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十四皿目-豆乳鍋
しおりを挟む※本作はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。
いよいよ冬も近く、寒々しい雨のしとつく中、とある大学の学生寮の一室で、一人の青年が洟をすすって寝込んでいた。
「ェクシッ!ェクシッ!...あー...。だりぃ...」
青年の名前は須賀武志(すがたけし)。どこにでもいる様な普通の大学生だった。
「ツいてねェ...。バイトも休んじまったし...」
学業の傍らにスポット派遣で働いていた須賀だが、ここ最近昼は大学で講義、夜は夜勤シフトを入れて稼いでいたツケで疲れが出たのか、風邪で倒れてしまった。
普段カップ麺ばかりで、ちゃんとした物も取らずに体力仕事を続けていたのだから、当然と言えば当然だった。
「...南瀬さんの心配、当たっちまったなぁ...」
派遣先でちょくちょく顔を合わせる年上の派遣仲間。寡黙でこちらから話し掛ける方が多かったが、南瀬から言われるのは大抵食生活への苦言だった。
『今保っているのは地力を食い潰しているだけですよ』
『働けなくなってからでは遅いのだから、野菜と肉も食べましょう』
『金も手間もかけずに栄養のバランスを取る食べ方は沢山あります』
南瀬の事は尊敬していたが、好き嫌いが激しくて料理等した事も無い須賀は、ハイハイ言うだけでいつも聞き流していた。
「オフクロかアンタは...って、家のオヤジやオフクロは、そんな事言わなかったな...」
須賀の両親も仕事優先で食事に興味が無く、机に小遣いを置いて勝手に食えと言う感じで、食卓に全員揃った記憶もほとんど無かった。
自然、カップ麺中心で小遣いを貯めてはゲームに使うのが当たり前となり、家庭料理と言う物を知らずに育った須賀だったが、南瀬から分けて貰ったおかずを初めて食べた時、自分でもよくわからない衝撃を受けた。
その理由についてぼんやりと考えていた時、玄関の戸を叩く音が響く。
「たっくん起きてるー?」
「何だ如月か...」
訪問販売の類なら居留守を決め込もうと思ったが、同じゼミの女子、如月綾(きさらぎあや)の声だったので須賀はベッドから抜け出して戸越しに声をかけた。
「ゴホ...如月どしたー?課題で困ったとかなら、今無理だから他当れよ」
「んもー!お見舞に決まってるじゃない。ここ開けてよー」
「いや、風邪伝染っから来んなっつったっショ」
「マスクしてるから大丈夫だって!美味しい物持って来たから食べてよー。...でないと寒くてホントに風邪引きそう」
「おいおい...」
須賀が新しいマスクを着け直して玄関を開けると、ボブショートの女子大生がエコバッグを両手で下げて立っていた。
「...重そうだな」
「ホントよ。もう持ってらんない」
「いや、服が」
「ヒドッ!」
如月は大学の陸上サークルに所属し、細身のしなやかなスタイルな事で人気があったが、この日の彼女は厚着で着膨れが凄過ぎて随分丸く見えた。
それでも尚寒そうにしていた如月はそのまま須賀の部屋に上がり込んだ。
「お邪魔しまーす。...うわ汚ーい」
「...なら無理して上がんなよ」
「オマケにカップ麺ばっかり。だから具合悪くなるんじゃない!」
今まさに自覚していた事を如月にまで言われた須賀は、反論出来ずに無言で換気扇を着けて小窓を開けるとベッドに潜り込んだ。
「寒っ!」
「...換気しとかねーと。ホントに伝染られたら俺がゼミ連中にボコられるんだよ」
「はーい。...この気遣いがどうして他に活かせないんだろ」
須賀は大学でも人気がある。今は彼女がいない事もあって狙っている女子は多く、たまたま須賀の寮室の番号を聞いた事があった如月は『ただのゼミ仲間』その一から一歩抜きん出ようと、弱った須賀に突撃を敢行したのだった。実に汚い。
「勝てば官軍。勝てば官軍...」
「何か言った?」
「いーえー」
エコバッグからタッパーを取り出して開けると、兎形に切った林檎を取り出す如月。
「はい。栄養ドリンクとか色々あるけど、まずはこれ食べて」
「お、おう。悪いな如月。今度立て替えっから」
「病人がそんな事気にしなーい。はい、あーん」
「うん、美味い美味い」
フォークで食べさせようとする如月だったが、脇に置かれたタッパーを奪い、手掴みで林檎を齧る須賀に如月はむくれてしまう。
「もう...。たっくん好き嫌い多いらしいから色々用意したけどダメなのある?」
「いや...、買い過ぎじゃね?」
エコバッグの中には、籠城戦でもするのかと言う位色々詰まっていた。果物、缶詰、栄養ドリンク、ジュース類、ブロック状やゼリー状の栄養補助食品等々...。
どれもそのまま食べられるのは有難いし、文句等付けられないが、出来れば今は暖かい物が欲しかった。
(冷たいモンばっかじゃ腹冷えるしなー...あ。待てよ確か...)
