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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

54話 「グリプス王国」その1

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「すみません!ごめんなさい!すみません!ごめんなさい!
本当にすみません!ごめんなさい!ああーーー!すみません!」

エリカ将軍!上空で粗相をする!
それでグリプス王国国境目前の沢に緊急着陸した龍騎士隊イリス。

「キューーーーン・・・キューーーーーン・・・」
○☆塗れにされて悲しそうにエッグエッグとガチ泣きしている飛竜の女の子・・・
この子は天龍進化間近で随分知能が高い様子だ。

この前の大空中戦でもリールの祝福のキスを受けた、実力派の飛竜だ。
その背中を泣きながら下着姿で必死に洗ってるエリカ・・・何の地獄かな?

ちなみにエリカの今日の朝食・・・・・・・大盛り餃子定食に苺ショートケーキ。
もう最悪じゃねえか!!何で朝からそんな重たいモン食ってんだよ!

「あー・・・水の流れが気持ちいいですなー・・・」
背中を○☆塗れにされて悟りを開いたロイは鎧を着けたまま川に浸かり全身丸洗いをしている、雪解けの水が冷たそうだ。
しかし彼はリザードマンなのでこの程度の水の冷たさは大丈夫なのだ!

余談だがリザードマンは爬虫類種で無く哺乳類種だったりするので低温度で動け無くなる事は無い。

「はあ・・・このシミ消えますかねぇ?」

「もおおお!!礼服が台無しですわ!!」

シルフィーナとミイはエリカの将官の礼服を洗っている。

「キューーーーーーン・・・キュキューーーーーン・・・」

「アーン!!すみませーーーーん!!」

地獄の様な惨劇・・・イリスに続いて○☆女の爆誕だった。




どうにか体制を立て直してグリプス戦隊との合流地点へ向かう龍騎士隊イリス。

「ごめんなさい!ごめんなさい!もう泣かないで!ねっ、ねっ、ねっ?」

「キュイ・・・」やはりショックが大きかったのか元気が無い飛竜。
余談だが、この飛竜の女の子の名前は「テレサ」とイリスが名付ける。
この後、無事に天龍へ進化して女王となったイリスの相棒として長年に渡り世界中を飛び回る事になるのだ。

彼女は約1000年後に始まる「黙示録戦争」にもエルフの魔道士として参戦をする。
本家の話しの中ではエルフに変形して元老院に参戦を直訴して戦場でイリスとヤニックに飴玉を差し出した女性だね。
黙示録戦争については本家の方をお読み下さい(チラリ)

合流地点に近づくと予定通りに300名のグリプス戦隊が整列していた。

「余り大所帯だと連合に察知される恐れがありますので龍騎士隊に参加して頂ける方達のみで合流しましょう」とエリカから打診されている。
要するに「顔見せ」も兼ねている訳だ。

龍騎士隊イリスがドンドンと着陸するとグリプス戦隊から、オオーーと声が上がる。
やはり500体近くの竜の着陸は圧巻なのだ。

全員が着陸してから竜から降りてグリプス戦隊と向き合い整列する。

「敬礼!!」ロイの一喝で一斉に地球流の敬礼をする龍騎士達。

「統率を高めるには、これが一番」とエリカの発案で敬礼が採用された。
一応、今までラーデンブルク公国軍にも敬礼に似た礼はあったのだが、俯く仕草が有り隙を見せるとエリカが嫌ったのだ。

対するグリプス戦隊は握り拳を胸に持って行く、オーソドックスな戦士の礼を取る。
どちらも相手に対して不敬にならない軍礼だ。

ハドソン隊長とエリカ将軍が一歩ずつ前に出る。

「エリカ様!お待ちしておりました!」

「お待たせして申し訳ありません、ハドソン隊長。
今日の私はラーデンブルク公国の公爵、クレア・ラーデンブルクの親書を携えた使者なので「エリカ殿」もしくは「エリカ将軍」とお呼び頂けると助かります」

