なクレマンとガストンに人間に対する妙な絶対的嫌悪感は消えて、
「ウザーーーーい!!」と言う嫌悪感に変わる。

「そう言えばイリス殿。
クレア殿から君が援軍として行動してくれると聞いたのだが」

「そうだったーーーー!!!」
ここでクレアの名前を出すなんてズルい!逃げらんねぇじゃん!

こうしてイリス包囲網は徐々に狭められて行くのであった。

その後ろでブリックリンがシルフィーナにコッソリと、
「気がついています?あの人、絶対に龍種っすよ?」
「やっぱりそう思う」などとヒソヒソ話しをしていたのだった。
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