須賀はエコバッグから飛び出した紙パックを指差した。
「如月。その豆乳頂戴」
「あいよー。コップどこ?」
「いや、小丼で。後冷蔵庫の豆腐とポン酢、塩昆布を出してくれる?」
「...えーと?」
如月は須賀の指示が理解出来ずに固まった。
「あー...。いーや俺やる...」
「あ、ダメ!寝てて良いから!」
ベッドから抜け出そうとする須賀を、如月は慌てて押し返した。
「...分かったから、どうしたいのか教えてよ」
こうして、如月は須賀の指示で料理を始めた。
まず小丼に塩昆布を一摘み入れて。
一丁の四分の一程度のミニパックの豆腐を入れて。
豆乳を豆腐が見えない高さまで注いで。
後はレンジで温めるだけ。
「...ホントにこれだけで良いの?」
「ああ。目盛に牛乳を温める表示あるだろ?そん位で良いんだと」
言われるままに作ってみたが、簡単過ぎて『料理』と言えるのか如月には判断が付かなかった。
そもそも如月は料理が出来なかった。果物ナイフですら危なっかしくて、林檎を赤く染めそうだと母親が代わりに切ってくれる程に。
時々挑戦してはすぐに投げてしまうのは『料理は難しくて面倒』だと言う先入観があったからかも知れない。
「...たっくんって、お料理出来たの...?」
なのにカップ麺しか作れないと思っていた男にテキパキと指導されて、如月は正直心が折れそうになったが、
「いやサッパリ」
即否定されて益々訳が分からなくなった。
「ただ、教えて貰った事があっただけ。実際にやった事は無かったけど」
そうこうしているとレンジが鳴ったので小丼を取り出すと、部屋の中に優しい香りが漂ってきた。
「おー。マジ出来たよ、『なんちゃって豆乳鍋』!」
「豆乳鍋?...これが?」
ただ温めただけの豆乳だが、ほかほかと湯気を立てる象牙色のスープは、確かにテレビで観た鍋料理の様にも見える。表面に薄い膜が固まっている所もそっくりだった。
「いーから、早よ、早よ!」
「はいはい。分かったから、テンション下げないと熱上がるよー?」
急に子供の様にはしゃぎ出した須賀に呆れながら、如月はお盆に乗せた小丼とスプーンを、掛け布団の須賀の膝辺りに静かに置いた。
「うひょー!美味そー!...いただきます」
普段の何も言わずカップ麺を啜る姿しか見た事の無い如月は、急に神妙な顔で手を合わせる須賀に違和感を覚えたが、それ以上に自分の作った物に『いただきます』と言って貰えるのが何だか無性に嬉しくなる。
「それ大丈夫?何か変な膜張ってるケド...」
「ナニ言ってんの!コレ湯葉だよ!スゲー、自分で作れるなんて。この目で見ても信じらんねー」
「湯葉...って、あの何か高そうな?」
如月に答える手間も惜しんで、須賀はポン酢をちょろりと湯葉に垂らし、スプーンで巻き取って頬張った。
「うめぇ...」
滑らかな口当たりの膜を噛み切ると、濃縮された大豆の旨味が、ポン酢で更にはっきり感じられる。
「ヤッベ...。俺今、スゲー贅沢してる...」
『絹を口にした様な』と言う表現は、まさにこの生湯葉の為にある。そう確信してる内に須賀は湯葉を食べ切ってしまった。
(もっかいあっためたら、また出来ネーかな、湯葉...)
少し残念に思いながら底に沈む豆腐を掬って食べると、思ったより熱くて驚いたが、それが何故か楽しい。
「ホフっホフっ!たまんねー!...え?」
そうして一人で豆乳鍋を堪能していると、須賀の小丼に、如月の恨みがましい視線が注がれている事に気付き、慌てて身体で隠す様に小丼を庇った。
「私も一口...」
「いや、コレはダメだろ。風邪伝染るって!」
最初は如月も微笑ましく見守っていたが、余りに幸せそうに食べている須賀が羨ましくなってしまった様だ。
「いや、まだ沢山残ってんだし、同じの作ればいーじゃん。そこのデカいマグ使って良いから」
「ホント!?ありがとー!」
須賀の提案に、如月は満面の笑みで立ち上がると、再度豆乳鍋の支度に取り掛かった。
「あ、俺のもついでにあっため直してくれる?湯葉のお代わり欲しい」
「あいよー♪」
(テンションたけーのはどっちだか...)
如月の機嫌の乱高下に、須賀はどっと疲れを感じた。
それと同時に、自分が病人である事を一時忘れていた事に内心驚いていた。
(...メシって、こんなに楽しかったのか...)