そう言ってニコリと笑うエリカ。
先程の醜態とは打って変わって見事な使者ぶりを発揮している。

「分かりました!では!「エリカ将軍」とお呼び致します!
道中何か不便な事はありませんでしたか?」

「ええ、全く何もありませんでした」しれっと即答するエリカ。
まさかついさっき○☆って飛竜の女の子を泣かせたとは言えない。

エリカが近くの山を見上げるとグリプス王国の石造りの城壁が見える。
「山城・・・」エリカのパッとした見立てでも難攻不落の山城だと解る。

「あれは第一防壁です」ハドソン隊長が説明してるらしい。

「なるほど、あの奥が耕作地なのですね」
第一防壁の裏手に農村が広がっているのだろう、第一防壁は時間稼ぎだ、無理に守るつもりは無い捨て城壁だ。

「そうですね、あの辺りはキャベツ畑になりますね」

「それにしては立派な城壁ですね?」
そう、かなり堅牢に見えるのだ、おそらくラーデンブルク公国の首都を守る防壁と同レベルの堅牢さなのだ。

「我がグリプス王国は石工技術だけは発展してますから」
エリカに褒められて「てへへへ」と照れ笑いするハドソン。

「いや、本当に凄いですよ」
千鳥組で積み上げられた城壁は日本のブロック塀と同じくらい、石の大きさが均等になっている、これは戦城としては、とても大事な要素なのだ。

なぜ石の大きさが均等だと良いかと言うと城壁作りが効率良く進むのもあるが、土地感が無い敵は城壁の模様を目印にする場合が多いからだ。

「三つ大きな石が積まれた城壁を右だ!」とか誰でも一目で解る特徴で指示を出す。
しかしグリプス王国の均等化された城壁だと位置感覚、方向感覚が麻痺して侵攻して来た者は混乱する事だろう。

「均等な石材加工は昔からグリプス王国軍で重要な戦術目標でしたから」

「なるほど・・・」
グリプス王国・・・長年に渡りかなり戦に長けた国だと認識を改めるエリカ。

ここから城壁内へはエリカとロイとシルフィーナの他、護衛5名の8人で入る。
護衛の数が随分と少なくね?と思うが龍騎士は空を飛べるので、あんまり関係無い。

「うわああ!!凄いですねぇ」
城壁を入るとキャベツキャベツキャベツキャベツキャベツキャベツキャベツだ。
ここがグリプス王国のビタミン補給基地なのだろう。

「ゴクリ・・・」

「ロイ?ご馳走様になるのは後よ?」

「わっ・・・分かっております!」

「うふふふ」

ロイはキャベツが大好物なのだ。
「そんなに食べたら逆にお腹壊すよ!!」とイリスに怒られるくらい食べるのだ。
別にリザードマンだからと言う訳では無い、ミイからは「見ていてお腹を壊しそう」とドン引きされている

キャベツ畑を越えると第二防壁が見える、櫓が複数見えるので敵の迎撃はここからだろう。

「えええ?!ヘスコ防壁ーーー?!」
第二防壁を近くで見ていきなりエリカが叫ぶ。

「ええ?!エリカ様・・・エリカ将軍はヘスコ防壁を知っているのですか?!」
何故かハドソン隊長もめちゃくちゃ驚いた?
他の人間はポカーンだ。

「これ・・・私と同じ、元地球人が作った物だ・・・」

「どう言う事ですの?へすこ?防壁とはガイヤの物なのですか?」
シルフィーナが怪訝そうな顔をする。
エリカが元地球人だと龍騎士隊の皆んなは知っている、別に隠して無いからね。

「いや・・・地球の物と言うより「ヘスコ社製」の防壁・・・解り易く説明すると商会の名前なのよ」

ヘスコ社製防壁は鉄製の筒にバサモル・・・セメントを混ぜて石も多めに混ぜた砂を入れて並べる施工が簡単で誰でも作業が出来て早く頑丈な防壁だ。
湿気を吸いドンドン硬化して行く、湿気が多いこの地域には最適な工法だ。

「もうカッチカチだねぇ」感心しながらコンコンと防壁を叩くエリカ。

グリプス王国の場合は鉄製では無くて木と布で筒を作っているが強度はほとんど変わらない。
おそらく崩れ無い様に、中は細い枝で芯を作っているのだろう。
固めてしまえば鉄筋でも木筋でもあんまり関係ないのだ。

基礎と一体化してるので掘って作って埋めるだけのお手軽な優れモノだ。
西暦2000年代でも世界の軍事基地で幅広く使われているね。

「ハドソン隊長?これは昔から?」

「ええ、200年前に誕生した工法と聞いてます、これのおかげで敵の侵攻を何度も阻んだと記録されてます」

「で・・・でしょうね?」挙動不審になるエリカ。
この世界の200年前の技術からして見れば完全なオーバーテクノロジーの一種の技術だ。
何も無い場所に1か月後には堅牢な城壁が長距離に渡り出来上がるのだから。

「ほえー」間抜けな声を上げて第二城壁の見分に夢中になる軍事マニアのエリカ。
本とか動画では見たが実物を見るのは初めてで興味津々なのだ

「凄いわ・・・これを採用する発想は私も無かった・・・」

「エリカが驚くなんて・・・これは、そんなに凄いモノなのですねぇ」
シルフィーナも感心した様に呟く。

「あれ?グリプス王国って結構ヤバくね?」
元地球人がオーバーテクノロジーを駆使して作った国・・・背中に汗をかき出すエリカだった。
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