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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

外伝!「黒龍ラザフォードとマッドサイエンティスト」その4

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「「それで人間になる為には、何からすれば良いのでしょうか?師匠!」」

「師匠・・・」・・・じーん・・・・
何かを噛み締めるエルフのクレア、師匠と呼ばれて滅茶苦茶嬉しい様子だ。

クレアはハイエルフとして産まれてからずっと周囲の者達からお姫様として蝶よ花よと傅かれて生きて来た。

その為、淑女としては申し分ないお淑やかさを持ち慈愛に溢れたお姫様として人間社会にも知れ渡っている。
しかし彼女の本質は「超脳筋」なのだ!めっちゃ熱血をしたいのだ。

師匠と弟子などクレアの琴線に触れまくりなのだ。

話しは戻るが2年程前にラーデンブルク公国の衛星集落が黒龍王の攻撃を受けて壊滅した。
報告を受けて当然、熱血漢のクレアはマジでブチ切れた!

「おのれーーー!!黒龍ーーーー!!!許さぬぞーーー!!」

そう叫びその場で館を飛び出して黒龍を討伐する為に捜索を始めたのだ。
周囲の側近達も止める暇が無かった勢いだったと言う。

クレアの勢いは凄まじく、黒龍の捜索をしているクレアを捜索する羽目になった。
黒龍を追い求め転移魔法で世界中をガンガン移動しまくるクレアを捉え切れず2年が経過した。

兵隊連れずに大丈夫か?と、言うと実際にもし前の黒龍王と戦えば遠距離戦においては、かなり互角の戦いになったであろう程の世界上位の実力者なのだ。
但し、近距離戦では超ミソッカスだけどね。

そして2年に渡る黒龍追跡の結果、本日遂に黒龍ラザフォードを見つけた次第と言う訳だ。

しかし集落を襲った黒龍は既にラザフォードに滅ぼされたと知りクレアの仇討ちの旅は終了した。

目の前に居る黒龍は確かに黒龍なのだが中身は全然違う事はクレアにも一目瞭然だ。
そしてその黒龍は音楽をやる為に人間になりたいのだと言うではないか。

黒龍が役目を放棄する・・・もしそうなれば、エルフのみならず世界に住む者達の脅威が一つ減るし万々歳だ。

そして仲間の仇を討ってくれたラザフォードの願いも叶えてやりたくなったのだ。

そう言う訳なのでラザフォードから「音楽で世界を繋ぐ作戦」とやらの詳しい計画を聞くクレア。

「ふむ・・・「ろっく」と言うのは良く分からないが「音楽で世界を繋ぐ」と言うのは実に面白い発想だな。
うふふふふ・・・お主は随分と平和的なのだな」
話しを聞きラザフォードの平和的な世界征服の計画を知り優しく微笑むクレア。

「「勿論!私はラブアンドピースが信条なので。戦争反対です」」

「ふむ、そんなお主だからこそ神によって黒龍に選ばれたのかも知れんな」

いや、神様は単純に人選をしくじった様にしか見えんよ?現に頭抱えているし・・・
ラザフォードもそう思ったが奴はあまりにも面倒くさいので黙っていた。

『酷い?!あんまりです!!』

「うむうむ、お主の話しは良く分かった、素晴らしい計画だと妾も思うぞ。
・・・よろしい妾も全力で協力しようではないか」
そう言って少しクレアは考えて・・・

「お主には「人化の法」が一番良かろうな。
幻術の一種で種族を変える事は叶わぬが見た目は問題無く人間になれよう。
それに習得するのにも、お主の持つ膨大な魔力ならそんなに時間は掛かるまい」

「「人化の法ですね?御指導よろしくお願いします」」
黒龍を辞める事が出来ず残念だが、最低限の目的は達成出来そうな感じなので喜んでクレアの言う通りにするつもりのラザフォード。

実に元アメリカ人らしい合理的な考え方だ。

そんな素直な弟子に対して満足気に笑顔で頷くクレアだった。
それからその日から早速クレアによる猛特訓が始まったのだ。

無論、このせいでクレアがラーデンブルクに帰還するのが大幅に遅れた・・・
世界中に散らばりクレアの捜索している側近達はご愁傷様だな。


3ヶ月後。

ドドドドドド!!!
大きな岩を背負い平原を疾走するラザフォード。
空を飛ばずに突然現れて地面を爆走してこちらに向かって来る黒龍王に驚き右往左往する熊型の魔物達。

「「いやあーーーー??!助けてぇーーーー!!」」

「「子供は!子供だけはお許し下さい!!」」

「「降伏!降伏します!貴方様の奴隷になります!」」

迫り来る恐怖の黒龍王にガクブルで命乞いを懇願する熊型の魔物達。
それら魔物達を一切合切全て無視して凄い勢いで走り去る黒龍王。
「殺される!もうダメだ!」と思った魔物達もポカーンとしながら黒龍王の後ろ姿を見送る。

何でこんな事をしているかと言うとクレアの修行は知識も沢山教えてくれるが基本は走ってばかりなのだ。

修行が始まる前にクレアが・・・
「良いか?全ての基本は「足腰」じゃ、足腰が強いと何でも出来る!」
との最初の修行方針に・・・

「「はい!分かりました!・・・・・・・・・・・えっ??足腰??」」
ラザフォードもクレアの意外な修行方針には、かなり戸惑ったが3ヶ月も経過した頃には慣れた。

最初こそ足腰の修行最優先に懐疑的なラザフォードだったが、日を追う事に確かに体調が良くなり、教えられた知識が頭の中にスルスルと入って来るのだ。

これは余剰な体力と魔力を走る事で適度に消費しているからだ。
何よりも風を切り巨体で平原を疾走するのは楽しくて仕方ないのだ。

「「今日は風がいつもより気持ち良いですねー、師匠!」」

「うふふふ、そうだろう?」

実は爆走しているラザフォードの隣ではクレアもピッタリと並走しているのだ。
《爆走☆黒龍王チャン》のインパクトがデカ過ぎて誰も気が付かないが・・・
ちなみに時速は80km出ている、クレアも充分に人外なのだ。

ジョギングが終わるとすぐに徹底的な魔法学の授業が待っている。
せっかちなクレアはガンガンと授業を詰めて来るのだ。

ロックシンガーだったラザフォードは、この手の理化学的な勉強は苦手だと思われていたが実の所で彼女はペンシルバニア出身のペンシルバニアっ娘。

なんと!地元のペンシルバニア大学の卒業生だったのだ!凄え?!

ちなみに実家はペンシルバニア大学まで自転車で15分の距離にありハーバード大学からも特別推薦を受けたが「家から近いので!」と言う理由だけでハーバード大学の推薦を蹴ってしまった超絶才女だった!マジ凄え!コイツ!

当然、理化学分野はお手のモノでクレアも舌を巻く程の基本知識があるのだった。

「いやー科学と言うのは面白いのう」
反対にラザフォードからも地球の物理の授業を興味津々に受けるクレア。
これが後に重大な意味を持つ事になるのだ。

余談だが、ペンシルバニア大学の卒業生で有名なのは日本なら細菌学者の「野口英世さん」とかが有名だね、後はドナルド・トランプ前大統領とかも卒業生です。

「「くっ!!師匠!文字が書けません!」」

「だろうな・・・」

黒龍に合う文房具などありゃせんので仕方なく爪を使い地面にチョコチョコと文字を書くラザフォード。
優秀な彼女は半年で「人化の法」の基本的な知識を全て覚えてしまったのだった。

「凄いのう・・・お主は・・・」優秀な弟子に感心しきりのクレアだった。
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