やがて出来た自分の豆乳鍋を口にした如月は、目を白黒させた。味付けは塩昆布とポン酢だけなのに、何とも滋味深くて優しい。こんな寒い日に食べると、どこかホッとする味だった。
「...お料理って、こんなに簡単でも良かったんだね」
「どしたよ、急に」
「実はその、私お料理苦手で...」
「そーだな」
「...って知ってたの!?」
「いや、見りゃ分かるっショ。それで?」
「うー...。いや、だから、包丁も使わないでレンジ任せでも、ちゃんと家庭の味みたいのが私にも作れたのが何か不思議で...」
(家庭の味...)
「たっくん?」
如月の声で我に返った須賀は、誤魔化す様に話題を変えた。
「いや、コレってバイト仲間が教えてくれた料理でさ」
「へー。居酒屋とか?」
「いや、倉庫で荷降ろしばっかのキッツイ仕事」
「...どゆこと?」
「いや、その人が食うのが趣味みたいな人で、いつも奥さんの手作り弁当を大事そうに食ってる訳よ」
「それってラブラブなだけじゃ?」
「いや、マジでうめーの!」
「なんでたっくんが食べてんの...」
須賀は南瀬の事を語った。目の前の作業だけでなく、現場全体を見て全員で円滑に仕事を進める様に誘導するのが上手く、周りから頼られる事も多い。
正直、大手の商社でビジネスマンをやってそうな感じで、あんな日雇いで燻っていて良い人には見えない。
そんな南瀬は食事を『自己管理術』だと説くが、彼から時折分けて貰うおかずは、その冷たい言い方とは裏腹にとても優しい味がした。
そして、それを押し黙って口にする南瀬は、一見苦行めいて見えるが、本当は真剣に幸せの味を噛み締めているのだと直ぐに分かった。
何故ならその味は、須賀が無意識に求めていた、暖かい家庭の味だと気付いたからだった...。
「ふーん...」
「な、何だよ」
「別にー?つまり、たっくんはその奥さんのご飯にメロメロなんだねって思っただけだし」
「俺、奥さんに会った事もネーし!」
須賀も南瀬自身の料理に対する知識の深さから、一時『南瀬夫人』とは自分が勝手に捏造した存在で、料理は全て南瀬本人が作ったのではないかと疑ったが、持って来る料理から溢れる『情熱』と『独創性』が余りにも本人像とは掛け離れて観えたので、直ぐに思い直した。
何処の世界に、休日に女子力高いお菓子を焼いて来る、酒呑みのガテン系男子が居ると言うのか。
「まあ、南瀬さんがオヤジだったら楽しかったろうなとは思うよ。きっと家じゃ奥さんと仲良く創作料理とか作ってるだろうし...。つっても、見た目兄弟位にしか歳離れて無いから、こんな事南瀬さんに聞かれたら怒られそうだよな」
「何かあやしー」
「...そろそろ帰るか?」
「あ、ゴメン。...いやホントごめんなさい」
茶化そうとして本気で怒らせてしまった事に気付いた如月は慌てて謝罪した。
「...で、さっき如月も言ってたろ?『料理って、こんなに簡単でも良かったんだ』って」
「う、うん」
「俺も似たような事を南瀬さんに言ったらさ、こう返されたんだよ」
『何でもそうですが、手を抜く事と力を抜く事は違います。でも、どう違うかは自分で確かめて見るしか無いのです』
「...てな」
「手を抜く事と、力を抜く事...」
如月は南瀬の言葉を咀嚼する様に頭の中で繰り返した。
「多分俺も如月も、料理に対して端っから『無理だ』とハードルを上げ過ぎてたんだよ。こうやって、出来るトコから始めれば良かったのにな」
そう言って須賀は手元の器に浮かぶ湯葉を掬うと、息で冷ましてから大事そうに噛み締めた。
南瀬に出会うまで、須賀にとって食事はそれこそ『作業』でしか無かった。
友達や彼女との付き合いで色々食べに行く事はあったが、店を出たらどんな味だったか思い出す事も出来ない。
どうせ『美味い』とも『不味い』とも思わないなら、安く済むカップ麺で良いじゃないか...。
そうした食への無関心さが切っ掛けで、前いた彼女とも別れてしまった。
だが、今は違う。
ただ遊ぶ金欲しさにしていた仕事にも張り合いが持てる様になった。
好き嫌いが減り、前より友達の誘いに乗るのが楽しくなった。
南瀬との出会いを機に、須賀は自分の将来目指す物が観えた気がした。
暖かい家庭を築きたい。南瀬の様に、面白楽しい食事を皆で考え、団らんを創りたい。
些か抽象的だが、その為にはちゃんと先を見越した職に就かねばならない。
風邪が治ったら、やりたい事、やるべき事が山積みだが苦にはならないだろう。
「...私も、改めてお料理初めてみよ」
「良いんじゃね?」
将来の相手を探すとして、それが目の前の彼女になるか、それは須賀にも分からない。
ともあれ。今日の所は...、
「「...ご馳走様でした」」
二人は器を置いた。
ー完ー
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